飯田杏

____

飯田 杏.> 
_____彼女は変化を呪っている。「……、」(閉じられた、薬品の匂い。機械的な耳鳴りをその裏に隠した薄く陰った理科室は、きっと放課後になってしまえば、随分と閉鎖的にその身から手を引いていた。そしてまた彼女は、扉に手をかけたときにはもう既に、君の存在に気が付いていた。)「ドーモ。」(からからと滑車を転がしながら扉を開けたなら、彼女は初対面の君に声をかけた。それはまるで旧知の仲のようで、それでいて全くの興味を遮断するように。)(__この学園にヒーローという立場が乗っかり、多くの“変化”に犯された今。かつての居場所は新しく入ってきた生徒らにまた犯され、彼女の安全地帯は失われた。変化をできうる限り感じずに居られる場所__人気のなく、またそれ故の安心感もなく。ただ校内のうちで忘れ去られた、特有の決まった人間しか立ち入らない、閉鎖的であり、また彼女自身を拒まない開かれた場所を、彼女は求めていた。) 「…………あの、ここっていつも空いてる? 時折お邪魔したい、ンだケド」(君からすれば随分と幼い容姿の彼女は、その年齢差、体格差など気にもしないように淡々と君にそう尋ねた。君のその、白衣姿であっても先生には見えない年相応の若さと細さ、好奇心に輝く瞳は、個々の権利を占有しない不安定な軽さを彼女の中に匂わせる。君がどういった経緯でこの場所にいるかは知らない。君のしていることに興味はない。ただ、この閉じられた空間の一部を貸してはくれまいか、と、彼女は君に尋ねただろう。)「邪魔はしない。ただ、そうだな…………ワタシの相棒が、ココ、気に入ったみたい、だから。」(そんな適当な理由をあてがって、彼女は薄く笑って見せながら。)   (5/8 22:00:29)


Gaill Monochoria> 
「....ey.......」(理科室の一角。とっ散らかった黒やら白やらのケーブルとコード。その中央、三つの液晶を睨む随分細い人影。からから扉が開いて、君が無機質な部屋に言葉を垂らしたなら。水面の波紋に浮草が揺れるみたいに、其の男も反応を示すだろう。)「HeyHeyHeyHeeeeey.........」「珍しいねェ御客人.....。」(隈の出来た目は朧気に君を捉えている事だろう。浮草と云うには随分活力がない。ぷかぷか浮いた枯れ葉の方が正しいだろうか。然し其の瞳の輝きは少しだって褪せてなくて。兎角、男は君を拒まない。細い両手をばっと広げて、“ようこそ”オーラ全開なのだが勿論彼は一生徒。所有権も無ければ理科の教師もドン引きの熱中具合で独占しているハイジャッカーに過ぎないのだ。だが。)「勿論空いてるさ。月火水木金土日“変わらず”年中無休..........」「......少なくとも。僕が気絶でもしない限りは休みナシさね。もしかするとキミも“同志”かい?」(そんな事は気にも留めず、強風に吹かれたらへし折れそうな其の男は君の質問に実に自然に答えるだろう。皆目見当外れな質問を添えて。)(男は顎に手を当てる。言わずと知れた思考のポーズ。少ししてからフィンガースナップ。薄ら笑いに返す様な、少し悪っぽい笑みで。)「あァ心配無用。そうそう邪魔出来る様なモノじゃ無いさ。この探求はね。」「だがァ.......」「キミの相棒(ディスコード)を少し見せちゃーー貰えんか?」(そう彼は。)(Gaill Monochoriaは、探求を愛している。)   (5/8 22:34:15)


飯田 杏.> 
(彼女は不変を求めている。何が起きても、環境に変化があっても自己を変えず、他者に変化を強要しない、そんな居場所を求めている。)『勿論空いてるさ。月火水木金土日“変わらず”年中無休..........』(君の返答はまさに彼女の求める解そのものだった。君の様相はケッペキを醸す白のようで、それでいてどこか清らかさなどかなぐり捨てるような不穏な濁りを見せている。温帯の広葉樹よりも、タイガに生える針葉樹を匂わせるそれは、降りしきった雪の白さと埃臭さ、刺々しさとそれから、容易に曲がらない高潔さをたたえるような。) 『もしかするとキミも“同志”かい?』(彼女は小さく微笑んだ。それは愛想の良さを演出するためのものではなく、ただ君への、この空間への評価の笑みだ。求めるときにそれがそこにあればいい、そんな冷えた感性は普通の人間には受け入れられないのであろうが、よかった、どうやら君も普通の人間なんかじゃあないらしい。)「ぁ~……まぁ、同志、と言ってイイんじゃないかな? もっとも、君とはきっと趣味は合わないだろうケド。」(同志、というよりも同類といった方がふさわしいのだろうが、そんな細かい定義を彼女は必要としなかった。)(君の返答に満足したのなら、彼女は背負っていた鞄を日の当たらない端の机へくつろげた。日は移ろい、巡る。日が当たれば机は日に焼け、その色は移り変わる。日々を過ごせばそんな些細な変化などなめらかに均されて気付きやしないだろうが、そんなことさえ煩わしいのだから仕方がない。耐久性を重視した無骨な鞄には装飾など一つもなく、また目立つ損傷や劣化さえ窺えなかった。)__『キミの相棒(ディスコード)を少し見せちゃーー貰えんか?』(君の言葉に彼女は訝しみ、細く息を吸ったなら、)「いいよ。……但し、条件がある。」(そう、君に条件を突き出した。一つ、質問は出来るだけしないこと、何かあっても一日に三つ。一つでも四つでもだめだ、必ず三つ。二つ、その代わり、調査も研究も自由にしてくれてかまわない。但し、加工を施したり分解したりはしないこと。するとしても必ず元に戻すこと。三つ、クーロスに起きた変化を見つけても、ワタシにはなにも言わないこと。君の中で簡潔させること。)「……いいね。」(それだけの条件を並べ立てたのなら、君の返答の是非にかかわらず彼女はクーロスを出現させた。胴体と両肩に砲台とガトリングを搭載した多脚戦車、クーロス。一つの机に丁度収まる程度の大きさで彼はその身を表し、双眸に近い胴体に備わったライトを君に向けることだろう。合金製のその機体は鈍く光りを反射し、重々しくその空間を圧迫する。御自由にどうぞ。そう言わんばかりに、彼女は椅子に腰掛けた。)「…………いーだ、あんず。その、今更だけど一応。」「君の日常の節々に些細な変化に、ワタシは一切興味がない。だから、そういう普通を求めるのは別の人間にたのんだよ。」(そんな初めの口上を口にして、彼女は机に肘をつきながら、そっと君を視界に納めた。出来事はいくつかの繰り返しを経て日常に変わる。変化を恐れ日常を飲み込むためには、変化をその身にならさなければならない、なんて馬鹿らしいけれど、それでも。彼女は至極厭わしそうに世界に息を吐きながら、それでもその身をそこに落ち着けて、日常へ、君へ空気を預け、飲み込んだ。)   (5/8 23:19:48)


Gaill Monochoria> 
「クク、四角四面に“普通”の模範囚じゃー僕等ァ適合者になんざなって無いさ。そうだろ?」(君の答えを聞けば、御堅い一般常識を嗤う様に笑って。)「興味の一つでも湧けば話し掛けて来ると良い。.....ま、キミに限ってそんな事ァ無さそうだがね」(君が彼に興味を持つ事などそうそう無いであろう事を察したのか、ニヒルな笑みを変えずに言葉を続けた。)『いいよ。......但し条件がある。』「ふむ?」(最初の了承を聞いた所で降ろしかけたフィンガースナップの手が空中で止まり、また顎に当てられる。それから、彼は頷きながら君の並べる条件を聞くだろう。質問は3つ、の時に少し顔を顰めた以外に特段変わりは無いが、そもそも気にする君ではあるまい。)「知道了(ジーダオラ)。歯痒さは在るがァー..........親切な対応に感謝するよ、....あー.......」(其処で言葉に詰まったのは至極単純、まだ君の名前を聞いて居なかったからだった。)________『…………いーだ、あんず。その、今更だけど一応。』「ほぉ!イイダチャンか、よろしく頼むよ」(一つ紳士ぶった礼をするのはどうだって良いジョークだ。そしてパソコンへ踵を返し掛けた所で思い出した様に。)「あァ、僕ァゲイル。ゲイル モノコリアだ。好きに御呼びよ、イイダチャン」(言い終わればさっとパソコンへ向かい、新規レポートを開いてすぐ戻って来る。)(暫く機体を触りながら確認する。関節部や兵装を見る度息を漏らしたり“美しいィ.........”等とぼやく辺りが彼の科学者性と云うか変態性な訳だが、もしも小さな君の相棒に感情が在るならば不憫としか言い様が無い。一通り見終わればふいに君の方へ向き直って一つ目の質問を。)「さてェ.......。ではこの素晴らしいクーロスクン......チャン.......?の能力に就いて問わせて貰おうか。この子は何か異常性を有しているかい?」   (5/9 00:06:23)


飯田 杏.> 
『知道了(ジーダオラ)。歯痒さは在るがァー..........』(自分が円滑な人間関係を築くことに向かない質なのは理解している。だから、君の言葉につまりがあるのも、それを了承する君が変なのも、心のどこかでは理解し、感謝し、それと同時にまともではない、普通ではないことに辟易しつつあった。そういう人間を選んでいるのも彼女自身であり、選びたくないならば自分を殺すしかないという事実から逃げたのも彼女自身であり、彼女がこれに関して口を開くことはないけれど、どうしても。……飲み込んで覚悟して、諦めたことを彼女自身なんども繰り返しながら、それでも普通への、正常への。……なにも嫌わないで居られる心の平穏への憧れは尽きない。わずかな呪いに蝕まれながら、)「うん、よろしく、ゲ……モノコリア。」(パソコンに向かうその背にそう声を投げかけて、鞄の中から小さなカメラを取り出した。) (よく手入れのされた、時代遅れのフィルムカメラ。銀色の光沢は鋭く蛍光灯の光を反射し、グリップのざらつきはなめらかに彼女の手の平に収まった。無遠慮に開かれた裏蓋に容赦なく光は当たり、フィルムはたちまちに露光する。__フィルムは光の当たったところに絵が焼き付くものである。フィルム全体に光が当たればそれは真っ暗に塗りつぶされたキャンバスのごとく、なにも描き出さない死体の瞳に成り果てる。__それを彼女は理解しながら、それでもフィルムが正しく巻かれていることを確認し、満足そうに息を吐く。)(己の世界に没入しがちなのは、きっと彼女らの悪癖であろう。但し、それでも互いが同じなら、それぞれの時間を独立させあえるこの距離感は、幾分か心地の良いものに成り代わるだろう。)『さてェ.......。__この子は何か異常性を有しているかい?』(ぽつりと投げかけられた質問に顔を上げたなら、ゆらりと首を揺らして逡巡する。)「あー……んと、見た目のことで言えば大きさが定まっていない。手の平サイズでも、それなりに大きくもなる。能力でいうなら、誰にも結果を変えられない……ってこと、かな。」
(異常性。異常性なんて、取上げればきっといくらだって見つかるはずだ。だって、この世界そのものが異常でしかないのだから。__説明は、多く。)「能力で……例えば、銃弾の軌跡をねじ曲げる、という能力を使われても、こいつの銃弾は曲がらないし、銃弾が当たらなかったという事実改編も受けない。……まぁ、当たったところを修復されれば治るし、当たらなければ意味なんてない、けど。」「あ、……そうだ、その。……一つ、ワタシもお願いしても、いいか。」(付け足すようにおずおずと、彼女は迷うようにひとつ君に、歩み寄る。__彼女だって、何かを呪いたくて呪っている訳ではない。このままで良いとも思っていないし、それでもこれを治す手立ても、それに見合う手間を飲み込む理由も見つかっていないけれど__否、きっとこれはただの気まぐれ、だけど。)「よかったら、一日に一枚、写真を撮らせてくらない、かな。……とくに、意味は無いのだけれど。」   (5/9 00:52:33)


Gaill Monochoria> 
「Hah、ファーストネームよりセカンドネームの方が好ましいかい?じゃ僕ァキミをアンズチャンと呼ばせて貰おうかね。」「冗談、ジョークだジョーク。まァ当然!僕をゲイルと呼んでくれたって良いしセンパイと呼んでくれたって構わんがね!!!」(また(頼りない)腕を広げては横目で君を見て。さながらエンターテイナーの自己紹介。.....実情はキレイでもなけりゃカッコ良くもない英雄様(笑)なのだが。)(嗚呼、きっと悪癖だ。君の相棒を観察している間、傍で起きた瞑目に同じ暗闇の撮影に気附けていないんだからね。没入したら退くか叩き起こされる迄世界が其れ一色に染まってしまう。逆説的に人間は自己の視界を染め上げられてしまう。悪く解釈すればバイアスであり、良く解釈するならば其れはきっと愛だ。)「ほォ、サイズは可変か.....小さくなったらさぞかし愛嬌があるだろう。なんてったって既にカワイイ。」(反射光を鈍く放つ其の機体を撫でながらもう片手でスマホに入力して。)(そして。)「ほう.......?」(更に興味を惹かれたのはもう一つ。改変を、改編を受けない、〝不変〟を纏ってイーコールを砲煙と成す銀の弾丸であると云う其の事実だった。)「ふむふむふむ........!!!僕のレッドドアとの競合が気になるな.......色々と試したい所だが.........」「......流石にやめておこうか。条件一つ変える度に命を懸けてちゃ身が持たん。悪運が強くはあるのだがね」(楽しそうにレポートを書き込んで行く分には良い。が、証明論を出すのに命をチップにしなければならない仮説ばかりが並んでいるのは少々おっかない。)『あ、……そうだ、その。……一つ、ワタシもお願いしても、いいか。』「Natürlich(勿論だ)。」(小さく笑いながら“きっかり三つで頼むよ。”なんて冗談を。)『よかったら、一日に一枚、写真を撮らせてくらない、かな。……とくに、意味は無いのだけれど。』(貴女が言い終われば、彼はきっと目を丸くして少し静まるだろう。ただ、あまりにも意外だったから。ちょっとすればぽかんと開けた口を戻して、)「こりゃ予想外だ。」「.....ふふ、良いだろう。なんてったってキミの前に居るのはクールでスマートな科学者だからな。存分に撮りたまえよ、イイダチャン。」(“なんなら決めポーズのオマケでも付けてやろうか?”なんて言って。)「......おお?そりゃオールドタイプかい?フィルム式とは粋なモン持ってるじゃないか。浪漫が在って好きだよ僕ァ」(今になって君の手元の小綺麗な写真機に気附いて。つかつかと寄っては興味深そうに見て、それから素直な賞賛、と云うよりは単純に好みで在る事を告げた。)   (5/9 01:48:19)


飯田 杏.> 
「…………機会があったら、勝手に見てみたら良いんじゃないかな。」(君の小さな想定に小言を返しながら、画面を滑る君の指を眺めていた。ほそっこく、頼りない四肢に似つかわしいその指は確かな意思をもって賑やかに動く。優雅(?)に悠揚に、滑らかに零される言葉節には似合わないそれは、じぃと見つめていれば全く別の生命体のようにさえ思え、そうっと目を逸らした。) “きっかり三つで頼むよ。”(君のその言葉に返答に窮しながら曖昧に小さく笑って、まずお願いを一つ。)「決めポーズは……しても良いけど、あんまり、かなぁ。」「いい、でしょ。……現像はしないんだけど、なんか、ね。」(本当は、あんまり楽しく談笑……なんて、するつもりはなかったのだけれど。調子に乗せられるままに微笑を浮かべながら言葉を返し、相槌をうち、合間にチラリと君を見た。不安定で折れそうな、崩れてしまいそうなその様相は、有り余るほどの熱を帯びている。それは探求の熱か、それとも元々こういう性分なのか。……嫌悪感というよりは、ほんの少しの戸惑いと怯懦でもって、彼女はそっとカメラを置いた。)「みっつ……じゃあ、そう、だな。」(自分が君に願うくせに願われると思ってなかった、なんて言うのは馬鹿らしいだろうか、なんて。ほんの少しほぐれた感覚で思考をゆるりと巡らせたのなら、一つ、先から気になったことを。)「君は、その……そうだな、どこの…………。んん、その、国……は?」(君の先からの話す言葉には、いくつかの言語が混じっていた様に思う。全てを聞き取れた訳ではないし、音声だから本当に言語が違うのか、単純に彼女自身の知能の問題なのか、彼女自身に判別はつけられない。…………彼女自身の抱えること。日本名に異国の容姿、言葉の壁、血の話。国籍、言語、彼女自身になんらかのしこりがある状態で不用意に尋ねるのは憚られたが、特段他に君に__第一、他人に__興味の持てるものはないし、(偏見だけれど)特別きっと、そんなことを気にしてナイーブになることはないように思うから。)(投げるだけ投げて、返答を貰ったのなら、彼女は頬杖をついては君の目を眺めてこう言うのだろう。)「ふたっつめ。……次は、君の番だ。」   (5/9 02:25:19)


Gaill Monochoria> 
「HAHA、言った手前アレだが僕も気恥ずかしくて出来んよ」(なんて笑いながら言って。勢いばかりは良いがカートゥーンアニメの様に崖を飛び出してから空を翔て戻るなんて事は出来ない。本気でリクエストされていたら大変困っていたが紙一重、首筋に伝う冷や汗を確りと感じられた。)「分かるよ。持論だが〝なんか良い〟ってのは非常ォーに大切だ。非常に。曖昧なままの愛だって価値在るモノさね」(其れから貴女はまた意外にも“三つ”の言葉に乗ってくれて。彼は相手が寄らないならば別にそれはそれで良いとする人間である、が想像よりずっと弾む話に心地の良さを感じないと言えば其れは嘘になる。あくまで楽しいモノは楽しいモノだ。)『君は、その……そうだな、どこの…………。んん、その、国……は?』(これまた予想外だった。恋バナの次くらいには予想外で。けれどもきっと興味津々!と云う訳では無いであろう事は彼も解って居る。ただ、ちゃんとしたと言えばなんだか変だが、投げやりで適当な質問で無かったのは少し喜ばしい事に感じられた。)「ふむ。僕もあまり詳しく解って無いのだが北米やら中国やら辺りの血が混じってるらしい。ま、今じゃ意味を為さん区切りではあるがね」「言語に関しては僕ァ孤児でね。孤児院に居た色んな人間に影響されてこうなったのさ」(人によってはかなりヘヴィーな内容なのだが当の本人は至って明るい。実際気にしていない。)「ターン制か。Goodだ。」「ではァー........」(また顎に手を当てて。)「イイダチャンや」「....キミは不変が好きかい?....それとも変化が嫌いかい?」(広義には大した違いは無い。だが彼等適合者にとって、其れは何か大切な違いだ。と、彼は考える。)   (5/9 02:55:04)


飯田 杏.> 
「なるほど」(やっぱり、なんて。想像通り、気にも留めないように明るい君の返答に小さな頷きと、ただそれだけのピリオドを返す。コメントも感想も、彼女にしてみれば君の情報に必要はなかった。君はそういう生まれで、そういう人間で、そういう事情がある。彼女はただそれを了解し、承知し、理解した。)瞬きが、三つ。(嗚呼、___普通、こういった場合にはなにか声をかけるのかもしれないね。一般的にありふれていない生まれの人間を尊重したり、哀れまずとも、どことなくばつの悪い感覚を謝罪によって溶かそうとしたり。それとも、敢えて気にしないふりをして、わざとらしく何でもないように振る舞って見せたり、なんて。……気にしたところでキリなんてない、もし本当に気にしていないのであれば、こんな思考など、彼女は捨てるべきなのだ。__それでも絡まり、解けないのはきっと。きっと、彼女が一人で立つその普遍の、否。不変の孤塔の骨だからだ。)(自分のルーツを呪いながら、それでも自己を保つ為に自分のルーツを愛して守る、なんて。)瞬きが、二つ。(さて。)『イイダチャンや』(君の唇から溢れたその言葉は、容赦なく彼女を見、射止めた。窓の外の雲は大気に揺らぎ、沈み掛けの陽光を隠し一時の藍をもって理科室を包む。反射していたクーロスの体は泥のように鈍く主さを増し、寂しげにきゅる、とその関節を小さく鳴らす。)「……随分と、んぁ、いや」(早いね、なんて言おうとして、彼女はその先を適当に誤魔化した。__彼女らは、学園の生徒は、良くも悪くも普通の人間ではない。それは彼女の様に、君の様に、見た目がどうだの、性格がどうだのの枠組みなんて関わらず、だ。そんな彼らの、唯一と言ってもいい共通点。それは、ディスコードを__世界との不和を、抱えていることだ。それ故、とも言えるかも知れないけれどね、なんて小さく心で嘲りながら。彼女は、)「ワタシは、そうだなぁ」 瞬きが、ゆるりと、一つ。 「……ワタシは、日常をアイしているよ」(_____わずかな逡巡、小さく飲んだ息は何れ。) 「君……は、さっき言ってたっけ?探求……がどう、とか。」(へら、なんて薄く笑って口角を横にひきながら、三つ目の質問を探そうか。)(知られたって問題はなかった。今更揺れるようなものではきっとないし、知ったところで君がどうするとも思えない。こんな小さな嘘に意味はないし、第一意味なんて彼女からしたら大して変わらない。これから空間にいさせて貰うのだ、無駄な詮索、探り合いなんて煩雑だし、そんなもの一気に済ませてこれからを極力無関心へ昇華してしまえたら、__そう思っては、いたのだけれど。小さな反抗心は、ちいさなちいさな矜持のためか、それとも。)「じゃあ、こっちから三つ目。……君は、普段ココで何をしているの?」(今度はこちらから、君の裏側を覗くように。挑戦するように上目遣いで笑いながら、そんな問を投げてみようか。)   (5/9 20:34:26)


Gaill Monochoria> 
(遮光カーテンが空に降りた。然しそれはショーの始まりを意味しない。机を焼く陽光と一時のお別れ。蛍光灯の静音でも鳴っていればまだ此の理科室は物寂しさの一端を捨てられていただろうか。LEDは音も熱も無くただ白く部屋を照らす。雲が青を薙いだ空の灰白と、無機質の電灯の白色と、言葉の凪いだ彼と君の空白で。素材の違う白の顔料を混ぜて成したのは、言わずもがなのグリザイユだった。)『……随分と、んぁ、いや』(静寂を切り裂いた、と言うには随分ゆるりと。ティッシュが水に解れて破けて行く様な。そんな柔らかさで滲んで、味気ない無色透明の白線は綻びた。)(男は小首こそ傾げてみせるが、それ以上の詮索はしない。)『ワタシは、そうだなぁ』(瞬きはショーの開演を待つカウントダウンだろうか?答えはきっとNOだ。此の寂しくて温くて静かな理科室にそんな激動は相応しくない。そうだろう?)『……ワタシは、日常をアイしているよ』(藍に覆われた白を滲ませて滲ませて、それから貴女は一滴の嘘を垂らした。)「ほう。」「これはまた.......」「.......今日一番の、予想外だ。」(君の相棒を舐める様に見ていた間に何時しかずれていた眼鏡の位置を直した。)(ニヒルな笑みは変わらず。“今日一番”だなんて言う癖して、全く変わらずに。)「ではココに通うのも“日常”の一部にしてくれるのかね?クク、キミの素晴らしき相棒が見れるならば願ったり叶ったりだ」(変わらず軽口を叩いて、可愛らしい音を立てる機械仕掛けの尖兵に目を遣ったり。)「んン、僕ァ科学を愛してる。それ故の探求心さね」(その言葉は嘘なのか。本人すら知覚出来ていない本質が別に在るだけなのか。兎角、分厚い雲の渦巻く脳内を明かす術なんて在りはしないから。3カウントに入らない小さな質問は其処で終わりだろう。)『じゃあ、こっちから三つ目。……君は、普段ココで何をしているの?』(少し。上目に彼を見据える其の双眸に少し、先刻迄とは違う色が宿った様な気がして。)(男は笑った。)(また悪っぽい笑みと共に、蛍光色の瞳は貴女を見据える。)「ククク.......ラストは随分とシンプルだねェ、イイダチャン。」「只管に研究だよ。僕ァ科学を愛してる。」「解は飛んで来る程優しくないからね。こうして僕の人生を費やさなきゃ何も得れんのさ。」(其処迄言えば、また変わらない怪しげな笑みを湛えた彼が居るだろう。)(.....或いは一瞬、ほんの一瞬だけ、伏せた瞳の中に藍色を宿した彼を見れただろうか。)(飄々と、其の科学者は君を見る。)「ラストターンだな......」「ふむ。」(細い指を二本立てて。)「二つに一つ。“yes”か“no”だ。」「キミは。」(あくまで、全く変わらない調子で。)「キミは、今日の中で一つでも僕に嘘を吐いたかい?」「ノーコメントはなるべく遠慮して貰いたいがァ......」「あくまで質問だ。嘘で応えて貰っても構わない。」   (5/9 21:26:19)


飯田 杏.> 
『……今日一番の、予想外だ。』(君の言葉は藍も変わらずに窺えない。胸の内側の瓶の底、一歩飛ばしで抜かれるような違和感は健在で、君はそれを自身で知覚しているのか、それとも狙ってやっているのかは分からないけれど。彼女にただ出来るのは、そんな君の薄い病的な白い肌に、わずかに歯を立ててやるだけだろう?)「そう、だね。だってここは『月火水木金土日“変わらず”年中無休。』.....少なくとも。“君”が気絶でもしない限りは休みナシ、なんでしょ?」(君の軽口にそんな返歌を返したのなら、背もたれのない理科室の丸椅子に座ったままにくるりとその場で一回転。体が硬くなってしまわないよう、その場の空気が地に落ちすぎてはしまわないよう、時折かき回さなければならないのもまた、変化を呪う彼女の日常の一つであった。__否、これはただの気まぐれの日常だ。沈殿を常とした方が楽なのは自明の理で、わざわざ宙に浮いた状態を常とするのは、きっと誰が見たって馬鹿らしいことだろう。__きっと数年後にでも今日のことを聞かれたなら、彼女は笑って返すのでしょう。「君の前だったからね」、なんて。)「解、か。」(奥底まで覗きたがる君に、精一杯の虚勢を張って賢く澄まして見せれば、その分君はより早く、彼女の底へその指を届かせることだろう。)「じゃあ、ワタシも多少なり、君の手伝いでもしようか。……といっても、ワタシの手の届く範囲の話、だケド」(そんなことを言いながら、彼女は君の三つ目の問を聞き届けてからにまにまと唇を薄くひき、笑って見せた。彼女は確かに君の藍を見逃さなかった。見逃さなかったからこそ、彼女はそうやって、無知な蛙のふりをしてやろう、なんて決めたのだ。あぁ、ほら。あんまりにまっすぐなものを見ると、__不和からの恨みなんかよりも、汚してしまいたくなるもの、ですから。)「機械に似た質問をしたら、思考が止まってしまった……みたいな、似たようなものがあったような気もするな、コレ。」「ほら、“この命令を拒んでください“、みたいな、ね。」(右の人差し指と左手の人差し指。自身の肩ほどの高さにまでその先をあげ、彼女はくるくると回しながら、いくらか饒舌な様子で、そんなことを述べ始めた。) 「ワタシが嘘をついていなかったとして、それともついていたとして、答えはどう……、どう、なんだろうね? 嘘を吐いていないのに、Yes__嘘をついた、という嘘を吐けば、コレは実質嘘ではないような気もするし、でも……あぁ、ふふ、んー。」(楽しそうに薄い笑みを浮かべながら、彼女は関係のねじれたそんな話を持ち出しては、「こういうのは苦手だ。君はいくらか得意そう、だけど」なんて君を見た。嘘を尋ねる質問なのに嘘を君が許可しちゃあ、それこそ意味が無いんじゃないのか、なんて。それでも君には彼女自身の計り知り得ない意図があるんじゃないかと畏怖を込め、それでもその下で蛙を気取って笑って見せた。丸椅子の支柱に自身の足先を絡めながら、彼女は机上のカメラを手に持ち、そのまま何も断ることなく君に向けてシャッターをおした。)「ふふ、嘘は吐いたよ。このカメラ、動くけどフィルムがダメで映らないんだ。だから、写真を撮らせて、なんて言ったけど、とれてないんだ。」(かしゃ、ジー。フィルムの巻かれる音に笑みを乗せたなら、そんなごまかしの答え合わせを。どう、驚いた?なんて、今度はいたずらっ子のように君を見上げて、笑ってみようか)   (5/9 22:14:53)


Gaill Monochoria> 
『そう、だね。だってここは「月火水木金土日“変わらず”年中無休。」.....少なくとも。“君”が気絶でもしない限りは休みナシ、なんでしょ?』「........Hah、こりゃ一本取られたね」(打てば響く、と言うには音は微かかも知れないけれど、ささめき位の音だって此の空間には丁度良くて。そして、彼としては十分に愉快なモノだった。だから笑って、両手をだらりと挙げて“参った”のポーズ。白色は、それこそ雲みたいに淡くても柔らかい雰囲気に変わって。色の本質は変わらずとも、その小さな寒暖の差が心地良く感じられた。)「ではまァ、ヒーロー〝R/SE〟、キミの日常を守る為体調には気を付けてやろうかね」(だから、だからこそ軽口を変えずに。調子を変えずに。ニヒルを崩さずに。)(数年後も此のぬるま湯の愉快さに身を浸けてられるなら彼はきっと、笑いながら今日の事を訊くだろう。)『じゃあ、ワタシも多少なり、君の手伝いでもしようか。……といっても、ワタシの手の届く範囲の話、だケド』(..........)(今度こそ。今度こそ、男はきょとんとして。)「キミは。」「......キミは本当に僕を驚かせてくれるな。」「ックク、全く印象深い一日だ......そうそう今日を忘れずに居られる自信が有るよ」「....なァ。」「“助手クン”?」(眉を上げてにっと笑う。ドヤった様な笑みは癖らしく、まあ彼の言動にはぴったりと言えよう。)「......と言っても、キミはそーでも無かったりするのかな?」(飄々とそんな言葉を紡いで。)「変わらず残って居たら嬉しいねェ」(なんて。冗談なのか本心なのか。鋼の機体を撫でながら。)(男は貴女の本心に気附かずに。蛙をそのまま愛でるのです。自称クールでスマートな科学者は随分抜けていて、駆け引き下手な所だって在りますから。)「ふむ.....変な所で博識なのはお互い様かね。」「ステキな思考の展開じゃあないか。案外駆け引きじゃあ僕が負けちまったりしてね」(冗談粧して言うのだけれど、実際お互い勝敗知らずの内に貴女が一勝しちまってるものだから、案外冗談じゃ済ませられないのが彼の彼たる所以であって。)(君がカメラを向けて、彼はギリギリカメラ目線が間に合ったかどうか。そんなタイミングで鳴るシャッター音。そして。)『ふふ、嘘は吐いたよ。このカメラ、動くけどフィルムがダメで映らないんだ。だから、写真を撮らせて、なんて言ったけど、とれてないんだ。』(いたずらっぽく笑って見上げる君に男は微笑んで、息を吐いて。)「カッカッカッ!!!!随分ヤリ手じゃァないの。これで二本目だ」(本当は三本目なのだがそれは言わない御約束。)(一通り笑ったなら、ゆっくり踵を返して。)「ああ、驚いたよ」「侮れんな、イイダチャン。」(ぼそっとそう言って。また三つの液晶とキーボードへ向かっていく。これからレポートの推敲だ。足取りは少し軽かった。)(淡くて、奇妙で、ぬるま湯で、でもほんのりあったかい気のするような。そんな理科室の二人ぼっち。新たな不変の日常なんて矛盾っぽい文字列だけれど、きっとヒトの本質はその葛藤みたいな狭間に在ったり。無かったり。)(少なくとも、沈み切る手前、山の陰に削られて一筋の線となった陽光が理科室に影を作って。その影は、二人ぼっちを包んでいた。)   (5/9 23:06:45)

八雲 錐> 
「(じとじとと、むせ返る暑さを伴って雨は降る。びちびちと水溜まりは雨を弾き、深さを増して溢れアスファルトの隙間にしみ出していく。ばたばたと、屋根上に溜まった水が、重みの中塊になって落ちていく。)…寮までって結構遠いんだよなあ。(校内にて、今日は図書室に寄っていった。没頭癖の悪いところだ、今日の雨は特にひどい。折り畳み傘だとかそういうものを忘れた日に限って降りだしたり、まあよくある話だ。寮までなど5分10分といったところだが、できればもう少し雨足が弱くなってから、なんて呑気にしていたら結局悪化してしまって。)はあ、どうしたもんかなあ。(考えあぐねる。こんな時間に返る人なんかなかなかいないし、時間を潰すにもゲームをダウンロードするなんて概念、彼には縁遠いものだったから、そんな類いはスマホの中に入っていない。)いつ止むかもわからない、じゃあなあ…(…そういうわけで、スマートフォンで雲の機嫌空模様までもを見られるち知らずに。スーツの中に湿気に包まれあてられそうなほどの熱と汗を含んだまま、学舎の入り口で彼は佇んでいた。)」   (5/15 00:25:58)


飯田 杏.> 
(彼女はいつにも増して不機嫌であった。) 「……、」(春をやや過ぎた、梅雨にもならない狭間の時期。季節の移り変わるこの時期は、季節だって流れやすい。変化が常に起こる時期、と日常を広く捉えれば彼女の常は犯されずに済む……とはいえ、細やかな日々の変化を見過ごすのは、やっぱり少し、難しい。鞄の中に放置された折りたたみ傘は久々の役目を喜んでいるようにも思えるし、そんなこと気にもならないとすましているようにも見える。どちらにせよ、彼女にとって何より煩わしいのは、見過ごすことの出来ない変化が、彼女の生活圏を犯してきたことだ。)「_____あの。」(化学室の帰り道、普段は人が殆ど居ない学舎の入り口に、君は一人佇んでいた。だぼついたシャツは雨のせいか生来か、こころなしかしっとりと雨に濡れ、たれているようにも見えた。)(彼女が君に声をかけたのは、今がきっと、“今の日常”が始まってから初めての珍しい大雨、だったからだ。)「その、ちょっと、ちいさいかも、だけど。入る?」(彼女は変化を呪っている。日常が犯されるのをおそれ、ルーティーンを崩すことを厭う。ただの気まぐれで“誰かを傘に入れる”なんていう非日常は犯さない……の、だけど。今日はそもそも、世界に日常を犯されてしまったのだから、こんなこと、きっときっと彼女にとっては些細なこと。_____なんともならない悲劇に見舞われた人間を見捨てた、という彼女のなかの自身像を傷つける行為を厭んだだけだ、と言っても、そう変わりはないだろうけれど、それでも。)(彼女は君に、黒い、汚れの目立たなそうな折りたたみ傘を差し向けた。風に吹かれて気まぐれに服が濡れる、なんてことがないように、それは彼女の体を大きく覆う程のもの。どうせこの雨じゃあ多少は濡れる。……それなら、君を一人いれて、少し多めに濡れるくらい、“常”の範疇に収まる。……多分。)   (5/15 00:51:05)


八雲 錐> 
「(ざあざあ、びちびち、ばたばた。雨の音は忙しなく、汗ばむ暑さがより耳をくぐもらせて、意識を鬱屈に霧で包む。…そしてそれらを貫いた、掛けられる幼げな声に彼は振り返った。)あ、はい。(君8との出会いは、実際に他人であるから当たり前なのだが、少しだけ冗談っぽく他人行儀な敬語の返事をした。)…そうだなあ。(折り畳み傘、の大きさと、降り荒むスコールの滝を見比べながら。)…うん。折角だし、入れてもらおっかな。(相手をできる限り濡らさず歩くことはできるくらいの大きさだろう。別に一寸も濡れる気がないわけではないのだ、ただこのまま走り抜けるとなると、距離が遠すぎるというだけの話。)ありがとう。(とにもかくにも、君の中にどういった思惑があろうとも、この雨の中を濡れ雑巾のようにならず帰路につけるのは、奇跡のようなものだ。)あー…どっちが持とっか。僕は屈めるけど…高い方がいいなら持つよ。(傘を受ける身なのだから、せめてできる限り雨の脅威から君を守らねば。なんて。)」   (5/15 19:56:55)


飯田 杏> 
(他人行儀の、“初めまして”らしい君の言葉に小さく眉を反応させながら、彼女はそれでも気にしない、ふりをした。初対面、はじめまして。確かに君のそれは合っていて、間違ってなど一つもない。……それでも、それは彼女にとって厭わしいものでしかなかった。)(初めましては一回目。いつだって、なんだって代入出来るnが良いのに、断定はあんまりに困るんだ。傘をもたげ、君の入れるように持ち上げながら平然と君に声をかけた。)「そう、だね。“いつも通り”、君で頼むよ」(初めましての、自分よりも幾分か屈強な男性。素性も知れず、君がどんな人間かも分からないのに、この土砂降りのなかではほぼ密室とも見紛う傘の中に入れるのは、きっとそれなりにリスキーだ。……それでも。)「じゃ、よろしく。」(彼女は君に傘を手渡し、旧知の仲の如く肩を寄せた。跳ね返る雨はひたひたと靴下を濡らし、傘の表面をひたりと伝う。柄漏した雫が君の手をしっとりと濡らすことでしょう。張られたシールには“飯田杏”と名前が刻まれ、またその先にはちいさな星形のチャームがついている。つるりとした表面には一切の傷がなく、丁寧に使われているのが分かるだろう。)「……今日の雨はまた、一段と酷いね。これじゃあ、予報の意味が無い。」(そんなことを言いながら、彼女は君に合わせて踏み出した。14歳の少女らしい小さな体躯は君とひたりと寄り添えばきっと傘の範囲からはみ出ることはないだろう。“初対面”でも“既知の級友”でも当てはまるような話題を適当に選びながら、彼女は小さくあくびをした。)   (5/18 17:58:21)


八雲 錐> 
「いつも…(通りって、と問おうとした。何か忘れていることがあればそれはより逆鱗に触れることとなる。忘れるようなら関係は作っていなかったはず…だが。疑念は残るばかり、しかしそれを問うにはまだ、彼から見た君には『距離』があった。)…うん。(結局、女性に対して否定をするのは何かしら憚られるような気がして、君にとってはいつも通りである道をとにかく行こうとした。手渡された傘をできる限り君に寄せながら、しかし接触が多くならないように。)こ、こちらこそよろしく…?(しかしやはり、正しい受け答えというものがわからないから、)」「(接触が多くならないように、なんて気を付けている合間に、君はもう懐へ入り込んでいた。それだけで認識が混迷して、少しばかり心が暴風に吹かれる。)ぃ…っ!?(…と、まあ。見てわかる通り彼には女性経験などありはしない。大抵のことで挫けたりはしないが、女性関係だとそうともいえないかもしれない、といった具合。相手の容姿が幼かっただけまだマシだ。)………そうだね。(息を落ち着かせる。)雨は、嫌だね。じめじめするし、濡れるし。予報外なほど嫌なことはないよ。身構える暇もないからなあ。(会話をする分には簡単だ。以前は濡れる雨も嫌いではなかったのだが、目の前で人が死ぬのを見た経験はやはり堪える。まあ今や暗くなっていてもしょうがないと、空を見上げた。)ん…へえ。(びちびちと。手も靴の中も少しばかり濡れながら歩くが、星がひとつ煌めいていた。)でも、この傘があれば、こんな空も楽しいね。(きれいな星が、小さな傘の空の上。)ふぁ…(『夜空』を見ていたものだから、)…感染っちゃった。(あくびをもうひとつ、並べた。)」   (5/18 18:23:52)


飯田 杏> 
『雨は、嫌だね。じめじめするし、濡れるし。予報外なほど嫌なことはないよ。身構える暇もないからなあ。』(君の言葉に頷きながら、彼女はそっと耳を澄ます。隣にいる君は変数X、きっとだれでもいいもの。彼女は“君”を見ない。彼女は日々を見ない。この日常の縁をなぞるだけに躍起になって、彼女は臆病に目を逸らす。…………ただ、)「……、ふふ、」(それでも、ほんのちょっぴり君の反応がおかしかったから。近寄ると怯える(?)ようなそれは、彼女からしてみれば年下の男の子のうぶな様を見せられるのは、若干の嗜虐心がくすぐられていけない。雨音に滑り込ませるように笑みを零し、彼女はよろめくふりをして君にまた肩を寄り添わせる。)「雨の音は、耳を塞がれてるみたいだからね。……眠くなる、の……も、ふふ、しかたない。また感染っちゃった、ね。」(きみの言葉に返していれば、またあくびはこちらにうつる。浴槽にぎゅっと目を閉じてもぐったような、思考を暖かいものでふやかされてなでつけられたような、そんな感覚。世界に閉じ込められた、たった一点の夜空の下で、微睡むような空気が一つ。)「……あぁ、そうだ。いれてあげた礼にひとつ。お願い……もとい、約束を一つ、いいかな。」(宿舎までの道は遠いようで短い。もっとも、誰かと話す分、雨で人が少ないぶん体感ではいくらか早いけれど、それでも雨は遠近さえも狂わせるモノですから。会話が得意でない彼女は、ほんの少し満ちた静寂を誤魔化すように、そんな提案を君に持ちかけた。)「今日みたいな。“突然”に、“予報外れ”の“大雨”が降ったとき。……また、こうして帰れない、かな。」(それはきっと、君にとっては奇妙なお願い。それでも、彼女にとっては大切なもの。なんだって彼女は“変化”を恐れているのだから、変数Xがころころ変わってしまっては苦しいのだ。彼女は君を、八雲の顔をしたからのぞき込むようにして、じっと君を見つめて返事を待つ。)(彼女の取り巻く日常の縁に、どうか君を、組み込みたいのだけれど。)   (5/18 18:56:38)


八雲 錐> 
「ちょっと、もう…(からかわれるように笑われると、縄のように絡まったものもほどけてしまう。うざったいような言葉を出しながらも顔はちゃんとはにかんだ。寄せられる肩に、雨に濡れた金髪が雨粒の形を見せながらつやと輝き揺られる。)…もう。(半ば諦めるような様子で、彼はそんな風に素っ気なく、同じ言葉を繰り返した。照れ隠しだ。耳たぶはやはり赤くなりつつある。)じゃ、欠伸しないもんね。(怒ってるわけじゃないと示すためにか、それとも照れ隠しを隠すためか、あるいはその両方か。冗談のように拗ねる表情を見せれば、)なんて。(まあ、両方だ。また笑って見せた。)雨の夜は眠たくなっちゃうよね。湿気は怖いなあ、夜更かしさせてくれないもん。(緩んだ表情の中で、気を抜けば出てしまいそうな欠伸は、やはりあくまで抑えて。)びしょ濡れのまま家に帰ったら、風邪もひいちゃうだろうし。…きっとまた、折り畳み傘も忘れちゃうだろうなあ。(微睡みの中、君に語りかけるような独り言。)」「…だからいいよ。(そして、独り言は君に語りかけ、少しばかり微睡みを破るだろう。)その約束、受けてしんぜよう。(けれどしかしまっすぐに受けとるにはやっぱり恥ずかしくて、ふざけた受け答えで。それでも、大事なそれを受けとる意思は強くあって。)…あ。(…そんな風に肩を寄せあって話していれば、時はすぐに過ぎ去った。ばたばた、と、寮の屋根に雨の跳ねる音。)ありがとうね。助かったよ。(別れの予感に、傘を君に手渡し返す。)助かったついでに。僕の名前は、八雲 錐って言うんだ。(名乗りを共に引っ提げて。)傘から名前見えちゃったから。僕も教えないとなって。(きれいな星に指を差して、公平性の説明なんかしつつ。)じゃあ。また、こんな雨の日に会おうね。(そして彼は、別れの挨拶に手を振った。)飯田さん。」   (5/18 19:52:53)


飯田 杏.> 
(ぽつり、ぽつり。君の話す言葉は、柔らかい霧雨の日に溢れる露草の雫の様に、穏やかで甘い。晴れの日ならきっと柔らかく受け止めて、その温度に浸るのでしょうけれど、こんな大雨じゃあ、君はまるで荒野に落ちたひな鳥のようで。)「ふふ、助かるよ、少年。」(ふざけて返す君に合わせ、ほんの少しふざけながら笑って見せる。正面から顔をのぞき込むことなどしないから、彼女は君の横顔しか知り得ない。大雨、冷たく濡れる靴下、黒い折りたたみ傘、肩の温度、それからちいさな星も添えて。君の形をそれらと丁寧に縫い合わせ、彼女は一つの日常の形をなぞっていく。こんなのがどうか、変わりませんように、なんて。大事に大事に記憶の引き出しに押し込めて、見え始めた屋根への足取りを確かめる。)(いっぽ、にほ、さんほ。)『ありがとうね。助かったよ。』(それから、)『僕の名前は、』(なんて。予期していなかった君のその回答に目をぱちくりとひとつ瞬かせ、それから一つ、小さな笑いを零したでしょう。)「____うん。じゃあ、またね。八雲くん。」(変わらない日常を締めくくるように、彼女は、初めての定型文を口にして手を振った。手持ちにのこるじんわりした君の体温を確かめながら、どうかこれも、消えなければ良いと願いながら。)   (5/18 20:41:00)

芦宮 心良> 
「___そこ、どいてもらって良いかな。(日が沈みかける夕暮れ時に、校庭の端っこに居た少女に声を掛ける。飼育小屋の中身を食い入るように覗いていたので、少しだけ躊躇したけれど、勘の良い人でなければ気付くことも無いだろう。驚かさないように、声のトーンを落としてこう続けた)・・・新入りの送迎を任されてね。ちょっと失礼するよ。(君が小屋の前から少し退けば、左手に持っていたケージをそっと小屋の中へ入れて、その鍵を開けよう。)」   (5/19 20:23:24)


飯田 杏> 
(今日もまた、非日常。)「ぇ"……なんでワタシが。」( 飼育小屋なんて、入学してから1度も足を運んだことがなかった。否、厳密に言えば入学当初にちらりと様子を見に来たのだけれど、日々のルーティーンなど持ち合わせない動物の気まぐれさがどことなく嫌で、ここを避けた記憶がある。だから、極力近付きたくはなかったのだけれど……、隣の席の飼育係が風邪なんかひいたというのだから仕方ない。ただでさえ欠席のせいで教室の景色を変えやがったのに、代わりまで回ってくるなんて聞いちゃいない。彼女の呪う変化に見舞われた一日に彼女は深くため息を吐き、それでも先生との付き合いを変えたくないがためにこうして指示に従った訳だが______)「どうぶつ、いいもんかな。…きまぐれヤロウめ」(一通り頼まれた仕事を終えてから、彼女はぼんやりと飼育小屋の中をながめた。その広さに似つかわしい体躯をひこひこと動かしているのはどこか遊戯らしさを帯びていて、それでも変則的なそのリズムに、彼女はそっと眉を顰める。)「……今日は、非日常。そういう、日。」『___そこ、どいてもらって良いかな。』(ぶつぶつと小さく自分を納得させていれば、彼女の背に声がかかった。)「っ、わ、ゴメン。……………ナニを、している、?」(慌てて体をずらし、君の邪魔にならないところに身を寄せる。もう仕事は終わっているし、帰っても良いのだけれど、せめて帰寮する時間は合わせたい。これから化学室に言ってしまえば今日が非日常であることを、きっと彼女は証明できやしないから。暇を潰すついで、観察ついで。何やらケージを片手に持った君の動向を伺いながらその様に適当な推測を立てれば、彼女は小さく顔を顰めた。)「…もしかして、新しいのが増える、のか。」(新入りの登場は、良くも悪くも喜ばしいことである筈なのに、彼女は信じられないとかぶりを振った。ありえない、そんなことをしたら"変わってしまう"のに、なんて。君の背後でぶつくさ文句を言いながら、彼女は視線を君にさす。)「…君は、飼育係、とか…なの、かね。」   (5/19 20:37:15)


芦宮 心良> 
「(さて、ケージの中から現れたのは茶色い毛玉であり、いわゆる兎だ。それも、若々しく元気な奴のようで。ケージのカギを開けるや否や勢いよく飛び出し、新しい環境を見回していて。最悪の場合ならば、ケージの中から掬い上げ無ければならないかなとか考えていたけど、その心配はなさそうだ。空になったケージを回収し、そっと飼育小屋の扉を閉める。)『…君は、飼育係とか…なのかね。』__あーいや、ただ頼まれただけ。(先程、飼育小屋を眺めていた生徒に尋ねられた質問へ、そっけなく答えよう。そして、彼女のどこか憂鬱そうな態度を見て)・・・君も、そんな感じっぽそうだね。動物が苦手とか?(一般的な推測を立ててみよう。君も同じように頼まれて飼育小屋の面倒を見に来た、それは君が動物が苦手だったから。どうだろう、当たっているかな)」>杏君   (5/19 20:48:16)


飯田 杏> 
『__あーいや、ただ頼まれただけ。』『・・・君も、そんな感じっぽそうだね。動物が苦手とか?』「んー…………近い、ケド少しちがう。」(あぁ、なんて小さく安堵の息を吐く。これで君が動物を愛してなんていたのなら、彼女はたちまち異端になる。__頼まれただけ。__なんて、僅かな空気の隔たりが見えるその距離感は彼女にとって幾分か心地好く、強ばっていた表情を幾らか崩しながら、慎重に息を吸う。)「そう、だな…………強いて言うならこいつが、きらいだ。」(彼女がそう言って指を刺したのは、君が先程放したばかりの茶色いもふもふのうさぎの子。先程まで何もいなかったその地に足を着け、新しい獣の匂いをその空間に漂わせる。ヒクヒクとその鼻が動く度、その毛並みが揺れる度に空気は揺れ、伝播されたように周囲の兎はピクリとその身を反応させる。)「空気が、乱れる。………今まで通りにはいかないのか。…新しいものなんてなくたって、変わらなくたって、いいんじゃないのか。」   (5/19 21:00:57)


芦宮 心良> 
「(・・・なるほど。兎というのは環境の変化に疎いとよく言われる。それを憂いていたのか。)___そりゃぁ、隣人が変わるのはストレスにはなるけど、ずっと同じメンツじゃぁ、新しい子が居ないと退屈じゃない?(少しズレた回答ではあったが、君の言うように新しいモノが無くなってしまえば、命の歩みは止まってしまうだろう。変化が無くなれば、命は歩みを止めて、存在する意味も薄れていく。)・・・変化にもきっと意味が有る。彼らの場合は、新しいツガイを生まれさせるための変化。・・・確かに、無理強いてるかもしれないけど、もしかしたらとびっきり仲良くなるかもしれない。そればっかりは、やってみないとね。(君の考え方も分からなくはない。自分に置き換えてみれば、好きな小説家にはずっと同じような世界観を書いていてほしいと思うし、ずっと続編を書いていてほしいと思うことはある。でも、それだけだといつか味気なくなってしまわないだろうか)」>杏君   (5/19 21:16:17)


飯田 杏> 
(くしゃりと、顔が歪む。)「……退屈、じゃ、ダメかね。」(君の言葉に、ぽつり、ポツリと雨を零す。)『・・・変化にもきっと意味が有る。』(__彼女は、変化を呪っている。)(家の環境、周囲の対応。学校、季節、時間、生活。自分は何も変わってないのに変わりゆく世界は、あまりにも容易に彼女を孤独にさせた。変化は新しいものをもたらすけれど、多くのものを奪った。)「、…そう、かね。」(仲良くなれるかもしれない、なれないかもしれない。適当なギャンブルに無理矢理に参加させられている不快感は隠せないし、強制的に揺らがされる不快感も否めない。揺らいで酔ったその吐き気はどこにも吐き出せないままに、彼女は薄く、息をする。)「今がずうっと続く、のも………いいと思うんだ。ほら、その……小学生の頃、楽しかった夏休みが終わらなければー、とか、ね。」(君の同意が欲しかった。自分の呪っているものが肯定されてしまえば、その反対にいる自分が、否定されているような気がしたから。)(未だ定位置を見つけられずにさまよっている茶色の兎はひこひこと動き回り、その身をちゅうぶらりんにさ迷わせている。体育の2人1組、転校したての移動教室。)「…新しい場所に入れられて、この子もきっと。居場所を見つけるのは、大変だろう?」   (5/19 21:40:36)


芦宮 心良> 
「まぁ、そりゃね。立ち止まって、ぼーっとしてるのもそれはそれで良いと思う。(ウロウロしている茶色い毛玉は足を止める。きっと、この仔のように新しい環境へ慣れるまでもがき苦しむような人物は少なくない。自分もそうだったし、今でも同じ環境に居たいと思ってる。けど___)___でも、僕は止まってるより走ってる方が好きかな。こればっかりは好みの話だから、君のその考え方も素敵だと思うよ。(止まってしまえば思考が止まる。眠ってしまえば夢に閉じこもってしまう。そこに意味はあるのか。考えるのをやめてしまえば、それこそ無意味。”我思う故に我在り”、だ。)」>杏君   (5/19 22:00:06)


飯田 杏> 
『___でも、僕は止まってるより走ってる方が好きかな。こればっかりは好みの話だから、君のその考え方も素敵だと思うよ。』(言葉は日と共に傾いていく。暮れかけの日は夕に代わり、底を傾けてその身を零す。)(全てを知覚するのは、他でもない自分自身である。自分の状況を良くないものであると卑下し前進させようとするのも、これで良いとして自身を認め、幸福に浸すのも。人は幸せを願うのか?それとも不幸を願うのか。幸福を願うのなら、今ここで自身をみとめ、幸せに浸って目を瞑っていれば良い。不幸を願うなら、自分の現状を否定しながら自身を変え続ければ良い。___不幸を願って生きるのは、幾分生きにくいものだと、彼女はすこし、思うのだけど。)(両極端な、偏った思考。雁字搦めはそのぶん息はしづらいけれど、揺れる不安定さも、風に吹かれる肌寒さも、感じることはないでしょう。)「____そう、だね。」(ふたりの周辺は夕に染まり、その茜は段々と飼育小屋内を犯していく。真っ白兎も茜に呑まれれば、茶色のそれともきっと見分けがつかなくなってしまうのでしょう。)「あ、の。ごめん、お願いが、その。」(_______体がふわりと浮くような、若干の恐怖心が胸の心に逆立つ。時に奪われていく個性の色にぎゅうと顔をしかめ、彼女はそっと目を閉じた。)「…………、ちょっとで、いいから。どうか、そばに。」(瞼の向こうの強い橙が、いつしかやわらかい闇に染まるまで。彼女はそこでじっと身を固め、自身が消えないようにと自身の腕を掴む。)「そばに、いて。」(君という一人の人間から発される存在の熱に頼りながら、彼女はじっと一人でそこに佇んだ。波打ち際の貝殻が、砂浜にそっと、しがみつくみたいに。)   (5/19 22:22:33)


芦宮 心良> 
「___・・・ん。分かった。(考え方は違えど、頼まれごとを無下に断るというのは筋が違うだろう。ケージを地面に置き、君の横でしゃがみこもう。きっと、この小さな生き物たちが寝息を立てるまで。)」>杏君   (5/19 22:33:10)

イイダ アンズ> 
______彼女は、変化を呪っている。(先日、彼女は欠席した飼育係の子の代わりを頼まれて飼育小屋へやってきた。彼らの日常、彼らの平常を守るべく餌を与え、掃除をし、寝床を整え、それで終わり。……な、筈であった。それは勿論彼女の日常ではないし、彼女の望んだことではないけれど、それでも彼女の呪う変化を、世界の中のたった一つでも減らすことができたのだから、それは彼女にとってはある種一つの正義であった。)「_____ね、新入り君。」(彼女は今、大きめのモッズコートに身を包み、ゴーグルを目にかけている。自分の素性が分からぬようにと深くフードを被り、その中に手乗りサイズのクーロスを携えて。)(昨日、この飼育小屋に新しい仲間が増えた。まっしろ、黒ぶち、薄いベージュ……、今までいた兎たちの日常に落とされた、真っ茶色のちいさなもふもふ兎。今まで均等に与えられていたスペースはそれの為に分け直され、空気は揺れ、窮屈に平常は気圧される。)「君は、ここに、」(いらない、と思った。邪魔だと思った。君だって今までがあったのに、ココに連れてこられて迷惑だろう。ほかの子達だって、こいつが増えたせいで窮屈だろう。)(“何も起きなければ”、こんなことなかった。そうでしょう。)「だから、だから。」(彼女は小屋の扉に手をかけて、ちいさな茶色に手をばすべく息をのんで____)「…………、きみは、この中に居た、子? ダメだよ、“動いちゃあ”」(___傍に佇む兎の君に気が付いて、そんな忠告を一つ投げかける。君が人語を話せるとも、知能が備わっているとも気が付かぬままに、彼女は伏せた瞳をきみにふい、と合わせる。)「お洋服なんて着せられたのか、可哀想に。ほら、……おいで?」(兎の“常”に、お洋服なんて不要でしょう。おいで、君の常を守ってあげる。なんて、歪んだ正義を彼女はその指先にひたりと這わせ、君をあやすように指をかるく遊ばせて見せた。)   (5/20 23:06:12)


Walter=Von=Neumann> 
「……あちら。」(やや渋い声は何処からともなく聞こえてくる。…否、きっと君はその声の持ち主を彼であると知りたくなかっただけだ。気付きたくなかっただけだ。そう、考えたくなかっただけだ。君が指を振れようとしたタキシードを着込んだアナウサギはふいと顔を逸らして花壇の方へと顔を向ける。)「…あちらに、沢山蜜があるそうですよ。」(彼の視線を追えばその先には確かに花壇と色とりどりに取り揃えられた花々が並んでいるだろう。しかし、彼の視線を読めるならば、その瞳に映っているのはその花壇と彼の丁度中間で旋回と切り返しを一定間隔で繰り返す蜂の姿だ。)「………蜂はああして8の字に空中で舞いながら仲間に餌の場所を教えているそうです。物質的で表面的な部分から得られる情報は少な過ぎる。言語学とは内包される意味を紐解く学問だと私は認識しています。」(唐突に人語を介し始めた彼は何の脈絡も無く語り、そしてまたも唐突に、)「____________がァ、がァ、がァ、がァ、がァ、がァ、がァ、がァ、…!」(彼は痰が絡んだような引っかかるガラガラ声で濁った奇声を発するだろう、否、それは、言語である。)「……君は表面的な形に囚われ過ぎている様に見えます、 " 師 " としてひとつ、気付きを与えて差し上げましょう、人間。」(何の脈絡も無いその奇声は彼を気狂いにすら映すかもしれない。だが理解できないという事はつまりそういう事だ。そうあるべき形は君の思う通り確かにあるだろう。しかし、そうあるべき所以も考えられなければその行動はきっと意味を為さないのもまた然りという物だ。)>アンちゃん   (5/20 23:46:48)


イイダ アンズ> 
『……あちら。』 (ぱちくりと、瞬きをひとつ。どこかからか彼女の鼓膜を揺らしたその声は、緩やかに空気にそっと溶け込んでは低く穏やかにそっと響く。暮れなずむ橙にあてられた君のその衣装は鈍く照り、それに目を奪われていれば幽かに動いている君の口元に気が付いた。) 「……へ、」(まさか、まさか。あり得ない、と願いながら君の向く方へ視線を投げれば、音の囁く内容と確かにそれは合致する。)「キミ、は……、」(まじまじと、君の話す内容なんかよりも“人語を話す君”という存在に囚われ、彼女は呆然と君を見やる。確かに、イーコールに侵蝕されて人間らしい体を持たずに人語を話す者は数多い。それにしたって、ここまで完璧に、否、(服を着ている以外は)ありのままに兎の体を成したままというのはきっとなかなかに珍しい。興をひかれれば無意識に姿勢は前傾になり、彼女はそっと顔を君に近寄せる。短絡的に目先を奪われたままに、君の小さな口元が音に合わせて開閉されるのをじいと眺め__) 『____________がァ、がァ、がァ、がァ、がァ、がァ、がァ、がァ、…!』 「……っ、な、ぅ、」(ば、っとその身を引き離し、彼女は慌てて耳に手を当てる。怯えるようにクーロスはフードの裏にひょいと隠れ、髪の隙間からそろりと君を伺っている。)(彼女は訝しむ様に君を見て、それから。……、それから、何でもなかったように、彼女は再び君の体に手を伸ばす。)「……ワタシは、キミを師だとした記憶はないケドなぁ。ワタシは、言語学には精通していないし、する気もない」(『言語学とは内包される意味を紐解く学問だと私は認識しています。』_____だから、なんだというのだ。言語に意味はあるか?否だ。全ては受け入れ手の脳内で構築されるイデアに過ぎない。イデアは揺らめく影のように日々姿、形を変え、全ての変化をその身に宿す。彼女は変化を、その揺らぎの根本を呪い、避け、殺し、また__。)「うーさぎくんは、どうしてこんなの着てるんだ。もふもふが窮屈じゃない?」(ひとりごとのように彼女はそう口ずさみながら、キミの衣服に手を伸ばす。呪いに犯され、蝕まれはじめた辟易し、灯火が揺らぐのを酷く恐れて縮こまる。 意味の無い表層を捨ててしまえば、その深層さえ伝わることはないというのに。)   (5/21 00:21:50)


Walter=Von=Neumann> 
「カカカカカッ…ええ、そうでしょうとも。君の様に出来の悪い弟を持った記憶は私にもありません…カカカカカッ……言語学は素晴らしいですよ、今まで理解できなかった不規則的な欠片から規則性を導き出してその真意を私達に教えてくれます。…カカカカカッ……」(それは、笑い声などではなかっただろう。まるで喉の奥で石を打ち鳴らしているかのような、硬い何かを小刻みに弾き合わせるような、そんな不気味な音だ。彼にとってはそれは声なのだろう。だが君にとってはただの音だ。笑い声という短絡的な意味すら持たない効果音に過ぎない。気付いているだろうか、君とそして彼を、君が今まさに手を伸ばしていた飼育小屋を、黒い何かがいつの間にか包囲し始めている事に。それは、____________カラスだ。カカッ、と短くまるで彼の効果音を真似る様にカラスたちの群れは鳴き、何かを知らせてくるだろう。それが好意的な物でないことだけはその勢いで理解できるはずだ。そこでようやく気付くはずだ。カラス達が彼の真似をしているのではない。)(__________彼が“群れに語り掛けていた”のだと。)「きゅぃ………、その理由も、 今 に 分 か り ま す 。 」(彼はマントで自身の体毛を身体を隠しながら持ち前の跳躍力で地面を蹴れば、ガシャンと君の頭上を掠める様に跳び、飼育小屋の金網を蹴り更に高く飛び上がるだろう。それを合図にカラス達は一斉に君へ、そして金網の中のウサギたちへと襲い掛かる。ウサギたちは既に彼が小さく鳴らした喉の音を聞いて飼育小屋の奥の方へと非難していたはずだ。君は、この場で何を理解するだろうか。) >アンちゃ   (5/21 00:35:43)


イイダ アンズ> 
「っ、…………わぁ。」 (彼女に君の真意は伝わらない。君の言葉の受取手は彼女じゃない、どうしようもない世界そのものである。彼女は君に、君の言葉に合わせて柔らかく脳の口を開き、君の言葉を飲み込もうとする意向など示しやしないだろう。) (彼女は胸くそ悪そうに顔をしかめ、周囲に集まり始めたカラスたちを侮蔑したように眺めた。かか、かか。君のけったいなそんな声に呼ばれたのか知らないけれど、誰かの言葉で自分の行動を変えてしまうような能なしが、彼女は嫌いだ。__彼女の呪う変化もまた感情の一つであるから。流動体の如く、だがそれでも水槽の中に留まって、時折彼女の全身を覆い隠す。__頑迷に目を凝らし、彼女は緩やかにその塊を飲み込んだ。) 「……、なに、っ」(彼女はただぼんやりと、飛び上がる君を眺めては息を吐いた。それに合わせて襲いかかるカラスに生理的な恐怖をわずかに示しながら、それでも彼女は、)「ぃ、……っ、」(何も、しなかった。) (頭上から落とされた小石を受けてよろめき、また後頭部を足で勢いよく蹴られたとて、彼女はなにもしなかった。)(__呪いはまた、揺れ、その光源の位置が変わったのならまた都合の良い変化を起こす。__そんな自身の感情さえ、ぐずぐずと呪いながら。その爪が彼女の肌を抉ろうと、彼女はただそれに喘ぎながら、よたよたと飼育小屋に近づき、金網のなかにその身を滑らせていく。)「わた、シのことに、変化は、ない。……し、せかいのことにも、変化は、ない、よ。」(カラスが群がり、小屋の奥の小さな隙間に避難した兎を追い立てているその一点へ、彼女もまた手を伸ばす。)「いいか、都合良く……、相手が、君の言葉に耳を貸すと、思うな。弟子じゃあ、ない。」(そうだろう、なんて小さく嘲り笑いながら彼女の腕はカラスの体躯より幾分か細い。それこそ、兎の逃げ込んだ隙間に差し込める程度には。)「意思あるほうが、待つのは。……、それは、おかしなことだよ、兎くん。」(彼女は手を伸ばし、その中からひときわちいさな茶色の毛玉をひっつかみ、そのまま無防備に小屋の中央へぽん、と放るだろう。__カラスの標的は兎も含まれていた、そうだったよな。)   (5/21 01:06:16)


Walter=Von=Neumann> 
「__________ッ_____がァあ"ッ!がァあ"ッがァあ"ッがァあ"ッがァあ"ッ!!!」(彼は一際激しく喉が焼け爛れたかの様な声を張って群れを威嚇する。否、それは彼らにとって退避の合図だ。その声を聞いたカラス達は蜘蛛の子を散らす様に、はたまた砂の城が崩れ去る様に散開していく。それらを見届けてはケホッ、と削れた喉の粘膜の違和感に咳を零して君を睨むように見つめる。)「………到底、芯の通った意志とは思えませんね。君のその行いは…変わりたくないと駄々を捏ねて周りを捻じ曲げているだけに見えて仕方ありませんよ。」(小屋の中央で小刻みに震えている彼女を抱き寄せて、きゅぃ、と小さく喉を鳴らしながら優しく抱き締める。怪我は浅い、化膿する心配も、きっと無いだろう。)「そんな我儘を押し付けられて変化を飲み込むしか無かった者達がどれだけ日常を歪められるか、どれだけ想像力に乏しい人間でも、どれだけ共感性に乏しい君でも、理解の余地はあるはずですが、……それともそれすら思考するのを辞めますか?」(彼女をそっと飼育小屋の中へとおろせば懐から乾燥ニンジンパウダーを擦り込んで作られた人型クッキーを彼女の前にそっと置く。彼女、と呼ばれたウサギはやっと落ち着いたのかそれをもそもそぱきぱきと頬張り始めるだろう。)>アンちゃ   (5/21 01:29:04)


イイダ アンズ> 
「_______はは、」(彼女にとっちゃあ、君の方があんまりに滑稽で馬鹿らしいというに。)「変わりたくなんてない。キミだって、変わりたくないなら、変わらなければいい。キミが“勝手に”、ワタシに合わせて変わったのを、ワタシのせいに、しないでくれるか。」(キミの言葉に彼女は小さな失笑を零しながら、そんな言葉を口にする。それはきっと大衆の前じゃあ賞賛なんてされることのない独善だけれど……、独善の、何が悪いというのだろうね。彼女の幸せも彼女の善も、彼女にしか為し得ないというのに。)(彼女は自身の行動を変えなかった、自身の不変を肯定した。その代わり、世界の……、カラスの行動を、キミの行動を肯定した。やめろと声を荒あげることも、振り払うこともしなかった。彼女の提示した条件の価値は等しいはずだ。自分はこうする、キミも同じように、なんて。ゆるやかな同調圧力はふわりとその力を抜き、輪郭をとかす。)「“飲み込むしかなかった”、」(嗚呼どうしよう、キミはあんまりにおかしいことを言う。被害者感情に酔って相手を悪者にして、自分の悪い境遇を相手のせいにねじ曲げるなんて、ああ、本当にご立派なものだ。)(キミを被害者に、キミを“可哀想”にしているのは、ほかでもないキミだと言うに。)「変化を飲み込むしかなかった……いや、違う筈だ、“考えたら”どうだ。……ほんとうに、飲み込むしかなかったのか? 違うだろう。キミは、飲み込むことを選んだ筈だ。」(皮肉なこと。キミと彼女は悲しいほどに真反対で、恐ろしいほどに似ているの。彼女だって、……彼女だってキミとおなじように、変化を呑まされる苦しみを知っているというのに。)(弱さは、責任の方向をねじ曲げる。かつての彼女が世界に牙を向けていたように、……あらがえない世界に牙を向けたって無駄だと知って、自身に牙を向け、世界を嫌わぬようにと飲み込んだように。)(世界の認識はその当人の頭の中で起きる。それならば、世界を変えるより、自身の認識をねじ曲げた方が、幾分楽だ。そのはず、じゃないのか。)「じゃあキミがワタシにつけたこの傷は、どうしよう。なぁ」(爪やくちばしの抉った皮膚はじわりと血を滲ませ、それをみて彼女は泣きそうな顔でへらりとわらってキミに一歩歩み寄る。)「……、キミは、何をワタシにいいたかったの。」(その声は、迷子のちいさな、女の子のように。)   (5/21 01:58:16)


Walter=Von=Neumann> 
「___________私が、いつ誰の我儘を ” 飲 み 込 ん だ ” って……?」(嗚呼、それはあまりにも悪手だったのだろう。ひりひりと焦げ付く様な空気はあまりにもヒーローに似つかわしくない。変化を呪う君が発起させた変化はあまりにも、あまりにも汚らわしい物だ。) 「……あまり、怒らせないで頂きたい。歯止めが……利かなくなる。」(この小さな牢獄で何も出来なかった彼が、何を飲み込んだというのだ、何も出来なかった彼が何を飲み込んだというのだ、何を選択したというのだ、何度だって思考した、何度だって、何度も、何度も、そう、何度も何度も、何度も考えた。 " 彼女 " を救う方法を何度も思考したんだ。何度も、何度も、…何度も、何度も、何度も、何度も、君達に出来た筈の事が出来なかった彼が、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、地面から解放され器用に動く腕がある君達に出来る筈だったことを、彼は__)(何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、思考したのだ、重力に縛られ意志を伝える事も出来ないその喉を呪いながら何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、君達には在ったはずの言葉も声帯も無く何が出来るか、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、)(何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、______________________それを、飲み込む事を " 選 ん だ " ?)「どれだけ惨めで矮小な自分を甘やかして足を止めようが地べたを這い蹲ろうと勝手ですが、…そんな汚らわしい価値観で、爛れた役立たずの手で、誰かの足を引っ張るのはおやめなさい。………これは忠告ではありません、…命令です。自分の機嫌を取れずに駄々を捏ねる人間がどれだけ周りの人間にとって不愉快で害悪か、……“考えなくたって分かる事”でしょう。」(式を閉じるにはまだ早い、と判断したのか獣らしく君の口を塞ぐ事はしなかった。きっとこの世の人種の中で彼は君の様な人間が最も嫌いなのだろう。我儘で幼稚で周囲を巻き込みながら癇癪を起して叱られても怒鳴られても自傷の様に喉を枯らして泣き喚く様な"脳"無しが。出来る限り感情を抑えて、ふぅ、ふぅ、と鼻を鳴らしながらどくどくと不愉快な程に脈動する体中の血管に意識を向ける。抑え込んだ憎悪は呪詛とも呼べるだろう。彼はそのまま飼育小屋の金網から出てはタキシードの干し草を払い小さな身体に比例する小さな足でA棟の中へと向かう。君の様に思考を辞めて腐りきった死体に掛けていられる時間は無い。腐敗臭を払うにはいつもより多く茶葉が必要になるだろう。_________彼は、)_____________彼は、思考停止を呪っている。   (5/21 02:30:17)

Walter=Von=Neumann> 
(たった1日の間で彼に何が遭ったのかはきっと誰も語らない、ご多分に漏れず彼自身も、その身体に巻き付けられた包帯と添え木の理由は誰にも口にはしないだろう。手足の骨が折れてしまったせいで清潔感を保つのは一苦労だ、そんな状態で君を呼び出したのは屋上である。あまり他人に聞かれたくない話ではあるし、風通しのいいこの場なら風に掻き消されてそう遠くまで二人の声は遠くには響かないだろう。だからこそ君を此処に呼んだ理由としては十分だが長い階段を上り続けるにはとても対価として相応しくはないとも言える。)「……こんにちは。良かったですね、今日は日差しも温かい。」(屋上にて彼はガーデンテーブルとガーデンチェアを用意し、ちょこんと腰を下ろしていた。椅子はもうひとつ、それは君の席なのだろう。テーブルの上には乾燥ニンジンが練り込まれたクッキーと紅茶のティーセットが用意されている。冷めない様に携帯ランプが置かれ優しい炎がティーポットを温めながら揺れている。)>アン   (5/22 17:59:14)


飯田 杏> 
(___本当は、来るつもりなどなかった。彼女の冷えた思考にも、彼女とキミが水と油なことは明白だった。きっと決定的な部分で、彼女とキミは食い違う。それをすりあわせるような気概も、そんなことをして得られるようなメリットも、彼女は持ち合わせてはいなかった。)「…………ソーダネ」(良かったですね、なんていうキミの言葉に潰れた返事を適当に投げる。キミの用意した椅子は、キミが先に腰掛けていたせいかおもちゃのセットにも見え、腰掛けるのには幾分勇気が要った。キミの用意したクッキーもその紅茶も、ガーデンテーブルもガーデンチェアも、キミが一人で用意するには幾分骨が折れそうだ。キミが口にしているのを見れば“ウサギ用”のそれにみえる。)「……で、何の用、なの。」(拭いきれない違和感を隠すこともせず、眉をじとりと顰めながら、彼女はカップにそっと手を当ててその温みに心労をうつした。)   (5/22 18:15:45)

Walter=Von=Neumann> 
「……思考とは答えがあろうと無かろうと必要な事です。故にこの世には哲学があり、さらには思慮を皆求める。とどのつまり解を導き出すというのはあくまで目的達成後の付属特典でしかないのです。何が言いたいかと云うと、考える事は理解しようと努力する事であり何かを確定的にそして固定概念的に縛り付ける者ではありません。私が昨日君にしようとした事は理解ではなかった。……私はもっと考えるべきだったのです、君を理解しようともっと深く思慮と思考と想像と推察する必要があった。それを僕はただの思考停止だと決めつけて君を傷付けて、頭ごなしに否定してしまった。あの場で何も考えられて居なかったのは私の方です…ですから、先日の件、本当に申し訳ありませんでした。」(彼はシルクハットをまだ動く片腕で外しては胸元に抱いて君の表情を見上げた。そう、今回君を此処に呼んだのは謝罪と理解の為だ。言語とは何のために在るか、それは互いを理解する為の物だ。誤解を解く為の物だ。自分はそれを何かを読み解く為にとばかり活用していたせいで本質を見失っていたのかもしれない。)「……それは食堂の従業員が作ってくれたものです。好みは別れるでしょうが、人間も食べられる味ではある様ですよ。どうぞ、召し上がってください。」(見るからに自分に敵意を抱いている様に思える君がわざわざ自分が淹れた紅茶と自分が用意したクッキーを食べてくれるかは分からないが、別段許して欲しいと思っているわけではない、自分の罪を一方的に償いたいわけでもない、ただ理解したいのだ。少なからず理解しようとしたいのだ。しかし奈何せん、彼が言語野を獲得したのはつい最近の事だ、あまりにも経験値が少なすぎるが故にコミュニケーション能力が乏しいのだろう。いくら頭が良かろうとも彼がこの先に紡ぐべき言葉を理解しているとは限らない。人間とは全く違う表情筋を持っている彼の表情を読み取るのは人間の君にはあまりにも難しいだろう。それは今の彼にも言える事だ。人間の人間たる人間らしい表情も感情も性格も心理もそこまで詳しくなんて無いのだ。だからこそ、彼は君と交わす必要がある、悪意や憎悪や呪詛ではなく、単純な “ 言葉 ” を。)>アンちゃ   (5/22 19:29:52)


飯田 杏> 
「……、ふむ。」(シルクハットが除けられれば、さらりとした頭髪がゆれ、幾分かその耳の付け根が露わになった。人間の耳はなだらかに顔に張り付いて、そこから寄り添うように、また突然変異のような奇妙さをもって曲線を描く。それがどんなふうに機能しているのか、全く想像も出来ない厚みや湾曲を持っていて、それはまるで神様が人間を作ったときに立ったひとつだけアクセントにいれた、例えるなら、そう、キミのその“言語”のような。__まるっこい頭から跳ねるキミの耳は、どうやってそこにそなわっているのか。……なんてふと、気になったのは、ただの気まぐれの筈だ。)(彼女はキミの瞳に視線を返し、またキミと同じように、否、幾分か不器用にその髪をがしがしと掻きながらぽつりと謝罪をくちにした。腰をずり、と椅子に落ち着け、行き場を失った左手を机の上に無為に放る。)「……そう、だね。きっとワタシも、キミの言うみたいに意固地になってた所はある。ワタシも、悪かった。……これで元通り。で、いいね。」(だから、それから。)(理由のない仲直りは存在しない。気に入らなければ視界に入れぬよう相手を自分の世界から消してしまえば良いし、自分のイデアの揺らぎをある程度コントロールしてしまえば良い。とどのつまり俗っぽい言い方をすれば、きっとコレは歩み寄るための……、なかよしこよしの為の会合なのだろう、なんて。)「……条件が、ひとつ。」(会合、なんて厭らしい堅苦しい、見下した言い方さえすれど、それを厭うているわけではない。確かに多少気に入らないところはあるけれど……、それをキミに露わにするには、キミのその怪我を見てしまえば幾分難しいことだった。彼女もまた人だ、昨日のような“自身の正義のための攻撃”以外で誰かが自分のせいで怪我をしたのかもしれない、となれば多少の罪悪感は湧く。多少の柔らかさと申し訳なさ、温みをもった滑らかな音を、零しながら、彼女は三つ、指を立てる。)「……ワタシは、自分のルーティーンを壊されたくないんだ。だから、また今後こういう話し合い……のようなものをするなら、その周期を時間を一定に整えてくれ。それから、……それから、一日に質問は三つまでにしてくれ。いいか、1つでも、4つでもだめだ。必ず、3つ。」(それから、)「ワタシは、飯田、飯田杏。好きに呼んでくれていいが……、態度を変えることは、出来る事ならしないでくれ。」(彼女は一方的にそう条件を提示する。それは、彼女が人と時を過ごすための、日常を変わらずに過ごすための、最低条件なのである。彼女からキミとの交流をもちかけた訳ではない、受け入れられないならばそれまでだ。)(キミが条件を呑んだのなら、彼女は「よろしく。」とだけ言い、クッキーを一つ、くちに放り込むことだろう。)   (5/22 19:57:07)


Walter=Von=Neumann> 
「ヴァルター・フォン・ノイマン…諸君らで言う処の20代後半という年齢に該当するでしょう。……まず、私は何も考えずに既存の固定概念や集団心理に流される骸の様に生きるのも、そういう人物を視界に入れるのも反吐が出る程に不愉快です。けれど、君の信念は流されるだけの能無しのそれとは違う様に思いました…時間をおいて冷静に考えれば、ですので、やや気付くのに遅れてはしまいましたが。……一つ目の質問についてはそれにしましょう、【君が変化を忌避するに至ったロジカル】を聞きたい。」(君の条件に頷いてから自己紹介を交わして、温かな紅茶へと手を伸ばして口元まで運べばまずはその香りを楽しむようにゆらり、ゆらり、とティーカップを揺らして目を瞑る。落ち着く為に、思考を巡らせるために、やはり紅茶は良い、君との訪問をどの時間にするかは未だ思案の余地が有る。毎日君に会わなければならない理由なんてこちらには無い以上、毎日のように君に時間を割く事はあまりにも徒労だ。故にまずは君と会う日程を固定する前に君と毎日のように顔を合わせる理由が彼には必要だった。)   (5/22 20:11:43)


飯田 杏> 
『……一つ目の質問についてはそれにしましょう、【君が変化を忌避するに至ったロジカル】を聞きたい。』「……ええと、ね。」(キミの話は簡潔で早い。洗練されたような的確な言葉選び、射貫くようなその在り方はどことなく威圧感もありこそすれ、それでも彼女にとってそれは幾分か心地好かった。なれ合いは嫌いだ。仲良しこよしも友達づきあいも色恋も、変わりうる、感情によって成り立っている関係性はなんだって。徹底的に感情を排除したような、人間のもつ感情をひとつのアイテムとしてみるようなそんな温みのない感覚は、それはきっと大衆のそれにはそぐわないのでしょうけれど、それでも。彼女はいくらか落ち着いたような深い息を零し、紅茶にひとつ口を付けた。)「嫌う理由なんていくらでもある。さっきも言ったけれど生活が他人の変化に影響されるのは気にくわないし、単純に変化で起きること……良いことも悪いことも、ストレスだから。単純に、それに弱いのもあるカモしれない?」(嫌いな所はいくらでもある。否、嫌いだからこそ、嫌いな部分は多く見つけ出せることでしょう。あら探しは皆得意だ、嫌いなものならなおさらに。)(ただ、それはきっとキミの求めている答えとは違うのではないだろうか。ゆるりと視線を湯気に託し、そっと、そっと息を吐く。自分の生きに揺られる湯気に酷い罪悪感を抱き小さく喉をしめながら、彼女はそっと視線を逸らす。)「……ちがうな、ええと。」(答えをひとつ、あらためよう。)「……なんだろうね。疲れた、んじゃないかな。立派な人間じゃあないからね、頑張るよりも諦める方が楽なのさ。世界は変わる、それは還られないし、ワタシはそれにうまく乗っかれなかった。何故か、なんてワタシが知りたいけど、それは大事じゃあないね。……自分の無力感に嘆いて自分を嫌って生きるより、世界を嫌って自分を愛した方が、ワタシは幸せだ……と、思う。ワタシを幸せにするのもワタシを愛するのも、ワタシしかいないからね。」(自分の弱さなんて、さらけ出したくない人間が殆どだろう。彼女だってそうだ。……ただ、君の前では、ちょっぴり違う。キミは彼女を、感情をとして見ないだろう。なんて彼女はたかをくくり、また先日と同じように、彼女はちらりとキミを見る。)「だから、ワタシはキミが馬鹿らしく見える。なんでそこまで頑張ろうとする。自分を呪う。」

「……生きづらく、ないの。」   (5/22 20:41:16)


Walter=Von=Neumann> 
「……なるほど。よく覚えて置きます。」(彼は君の回答を聞いてからやっと紅茶に口を付けて、一息ついてからそんな言葉を添えるだろう。理解したか否かではなく、覚えて置く。それはいつかそれを理解できるタイミングが来た時の為に保留にしておくという事。心に留めて理解できる機会を積極的に探すという彼なりの返答である。)「私は、…見ての通り、ただのアナウサギです。だから諸君らの様に器用な真似は出来ませんでした、ほんの数か月前まで。……だからですよ、私にはもう無能なただの動物だったからなんて言い訳が出来ない。君達が半年前、セブンス・イクリプスで何人もの人々を見殺しにしたのを見て、私は諸君らが無能だから誰も救えなかったのだと結論付けました。そうして…自分が救えなかった何かの責任を転嫁して楽になりたかったのでしょう……昨日の君への態度がまさにその一端です。」「しかし、それは言い訳に過ぎない、……私はもう失いたくなんて無いのです。そういう点では君に同意できます。今まで当たり前にそこに在った日常をただ守りたいのですよ。きっと生き易い処世術なんてものは存在しないのでしょう。…私には君の方が生き辛く見えていますから。」(彼はそう応えてはそーっとティーカップを置いて、クッキーへと手を伸ばして口元に運べばポリポリと小刻みに噛み砕きながら構内へと運ぶ。人間と比べれば小さな口では咥内に放り込んで咀嚼するのがどうにも難しいから、やや無作法かもしれないけれど、それでも最低限のマナーとして食べこぼしが殆どない様に気は付けている。君にそこを注意されるとは微塵も想定していないけれど。)>アンち   (5/22 20:57:09)


飯田 杏> 
『よく覚えておきます。』(屋上の空気は穏やかで、軽い風が肌をなぞる。今日の空気は質が良いらしい、シルクの様な滑らかさがふわりと香り、そっと柔らかく髪を揺らす。猫が蝶に目を奪われるようにふい、と目を空気中に伝わせて空を見た。雲は思っているよりも早くキャンバスを滑っていく。ここから見れば指でなぞれば容易に追いつける早さなのに、それでもその早さはあまりにも圧倒的で、足下がふわりと浮き立つような恐怖がある。あぁ、でもそれでもいいのかもな、なんて思いながら、再びキミに視線を帰した。)(キミの独白は紅茶に溶かす砂糖にはならない。飲み込むには、流し込むにはそれは溶けきらないざらつきを残すし、紅茶の風味を邪魔してしまう。それでも。)「……言い訳、だめなもんかな。」(それでも、そのざらついた食感も、その癖の強い苦みでさえも、甘い紅茶に合わせるには、きっと丁度良いものじゃあないかしら、なんて。)「言い訳、って言えば言い訳だけど、事実を正しく認識できているとも言える。キミは“蟻”じゃあない、“ただのアナウサギ”なんだからさ。」(言葉は、きっとほんの少し残酷で冷たいけれど、二人の関係性なら、これでまぁ。)(__優しくしてやるつもりなんてないし、なかった。ただ、彼女がキミにそんな言葉をかけたのは、きっとキミと彼女の根に横たわるものがきっと似ていたからなせいだ。自分ときっとおなじ、世界に的確に、丁度良く適応できなかった者同士。彼女が塔に諦めたその場所にしがみつこうとするキミを見ているのは何だか馬鹿らしく、また羨ましく、……ほんの少し、自身の悲願を、託したいとも願うから。)「等身大を知りなよ。……とか、ワタシは思うけど、まぁ良いんじゃない。ワタシも多分、低く見積もってる部分はあるし。」(ぽろぽろとキミの小さな口から溢れるクッキーを見て、彼女はポケットティッシュを取り出して机上に、一枚をはさ、と机に広げた。クッキーを3枚とり、その上に載せたなら、彼女はそのうちの一つを軽く割って、そのうちの小さなひとかけらをぽん、と口に入れた。)「ワタシの厭う変化、っていうのはそういうのもあるんだよ。自分の実力を測るのも、期待するのも落ちるのが怖い。だから、先に底辺に落ちておく。それならもう痛くないし……、とか、ね。」(小さく自嘲するように笑いながら、キミの口の大きさに合うような大きさのかけらを選び、彼女は手に持ってキミの口元に差し出した。上品で紳士らしいキミは厭うかも知れないけれど、彼女はキミの反応をじいと見て、キミが食べてくれるのを待った。)「その怪我じゃあ、食べにくいでしょ。はい、あーん。…………ワタシのせいのだったら、ワタシの責任、だしね。」   (5/22 21:31:54)


Walter=Von=Neumann> 
「……確かに、高く飛ばなければ落ちる事は無いですから。」(それもそうだ。期待し過ぎればそれだけ痛みが伴う。そもそも期待だなんて言葉は無責任すぎるのだ。予想外の出来事を前に被害者面する為だけの言葉にしか彼には捉えられなかったのだ。だから、だからその点は君と同じだろう。痛みを負いたくないから、歩まない者と、痛みを負いたくないから前傾姿勢でも足を前に出し続けてただ転んでいないだけの意地っ張りでしかない。根本は互いに同じなのだろう。受け止められないから、進み、受け止められないから、沈む。)「おや、アンズ嬢、“こういう変化”は…構わないのですか?……嗚呼、ではこれを2つ目の質問にしましょうか?」(君に差し出されたクッキーにきょとんと眼を見開くが、なんだかその変化にも思える行動がほほえましく思えてしまう。グレーブ・マーカー、もといシオン嬢の云っていた彼と君の世界の境界線、それらを受け入れて肯定するのもきっと良いかもしれないという話。何とは無しにそれもまた良いのかもしれないと思えてしまった。それを自覚しない為か、大きく口を開けて、唇で君の手元からクッキーを奪い取ろうとするだろう。)>アンちゃ   (5/23 22:24:06)


飯田 杏> 
『おや、アンズ嬢、“こういう変化”は…構わないのですか?……嗚呼、ではこれを2つ目の質問にしましょうか?』(キミの口の中に収まっていくそれを見ながら、彼女は顔をそっとしかめた。)「……キミとこうして話すこと自体が非日常だし……まあ、多少の変化だからあんまり嬉しくはないけれど、まぁ。……そうだな、ワタシなりの適応、というものだよ」(言葉に迷うように視線をゆらゆらと揺らしながら、クッキーを一枚手に取っては口の中へ。それからまた再び、小さなかけらをキミの前に差し出した。)「ワタシたちがヒーローになるのは確かな異変で……、それでもワタシは今はそれを日常として受け入れている。それはその日々が繰り返されて日常になるからで……」(ぽつぽつと、キミが聞こえるかも分からない小さな声でそんな御託を並べてみようか。いくら呪っているとはいえ、完全にそれを遮断する方法は死ぬこと以外にない。それならば、多少の些細な呪いは受け入れて、目を瞑り、飲み込んでいくしかないのだ。)「その、まぁ。……変化ではあるけれど、コレが大局的に見た日常になれば、それでいい。今後もキミとこうして話すことはあるだろうからね」(彼女とキミの口の大きさに合わせてクッキーを二つ作って貰うにはあまりに手間だろうし、そこまでのこだわりはないんじゃないかと思う。かといって、そのまま食べるには窮屈でしょう。出した条件、この会合の恒常化に彼女が含んだ意味は、とどのつまりはそういうことだ。彼女はわずかな深いに眉をひそめながら、それでもキミが食べてくれるのを待ちながらクッキーを差し出した。)   (5/23 22:42:01)


Walter=Von=Neumann> 
「なるほど、……そういえば、ヒーローとは名乗っていますが、アンズ嬢はヒーロー名は…本名で活動しているのですか?」(3つ未満でも3つ超過でもダメと云われたのを忘れているのか、彼は自然と3つ目の質問を口に知るだろう。特段それほど気に成っていたわけではないはずなのに、ふと思い出したかのように君にそれを質問したのはもしかしたら彼が君と云う存在に何かしら思うところがあるのか、もっと因数分解した表記をするのならば君に関心を持ったのか。もしょ、っとまた君の手からクッキーを口で受け取ればもそもそ頬張るだろう。) 「セブンス・イクリプスがあったように、ヒーローはもしかしたら意図的に狙われて、意図的に消されているかもしれない、それはあくまで仮説に過ぎません。大勢の被害者を出したあの日蝕の七日間の被害者の中に偶然ヒーロー達が全て含まれていたという確率は低いにしろ決して完全に否定できるほどの天文学的確率ではないのです。……君の日常を守る為にもヒーロー名は必要では?」(そんな補足を口にしてから彼は片手で紅茶を手に取って出来る限り音を立てないように一口、味わいながら喉を通すだろう。)   (5/23 23:15:57)


飯田 杏> 
「ヒーロー名は……ん、そうだね。特に考えてない、のが正しいのかもしれない……?」(どことなく空気は体になじみ、椅子に乗せておくだけだった体は癒着したように落ち着いている。暖かい紅茶はカップの半分をとうに越し、暖かかったカップは段々と冷えていく。そろりと、それがそれとも気付かない程に自然に零された問いに彼女は寂しげに目を細め、悩むように、因数分解を怠ったままにそんな柔らかい返事を零す。)「自分で考えて名乗るのはちょっぴりはずかしい……し、さ。あとは、そうだな……ヒーローが狙われた事件なら、ヒーローですって名乗るのもちょっと怖いね。あと……」(出来る事なら、もう少し続いたら良いと思った。と同時に、これ以上は続けたくはない、とも思った。今回を引き延ばせば、きっと次回も、その先もおなじように同じくらいの時間をきっと彼女は求めてしまう。もしそれが苦痛になってしまったとき、そんな未来の苦痛を考えては、彼女は息を飲み込んだ。)「……いや、それだけ、かも。あとは単純に思いつかないってだけ、カモね。」(彼女はそんなふうに、曖昧に笑う。元来彼女のスタンスはこうなのだ。他者に深く理解して欲しいとは思っていないし理解したいとも思っていない。喧嘩の仲直りだって彼女からは申し出なかっただろうし、彼女はキミに多くの理解を求めていない。深く関係を持てばそれに付随する感情は日々変化するし、それは彼女にとっては煩わしい。どうか、彼女からのキミへの関心が透けないように。キミからの彼女への関心が透けないように。)「…………あー……、そうだな。ワタシからも、質問、して良いかな。さっき一個下から、あとふたっつ。」(一つ目の質問を『生きづらくないの、』を据え、ほんのちょっぴりの延長戦。)   (5/23 23:45:37)


Walter=Von=Neumann> 
「なるほど、…あれだけ大きな騒ぎの最中に居ればもはや素性を隠した方が良い様に思えますけれど…」(確かにヒーロー名を名乗ればヒーローであると晒している様なモノである。それは確実だが、今更引き返せやしないのだ。それならば日常的に使用している容姿も名前も隠すべきではないかと思うのだ。彼に関してはそもそもその存在自体が彼足らしめているとも云えるし、寧ろ何を隠しても手遅れだとは思うが、君は違う。君はまだ当たり前の日常に紛れる余地が有るのだ。)「ふむ?良いですよ、等価交換ですね。なんなりと…」(彼は君から質問を返されるのだと理解すれば少し不思議そうにきょとんとしながらも頷くだろう。果たして君から投げかけられる質問はどんなものだろうか。根本は似ているとはいえ、やはり全く別々の存在であり、立つ瀬が同じだろうと向いているのが夕陽と朝陽なのだから、考え方は真逆だろう。そんな君から投げかけられる質問の内容は凡そ推測に難い。やや身構えながら君の次の言葉を待つだろう。)   (5/24 00:02:35)


飯田 杏> 
「えっと……じゃあそうだな、まず二つ目。」(『キミの、されたら厭なことを教えて欲しい。』それはきっと彼女の、最低限の“キミと居るための努力”のつもり。それを完璧に守れるとは限らないし守るつもりもない、彼女が彼女らしく、不変の存在である為であれば、彼女は苦渋を飲みながらでもきみのそれを犯すだろう。それでも、それでも互いが互いを犯さないうちは共に居るこの時間を、どうか変わらない日常を保てたら良いと、思うから。)「それと、これは……質問、というよりお伺いだね。お願い、なんだけれど。」「今日を含めて、今後キミとこうやって話をする最後の時間。キミを撮っても、いいかい。」(そういって彼女が取り出したのは、ひとつの古い銀塩カメラだ。彼女の手にするりと馴染み、鈍い銀色が日の光を反射して___、漸く今頃、日が傾き始めていることに気が付いた。)「ほら、夕景は絶好のタイミングだから、ね。」(フィルムの入っていない銀塩カメラが、何かを記憶することはないけれど。)   (5/24 00:25:33)


Walter=Von=Neumann> 
「私のされて嫌な事、……犬の躾けの様に霧吹きで躾けようとするのは辞めて欲しい、本来私達は体温調節があまり得意ではないのです。それから、耳を掴んだり引っ張ったりするのも辞めて欲しい、前述の通り体温調節が苦手な私達の体温調節器官の一部であり血管が密集している弱点です。あとは子供扱いやペット扱いは辞めて欲しい、私は人間でいえばもう27歳の大人ですから、諸君らよりも年上です。強いて言うなら嘘を吹聴するのも辞めて欲しい、私は諸君らよりも賢いのは確かですが人間の常識を網羅できているわけではないのです。知識と知能は別物である以上、頭脳明晰である者が必ずしも見分が広いとは限りません。それと、私達は基本的に骨がかなり脆いので出来る限り丁寧に扱ってほしい、それがまあ今の私の現状にも通じるのですが。更にあまり汚さないで欲しい、私は自分で云うのもどうかと思いますが多少潔癖です。特に自分の衣装を汚されるのは反吐がするほどに嫌いです。それと努力を否定するのは衣装を汚されるよりも何よりも気に喰わない、それこそ感情制限が出来ないほどに癪に障ります。それと…」「……ああいや、これくらいにしましょう。写真は、まあ、構いませんよ。楽にしていても…?」(カメラを向けられればまたも理解できないのかきょとんと君の意図を推察しながらもポーズ指定までは無いはずだろうと思い、その旨を尋ねるだろう。されて嫌な事を応えろと云われただけでぽんぽんと此処まで思いつく彼が今までどんな目に遭ってきたのかは想像に難くないだろう。特に男子生徒がトイレに行って手を洗った後に水滴を自分の衣服や髪で拭ってきた時は心拍数を秒間65回に変換して血管と云う血管を全て破裂させてやろうかと思った程だ。)   (5/24 00:53:09)


飯田 杏> 
「ふむ……」(要点を押さえる、と言う寄りもそれは思っていたより具体的な事例で提示され、彼女は早々にそれら一つをかいつまむことを諦めては共通項を見出すことに専念した。一つ一つに迎合する気も適応する気も大してない。) 「……それはきっと、ワタシがキミを、27歳の一人の男性……として扱えばまあ、きっと問題はない……、か、な。あと、……その、ごめん。」(ただ一つ、最後の項目に関してだけ、彼女は小さく頭を垂れた。先日の邂逅は鮮烈で、自分に群れるカラスへの恐怖への消耗の生家、彼女は細部までは覚えては居なかった。それでも、自分の中にぐるぐると巡る呪いの感覚をキミに八つ当たるように吐き出したことは覚えていて、それはきっとキミの尊厳を馬鹿にするようなものだっただろう。)「ワタシも、最初に謝るべきだったね。……その、まぁ、なんだ。ワタシの方から言うことじゃあないかも知れないけれど……まあ、その。次からきをつけるよ。」「あぁ、うん。特にポーズは撮らなくていいよ。楽にしてくれていて良い。」(そんなことを言いながら、彼女はキミに軽くカメラを向けてはじり、とピントを合わせてシャッターを切った。ファインダー越に映るキミは夕に照らされ、その赤みがかった体毛は更に赤さを増している。所々にある装飾はつやつやと宝石の様にきらめいて……、どうか、この時間が止まればいい、なんて願ってしまって、彼女はまたそんな自身に顔をしかめた。)(変化を願わず常を記録したがるのならポーズも時間も指定するものなのかもしれないけれど、彼女はそうしなかった。カメラが好きだ、常と特別の境界を曖昧にしてくれる気がする。写真が嫌いだ、そんなことをしたら今が古くなっているのを思い知らされるから。)(じー、かしゃん。巻かれるフィルムは心地好い機械音を立て、また彼女はそれに合わせるように、机上に広げたティッシュとクッキーのくずを回収し始めた。)「……さて、今日はもう、きっと良いだろう。おひらきにしようか」   (5/25 23:24:31)


Walter=Von=Neumann> 
「ん、……いや、まあ、…お相子にしましょう。」(君の謝罪を聞いては柄にもなくへらりと苦笑いを浮かべる。彼が笑うというのはあまりに不自然かもしれないけれど、それでも彼はカメラの向けられていないその瞬間に歯を見せて笑ったのだ。毛むくじゃらな手で口元を隠しながら。)「そうですね…お開きにしましょう。今日は時間をいただいてしまって申し訳ありませんでした。私はもう少しだけ此処で風に当たって行きます。では、また。」(彼はガーデンチェアから腰を上げれば、ティーセットをケースに仕舞い、テーブルもチェアも分解し折りたたんでマントの中へと手慣れた素早さで収納するだろう。その場に置き去りにされた二人から溢れて零れて滲んだ雰囲気を紅茶の香りを楽しむかのように彼はその場に立ったまま、夕陽に照らされ独特のグラデーションを彩った空を眺めるのだろう。本来ならば星が見える時間までそのまま黙って居座ろうとしていたが、君が屋上を後にしようと扉に手を掛けて、きい、と蝶番の軋みを聞いて、ふと振り返るのだ。)「そうだ、…アンズ嬢、_____今回のティータイムを経てひとつ、思いつきました。」(それは、生きる事、生の象徴、それは、彼らが守るべきもの、君が今まさに日常を送っている事、それは、生命を意味するヒエログリフ。__アンク… それは、激流にすら耐え得る堅牢さ、波風に揺られようとも決してぶれる事のない海底の支柱、それは、君が今まさに日常を守る事、それは、その場に留める事を目的とした物質。__アンカー、流れにも、波にも、衝撃にも、風化にすら、耐え得る魂の碇。)    「  魂 の 碇   ( ア ン カ ー ・ ア ン ク )  」    (何度も小さな一歩を踏みしめ続ける勇猛さも彼の思う強い意義を持つ行動だが、決して譲らない、決して動じない、君の在り方もきっと深い意義を持つのだと、理解できたのだろう。だからこそ、彼は君を碇に例えたのだろう。君がどう応えようと、意味深長に笑みを浮かべて、再び視線を空へと戻すのだろう。)「良ければ候補のひとつにでもして頂ければ…」 >アンちゃ   (5/25 23:58:07)


飯田 杏> 
「……あんかー、」  『  魂 の 碇   ( ア ン カ ー ・ ア ン ク )  』  (______彼女は、変化を呪っている。別れ、日常が分岐していく悲しい変化、感情を伴った日常の変化、たとえその変化が喜ばしい吉兆であっても、進歩であっても、幸せに向かっていく為の必要な出来事であっても。それは彼女の平穏を守り、また彼女の激動を縛る。彼女のイデアは風を許さない。たとえその火が風に呷られ、あたらしい酸素を呑まなければ緩やかに火勢を弱め、絶えてしまうのだとしても。)「、」(明確な返事を返さないままに、彼女はそっと乱雑な髪を揺らして踵を返す。銀塩カメラのフィルムの蓋を開け、真っ黒にやけたそれの表面に触れながら、彼女は屋上の踊り場に繋がる重厚な扉を開けては息を吐き、キミに背を向けて微笑んだ。)「……ありがたく、もらっておくよ。こんな日じゃあなきゃ、呑めないだろうし、さ。」(じゃあねウサギ君、また今度。彼女は変化を呪っている。彼女は変化を、呪っている。)「またね。」(彼女は不変を愛している。今日と言う日があることを、彼女はきっと忘れない。今日という日があった日常を、彼女はきっと忘れないだろう。)_____彼女は不変を愛している。   (5/26 00:28:17)

飯田 杏> 
「………キミ。ちゃんと武器は持ったね?」(小手先の対症療法は、彼女は対して好きじゃない。と言うより、疎んですらいる程だった。それでもここに駆り出されているのは、彼女が一人前のヒーローとは呼べないような、一端の学生だから、であろう。)(平穏な日常生活を保ち、先生からの評価を一定に保つには、依頼を断りすぎても断らなすぎても問題がある。頼まれる事に断り、請け負い、断り………法則性を見破られないよう適当に言い訳にランダム性をつけながら、彼女はうまいことやり過ごしてきた。彼女がこんな、気に食わない仕事を請け負い、君と今回チームを組んだのもまた、そんなやり過ごし方のたった一つ。非日常らしいそれであってもまぁ、広義で見れば普遍的な日常のひとつ、と捉えてもまあ問題はないだろう。………まぁ、こんなことが日常になりつつある今は紛れも無い変化の渦中でしかないわけで、それは彼女にとってはまた不快なことでしかないのだけれど。) (彼女は君にぶっきらぼうに声をかけながら、目の前の触手に対峙した。) (寂れたシャッター街の、コールタールの染み付いた路地の奥。1人のスーツ姿の男性は腰を抜かして蹲り、また彼を包むように緑の触手が生えている。)「今回の罹患者は彼…で、そうだな。触手を殲滅するか、彼の相談相手にでもなってやって触手が消えるのを待つか、もしくは彼をここから連れて逃げるか…………まぁ、どんな方法でもいいけど、ここはあんまり良くないね。狭い路地、暗い一本道。ワタシのクーロスじゃあ、触手を撃ったら彼にもあたる。」(情報を整理するようにぶつぶつと独り言を口走りながら、彼女は悠々と君の隣に並び立つ。どうしたものかなぁ、なんてかしかしと頭をかきながら、彼女は小さな欠伸をこぼした。)「………ま、無難にお話を聞いてやってもいいと思うけど……おーい、オニーサン。」(触手の向こうの彼に声をかけてみる。………まぁ、彼は触手に怯えて彼女の怠けた声は聞こえてやいないらしいけれど。聞かせるには、なにか気付けになるような大きな音でもたてれたら良いかもしれないね。)   (5/28 23:49:44)


迷 羽間> 
「うん?あぁ、この通り。問題ないよ。」(迷はいつも通りの笑みを携えていた。今日初めて見るはずの触手にも動揺の色1つ見せていない。任務ということもあり一昔前の警官隊、はたまたバンカラといった様相も相まって威風堂々さすらある。しかし、内心となると話は別だ。これまた初見のパートナー。準備の心配をし、現状を正しく判断するように独り言を口にする彼女の横顔をそっと見やる。彼は新しい出会いに心躍らせるタチだ。任務なんてものは出会いのついでに過ぎない。いずれ来る拒否できない任務の為にひっそりと過ごしても良いのかもしれない。でも、それじゃああまりにも寂しいからと、彼は笑顔で任務を引き受ける。そこで出会う誰かに想いを馳せながら。)「ははっ、それは困ったな。俺のプペも彼を引き寄せる事はできるだろうが……安全性は無いに等しいだろうな。」(今日もまた相変わらず困った様子もなく、落ち着いた様子で事実を述べる。いつもと違うことを強いて上げれば、隣の彼女がどんなものを自分に見せてくれるかと、しきりに彼女の方を気にしてるくらいだろう。そして、同時に彼は罹患者も気にしていた。彼女の声が届かない程心を乱した男性。彼との出会いもまた、迷の望むところだった。)「声も届かないとなれば、大きな音でも出してみるかい?それで彼が余計に慌てるかもしれないが。」(なんて問いかけをした時、迷のマントが大きくうねった。そして小さな膨らみがマントの上へ上へと登ると首元からその存在が顔を覗かせる。)「っと……うん?どうした?…………あぁ、ふむ。確かになぁ。」(彼のディスコード、プペ。それと目を合わせるなり今度は迷が独り言を始めた。プペは迷の頬に擦り寄って満足気だ。)「どうだろうここは。役割分担なんてのは。」(独り言がようやく終わると迷は飯田杏へと視線を向ける。彼曰く、触手の相手は自分がする、その間に彼の話を聞くなり連れ去るなりしてはどうだろう。ということだった。)   (5/29 00:25:45)


飯田 杏.> 
「んん……」(しきりに気にされていれば、流石に気付かない方が難しい、と言うものだろう。興味を持たれるのは嫌い……というより、苦手だ。興味は続かないエネルギーのようなもので、いつか枯れ、また時に興隆する。一定になることは殆ど無く、またそれは無視することの出来ないほどの熱量を持っているものだから、それは更に厄介なのだ。尚且つまた、一度請け負うことを決めた任務なものだから、逃げ出すわけにも行かないわけで。ちいさな苦渋を零しながら溜息を零す。キミの頬にすり寄る小さな子にチラリと視線を向けてから、彼女は再び息を深く吐いた。)「……それならまあ、逆の方が無難じゃあないかな。クーロスの方が硬くてがたいは良いし、ワタシよりキミの方が体が大きい。ワタシとクーロスで彼を引きずり出すのは……ちょっと骨が折れるから、ね。」「と言うことでまあ、頼んだよ、キミ。」(出来るだけ早く終わらせよう、なんてキミとは真反対のことを考えながら、彼女は一方的に改変した作戦を執行すべく、クーロスを走らせる。蜘蛛のように生えた八本の足を器用に触手に絡ませ、路地裏の壁に押しつける。彼女はふん、なんて表情を変えないままにちいさく自慢げに息を吐き、キミに視線を投げた。)「……ここを抜けたら、クーロスに乗って移動しようか。人一人を運ぶのは骨が折れそうだし、…………彼はあの通り、ろくに歩けやしなさそうだし。ね」(壁にもたれかかる彼は腰が抜けてしまったらしく、彼は通勤鞄で体を守りながら座り込んで動きやしない。キミの出番だ、とばかりに彼女はキミを見つめ、キミの行動を待っている。)   (5/29 01:03:02)


迷 羽間> 
(実に一方的で且つ自己満足的な観察は上々の結果だったようだ。迷は至極満足そうな笑みを浮かべていた。_________と言うよりも、彼にとっては彼女を知ることができたと言うだけで満足に値するのだけれど。苦手そうな反応をさせてしまったことは申し訳なく思っているが、それはそれ。口にされるまでは気にしない事にした。完全な憶測ではあるものの、迷から見た彼女は実に思考の深い人間だった。何か目的があるのか、はたまた現状こそが目的の状態なのか。それ以上の思考は首元から現れたプペに阻まれた)「ふむ?ふむ……一理ある。」(彼女の改変が加えられた作戦は一理あったが、迷にとっては驚きだった。プペの存在、それによる自分の未来。少なからず影響を受けていたのか、矢面に立とうと無意識に考えたのかもしれない。しばらくの沈黙の間に彼女は行動を起こしていた。彼女のディスコードは器用に触手を絡め取りビルの壁面へと押し付ける。それが視界に映った時、迷はようやく我に返った。)「おっと。ははっ、ここまで安全な道を用意されたらやらない訳には行かないな。」(からりと爽やかな笑顔を浮かべた迷は地面を蹴る。跳躍によりクーロスを軽々と飛び越えると着地と共に駆け出す。プペは自分の役目はないと判断したのかそそくさとマントの中へと消えていった。)「やぁ、無事かな?うん、とりあえず無事だね。」(男の前までやってきたその場に跪き視線を合わせて笑いかける。乱心してる様子だったが、意思疎通は迷の得意とする所。男の手を握り笑いかけ深呼吸を促す。)「さて、まだ混乱してると思うが、まずは離脱が最優先だ。しっかり掴まって、目を閉じて、そう。10秒もすれば貴方の安全は完璧に確保されているよ。」(宥めるように囁きかけ、男をお姫様抱っこすると踵を返し駆け出す。)「プペ、保険を掛けよう。」(再度、跳躍で触手の範囲から逃れる直前、プペがひょっこり顔だけを出すと触手はクーロスに加えて磁気によって強制的に壁面へと抑えつけられる。)「さ、離脱の時間だ。本当に彼に乗っても良いのかい?」(杏の隣に戻ってきた迷は冗談めかして笑いかけた)   (5/29 01:36:46)


飯田 杏> 
『さ、離脱の時間だ。本当に彼に乗っても良いのかい?』「…………、ぁ、」(……正直、意外と、いうか。威圧的な黒い学ランの様相とは裏腹に、君の髪は細く、またそのマントに隠れた小さな相棒君も含めて、君は幾分か華奢で可愛らしく見えた。ある意味スマート……と言えば聞こえは良いだろうが、それはとどのつまり彼女は君を侮っていたのだろう。彼女らヒーロー予備軍は特別な力が支給されている。彼女のもつクーロスだって、彼女自身だけを見たのなら華奢でなんのちからも持たない少女が持つには似つかわしくないような無骨な多脚戦車でしかないのもまた当然なのだけれど……、それにしたって君の様相はあんまりにちぐはぐだったから。)「ん、うん。いくよ、落ちないようにね。」「……それにしても、こんなにすんなり終わってしまっても良いものなのかね。なんだか、ヒーローとしての任務にしては簡単すぎるような気もするけれど……」(腰を抜かした罹患者と君をのせたのを確認し、彼女はクーロスのいくつかある足にひょいと体をのせた。びちびちと動き回っていたはずの触手たちはびったりと壁に貼り付けられ、身動きすらとれていないようだった。緊急脱出になるだろうか、触手をまくのが一番骨が折れそうだ……なんて安易な想像は簡単に裏切られ、またそんな簡単な裏切りにさえ、彼女は小さく驚いた。)(シャッター街を抜け、人の少ない空き地に停車し、そうっと彼を解き放つ。腰の低い彼は急いだ様子で取引先に謝罪の電話を繋げ、また足早に喧噪の街へ消えていった。)「…………早く、この事態が終われば良いんだけどな。……日常が壊されるのは、嫌いだ。」(夕暮れにさしかかる公園で、彼女は苦汁を飲みながらそう風に紛れて呟いた。)   (6/5 00:06:36)


迷 羽間> 
「………………?」(キョトンと迷は首を傾げた。そしてまたプペも真似をするように首を傾げて小さく鳴いた。このコンビは本当に見てくれだけは華奢だ。か弱そうで脆そうで儚げで。本人達は気づいているのかいないのか、どちらにせよ見られ方なんてものをいちいち気にするようなタイプでも無い。結局、彼女が何故僅かに驚いているのかわからないままクーロスへと相乗りさせてもらう。無骨な戦車じみてると思っていた迷だったが、乗り心地は案外悪くない様子。)「だ、そうだ。気をつけるんだよ、プペ。それに貴方も。」(そっとプペの頭を撫でると小さなそれはマントの中へと消えていった。男性の方は未だに何やら混乱の中にいたが、深呼吸と会話を繰り返すうちに平常へと戻っていく。) 「何事も無いのは良い事だろう?君にも彼にも怪我が無かった。俺はそれだけで満足だよ。」(そう笑う迷の瞳に嘘も見栄も無かった。ただ、本当にそう思っていた。…………ただまぁ、クーロスに乗れたのも迷が上機嫌な理由のひとつではあるのだが。ちらりと遠ざかる触手をみやれば、まるで彫刻かのように僅かにも動く素振りはない。安全な空き地でクーロスから降ろされると僅かに名残惜しそうな顔をした迷だったが、喧騒へと消える男性は笑顔で見送った。)「なに、時期に終わるさ。終わらずとも、必ず誰かが終わらせる。」(杏とは対照的に爽やかな笑顔で言葉を返す。含みのありそうな言葉に含みを感じさせまいとするようなそんな軽やかな笑顔。吹く風に飛ばされまいと帽子を深く被り直すと、彼は杏に笑いかけた。)「帰るとしよう。家に帰るまでが任務と、誰かも言っていただろう。」   (6/5 00:23:02)

飯田 杏> 
____彼女は。「……、」((閉じられた、薬品の匂い。機械的な耳鳴りをその裏に隠した薄く陰った理科室は、きっと放課後になってしまえば、随分と閉鎖的にその身から手を引いていた。そしてまた彼女は、扉に手をかけたときにはもう既に、キミの存在に気が付いていた。)「ドーモ。」(からからと滑車を転がしながら扉を開けたなら、彼女はキミに声をかけた。)「ドーモ。」(彼女はいつものように会釈をし、彼女は慣れたように席に座り、荷物をくつろげて頬杖をついた。)「…………なあ、モノコリア。」(彼女はキミをじい、とみた。キミは、此処は変わらない。それは彼女が君を気に入る所以でもあるし、それは彼女が此処を選んで居座っている理由でもあるのだけれど……、今日は、否、先日からほそぼそと。彼女の胸中で一つ、気付きたくもない違和感が、どうしようもなく燻っていた。)「聞きたいことがある。」(気付かないふりをして見過ごせば良い筈だったのかも知れない。少なからず“今までの手順で行けば”、今まで彼女から問いかけをなげることは恐らくきっとなかったし、彼女から能動的に、こうして席を立ち、キミに向き合い、キミの顔をじっと覗き込みながら話をしたことはなかった。いつも通りに日常を愛するなら……、“変化を呪う”のであれば、いまある全ての変化に目を瞑り、自身のイデアが脅かされないように接触を避けるべきだった。)「……キミは、……そうだな。」(それはまるで、遠縁の親戚に久しく会ったような、奇妙な寂しさと、妙な居心地の悪さが入り交じった夏のコンクリートのやける匂いの様な。人は、緩やかな変化には気付かない。が、急激なそれで、あるならば。)「キミは。…………“おおきくなった”、な。いつぶりだろうか。」(言葉に迷いながら、そんな架空の親戚の言葉を模倣してみる。拭えない違和感、胸の芯のしびれを的確に口にすることは彼女には未だ難しい。キミとは昨日も一昨日も会って言葉は交わしているけれど……、そういうことではないのを、ほかでもない君は、わかるはずだ。)   (6/22 20:03:21)


Gaill Monochoria> 
(春の陽気と夏の熱気に挟まれた空。透明、ではないのだけれど如何せん、白色と表す気にはなれない雲の色。其の無色は何処迄も鈍くって、地平線に類似する果てしなさすら感じさせて、けれど慥かに、空は閉ざす様に覆われて居るから。黄昏と似て非なる違和感と淋しさ。梅雨の、放課後の理科室。)(変わらず、二人ぼっち。)(.......でしょうか?)『ドーモ。』(何時も通りの音、何時も通りの挨拶、何時も通りの席に座って、何時も通りの空間。)(男は、口を開く。)「Heyheyheyhey~~~..............」「ドーモぉ、イーダチャン。」(軽薄な笑いと横目に視線を遣る動き。屹度、君も見慣れた物だろう。)(そしてまた少しの静寂。もう少しすれば“何時も通り”、男は何か君へ問うでしょう。)(けれど。)「おやァ..........?」(初めの変化は、君が席を立ったこと。) 『…………なあ、モノコリア。』(二つ目は、君がじっと顔を覗き込んだこと。)(そして。)『……キミは、……そうだな。』(そして三つ目は、君が先に言葉を放ったことだ。)『キミは。…………“おおきくなった”、な。いつぶりだろうか。』(そんな、言葉を聞けば。飄々として、変わらずニヤつく科学者も、目を丸くせずには居れないもので。思えばこんなにちゃんと顔を見合わせるのは初めてだろうか。色々と脳が現実に追っ付かないから、やっぱりまた少しの静寂が生まれた。ただ機械音だけが躍る二人の静けさ。風が雲を勾引かして行こうにも、一面を埋めているものだから、空模様は変わりもせず。科学者-愚か者-の困惑なんてつゆ知らず、無表情な、無色彩のパステルは静かに、静かに時の流れすら曖昧に。)「オイオイオイィ................。」「どォしたッてんだイーダチャンよォ、、急なおままごとかィ?二人しか居ねェのに親戚ポジションを選ぶたァ随分トクシュだなァ」(エンジンが掛かる迄は少し掛かったけれども、男の饒舌は今日もすこぶる、と云った様子。軽々しい笑みと一緒に抑揚の大きい嗄れ声。つらつらとそんな言葉を並べて、両の手を軽く上げるポーズは相変わらず。始まりこそ変化球、されど9回ウラ迄激動無し。そんな温くて妙に心地良い温度が、また。物静かな君と、口八丁の彼とで紡がれる筈だ。)(.............少なくとも、彼にとっては其れが一番望ましい。)「..........。」(が、どうにも。調子の変わらない、様に聞こえる君の声が、揺らぐ何かを孕んでいる風に思えちまったもんで。)「身長は大して変わっちゃいないがなァ......どォした、何か変わったトコでもあるかね?」「まァ見間違いだとは思うぜィ?“こんな短い期間”でそんなに何か変わる訳も無いだろォに。」(勘違いだったら墓穴を綺麗に掘っちまうから少し暈して。掠め取るみたいに言葉を返して、貴女の反応を待つんです。)(何分男は。進んで話したい事でなけりゃ、此の理科室の日常の中、其の会話に色を滲まそうと話すもんですから。)   (6/22 21:15:55)


アンカー・アンク> 
『どォしたッてんだイーダチャンよォ、、急なおままごとかィ?二人しか居ねェのに親戚ポジションを選ぶたァ随分トクシュだなァ』(…………滑稽である事も、普通で無い事も。突拍子も無い事も、タイミングがどこかずれているのも分かっている。彼女が初めにキミのそのわずかな異変に気が付いたのは今日ではないし、こんな物言いも何かを模倣するような言葉選びも、彼女らしくないものである。ただ。)『まァ見間違いだとは思うぜィ?“こんな短い期間”でそんなに何か変わる訳も無いだろォに。』(ただ。彼女はあまりに日常を__否。変化を呪いすぎているものですから。)「まぁ、そう……かもしれない。確かにワタシは昨日もキミに会ったし、その前も、その前も。キミの念入りな体調管理のおかげか__いや、そもそもキミが丈夫なだけかもしれないけれど、まあ。」「“いつも通りの日常“を遅らせてもらって、感謝してるよ。」(真っ白なパレットに、彼女はそろりと筆で水を乗せた。撥水性を持つそれはきっとその上で水を孤独にさせて、きっとなにもなければ乾かされて、それで終わり。)______彼女は。「…………声。」(例えば、とても、とても長い間。一人きりで時間を過ごしたとして、他者との話し方やその癖や。声の出し方や間の取り方を、忘れては思い出し、なんとか保とうとして力を入れて、なんて。わずかなゆがみや変化も見せずに、取り繕う事はできるのでしょうか。)「顔つき。」(例えば、とても、とても長い間。一人きりで時間を過ごしたとして、人と関わることでしか得られない精神的な安らぎを投げ捨てて心の中で何かをこねくり回したとして。人の顔つきはあんまりに正直なものですから、……全く色褪せない、という事はあるのでしょうか。)「…………なんでもない。」(例えば、とても、とても長い間。一人きりで時間を過ごしたとして、__その間、彼女はキミにとって過去の人にならなかったのでしょうか。)「……これは、ただの自分語りだから、聞き逃して貰ってかまわないのだけど。」(彼女はキミをじぃと見つめたまま、その筆を迷わせる。言いたいこと、滲ませたい色。作品の切り口はきっと揃ったのにまだ足踏みをしてしまうのは、彼女が変化を呪っているから?……否。) わたしが、意気地なしなだけだ。 (彼女はそっと、息を吸う。)「ワタシはアポリア……と言えば良いのかな。体が変わらない質なんだ。実年齢は確か19だが、体の成長は14歳で止まっている。老化で顔や体が老けることも、これ以上身長が伸びることもないし……、イーコールの影響も受けない。とどのつまり、ええと……」(彼女の推測が正しいのなら、彼女の違和感が正しいのなら。……否、合っていなくても良い。事実が伴わなくても、ただ彼女の感じた感覚も寂しさも、無力感も孤独感も確かに存在するものだ。それをぶつけて良いかの是非が変わるだけで、それだけなら彼女がさきほど噤んだ口は、きっとどちらにせよ、きみがそれから逃れようとしている以上開かれることはないのだ。)「……ワタシは、キミたちと同じ時間を歩めない、から、その……なんだ。」「キミの成長が、羨ましかったのかも知れない。すまない、へんなことを言った。」(彼女はふい、とキミから視線を逸らす。色を滲ませる勇気も覚悟も、まだほんのすこし足りないようだから、……彼女は自身のイデアを強制して、自身を救うだけの。ただそれだけの、ちいさなひーろーになるしかきっと、彼女の不変を救う事はできないのだ。)   (6/22 21:56:37)


Gaill Monochoria> 
(ぽつり。ぽつり。)『…………声。』(外じゃ少し、雨が降っている。)『顔つき。』(君の言葉も、何処か其れに似て、彼へしとしと着地して行く。)「...........。」(一番最初の、夕暮れを。放課後の、理科室を思い出した。)(君の押しがあまり強くない事は分かっていて、だから此の儘行けば逃れられて、また空気が温むんだろう、けれど。分かっているからこそ、ひらりと逃げてしまうのは些か罪悪感の呵責が強くって。アナウサギを思い出してみたり、蚕蟲の卵を思い出してみたり、赤髪のぽけっとした男を思い出してみたり。)(.......それからもう一度、君が日常をアイすと云ったあの邂逅を思い出してみたり。)(吐く溜息は嫌悪だとか、倦怠だとか、そう云った意図を孕まない。どうしようもない世界に、弱々しく拳を叩き付けるみたいな、そんな精一杯の反抗で。)『ワタシはアポリア……と言えば良いのかな。体が変わらない質なんだ。実年齢は確か19だが、体の成長は14歳で止まっている。老化で顔や体が老けることも、これ以上身長が伸びることもないし……、イーコールの影響も受けない。とどのつまり、ええと……』『……ワタシは、キミたちと同じ時間を歩めない、から、その……なんだ。」「キミの成長が、羨ましかったのかも知れない。すまない、へんなことを言った。』(だから、男は困った様に笑い、そしてネオンカラーの双眸は、確と君へ向けられる。)「.....、....謝らないでくれ。」(一度開きかけた口をまた閉じて。取り敢えず、と君の言葉へフォローを添えた。)「......キミにゃ隠すべきじゃあ無いか。」(切り出すように放った言葉は、自らへ言い聞かせる為の物。)(空は顔を変えない。或いは、未だ男の知らない貴女の理想を、今此の時だけは体現するかの様に。)「イーダチャンや。」(ことり。机上に置かれたのは砂時計のネックレス。中は伽藍洞。黒の直方を呼び、赤き扉を開け、青の孤独に至る唯一の鍵。彼の、彼だけの専売特許。科学者を乗せる箱舟であり、探求者を運ぶ霊柩である。)「レッドドア。..............僕の能力だ。」「詳細は省くがまァ......、時を止め、その間僕だけは変わらず年を取る、ッてトコだ。」(進んで話したい事ではないけれど、“日常の一部に”だなんて謳っておきながら、隠し続けるのは嫌だったから。)(なまじ察しが良いのが恨まれる。どうにも、ちょっぴり寂しさを感じ取ってしまう様な気がして。もっと無機質だったら、こんな事言わずに済んだのに。)「隠してて悪かった。」(謝るのは得意じゃないんだ。)(だから。)「..............言いたいコト、あるンだろ?」(だから、今は。途中で捻じ曲げられた様に聞こえた君の言葉を、ちゃんと。ちゃんと、聞こうと。)「言いなよ。」(一度此の場所で、アポリアの少女が寂しさを零した事が在った。)(系統は屹度違うけれど。どうにも、ほっとけなさが似ていて。)(置いてくのは。負ってくのは。老いてくのは。)(せめて一度振り返ってからでも遅くないって、そう思えるくらいには変わったから。)(英雄-ヒーロー-でも、救世主-ヒーロー-でも、主人公-ヒーロー-でもない男は、変に器用で変に不器用ですから。)「逃げずに聞くさ。」   (6/22 22:47:04)


アンカー・アンク> 
『イーダチャンや。』(彼女より幾分か低いその音は、いつからその青年らしさを失ったのだろう。彼女より幾分か高いその背は、いつからその成長を終えたのだろう。) 『..............言いたいコト、あるンだろ?』(逸らした視線は流れるように。理科室の、決まって黒く分厚いカーテンは重く垂れ、その窓枠の両端を縛り付けて離さない。開けられているだけマシだろう、なんて傲慢に波打ち、窓枠の流れる雲を切り取っている。それはまるで、昔の映画を、切り取った様に。)『言いなよ。』 (シアタールームに佇む二人は、映画の中の時間を同じようには歩めない。……もし、映画が終わってしまったら、その後は、なんて。)『逃げずに聞くさ。』(どうか、できることならこの時間が、映画が終わりませんように、なんてちいさなこのようにダダを捏ねて。)
(映写機のスイッチなんて止めてしまって、時計のネジなんて巻かずに、ただ、そっと目を閉じて。ただ、上映終了のベルさえ鳴らないで居てくれたのなら、喩えそこが真っ暗だって、なんの娯楽もなかったって、なんの進歩もなかったって、それでよかったのに。)「…………ちょっとまっててくれ。」(そういってキミから離れた彼女が鞄から取り出すのは、一つの銀塩カメラである。)(雲の流れはやまず、備え付けられた時計は静寂の墜ちた変化のない理科室に、確かな時の足音を刻む。彼女はそっと目を閉じ、息を吐いて耳を澄ます。……どうか、どうか、時が止まってしまえば良い。ワタシを置いて流れる時間に喉の奥を捕まれる暗いなら、どうかいっそ。そう願ったよわい14のワタシをそっと撫でるように、カメラの表面をそっと撫でた。)(___わかっている、つもりなんだ。時の流れは止まないし、きっとキミは遅かれ早かれワタシをおいていくだろう。それはワタシへのイジワルなんかじゃあなくて、仕方のないことで、それはきっと、世界の在り方だから。……仕方のない、事なんだ。)「今日は、フィルムをいれてきたんだ。……とはいっても、あんまり状態は良くないから、うまく映るかわからない、んだけどさ。」(カチッ、シリリリリリ……。ジー、ジー。電源を入れ、ボタンを押し、くるくるとネジを回して、彼女はそれの重さをあらためて確認するように幽かに角度を変えて持ち直す。)「こんなことなら、へんに意地を張らずに撮っておけば良かった。……惜しい、事をした。」(彼女は寂しさを呑み込みながら、それでも隠しきれない哀惜を幽かに込めながら、何も記録を残さなかったそのカメラは、まるで時の止まった世界に幽閉された時計の様に、寂れ、ただじっとその時を伺っているように。)「今日は、ちゃんと。……とっても、いいかい。」(写真を撮るのは嫌いなんだけどね、なんて小さく、不器用に笑顔を作って笑って見せながら。)(……ワタシも、キミにはもう抜かされたのかも知れないけれど、こう見えてオトナ、だからね。ダダなんて、もう捏ねないのさ。)   (6/22 23:36:30)


Gaill Monochoria> 
(言葉を紡ぐ毎、2人ぼっちは数拍の静寂を作って、その間だけ、機械音が鼓膜を揺らすのでしょう。途切れ途切れな様で、其れでも屹度気まずくなんてなくて、それは、居心地の良い常温の、延長線上ですから。)『…………ちょっとまっててくれ。』(ああ、と短く答えた。)(理科室、慥かに鳴るアンダンテ。貴女が手に取るはオールドタイプ。嘗て粋だと称賛した瞑目のカメラ。)(最初の夕暮れで。ヒーローの第一歩を踏み出したあの夜で。そして理科室の日常で。レンズは彼を見据え、そして真っ暗を写し出す。奇しくも対照。男は過程を黒い霊柩に葬り去って、貴女は結果を暗い撮影で消し去った。)『今日は、フィルムをいれてきたんだ。……とはいっても、あんまり状態は良くないから、うまく映るかわからない、んだけどさ。』『こんなことなら、へんに意地を張らずに撮っておけば良かった。』(言葉、放つ毎の静寂を。男の相槌が少しだけ短くする。優しい優しい、嗄れ声。)(そして、レンズの瞑目は開かれる。)『……惜しい、事をした。』(ぐ、と。喉に力が入って、音にもならない何かを堰き止めて、ゆっくり抜けて行くのが分かった。カミサマを目指しヒトを拒絶する少女が、男の能力を嫌いだと、そう言ったあの時と、同じ感覚で。だから。)『今日は、ちゃんと。……とっても、いいかい。』(だから。)「.........ああ。」(ちょっぴり。ほんのちょっぴりだけ寂しそうに笑って、“撮りなよ”とでも言うみたいに一瞬腕を広げて戻した。)(写真撮影は嫌いだ、なんて不慣れな笑顔で。苦手なのにわざわざする意味を察し切れる程器用じゃないけれど。それでも、過程を負って進んだ分だけの空白が、ゼログラムを以て圧し掛かって来る気がしてしまう様な、そんな気がしてしまう笑みだった。)(探求の為に見ないふりを........否、見るだけ見て、それでも意識から消し去って来た誰かが。それこそ瞑目のカメラみたいに、真っ暗の中に沈めた誰かが。一人の青年が。)(泣いている様な、気がした。)(きっと、気がしただけさ。)「これからも撮りたけりゃ撮ると良い」「知っての通り、クールでスマートな科学者なモンでね。いつでもウェルカムさ」(お互い、オトナですから。彼も、駄々は捏ねないんです。虚栄の隠れ蓑は、常套句の決まらない決め台詞。)(男は依然、ヒーローに非ず。探求の悪魔であり科学者だけれど。)(なんとなく、振り返るだけじゃ足りない気がしたから。)(何時だって手を伸ばせるよう、止まった時計盤の上を歩くのは少し控えようかな、なんて。本当に、なんとなくですから。)(そんな、誰にも言わない決意表明を、彼の中の“ちいさなひーろー”が、謳うんです。)   (6/23 00:30:18)


飯田 杏> 
『知っての通り、クールでスマートな科学者なモンでね。いつでもウェルカムさ』「そういってもらえると……、助かるよ。」(彼女はキミから適当に距離を置き、丁度の所に丸椅子を引っ張っては腰を下ろした。ファインダーの中に居座る十字を、キミのその変わらない表情に合わせ。人差し指の腹で、いやにつるりとしたシャッターボタンを撫で。……それから。)「………………、ぁぁ。」(彼女はちいさく喉を震わせ、細く、細く息を吐いた。)「だめだ……やっぱり、やっぱりやめにしよう。ファインダーに汚れがついてる。掃除道具は部屋だから、……っ、また、」(すまない、すまないと彼女は首を横に振った。先延ばしにしたいわけではないんだ、ずるずると我儘をいって困らせるつもりはないんだ。ただ、ファインダー越しの世界が、十字を合わせ、ピントを調節した筈のキミが。どうしようもなく曇って、どうしようもなく滲んでしまって。ああ、だから写真は嫌いなんだ。)「___、」こわい。(なんて。)言えるわけもなくて。(残念。まだ、大人にはなりきれていないのかもしれないね。)  (彼女はちいさく鼻をすすりながら、カメラを自身の膝のうえにおいた。)「……、今日の、最初のしつもん、を。してもいいか。」(カメラの様子を確認している、と言わんばかりに彼女は膝の上に視線を直角に落とし、キミに顔を見せようとはしないだろう。指は忙しなくカメラの上を走るけれど、どこも壊れてなんて居ないそれの点検、なんてたかが知れているもので、それはきっといつしか単調な指の往復にしかならないのでしょう。)「……その、能力を使っている間。キミは、どんなふうに過ごしているんだ。」(蓋にぽつぽつと数滴降る雨をそっと袖で拭いながら、彼女はキミに、そんな漠然とした問いを投げた。キミは、いつもと同じようにここに来て、研究をして、時に発見に感嘆をあげて……、そんなことをしているのだろうか、なんて。)「……その、なんだ。ちゃんと、ご飯はたべれてるのか。」(また、不器用な親戚みたいにぶっきらぼうにつっけんどんに。キミの時計の中の世界はきっと彼女の想像するようなものではないでしょうから、半ば当てつけのように、彼女は拗ねたみたいに声を出す。)   (6/25 23:28:55)


Gaill Monochoria> 
(やっとの開眼。レンズと目が合って。世界の色彩から切り取った理科室の一片を写す少し手前。少女は理由を並べて、その旧式を降ろしてしまった。)「汚れだなんて珍しいじゃあないか」(変わらず、軽薄な言葉を吐くんだ。わざわざフィルムを入れて来た其のカメラが汚れてたなんて、君らしくないじゃないか。)(だから、そんな風な言葉を紡げば、また何か返ってくるだろう、なんて希望的観測に依ろうとするけれど。)【問】少女の言葉は偽であるか。(迯げる様に言葉を連ねたって虚しいだけなのは、一番よく分かってる筈だ。)(見据えろ。)(目を背けるな。)(彼女の声から。言葉から。) 「あ゛ー、..........」(困ったみたいに、いつもの快活と軽薄を失った静かな声を伸ばして。気まずそうにうなじに手を当てるのは、どうにも。)(どうにも、か細く締め出された貴女の声が、酷く悲痛に聴こえてしまったから。)(どうにも、点検っぽく動く其の手が偽りをなぞっている様に見えてしまったから。)(どうにも。)(......。)(君は、泣いてるじゃないか。)『……その、能力を使っている間。キミは、どんなふうに過ごしているんだ。』『……その、なんだ。ちゃんと、ご飯はたべれてるのか。』(オイオイ二つもあるじゃないか、なんて言う時じゃあ無いのは。もう、とっくに。)(解ってるさ。)「.....特筆すべき様な事ぁ何もしてないさ。」(寂しげに揺れる金髪は、極彩の視線を掠める様に、曖昧なレースのカーテンとなって、二人の間に降りるのです。)「ただ探して求めて、追っかけて。」「満足出来たら帰るだけ。」「それだけだよ。」「飯だって死なん程度にゃ食ってるさ。」(親戚との、会話なら。死なない程度になんて言葉だって精々がちょっとしたジョークの筈で。でも一日三つの、此の問答は。今日に限って、寂しさを纏うもんだから。)(なんだか、こっち迄泣きそうになっちまうけれど。それは屹度。青の孤独の、其の苦しさから目を背ける前の。誰かが泣きたがっているからさ。)「........僕からも、いいか。」(雲はもう、晴れたでしょうか。遮光カーテンの暗幕が、塞がれた空の景色すら遮ってるから、彼にも貴女にも、分からないのでしょう。)「そのカメラ。」「.....本当に、使えないのかい?」(まずは、一つ。)(照明が変わらず部屋を照らす。白く無機質に。蛍光灯の様なノイズすら無く。)(微細な機械音が、不器用な二人の静寂を繋いでくれますから。)(一つ、深く息を吸って。それから。)(も一つ、あの時と同じ事を、訊くんです。)「....キミは不変が好きかい?」「....それとも。」______________「変化が嫌いかい?」(あの時と、同じ事を。)(少女の視線は下向いて。降りたレースは手持ち無沙汰。ネオンピンクの双眸は、行き場に迷い少し逡巡。それから一つ、瞬きを。それからそれから、貴女へと。歩み寄って。しゃがみ込んで。)(微か、雨降らす其の瞳。雨雲の浮く此の瞳が、覗き込めるならばどうか。優しく見据えてやれないか。)(大人じゃなくたっていいさ、なんて云うみたいに。)(思ったままを、言葉を変えず。在るがまま紡ぐを愛するように。)   (6/26 00:38:02)


飯田 杏> 
『.....特筆すべき様な事ぁ何もしてないさ。』「…………そう、か。」(ふふ、なんて小さな笑みを零すように、彼女はそう音を返してはまた息を呑み込んだ。そうか、そうか。案外元気でやっているようで良かった、と……、暖かい安堵の感情に雫がやっぱり滲むのは、  。) ___(それはきっと、きっとキミが元気で居ることは、彼女が最初に出した条件を無視されるような不快感のようなもので。それはきっと、キミとともにこの放課後の微睡みを消費するという契約じみた関係を反故にされる悔しさみたいなもので。)______本当に?(ゆるく、首を傾げるように首をゆる、と傾ける。ざっくばらんに切られた髪の先は束のままにゆれ、束は己の形を変えないままに首を傾げている。) (他者なんて、切り捨てたんじゃあなかったか。__“キミの日常の節々に些細な変化に、ワタシは一切興味がない。だから、そういう普通を求めるのは別の人間にたのんだよ。“__   彼女が初めにキミに述べた口上は、嘘偽りじゃあ、なかったはずだ。)____なら、(キミの些細な変化など、気にするつもりも、気に留めるつもりも、目を向けるつもりも、なかった、筈なんだ。)_____なら、それは、(キミの答えは至って平常で、普遍のそれで、日常のもので、それはきっと、キミと世界の時間の在り方が変わってしまったと言うだけで。きっと、キミはなんにも変わっていないのでしょう。ほら、今日だってきっと、彼女が問わなければ、問い詰めなければ。知らないふりをしていたなら、何にも問題はなかったのだ。ただ、彼女の脳裏に映し出されるキミの影が、幽かに揺らいだだけで__)「そのカメラ。」___それは、何故?「.....本当に、使えないのかい?」(彼女は脳裏に浮かんだある言葉を、否定しようと首を横に強く振る。垂れた月光の如き帳はゆらゆらと揺れ、ちらちらとキミが歩み寄るのが見えた。)「」(彼女は……少女は。)『....キミは不変が好きかい?』(どうか、どうか辞めてくれと願いながら、ゆるゆると首を横に振る。)「……っ、」(どうか、どうか消えてくれと。どうか近寄らないでくれと願いながら、その椅子から立ち上がりもせずに、俯いた視界の先にキミのつま先が見えたから、ぎゅっと目を瞑って。)『....それとも。』______________『変化が嫌いかい?』彼女は。__「…………、どう、だろうね。」(少女は力なく笑いながら、そんなふうに、曖昧に答えを濁した。……否、これは明確に適当な答えである。)「……ふたつ、め。触れても、いいかい。」(そうっと目を開けた先にある、柔らかいくせに褪せなさそうな、そんな色にちいさくちいさく喉を絞め。そう、キミに願いを述べながら、彼女はキミの頬にそっと右手を伸ばすのでしょう。)(はらはらと降っていた雨は止んだとて、その瞳の奥の14歳は、いまだ瞳の出口を見出すことが出来ないらしい。どうすることが楽なのか、どうすることが幸せなのか。……どうすればいいのか分からない様に不安げに、それでもどこか眠ってしまいそうな安寧を湛えたまま、彼女はきっとキミを見た。)「………………、キミが、もう少しコドモのままで居てくれたら、よかったんだけど。なぁ。」(なんて、笑って見せながら。)___変化を?????????   (6/26 01:28:08)


Gaill Monochoria> 
「..........そうか。」(首を振る貴女へそれだけ零して。それでも歩みは止まらない。)(屹度、好ましい行為じゃないんだろうと。屹度、自分が此の部屋から去るのが貴女の安寧なのだろうと。男は其れ等を理解していて、その上で。問わなきゃいけないと。目を合わせなきゃいけないと。そう、思っちまうんだ。)「............。」(酷く緩んだアンダンテ。無彩色に隔てられた黄昏の空。極彩の空の下温度を持たない曖昧な反射光を吐く街並みと学校。胸を埋め尽くす様な不思議な感覚と寂しさに呑まれた街から更に隔てられた二人だけの世界-理科室-。赤の扉なんて必要無く、普通の扉を開けば入れる公然の秘密基地。青の孤独なんかじゃない、無彩無温の二人ぼっち。張り詰めない静けさが彼等を繋いでいる間は、どんなことだって隠し込んで仕舞えるから。)『…………、どう、だろうね。』(訊いた癖して、返す言葉が見つからなくて。半端に察しが良いものだから、貴女の揺らぎと葛藤の深層迄は分からなくて。それでも、力ない笑顔へ優しい笑みを交差させるのは、どうしようもなくお人好しだから。何かを耐えて、抱えて来た、そんないっぱいいっぱいの表情(かお)をした貴女へ何か。何か、届けれやしないかと。)(救い合うだとか、手を差し伸べ合うだとか、背中を預け合うだとか。そんな綺麗な英雄にゃなれやしないよ。)『……ふたつ、め。触れても、いいかい。』「...............。」(返す無言が否定の意を示さないのは、伝わる筈。)(ヒーローには、なれやしない、........けれど。)『………………、』(救いの手を、差し伸べるんじゃなくて。)『キミが、もう少しコドモのままで居てくれたら、よかったんだけど。なぁ。』(貴女の手が、伸ばされたから。)「........。」(だから。)  ..................「ごめんな。」「ごめん、なぁ..............」(震える声で応えた。) (ここで泣けないのが彼の弱さだ。縋り方なんて停止した時計盤の上で忘れちまったから。邁進するしか道が無いから。だから、瞳いっぱいに涙を湛えたって、雫だけは零さない。零せやしない。) _なぁ、友よ。 (泣いて喚ける程器用じゃないけど、それでも伸ばした手は確実に何かを変えた。)(縋れ無いなりに、それでも誰かを頼ることを、思い出させてくれたから。)_どうか、どうか。拭ってくれ。「.............。」 (空の様子は、見れないけれど。雨の音は、聴こえない。)(此の儘、曇らせていてくれ。)(二人ぼっちが、隠していてくれる内に。)   (6/26 02:18:37)


飯田 杏> 
「…………、ふ、へ。」(無言の肯定を受取ったのなら__受けとった、なら。彼女はそっとキミのその頬に触れ、伝わない筋をなぞるのでしょう。それはきっと、本来の高校生らしい溌剌とした肌なんかじゃあなくて、いくらかの苦労の線を重ねて居るのでしょう。雫の伝わない大地は渇き、それはきっと、そんな悲しさを感じることすら忘れてしまったみたいに平然としているのでしょう。)「……、うん。」(それは無責任なひとりごとの言葉尻を丸く溶かすのです。……あわよくば、どうかきっとかなうなら、キミが。)「だいじょうぶ。」(君が、いつかどうか泣きますように、なんて、残酷な願いも込めて。そっと頬から指を這わせ、ゆっくりと丁寧に、君のその色を傷つけないよう注視しながら、その涙腺付近を、そっとなぞるのです。)「だい、じょうぶ。……ね。」(二人分のひとりごとの往来は、いつしかその空間を埋め尽くしてしまったらしい。ふわふわと余白を埋めて飽和しかけたその空間で、交わりを避けたそれらは必然的に隣り合い、ふれあって、そうしていつか溶け合ってしまうのでしょう。)「…………、」(___ああ、どうかこのまま。このまま、溢れて溢れて、この密室が壊れてしまう、なんてことがありませんように。)「これが、みっつめ。」(最初の自分の間違いになんて気付かないまま。……否、心のどこかでは気付いているのかもしれない。だから、これはもしかしたらズルかもしれないし、だから応える必要なんてないのかもしれない。どっちでしょう、なんて、最初の時のようにイジワルに笑ってみせながら、少女は伸ばした手で、かなうならキミの両耳を塞いでしまうでしょう。強く押しつけず、ただふんわりと、濡れたガーゼでひたりと蓋をするように。) (______両手に流れる、ごうごうとした血管の生きた音は、部屋を満たす機械の律動を、きっとキミから覆い隠してしまうでしょう。それは、終わりのある音色。機械のようにメンテナンスをしていれば永久に途絶えない、わけではない有限の音。)「なぁ、モノコリア。____」(彼女は包んだキミの両耳から、その頭の形をそうっとなぞるように髪の間に指を這わせ、それから。)(……それから、彼女はキミの額に、自身の額をそっと、そうっとくっつけようとするのでしょう。)「あの、ね。」(ふわふわと漂う言葉は、不安定に揺らぎ。それはきっと綿毛の様に、生きて根を張れるかも分からない様な不安定さで、その真意などなかったみたいに振る舞ってしまう物ですから。)(短い前髪から覗く額は若々しい肌を今でも保ち、それはきっとキミの前髪をやわらかく受けながら、それでも。どうか、どうかかなうならと、彼女は、少女は。)ワタシ、は。 「____、_____。」どこにも、いかないで。  (どうか、言葉を。)   (6/26 03:00:01)


Gaill Monochoria> 
「.......ありがとうよ。」(照れ臭いから短く紡いだ感謝は、水面を波紋を立てずに撫でる様な、じれったさと衝動の交じった、そんな音。)(だいじょうぶ、なんて優しい言葉に、やたらと安堵してしまったのを隠すように。)「............。」(少しして。やっぱり変わらず静寂と機械音。)「んん.......?」(貴女がもう片方の手を伸ばしたら、じわりと滲んで進む数瞬の後、両の耳を塞がれてしまって。)(二人ぼっちの、静かな世界。)(血の走る音は少し心地良くて、悪い気はしなかったのだけど。おかげで貴女の言葉を聞きそびれちまった。)「.........、.....。」(“今なんて?”とは訊かないよ。もし、此の儘世界が回り続けて、何時も通りの解散時間になったら。二つの問いで一日を終わらせる....彼しか知らなくてもちっぽけでも、そんな変化を齎せる気がして。)(思惑も、行動も。彼の中で完結する其れは、或いは過程を全て負って結果を齎す探求のディスコードに似る。けれど明確に違うのは、貴女を置いて行かず、一緒に秒針と時間を踏み締める事が出来る点だ。三つ揃いのアンダンテ。無機の理科室はグリザイユ。陽光を見送り、帳を待つ黄昏でなく、空の顔なんて隠しちまう曇天に似た二人の温度。零して、滲んで、ちょっぴりずつ移ろう優しい奔流。)(身を任せて居よう。此の静寂に。)(もし、君が数の不足に気付いたなら。彼は“そう言えば”なんて云って、また他愛無い事を訊くんです。)(君の雫も彼の涙も変化も不変も真も偽も。隠してくれるよ、二人ぼっちが。)(拍手喝采は要らないさ。劇的なんかじゃなくて、然れど心底大切な彼等の放課後ですから。)  (帳が落ちたら、また明日。)「.............。」(聴かせずの言葉。耳を塞ぐよりもっと卑怯だけど、此の男はそう云うやつですから。) _________キミ達と、歩いてたいな。(暗幕はずっと、閉じたままだけれど。此れは劇的なお話じゃあ無いですから。)(きっとそのくらいの温度が、ちょうどいいんだ。)   (6/26 03:43:53)