ベニタ = ロッドフォード

ジャンヌ

ほりしぃ> 
(【Holy shitは 『劣等』を、何よりも呪っていた】)(キ──────────ンコ━━━━━━━ンカ────────────ンコ⎯⎯⎯────⎯⎯⎯ン)( 3時40分、チャイムがなった。放課後、朱色と古びた紙の匂いが充満した図書室内。書物がまるで都市部のビルか、あるいは生い茂る木々のように建ち並んだそこは、逃避行でもタイムトラベルでも、どんなところよりも『知識を得る』には打って付けの場所でしょうに。ビル街のように車の音が煩わしく鳴り響く訳でもない。森のように鳥のさえずりが聞こえる訳でもない。シン、と静まり返ったそこに来るのは根っからの本の虫か、或いは…………………………)「~~~~~ッッッ゛!!!……、クゥッッッ………………己ェ、人間めッッッ…小癪な真似をしやがりますねッ………………このほりしぃを一体誰だとォッ……思ッ………てッ……………」(熱心な『信徒』であるか。)(その軍人のような格好をした女は椅子に登り、ぐぐぐぐぐッ………と腕を伸ばし、なにやら本棚の前でぷるぷると震えていた。片腕には数冊の『カミサマ』に関する本。そして伸ばした手の先にもまた、彼女の「お目当ての本」が1冊。悲しきかな、143cmの彼女は椅子を使ってもそこには届かないのである。これは何かの陰謀か?こうして自分が来るのを想定して、わざと誰かが置いたのか?クソッタレ、これだから人間は……と内心で悪態をついているのは言うまでもない。)(そして、そのいかにも不機嫌な彼女にもしも、誰かが気づいて物音ひとつ、あるいは声でもかけてしまったのであるならば、きっと彼女はピタリと止まり。顔のみをそちらに向け、ジロリと睨みながら口にするだろう。)「……、……おい、テメェ……何見てやがんです?????」   (5/19 21:56:14)


ベニタ> 
(授業の終わった、明日また授業に耽るまでの憩いの時間。図書館は、新刊の無臭と、古本のほんのりと甘く心を撫でる匂いと、敷かれたカーペットから漂う埃の匂いで満ちていた。宙に舞った塵らが窓から、照明からの光に照らされまるでレンズフレアのように幻想的。しんとした空間に、時折遠くからカラカラ、と大きな脚立のキャスターを鳴らす音がする。音が近づいたなら見ることができるだろう、正体見たり、それは点滴を連れ回す病人のように徘徊する少女だ。)(からから、音が奇妙な邂逅に導く。右には片手で抱えた掌サイズの二冊の本、左には自身の身長ほどもある脚立を侍らせ、捜し物と貴方の待ち構える角を曲がった。)(がらっ、と、心なしか一際大きくキャスターは鳴いた。暫くはその姿を眺め、見入っていたように思う。自身よりも小さな背丈の、さながら軍人のような女の子が椅子に登っていた。一目で、本棚の上部にある、この広大な本の中の何れかを求めて手を伸ばしていることは火を見るより明らかであった。力を込めて震えていた脚も、伸ばした手の先も止まり、首の上が動く。)「────あの、違うの!」「そこの───後ろの、本!とりに来たんです」(大蛇をも凌駕した、その赤々とした双眸でぎろりと睨まれれば、かわずでなくとも怯むことだろう。無論己もそうである。望みの場所を視線で訴える。声は…震えていただろうか?貴方の果てまでも追うような偵察の瞳から逃れるように、更に進んで一つ向こうの本棚から目当ての本棚へと迂回する。幸いにも捜していた本は低い位置にあった。脚立を通路の端に寄せ、できる限り縮こまって、“カミサマ”に関する──少し子供向けの歴史書を手に取る。──貴方がその目を再び彼女へ移したならば、その始終を見ることだろう。)   (5/19 22:28:47)


ほりしぃ> 
『────あの、違うの!』『そこの───後ろの、本!とりに来たんです』「……………………………、…………」(震えた声だった。同じ赤目を持つはずなのに、貴方の瞳は兎のように愛らしく、それでいて惨めったらしく驚愕していたのは目に見える。彼女は貴方の発言に目を細めたのならば、椅子から降り、長い長い髪を揺らしながら かつ、こつ、かつ、こつ、と貴方に歩み寄った。もしかしたらあなたは後ずさるかもしれない。しかしそんなのもお構い無しと言わんばかりに、彼女はあなたが下がれば同時に詰め寄り、ずい、と顔を近づけるに違いはない。髪が耳を隠していようもんなら、それを梳かすようにどかしてしまうかもしれない。なんせ彼女が見やるは貴方の顔……ではなく、〝 耳〟なのだから。 不躾にも彼女のやる行いは、彼女自身は至極当たり前のことのように思っているらしい。) (『平和を愛するジャンヌ・ダルク』じゃあ到底検討もつかないだろうさ。耳を確認した後に、更に顔を近づけ、餌を見つけた獣のように〝すん 〟と匂いを軽く嗅ぐところも、貴方の両頬を片手で挟み込むようにしながら上を向かせて、喉元を見やる瞬間も。拒めない力加減ではない、貴方が嫌ならいつでも振り払えばいい。彼女は一通りの、医者で言うところの触診のようなものが終われば1つ。)「……………………………………ふゥーーーーーーーーーん……………………。」「オマエ、【人間】ですね。」( …声を、漏らす。)(それから、貴方から手を離し一歩下がっては 長い髪を手の甲でサラリと触れ、フルリと震わせながら こう言った。)「……………………………ま、いいですケド。………人間。オマエ、ちょうどいい所にきやがりましたねェ? そんな無様に怯えなくとも、別に取って喰いやしねェですよ、『今』は。…………………ただオマエにこのほりしぃから1つ頼みがあるんです。人間に頼むのは非常に癪ですが。」「……………そこの本、オマエ。取ってきてほりしぃの所まで持ってきて貰えませんか?」(一体何様なのか。きっと彼女は顎を使い、くい、と先程自分が取れなかった本を指し示して 『早くとってこい』と促すんだろう。全く今日は厄日だね。)   (5/19 22:49:30)


ベニタ> 
(奇跡の英雄を準えた、まだ仕込み途中もいいところのヒーローは踞る。近くなった地面から余裕を孕んだローテンポの足音が響く。“カミサマ”について記したレポート──のような、学会等に提出するには足りない、もっと砕けた文書が、床に置いていかれる。後退る足音もまた、ヒールの音。感じた威圧感は背丈よりずっと大きかった。追い詰めるような上目遣いは恐ろしかった。すぐ後に触れた爪は、無情な氷の女王を彷彿とさせた。耳の縁をなぞった時に、痛覚が目覚めて目をきつく閉じた。ピアスも開けておらぬ柔な肌には些か刺激が強い。──手が一旦離れると漸く、震える程に籠っていた力が何処かへと雪崩れ落ちていく。恐怖と一緒に閉じ込めていた肺の中の息が脱出口を見つける。肩で息をしていると、そんなことはいざ知らず。)「う゛」(黒い手袋に覆われた手に頬を摘ままれた。彼女の気が済むまで、此方には全くもってわからぬ事が終わるまでずっと為すがままだった。異様さを認知できてもその理由までは処理しきれない。『…………………………………ふゥーーーーーーーーーん……………………』。ため息のような声の後に、種族を問われた。──何故?)「うん」(答えを探そうと脳が働く中、コミュニケーションの意識は辛うじて返事だけを通した。──そうか、耳長だ。髪を揺蕩わせる仕草に顔へと意識が向いてやっと気がついた。『……………そこの本、オマエ。取ってきてほりしぃの所まで持ってきて貰えませんか?』。散々と奇妙な言動を晒した後に遣ってくるのが頼み事とは意外だった。何があるかわからない。しかし自分を頼ってくれたのだ、無下にするわけにはいかない。異論を慎みただ頷いて、ヒールを脱げば彼女と同じ様に椅子に登る。) 「…………はぁ」(微妙に届かない、脚立を取らなくては。二度手間に苛立ちため息が出た。……いつもなら出ないのに。ストレスの原因はそこの監視役に決まってる。意識すれば先程のやり取りは鮮明に蘇る『そんな無様に怯えなくとも、別に取って喰いやしねェですよ』『『今』は。』。────“今”はとって喰いやしない?じゃあいつか食われるの?これが終わったら?頭が考えを進める度に頼まれた本を取るのが怖かったが、視線を送れば依頼人は威厳たっぷりに遂行の時を待っている。逃走などの企ては、観念するが吉であった。)「ホリシィちゃん。これで良かったかな」(脚立を降りながら、本を両手で持って爪先でヒールを履き直した。近くで待つ貴方の正面に向かって本を差し出す。──表紙に記された題名を見て、ふと声がついて出た。)「カミサマのこと、調べてるんですか?」   (5/19 23:39:03)


ほりしぃ> 
(長い睫毛を伏せて、貴方は 文句1つ言わず、彼女の『お願い』を、『要求』を呑み込んだ。カツリコツリとその場で靴を脱ぎ、椅子に登る。身長は貴方もそう高くはなく、手を伸ばしても1度目は届かなかった。彼女はその様子を後ろで見やりながら腕を組み、カツカツカツカツカツ、と足を鳴らしているのがよく分かる。まるで早鐘を打つメトロノーム。口で言わずとも『急かしている』なんて意図は容易に汲み取れるはずだ。)『ホリシィちゃん。これで良かったかな。』(漸く、と言うべきだったか。貴方は彼女の言う通り、指定した書物を此方に手渡してくれた。重厚な冊数とワインを零したかのような品のある赤色。金色の文字で記された文字はラテン語、すなわち『失われた文字』である。)(──〝origo dei 〟──)(彼女はその文字をチラリと見やったのならば 目を細め、フン、と鼻を鳴らし、パッ、と軽く奪い取る形で受け取った。)「ええ、それです。なンだ。ちゃんと出来るじゃあないですか。『人間』の癖に。 」( 本を受け取れば、貴方に対する用事はどこを探したって見当たらない。ここからは彼女と貴方はまた赤の他人に戻ることだろう。否、そうでなければならなかったのだ。)『カミサマのこと、調べてるんですか?』「……………………、……………………」「………………ね、人間?オマエは。」(踏み込んだのは、貴方の方からだった。 今まで笑みをひとつも浮かべなかった彼女の口は依然として下がったままである。放っておけばいいものを、おずおずと、それは小動物のようだった貴方が人間特有の好奇心を、香水に交えてほんのりと漂わせては、朱色に溶ける前に彼女は言葉を拾い集めてしまったんだから。)「…………………──────────オマエは、『カミサマ』のコトを、どう考えで?」「………………そういうオマエこそ、調べに来たんですよね?『カミサマ』のコト。………何故です? やはり、オマエも…………………『報酬』や、『討伐』が目的ですか?」(ジィ……………と、彼女は貴方を覗き込んだいた。朱色より色濃い赤色が、貴方を閉じ込めて離さなかった。これは密やかに抱かれた、1つの期待でもあったのだろう。貴方の片手にも、彼女とは別の「カミサマ」についての書物が握られている。 )   (5/20 00:02:48)