キース・ハリソン

イエローカイト

和枕 音子> 
( _________昨日は、大変だったらしい。) ( 3時の睡眠欲に抗いきれず、ぼくがぱったり意識を手放していた頃のこと。学校に届いた何やら奇っ怪な通報に、各ヒーローたちは東奔西走、方方を走り回ったりして事態の解決に勤しんだらしい。巷に出回る決していかがわしくない動画サイトには、これまた奇々怪々な『 妙なダンスを踊るアナウサギ 』やら、『 「「「きゅあぷあだぁー!!!! 」」」と大喜びの少年少女 』やら、『 動く木々に〝 レイナ・デ・サファイア 〟なる必殺技を決めている女子生徒 』やら………………正直、こんなものが流出してヒーローとしては大丈夫なのかと言わざるを得ない映像が散見された。見ないふりをした。)「 …………だぁからと言ってさぁ、後始末に駆り出さなくったっていいじゃんか……。」( ぶつくさと苦々しさを吐き出して。昨日参加していなかったからと言う理由によって、現場となった公園に異常がないかの確認に、半カミサマが徘徊した商店街のパトロールに、と扱き使われた休日である。折しも、現在時刻は例の事件が起きた15時。ようやく解放されたのだ、せっかくだからどこかに寄って帰ろうか。)「 あ、そういえば、最近あそこ行ってない、な。」( ふらつかせた視線の先には、よく足を運ぶ小さな喫茶店があった。こじんまりとした、レンガ造りの外壁に蔦なんか這わせちゃってる感じの。行くか____なんて爪先を向けたところで、そこがなかなかに混みあっていることに気付いたけれど、今更矛先の向いてしまった気分を変えることなど出来ないのだ。繊細な装飾に彩られたドアノブを引く。) ( カランカランコロン。) 『 いらっしゃいませ。ただいま大変混みあっておりまして…………。』「 あぁ、えっと。……相席を頼むので、大丈夫です。」( 眉を下げた店員にすぐさま断ったのは、店の奥、窓際に一方的だけど見知った顔が座っていたからだ。 迷いのない足取りでそちらへ向かい、ぼうっと窓外を眺めていたホワイトブロンドのきみへ言葉を掛けよう。)「 ______失礼、きみ。向かいに座ってもいい、かな。空いている席がないみたい、だから。」( きみは驚いた顔をするだろうか。彼の向かい、空いた椅子の背もたれに手を置きながら、ゆるりと首を傾けた。 )   (5/27 20:51:30)


キース・ハリソン> 
(僕は、プリンアラモードがだいすきなんです。スプーンで掬うとくにゅう、なんて滑らかに亀裂が入るところとか、残されたほうが反動でぷるんと揺れるのとか。目に生えるサクランボの紅一点も、ふんだんに惜しみなく絞り出された生クリームも、添えられた季節にあったフルーツも。つやつやピカピカに透き通った、ドレスみたいな可愛い器も。それからなにより、このプリンの鮮やかな黄色が、ぼくはなにより大好きなんです。特にこのお店はおすすめです。カラメルの苦さとプリンの甘さが丁度良いし、固さと濃厚さ、若干残るプリンの舌触りが完璧なんです。レンガに蔦の茂ったみたいなモダンな外装はおしゃれで、それでいてどこかひっそりとしていて。お店に来るお客さんの顔ぶれもなんとなく決まっていて、騒ぐ人なんて滅多に来なくて、ゆっくりとした時間が流れるんです。だから僕は、学校からの大きな課題を頑張ったあとは、決まってこのお店に来て、奥から2番目の窓際の二人席に1人で座って、プリンアラモードを頼むんです。……ただ。) 「わぁ…………」(いつものお店のお姉さんにいつもの席について、プリンアラモードを注文して待っていると、いつもは多くはならない入り口のベルが、ひっきりなしに鳴りました。どうやらSNSで大きく拡散されてしまったみたいで、若い女性のお客さんがきゃいきゃいとはしゃいで、お店の中はあっという間に埋め尽くされてしまいました。自分の好きなお店が有名になるのは、嬉しい反面、困りもします。本当はゆっくり食べて、終わったらミルクを頼んで本を読みながらゆっくりするんですけど……今日は、辞めた方が良いのかも知れません。そんなことを、考えていたら。) 『 ______失礼、きみ。向かいに座ってもいい、かな。空いている席がないみたい、だから。』(隣の席……よりも随分と近い位置から、女の人の声がしました。驚いて顔を上げると、そこにいたのは僕も何度か視たことのある人です。学校でもこのお店でも、他のお気に入りのお店でも何度か見たことのある穏やかな人です。)「……っ、あ、どどうぞ、僕のでよければ……っ」(本当は、前から話してみたいと思っていたんです。ただ、この通り僕は話すのが上手じゃなくて、緊張してどもってしまうんです。)  (ああもう、ぼくのばか。そんなふうに心の中で自分自身を叱りつけながら、出来るだけ変人だと思われないように、にへ、と笑いかけてみます。緊張のせいか表情筋が固まっているようにも思いますが、きっと満点スマイルが出来ている、筈です(きっと、たぶん。そうだといいな)。)「えへ、あの……急にお客さん、ふえたみたいで。お店の人も大変……」(うつむき、気まぐれに視線を店内に投げてみても、どうしても貴方のことが気になってしいまうので、こっそりちらちらと観察してみることにしました。細い体は心配になりますし、二つ結びの髪は女の子らしくて可愛くて素敵です。黒いリボンは大事なものなのかも知れません、古そうですけど、とてもにあっています。)「あ、」ぱちり。(どどどどうしましょう、目が合ってしまいました!!)「ああの、えっと……注文、どうしましょう。あの、店員さん、ああ忙しそうで……」(慣れない人と話すのは、何時だって苦手です。ああ、なんて溢れそうになる溜息を飲み込みながらなんとか言葉を探します。……思い当たる共通の話題は、たったひとつ。)「あ、の、えっと……あまいもの、好きなんです、か?」   (5/27 21:22:07)


和枕 音子> 
( きみは線の細いかんばせをこちらに向ける。儚げな瞳は見る見るうちにくるくる丸まって、そばかすが特徴的な肌にふわぁっと赤みが差すのが見えた。頷きと同時に口角がきゅっと上がって、形作られるのは可愛らしい笑みである。【 疑心 】____その表情がどこかぎこちないとか、無理してそうとか、そういうことを察したけれど、どうやら作り笑顔と言うわけではないみたいだった。「 ありがとう。」ときみにだけ聞こえるくらいの囁きを。年季の入ったアンティーク調の椅子を静かに引き、革張りの座面に腰を下ろす。僅かな軋みは周囲のざわめきに掻き消された。) ( 誰とも目が合わないよう、まわりを観察する。急に客が増えた…………ときみが言うとおり、本来この店には順番待ちなんか発生するはずもなかったのに。では何故、なんて問うまでもなく、店内できゃっきゃとはしゃいでいるのは年若い女性ばかりだ。) 「 どうせネットで話題になったとか、そういうことだろう、ね。写真撮ってる子も多いみたいだし____、」( ______ぱっちり。) ( 近くのカウンター席に向かわせていた視線を正面に戻したとき、丸々とした両目とかち合ってしまう。一瞬の間をあけて、あわあわと少年は言葉を探し出した。 ) 『 ああの、えっと……注文、どうしましょう。あの、店員さん、ああ忙しそうで…… 』『 あ、の、えっと……あまいもの、好きなんです、か? 』「 甘いものに限らず、食べることは好きだよ。この間は、あっちの……商店街の外れにある中華屋さんで激辛麻婆豆腐を食べたりした、し。」( 甘いものは好きだ。辛いものも好きだ。色々な喫茶店やファミレスを巡っては、美味しいものを探すことが大好きだ。この店だってそうやって見つけた場所であり、目の前の彼は至るところで姿を見るから、きっと同じなのだ。)「 で、注文、注文かぁ。いつもはミルクレープとかアップルパイとか食べてるん、だけど。」「 …………プリンアラモード、かぁ。食べたことないなぁ、美味しいのかな……。」( だいたい中身を覚えてしまったメニュー表を、形ばかりにぱらぱら捲って、ふと目についた名前を口にする。最近はもっぱらプリンにご執心のぼくだ。夕方の家庭科室で頬を落としたあの日以来、〝 プリン 〟という文字列を見ると心がときめいてしまうようになってしまった。) 「 ……んん、どうしよう。きみは何を頼んだの? 」( ぱたぱたと歩き回る店員を横目で流しつつ、今度はこちらから問いかけを。)   (5/27 22:01:16)


キース・ハリソン> 
(貴方が優しい人で良かった、なんて心の底から安心して、思わず溜息を吐いてしまいました。だって、僕がどもるのを見ると、たいていの人は笑うか、怪訝な顔をするかのどちらかなんです。悪く言えば無関心なのかもしれませんが……、それでも、僕はなんとなく嬉しくて、無意識に詰まっていた喉が幾分か楽になるのを感じました。)『 甘いものに限らず、食べることは好きだよ。』(喧噪に包まれた店内では、ほんのちょっぴり貴方の声が聞きづらくて残念です。かといって大きな声を出されても目立ってしまうし、それならば、と僕は上半身をそろりと前に倒し、貴方の声に体ごと耳を傾けました。ふわりと香る、これはシャンプーでしょうか……素敵な匂いにちょっぴり胸が高鳴って、悪いことをしてしまった気がして恥ずかしくなりました。)『この間は、あっちの……商店街の外れにある中華屋さんで激辛麻婆豆腐を食べたりした、し。』「か、からいの……大人、ですね……?」(問いかけに答えが返ってくると、“普通の会話”を出来るようになった気がします。肩に入っていた力を貴方に気付かれないようにそろりそろりと抜きながら、最初に貰った氷水をひとくち含みました。)(僕は辛いものは苦手です。でも、なんだか貴方を否定してしまう気がして言うのを辞めました。本当は、大人、なんて表現してしまうのも良くないのかも知れませんが、一度口から溢れてしまった音はどうしようもありません。どうか貴方が無為に傷つきませんように、と願いながら、口に含んだ水を飲み下します。胸を通る冷たい温度が心地好くて、ぼくは気付かぬうちに柔く溜息を零してしまいました。) (メニューに目を通している貴方の顔を眺めながら、そっと腰を座席に落ち着けました。メニューに落とされる琥珀色は本物の宝石のようで、窓から差し込む陽光がちらちらと貴方の細い指を照らしています。…………ほんのすこしだけ、羨ましいと、思います。可愛らしい髪やお洋服は女の子らしさを煮詰めたみたいです。繕うことの難しいその指先にさえ女の子がぎゅっと詰まっていて、僕はそっと自分の指を隠しました。いいなあ、なんて、思っちゃいけないことなのですが、一度考えたら思考は濁流のように流れ出して止まりません。ああ、どうかどうか、何か別のこと。ぐるぐるとそんな思考を回していてもどつぼにはまっていくばっかりで__)「 …………プリンアラモード、かぁ。」「っ、ぷり、」(そんなときに貴方の口から溢れた言葉は、僕の思考を全部かっさらって行きました。)「あの、あのあのあの、……っ、だい、すきです!!」(僕は思わず大きな声を出しながら、身を乗り出してしまいました。幼馴染みの二人とはなかなかスイーツの話が出来ないですし、ほかにお友達もいないのです。一瞬静まった店内から向けられるざわざわした視線に気付いてしまえば前進が燃えるみたいに熱くなって、しまった、と思いました。)「ああのごめんなさい、あの、つい…………🍮アラモード、このお店のがぼくは一番大好きで、あの……」(ぐわぐわと出来事を反芻してしまう脳みそをくりぬいてしまいたいくらいです。それでもそんなこと貴方には関係無いでしょうから、取り敢えずの言葉を繋げ、氷水を飲み干しました。)___(丁度のタイミングで、店員さんが貴方のお水を持ってきてくれたようです。僕はお水のおかわりをお願いして……貴方はどうするのでしょう、とちらちらと視線を送ってみます。)   (5/27 22:40:29)


和枕 音子> 
( 綴られた文字列を指先でなぞる。ミルクレープ、ミルフィーユ、ショートケーキにフルーツタルト。ちゃんとした洋菓子店もかくやというラインナップ。こじんまりとした喫茶店のくせに、ケーキもドリンクも、なんなら軽食だって種類は過多だ。それゆえにいつも迷ってしまって、結局いつも食べるものになってしまうのだから困りどころ。今日は違うものを頼もう。紅茶じゃなくて…………やっぱり紅茶で、茶葉を変えればきっと気分も変わるだろう。) ( きし。) ( ほんのりと、スイーツみたいな香りが近付いた。『 大人ですね 』と、グラスを傾けて返すきみ。声色からはほんの僅かに緊張が抜けている気がして、それならば良かったとおもうのだ。一声かけただけで人見知りをするようだと分かったから〝 あぁ。相席を頼むなんて、随分酷なことをしたのかもしれない。〟と、ちょっとばかし後悔していた。せっかくのティータイム、ゆっくりと気の置ける状況で嗜みたいのは、きっとみんな同じ気持ちだろうから。) 「 おとな……なんだろうか。ぼくが好き嫌いを持たないのは、食べ物に頓着しないだけだと思っていた。」「 素敵な感性だ、ね。きみ。」( 細い喉を小さく動かして身体を潤す様子を、手元から顔を上げて視界に入れ。ぼくはほんのりと頬を緩めた。一瞬のことで、きみの柔らかそうな目に映ったかどうかは定かではない。すぐに視線は元通り、文字を追いかけ始める。さて、問題は注文だ。さっきからぼくの気を引いてやまないプリンアラモードか、ちょっと贅沢にフルーツタルトか______。)『 あの、あのあのあの、……っ、だい、すきです!! 』「 っ、え。」( がたん! ) ( 先程とは違って、そこそこの音を立てながら、少年は声を上げた。下げた顎はまた再び上向かれる。) 『 ああのごめんなさい、あの、つい…………プリンアラモード、このお店のがぼくは一番大好きで、あの…… 』( 一拍置いて。かあぁぁぁっと、まるで燃えて無くなってしまうんじゃないかってくらい、きみのお顔は真っ赤に染まった。勢い良く水が飲み干されるまで、目を見張っていたのだけど。) 「 ________そっか。きみが好きなら、たぶん美味しいんだろう、ね。」( その小動物に似た一連の流れに、思わずわらってしまいそうなのを抑えて。あぁ、なんてぴったりな場面で店員がやってきた。何だか、タイミングを見計らっていたようじゃないか? 自分の目の前に置かれるグラスに礼を述べては、) 「 えっと。アッサムのミルクティー……アイスで。」「 ……あと、プリンアラモードをひとつ。」( 笑顔の可愛い店員は注文を書き込んで踵をかえした。ぼくが会話をしている間中、いじらしげな目を向けていたきみへ、今度は故意に瞳を合わせる。そうして、ちゃんと、しっかり笑いかけてみるのだった。) 「 おすすめ、ありがとう……ね。」( 続けて名前を呼ぼうとして、未だ名前を聞いていないことに気付いては口を噤む。いきなり問うのは、人見知りくん的にはどうなんだろう。)   (5/27 23:29:04)


キース・ハリソン> 
「ふーー…………」(店員さんに注文している貴方を眺めながら、早く熱がひきますように、なんて手の平でパタパタ顔を仰いでみます。効果があるのかは分からないけど、ほっぺに触れる空気はいくらか冷たいから、きっときっと意味があるはず。そのはずです。 貴方の口からプリンアラモードが出て、僕はちょっぴり嬉しく思います。でも、ほんのちょっぴり申し訳なくも思いました。つい単語が聞こえて反応してしまったけれど、一人で選びたい人かもしれなかったし、あんな勢いで迫っちゃったら、いくら優しい人でも、いや、優しい人だからこそ、自由に選ぶ気を削いでしまったかもしれません。……普段会話ができないぶん、相手との関係を保つ為に先回りして考え過ぎてしまうのは、きっと僕の悪い癖なのです。それでもそれでも、無神経に誰かを傷つけてしまうのはいけないことだから、それだったら我慢した方が良いのです。ああでも、過ぎたことを考えてしまっても仕方がないのも分かっています、これは夜寝るときにする反省会の項目に加えておくことにします。今は取り敢えず出来るだけ、別のことを考えましょう。) (例えばほら、話題の定番で言うなら空模様?それともやっぱりプリンのこと、無難にごはん、それとも学校の、ええと、ええと。無理して話す必要もないのでしょうけれど、無言をやり過ごすのは僕にとってはそれなりに難しいことなのです。考えたくないいろんな失敗が押し寄せて、漸く冷えてきたほっぺがまた熱くなってしまいそうで厭なのです。) ぱちり。(話題をなんとか探そうとまた、目が合いました。)『おすすめ、ありがとう……ね。』(眠たげな瞼の下から覗く琥珀色は、正面から見ればさっきより深いきらめきがあったように思います。長めの髪は動く度にゆらゆらと揺らめいて、無意識に目で追ってしまいます。ああ____)「……ぁ、あ、いやいえあの、えっとその、こちらこそ……?」(これはいわゆる、みとれてしまった、ということなのでしょうか……?目の前の景色が一時だけスローモーションになったみたいで、窓から差し込む日差しがスポットライトのように思えました。ほんの一瞬返事が遅れてしまって、慌てて言葉を探します。それでも、うまく言葉が滑りません。耳がじんじん熱いのは、きっと陽光に熱されているからです。)(……結局、なにがこちらこそなのかも分からないような曖昧な返事を返してしまいました。やっぱりダメだなあ、なんて思いながら、そっと馴染みの店員さんに目配せをします。僕の方が先に頼んでしまったから、きっとこのままでは届くタイミングがずれてしまいます。おすすめして、同じものを頼んだのに、自分だけ先に目の前で食べるのは気が引けるのです。)「えっと…………じつは、その、気持ち悪かったらごめんなさい、」「じつは、まえから貴方のこと、知ってたんです。……とはいってもその、たまーにチラチラ見る程度で、あ、でもその追っかけててとかじゃなくって、えっと……」(やっぱり言わなければ良かったかな、なんて思いながら、それでも、まえからちょっぴり、貴方とお話してみたかったのです。)「えっと…………ぼく、あの。お花屋さんの正面にあるお団子屋さんとか、マリーンっていう喫茶店とか、好きでよく行ってて、その。……時折あの、貴方みたいな人を見かけた気がしててそれで、あまいのすきなのかなって……」   (5/28 00:10:56)


和枕 音子> 
『 ……ぁ、あ、いやいえあの、えっとその、こちらこそ……? 』( きみの台詞は、こんなに歯切れが悪い言葉も無いだろうってくらいで。パーカーの薄い布地を通して、体重を預けた背もたれの硬さを感じる。多少行儀が悪くとも気にせず、恐らく椅子とセットなのだろうダークブラウンのテーブルに、肘をついては頬杖のポーズ。手を扇子や団扇みたいにして風を当てようと四苦八苦しているきみ。何やらうんうん考え込み始めたきみ。次にはぽや、とこちらを見ては固まってしまうきみ。それらをぼんやりと眺めては、そのちょこちょこした動きにこっそり目尻を下げるのだ。せっかく冷まそうとしていたのに、残念ながらあんまり効果はないみたいだった。耳がぽふぽふ赤くなっている。くす。) 『 えっと…………じつは、その、気持ち悪かったらごめんなさい、』( 『 じつは、まえから貴方のこと、知ってたんです。』…………と、きみは変わらず、切りにくいマジックカットみたいな口調で語るのだ。お花屋さんの正面にあるお団子屋さん。マリーンと言う名前の喫茶店。彼があげたおみせの名前は、ぼくがよく足を運ぶ店のひとつ、ふたつ。ぽつぽつ話を進めるたびに、だんだん声音に後悔が混じっていくような気がして、雨降り前の雲間に似た瞳を注意深く見遣る。緊張しいのきみのことだから、たぶん〝 やっぱり気持ち悪がられている? 〟とか考えてしまっているんじゃないか。短いおしゃべりの中で、それくらいは分かってしまうのだ。消えていく語尾を、そっと掬いとった。)「 …………うん、知っている。」「 知ってると言うか、ぼくもきみを見たことがあったから、今声をかけたんだし。」( きみがあげたお店以外にも、学校近くのケーキ屋さんとか、菓子パンがメインのパン屋さんとかでたびたび。) 「 学校も、一緒だもん、ね。学年とか名前なんかは知らないけど。」「 だから、まぁ。」「 ここが混んでいたのも、ちょうどいいきっかけだったのかもしれないなって、思ったり。」( きみに差し出す言の葉を探し探し、決して気持ち悪いなんて思っていないんだと伝わるように、喉をふるわせる。なんだからしくない発言までしちゃったところで、次に出すカードがなくなった。) ( 無言の間は、たった数瞬。) 『 ________お待たせ致しました。』( プリンが来た。) ( ふるふる震える金色の個体が運ばれてきた。) ( お互いの前に置かれるプリンたち。ティーポットとカップはいつも通りに見知った姿。正直助かったと思った。ぼくも話題を探すのは得意ではない。さぁ、食べようか____と言いかけて。 ) 「 ……あ。名前。」「 和枕音子です。」( よろしくお願いします。ひょこんと軽く頭を下げる。リボンの端がちらちら揺れた。)   (5/28 00:58:05)


キース・ハリソン> 
『 …………うん、知っている。』「……っえ、」『 知ってると言うか、ぼくもきみを見たことがあったから、今声をかけたんだし。』「そ……、っか。」(一世一代、……とまでは行かずとも、それなりに勇気を振り絞ったそんな告白は、どうやら告白になんてすらならなかったみたいです。安心と、それからほんの少しの落胆のような感覚で僕はそうっと息を吐きました。)「えへ…………じゃあ、その。おたがい、へへ。」(あぁでも、チラチラ気にしてしまっていたのも、なんとなく目で追ってしまったのも。なぁんとなく、きっかけを探していたのも、僕ばっかりじゃあないのなら、ちょっぴり嬉しく思います。何だか胸の内に凝り固まっていた緊張すらも全て溶けてしまったみたいで、無意識に丸まっていた背をくっとのばし、僕は恥ずかしいのを誤魔化すみたいに、小さく笑いました。) 『 ________お待たせ致しました。』「あ、っ…………ふ、へへえ……」(丁度のたいみんぐで、それは僕らの間に置かれました。届く時間を揃えて貰った二つ分は、それぞれのお皿の上でゆらゆらと蠱惑的に揺れ、また真っ白なクリームと色鮮やかなフルーツは各々の存在を確かに主張しながら、それでいて主役であるプリンの存在を決して疎かにはしないのです。)「へへ、えへ……じゃあ、あの、」『……あ。名前。』「あ。」(ああまた失敗です、これのことになるといつもそうなのです。)「な、まく……ねこ、さん。へへ、可愛い、名前ですね」「僕はキース、キース・ハリソンって言います。友達はみんなきぃ、って読んでくれるので……その、できたら、そう読んでくれると、うれしい、です」(あらためてたたずまいを直したのなら、僕もおんなじように軽くお辞儀を返します。……これは、実は僕にとってはちょっとした冒険、に近いのです。僕は友達が好きですが、あんまり多くはありません。だからこそ好き……なのかも知れないのですが、とりあえず。) 「その……ぼく、あの。お願いが、あって。」(スプーンで一口掬い、甘くとろけたクリームとカラメル、プリンの黄色を丁度良く口に運びます。何度味わってもほっぺが落ちそうなくらいに幸せなその味に包まれながら、僕は小さなお願いを切り出しました。だって……、ちょっぴり難しいお願いも、幸せな時ならなんだって受け入れられそうな、そんな気がするんです。)「ぼく、その……女性限定のお店、とか……その。女の人ばっかりのお店が、“苦手”、で。だから、その……」(ちょっぴり俯いてしまいそうなそんなないようだって、🍮があるから大丈夫なのです。🍮、すごいんですから。)「その……今回だけ、じゃなくて……たまぁに、でいいので、その。」「一緒にまた、その。おいしいの、食べれない、かなぁって……」   (6/28 21:53:44)


和枕 音子> 
( 『 へへ 』、『 えへへ 』と、よく笑うひとだと。それは何かがおもしろいからなのか、それとも照れ隠しか誤魔化しか。はっきりとはしないけれど、決して愛想笑いとか悪感情によって表されたものではないことだけは、ぼんやりとしたぼくにだって分かるのだ。『 あんまり表情が変わらないね 』。なんて、よく言われるくらいには仕事をしないサボリ魔の表情筋も、きみを見てると働き出すんだからまったく不思議なもの。〝 ____こんな子もヒーロー志望だって言うんだから、世も末と言うか……。〟いや、もしかしたらぼくみたいに科学者志望だったのかもしれないし、そういうのを問うのはタブーだろう。にこにこ不器用に微笑むきみを目の前にして緩んだ口元も、思考に負けて少しだけ口を噤んでしまったことも、丁度よく運ばれてきた黄金色によるものだって、きみは勘違いをしてくれるだろうか。)『僕はキース、キース・ハリソンって言います。』「 きーす、はりそんくん。」『友達はみんなきぃ、って読んでくれるので……その、できたら、そう読んでくれると、うれしい、です 』「 ん、わかった。……きぃくん。きぃくん、ね。」( 口の中で幾度か繰り返し呟いた単語は、ふんわり甘くて、けれどそれだけじゃなくって、ほんのりほろ苦いような______まさに、今スプーンで突っついているプリンみたいな味。名前なんてものはただの記号でしかない、とばかり思っていたから、こんな響きで舌根を震わせるのは初めてのことだ。口腔に放り込んだカラメルとホイップクリームのせいなのか、はたまた。)( 喉を通っていった甘味は、甘さと苦さ、調和の取れた良い風味だった。美味しいものは美味しい、不味いものは不味い。そういう風にしか出来ていない味覚と語彙力が、ちょっと残念になるくらいには。おすすめだと言うきみは、やっぱり間違っていなかったみたい。舌鼓を打つ、と言わんばかりにゆっくりとスプーンを運んでいると、きみは『 お願いが、あって。』と言葉を発した。) 『ぼく、その……女性限定のお店、とか……その。女の人ばっかりのお店が、“苦手”、で。だから、その……』( 言い淀む。先を予測することは出来るだろう。けれど先に言ってしまったら、きみは慌てたり肩を落としたりしてしまうんじゃないかって思ったから、ぱちりぱちりと瞬いて、遮らぬよう続きを待った。) 『一緒にまた、その。おいしいの、食べれない、かなぁって……』( 何度も何度も躓いて、ようやくきみの『 お願い 』は一区切り。) ( まぁ、そうだろうなぁ。女の子溢れる空間に、1人だけ突っ込んでいくのは男の子として些か躊躇うこともあるだろう。…………でも、きみをその理由に当てはめるには、何だかちょっと違う気がして。男の子とか女の子とか、きみの言う『 苦手 』はそう言う問題に基づいたものじゃあない気がしたんだ。) ( 真っ赤に染まったイチゴを頬張りながら、更に瞬き3回分だけ答えを考える。)「 女の子だらけの場所に、1人で入っていくの。ぼくもちょっとだけ苦手だ。」( ほら、最近の女の子ってすぐに言うじゃない。『 ぼっち、かわいそう 』って。) 「 だから、一緒に来てくれるのなら都合が良い。きみのセンスはとてもぼくの舌にあうみたいだし、」「 だから、まぁ。」「 こちらからもお願い。定期的…………とは言わないまでも、良いとこが見つかったら、とかでもいいから、さ。」   (6/28 22:55:47)


キース・ハリソン> 
『ん、わかった。……きぃくん。きぃくん、ね。』(なんでもないようなそんな呼称は、きっと君にとっては何の変哲もない、あたりまえのものなのでしょう。女の子にはちゃんをつけて、男の子にはくんをつけて。そんなのは世の中に蔓延っている一般的なもので、だから、だから誰が悪いという話ではないんです。強いて言うのなら……いいえ、それはきっと、だれかのせいにするのであれば、普通に生まれられなかった、僕自身のせいなのです。)「えへ……ねこちゃん、ねこ、ちゃん。えへぇ」(君の名を噛み砕くみたいになんども呼び、その感触を確かめては呑み込んで、曖昧に笑ってみせて。あぁ、プリンが甘くて、パインが甘酸っぱくて良かった、なんて僕は思うんです。) (ぱち、ぱちり、)(咀嚼のせいか、それともそれとも、ほんとうは望ましいものではなかったからでしょうか。)「…………ぇ、と……」(ほんのちょっとの静寂は、勇気を出して投げてみた提案をいたずらにつついてしまうものですから、浮遊したそれはぐらぐらと揺れてしまいそうになるのです。そろり、そろりと声を零して取り繕ってしまおうとして、)(ぱちり。)『女の子だらけの場所に、1人でいくの。ぼくもちょっとだけ苦手だ。』「……!」(あぁ、なんて息が漏れてしまいそうな僕を、どうかどうか、許してください。誰かの苦手を安堵するなんて、間違っている事は分かっています。分かっているのですけれど、どうしても、どうしても。)『だから、まぁ。』『こちらからもお願い。』「……!うん!えへ、うん、ありがとう、……へへ、よろしく、ね。」(笑みがこぼれてしまうのは、なんだって仕方のない事なんです。だってだって、友情だって言葉だって、恋慕だってなんだって、一方通行なことほど、悲しい事ってありませんから。溢れてしまう笑い声はきっと聞き心地の良い物ではないでしょうから、唇をきゅっと互いに押し当てて隠しながら、お冷やを一口、くちに含みました。) (_______店内は最初の喧噪をなんとかいなしたようで、段々と、いつもの静けさと、それを邪魔しない程度のささやかな賑わいを取り戻し始めます。窓の外の鳥の声に耳を傾ける余裕も段々と生まれてきて、僕はそうっと、いつもの癖でつい、目をそろ、と半分閉じながらうっとりと耳を澄ませてしまうんです。口の中に広がるいろんなフルーツの甘みや酸味、それらを全て柔らかく受け止めつつ、それらを引き立たせる脇役になんてならない確かな主役たるプリン。……身をつつむいろんな感覚ひとつひとつをなぞっていれば、ぼくはつい、話すことを忘れてしまうんです。……きっとこういう所も、ぼくに友達の出来にくい所以なんだと思います。)「…………っは、ごめんなさい、あの、夢中でたべちゃって……あの、こういうのって楽しくお話とかした方がいい……んですかね……ぼくあの、その。お話……得意じゃなくて……」(忍びなくて俯いた視線の先にある僕の器に残っているのは、サクランボのヘタと種。あんまり綺麗じゃあありませんし、空っぽなのが恥ずかしくて、カラン、とスプーンをかぶせたのなら、僕は心地好い胃の満足感と落ち着く喧騒に、つい眠くなってしまいそうになりました。いけない、とおもいつつ重くなった瞼はとろんと垂れて、快活に開こうとするのは難しくなってしまいます。)「あの……ふぁ、へへ…………おいしい、でしょう。ここのプリンアラモード、いっちばん……えへ、おすすめ、なんです。」   (6/28 23:38:25)


和枕 音子> 
『えへ……ねこちゃん、ねこ、ちゃん。えへぇ』( 曖昧な笑みとは裏腹に重ねられる名前は、とても自分のものとは思えないほどにやさしく柔らか。自分の名前、ぼくも嫌いじゃあなかったから。だって、他のみんなとは違って自分で選んで自分で救いとった文字列、初めてぼくがぼく自身で選んだものだ。それを大切に大切に呼んでくれるきみは、きっとたぶん丁寧で良い人だ。) ( きぃくんは過去一番にはっきりした返事をして、今日一番にほやほやの笑みを浮かべて、ふくふくと肩を揺らす。お冷のつめたさは、その頬の赤らみを取り去ってしまうことはなさそうだったけれど。) ( なんとなくその様子から目を離して、視線の先を欠けて不格好になったプリンに向ける。よくよく磨かれた銀色には歪んだ灰桃色の自分が映っていて、その頬が目の前のきみみたいにゆるゆる緩んでいるのがわかった。人のことは言えない。ぼくも丸っこいティーポットから紅茶を注いで、カップを傾ける作業に邁進することにした。喉を潤す暖かなそれは、慣れないことを口にしたことで入っていた肩の力をほうっと抜いてくれて、あんまり甘くない味だからか、より一層プリンが美味しく感じるのだった。) 『…………っは、ごめんなさい、』( 『 夢中で食べちゃって、』ときみが発言するまで、ぼくも喋ることを忘れていたからおあいこだ。きぃくんのお皿は空っぽ、ぼくの皿には取り残されたさくらんぼ。それをスプーンの先っちょでつんつん突っつき転がしながら、慌てて首を左右に振る。)「 あぁいや、別に。ぼくも無言で食べちゃってた、し。」( 普通だったら、写真を撮ってSNSにあげてみたり。あれが美味しいあそこは微妙だった、なんて雑談に興じるものだろうか。)「 それに、」( …………普通、だったら。) 「 必ずしも、楽しく会話をしなければいけないってわけじゃあないと、おもう。ぼくだってお喋りはきらいじゃないけど苦手だし。」( きみとぼくの苦手なもの、これでふたつ。)「 その時思いついて、相手と共有したいって思ったら喋る、くらいが……ちょうどいいんじゃないかなぁって。喋らないからって、居心地が悪いわけじゃあないんだし。 」( 「 それともきみは、無言の時間はきらい? 」と、眠たげなきみへ首を僅かに傾げてみせて。思考に耽ってぼんやりとしてしまう癖があったから、よく黙り込んでしまうのはちょっとだけ申し訳なくて、きみが嫌だというのなら気をつけるつもりだった。) 「 おいしいよ、これ。」「 初めて食べたのが、きみのおすすめで良かった。」( そう、ぽたりと呟いて、最後に残ったさくらんぼを舌の上に乗せる。ころころ味わうみたいに転がすのは行儀が悪いと知っていたけれど、やめられない。これもまた、ぼくの癖みたいなものだった。)   (6/29 00:21:09)


キース・ハリソン> 
『それともきみは、無言の時間はきらい?』「ん、ううん! ぜんぜん、……へへ、その、ちょっとだけ……むずがゆい? かも、」「……でも。」(こて、なんて君が首を傾げる度に揺れるリボンやその髪は、ラズベリーかイチゴか、ルビーチョコにビターチョコを合わせたみたいだ、と僕はぼんやり思いながら、ぶんぶんと首を横に振りました。それは何だか君のまろやかにマーブルで、つるりとしながら甘く苦くて、新しいお友達になれて嬉しいのにどこかふんわり溶けて消えてしまいそうな寂しさが、そう思わせたのかも知れません。)(フルーツは心地好く胃を重くして、午後の陽光は窓から柔らかく二人をつつんで。それはなんだかきっと、プリンにのる生クリームみたいに。どこかこそばゆくて、体の芯がさわさわ撫でられるような、カラメルみたいな厭わしさを、“それはそうではなくてはならないもの”に、あっというまに変えてしまうから、不思議な物です。)「このこそばゆい、の。……ぼく、けっこう、すき、かも。」「…………へへ。」(ぽつぽつと零される呟きは、優しくて柔らかい。店内の喧騒と声量自体は同じくらいで、気を抜いてしまえば鼓膜を過ぎて溶けてしまいそうなくらいで、それでもどうしてでしょう、君の声は僕にまっすぐ届くものですから、それはなんだか半ば魔法みたいで不思議に心地好いのです。こくり、と揺れてしまいそうな顔を頬杖をついて支えながら、僕はあらためて君を見ました。琥珀色のその瞳は、きっと固まる前の液体プリンのそれに似るのでしょう。ほらだって、お日様が当たって透き通って、それは柔らかく瞳の奥の色を覗かせるんです。……こんどは自分でプリンを作ってみたいな、とか。でもきっと、ここのプリンは越せないんだろうな、とか。……長いまつげと女の子らしい細くて華奢なその首が、どうにも羨ましくて仕方ないな、とか。そんな事をぽつぽつ考えながら微睡んでいれば、そのまま寝てしまいそうになるんです。)「…………ふふ、また。なんか、ね。」「こういう日が、ね。ずっと続けばいいな、って。……思っちゃった。」(特別おおきな事件のないせいで、ヒーローの僕らは暇をして。そうして行った喫茶店で、新しいお友達が出来ちゃったりして。一番の好物をのんびり食べて、心地好い音に互いに耳を澄まして。平和のそれに微睡んで、それから、それから。)(___うっとりと目を閉じて、深くゆっくりと息を吸って、それから、吐いて。柔らかい温度は胸の中をいっぱいに埋め尽くして、だからぼくは、なんだか…………)「________っ、ぁ、……いけない、ごめんねねこちゃん……、寝ちゃいそう、だから……帰んなきゃ、だねぇ。」(…………どうやら、ほんの少し、眠ってしまったみたいで。いけないいけない、と頬を叩いて立ち上がり、僕は二人の伝票をとりました。)「へへ……今日は、ぼくがプリン食べて欲しかった、から。」「また、たべようねぇ。」(へにゃ、なんて半分閉じかけた寝ぼけ眼で君にそんなことを言いながら、僕は君とそろってお外に出ます。昼を過ぎたおやつ時、道は忙しなく歩く社会人や、休日を満喫しているらしいご婦人方など様々に。……そういう、平凡な感覚が、続けば良いと、思うんです。)   (6/29 00:56:30)


和枕 音子> 
『このこそばゆい、の。……ぼく、けっこう、すき、かも。』( ぶんぶんぶん。勢いよく振られる首と、合わせてふわふわ浮かんだり落ちたりする髪の毛。白金色がちらちらと日光に焼けて、透けて、まんまる月みたいだなぁって。でも月光のように無機質じゃあなくて、太陽光が混じった暖かな…………朝方の、月。あと思いつくのは昼下がりの霧雨、太陽にちょっとだけかかった薄い朧雲。〝 どっちつかず 〟はきっと、必ずしも悪いことじゃあないのだと、きみを見ていると思うのだ。優柔不断と言えば聞こえは悪いけれど、どちらにも寄り添えるって、優しさの象徴だとも言えるから。) 『 こういう日が、ね。ずっと続けばいいな、って。……思っちゃった。』( キース・ハリソンと名乗ったきみは、空に飛んだ風船に似ている。) 「 ずっと、か。」「 そうなれば、きっと。」( 「 素敵だろう。」とは、口には出さずに視線を下げた。波紋のない紅色に映るぼくは、ちいさくて。何年か前からずっとずっと、このままで。でも、2年生になってから、抱えきれないほど色んなことがあったんだ。 ) ( 家庭科室で妖精とやさしいカミサマと会った。時間外れの食堂でサンドイッチ好きのひとと会った。お休みの日にスケッチブックで喋る女の子と会った。アキカンを力いっぱい振ってみたりも。図書館にある『 ヒーローについて 』という本は、まだ貸出中。学校用のトートバックには、未だに返せてないゴーグルがある。) ( ………………あとは、まだ。ヒーローとして、上手く動けない自分がぽつんといて。 ) ( 今日がずっと続いたなら、進み続けるみんなに置いていかれているなんて思わずに、悩まずに、いられるだろうに。)『________っ、ぁ、』「 、っと、」( カップの中は、空になっていた。) 「 あ、あぁ…………ごめん。ぼくもなんだか、ぼうっとしていた、みたい。」( きみの立ち上がるのに合わせて、ぼくも腰を上げて。軽い音を立ててドアベルが鳴るのを背中に聴きながら、きみをちらりと見上げる。) 『 また、たべようねぇ。』「 …………うん、また。」  「 ____________またね、きぃくん。」( きみは、変わるんだろうか。) ( ぼくは、変われるんだろうか。) ( それでも、このお店のプリンはきっと変わらないから。不安になったならまた、きみと。)  ____〆   (6/29 01:50:55)

キース・ハリソン> 
「…………おかえり、れっど。」(ぼくは、君の帰りを待っていました。僕らの家のちょうど真ん中にある通り道のコンビニは、やや日の暮れかかったこの街にぽつんと浮かんで寂しそうに賑わっていて、ぼくはそこでココアをふたっつ買いました。)(夕暮れの赤を背負い、歩いてくる君は逆光でくらく見えました。僕は何だかそれが寂しくて、いつもみたいに明るく声をかけられたら良かったんだけど、僕はそれがうまく出来ませんでした。)「これ、あげる。……………ねーえ、」(ココアを手渡して、君の隣に立って歩調を合わせて歩きます。僕よりも短く伸びている影の先端はいっつも元気にとげとげで、それでも今日は何だか……梅雨のせいかもしれないけれど、なんだかしおれて、しんとしているように見えたんです。だから、)「ね、ね。……ぼく、ほし公園行きたくて。ついてきてくれない?」(僕らがよく遊んでいた、歩いてすぐの小さな公園に、僕は君を誘いました。僕はちょっぴり寂しいとき、いつもそこに行くんです。できることなら、きみと手を繋ぎたくてそっと手を伸ばしました。)   (6/8 00:56:16)


秋守 真紅郎> 
「…ん、ぁ。ただいま、……ありがと。」(彼は君から受け取ったココアの缶を手に取って、ぼーっとそのパッケージに視線を落として歩みを進める。いつもより足取りが重いのはクリミネル越しに叩き続けた拳の感覚がまだ痛くて、辛くて、それが遺っていたからだろう。もしくは、背負った柱時計が重いからだろう。重くて重くて、重苦しくて、息が詰まるほど耐えかねてしまったから、ほんの少しだけ疲れてしまったのだろう。)「…え、……あー…嗚呼、ホシ公園な!お前好きだもんなあ、…昔なんだったか忘れたけど、お前が居ないって成った時にもお前はあそこに居たっけな、…あれ?違ったか?いや、確かそう、だった……はず!な?」(ちゃんと、話は聞いていたつもりだけれど反応が遅れてしまった。聞いては居たが自分の中で空回りしていたその言葉を捉えるのに時間が掛かってしまっただけだ。大丈夫。彼はにぃっと笑ったり、人差し指をピンと立てて昔の事を思い出したり、自分の記憶を疑う様に顎元に手を当てたり、大きな身振り手振りで感情を装いながら、最後はにっと笑みを浮かべて君の表情を覗き込むだろう。)   (6/8 01:10:20)


キース・ハリソン> 
「そうだっけ?へへ……ほら、いこ?」(たた、とちょっと小走りで、僕は君の数歩先へ行きました。そんな昔の弱虫の話なんて、忘れて欲しいのに。でも、ぼくが好きなのを覚えていてくれたのが嬉しくてはずかしいので、知らないふりをしておきます。)(伸ばした手は空ぶって、君の手は忙しなく泳ぎます。きっと他意はない……とは思います。それでも何だか寂しくて、それでもにっと笑ってくれる君の表情はあんまりにいつも通りだから、僕も笑ってそう返して、後ろ手でココアをきゅっと握りました。)「へへ……ここ、ね。好きなんだぁ。夕日がね、まっすぐ届くでしょ。公園がね、オレンジで、ぐわぁーってなって……暖かくて。」(公園に入って僕が真っ先に向かうのは、四つ並びの錆びたブランコの三番目です。昔はその横のジャングルジムが好きだったけれど、体が大きくなってしまって、窮屈になってしまいました。)(まっすぐに届く夕焼けは、昔と変わらない赤と黄の混ざった夕焼け色で公園を満たしています。僕は夕焼けに真向かうようにブランコに座り、君に隣に座るように、そっと目配せを送りました。)「……最近、体調は平気?ほら……目が覚めてから、まだあんまり時間も浅いし、さ。」(何から話せば良いのか分からなくて、そんなことを小さく、ちょっぴり明るく零します。……それでも、それはからっぽのハリボテの言葉で……いいえ、心配していない訳ではないんです。ただ、今ぼくが君に言いたいのは、そんなことじゃあなくって。きっと返事を貰っても「そっか」、くらいしか返せずに、また沈黙が落ちてしまいます。)「…………あの、あの、ね。」(ぼくはやっぱり話すのが苦手で、こういうとき、何を話したら良いのかわかんないんです。ただ、それでも何かを話していたくて、その寂しいツンツンが夜に冷やされてしまわないか心配で、それでもどうすればそれを暖められるかが分からなくて。君の事を完全には理解していないし、こんなのお節介かもしれない。だからぼくは、ありのまんまに、ありのまんまの、それでいてほんのちょっぴり遠回りな言葉を投げるしか、ぼくはきっと出来ないんです。)「……えっと。……シールダーズって、すごかったんだね、って。ヒーローって、難し、い。」(地面に落ちる影は、細く、長く。)   (6/8 01:37:01)


秋守 真紅郎> 
「嗚呼、…大丈夫だよ。炬火の爺さんは厳しいけど、でも、なんとかなってる。」(ブランコの端っこに座って、それから、包帯がバンテージ代わりに巻き付けられた手のひらで鎖を握る。骨が砕ける程の修行と、肺が潰れてしまいそうな程の鍛錬と、気が狂いそうな現実を前に、なんとか、何とかなっているのは、それは君が居るからって云うのも凄く大きいんだろう。あともう一つは、憧れを追う事に忙殺されて、涙を流す暇なんてなかったから。強くならなくちゃいけないんだ。ブルーみたいに賢くも無い、イエローみたいに、君みたいに優しくも無い、ただ愚直に嫌な事は嫌だって喚いて暴れる事しかできない自分のままじゃきっと誰も救えやしないから、ピンクみたいに、誰かの支えにも成れないのなら、誰も幸せには出来ないから、このままじゃダメなんだ。だから、君の言葉の真意は彼には分からないが、それでもその言葉の中から手探りで見つけ出した意味を汲み取って、それから、口を開く。)「そう…だな、そうなんだっ!」(吹っ切れたように彼はブランコを思い切り漕ぐ。地面を蹴り、宙を蹴り上げる様に思い切り。全力、いつだってそれだけが彼に出来る唯一の事だ。)「難しいんだよ、すっごく。今日もダメだった!笑っちまうよなぁぁ!」(力任せに漕がれたブランコの鎖はがしゃん、がしゃん、と音を立てる。)「_____っ、笑っちまうよなぁ…ッ」(いっそこの弱音も鎖の音で掻き消されてしまえと思う。本当に自分は彼女を助けられただろうか、彼女たちを救えただろうか、彼らを幸せにできただろうか、あのまま居た方が幸せだったりしたのだろうか、なんて思うと、上手く笑えなくて、何が正解だったのか、分からないんだ。でも泣いちゃだめだ、泣く権利なんて自分には無い。感傷に酔っている場合じゃない、救えなかった自分という立場に酔っているみたいで気持ち悪い、そんな暇は自分には無い筈だから、進まなきゃならないんだ。止まってしまったら__俺は、__________俺は。)   (6/8 02:03:37)


キース・ハリソン> 
かしゃん、かしゃん。(泣くみたいに鳴くその音を聞きながら、ぼくは君に視線をやりました。動かないぼくのブランコはしんとして、声も出せないまま金属の冷たさを保っています。あたたかい夕日がぼくの涙腺をじんわりと溶かしてしまいそうで、ぼくもそうっと熱から逃げるように、ゆっくりゆっくり、地面を蹴ってみます。きっと、君ほど大きく蹴れはしないけれど。)_____(ぼくは、友人を。)「ぼくはね。……れっどが、好きだよ。」(友人を、愛しています。ぼくには君の考えていることは分かりません。今日何があったのか……、今日行けなかったぼくには、レポートの見れない今はまだ、なんにも分かりません。それでも、太陽の熱がまっすぐ届くこの場所だからでしょうか。ブランコの鎖の錆がざらついて、手に赤さびを残すからでしょうか。……こころが、じんわり痛いんです。)「だから、だから…………、」(ぼくは、君が好きです。ブルーや、……他の友人達と同じように、君に笑っていて欲しいと思います。それはぼくや、知らない有象無象や、形の見えない世間や世界なんかよりも、ぼくにとっては大事なことで、大事なものです。)「ぼくは…………、ぼくは。」(ぼくはきっと、ヒーローにはなれません。ぼくはきっと、レッドやブルーみたいに。……ピンクみたいに、強い、かっこいいヒーローに。みんなと肩を並べて戦える、強い人には、なれないんです。ぽつりと雫がこぼれてしまうのは。ぼくが、ぼくがきっと、君みたいに強くはないから、なんです。)(ぼくは、世界が傷つこうが君が笑っていられるなら何でも良いと、思ってしまうんです。ピンクが死んじゃうくらいなら、それでブルーがレッドを恨むなら。それでレッドが傷つくくらいなら、僕らは、ぼくはヒーローになんてなりたくなかったんです。世界が傷つこうが知らないふりをして、僕らはずっと、あの遊園地で何も知らないまんま、ただシールダーズに憧れてはしゃいで居られれば良かったと、本気で思うんです。)「……へへ、」(でも、きっとそんなことを言ってしまえば、ぼくは君と、ブルーと一緒に居られなくなってしまうから。小さく笑って、下手だけど、誤魔化さないといけないんです。)  「あーぁーー“ーーーっっっ!!!!」(ぼくは、大きく地面を蹴って、大きく大きく声を出して、喉を擦って叫びました。かっこいい張りのある声なんて出なくて、かすれてうわずって、ふらふらの揺れる声だけど、それでも、弱音が溢れてしまうよりは、随分マシなんです。)「うーー…………、えへ、くやしい、な。ぼくも今日、行けたら良かった。……なんにもできないかもだけど、だけど……」(君と一緒に無力感に浸るふりをして、ぼくはそんな嘘を吐くんです。君に追いつきますようにと願いながら強くブランコをこいで、ぼくもかしゃかしゃと鎖を泣かせました。)「ねえれっど、競争、しよ! どっちの方が、たくさん”ヒーロー“、できるか!」(涙でべしゃべしゃのほっぺは、夕日できっと、熱いんです。)   (6/8 02:34:55)


秋守 真紅郎> 
「俺も、…!! お前が好きだぁあぁぁあああッッッ!!!」(彼は更に大きくブランコを漕ぎ、がしゃん、がしゃんと鳴る鎖の音も掻き消すくらい大きな声で叫んだ。そりゃもう、近状迷惑だってくらい。愛の告白に応える様に、全力で。それからもっと、もっと、と地面と鎖が平行になりかねないまでに角度を鈍くしていく。)「ブルーも!!!ピンクも!!炬火の爺さんも!!!みんな、みんな、みんな!!みんなに幸せになって欲しい!!!」(そう、そうなんだ。エゴかもしれない、傲慢かもしれない、独りよがりで自分勝手で、稚拙な考えかもしれない。けれど、嫌なんだ。誰かが目の前で不幸になって、手を伸ばす事も出来なくて、手を伸ばして掴んだとしても一緒に光の差すところまで走れないのは、そんな自分じゃ嫌なんだ。そんな自分を自分だと云いたくはないんだ。彼は勢いに任せてブランコから飛び降りる。着地の事なんて考えてないから、地面に到達した脚は勢いと過重に負けて耐え切れずにそのまま膝を曲げてしまい、無様に転がってしまうだろう。勢いで柱時計も少し先に投げ出されてしまう。)「絶対に負けねえ!!!全部、全部!ぜええええんぶ!!!救ってやるんだ!!要らねえって云われても、向かねえって云われても、全部!!!救ってやるんだぁあぁあああああ!!!!」(大の字に地面に転がって学ランも土埃まみれで、髪の毛にも土がついて格好悪くて泥臭くて、どうしようもないくらいの無力感と、仕方がないくらいに泣き出しそうに縮こまる喉を殴り飛ばすくらいの大声で、君に宣言された競争に乗る。そうだ、それでいい、弱音なんて捨て置け、これで良いんだ。進め、涙は無関心な風が拭ってくれる。歩め、後悔は景色と共に流れてくれる。走れ、止まったら俺は、俺じゃなくなっちまう。)   (6/8 03:27:11)


キース・ハリソン> 
(れっど、レッド。いつか、いつかぼくの話を聞いて欲しいんです。一人で抱えきれる程ぼくは強くなくて、潰れてしまいそうなんです。)(心臓が、痛いんです。同じ言葉を返して貰っているのに、きっとぼくの思う君への好きと、君の言う好きの範囲も、意味も、違うんだろうなと邪推して、意味も分からずに悲しくなるんです。ぼくはきっと、君が世界に進んでいくのを喜べないんです。傷つきながら世界を愛するのを喜べないんです。友人を、友人ばかりを愛してしまって、友人の愛しているぼくから見た有象無象を愛せないんです。きっときっとぼくだけが知ってるこの差異が、どうしようもなく痛くて、痛くて仕方がないんです。ずきずきって、じわじわって、ぐじゅぐじゅって泣きそうになるんです。みっともないけど、先に泣いといて良かったな、なんて思いながら、ぼろぼろと言葉を涙に溶かすんです。だれにも救われないように、誰にも聞かれないように。ぐしぐしと裾を瞼に押し当てて、ちょっぴりいたいのを我慢しながら、嗚咽をこっそり隠すんです。)「……っ、ぅ“~~~……、」(いつか、いつかぼくらがヒーローをやめれたら。そうしたら、ぼくの話を聞いて欲しいんです。)(がしゃん、がしゃん。地面と水平になったそれは、ぼくなんかじゃあきっともう手の届かない所にあるんです。それでもなんとかなんとか追いつきたくて足を動かせば、それはブランコのリズムと段々ずれてしまって、高度はゆっくりと落ちてしまいます。落ちたくなくて藻掻いてあせれば焦るほどやっぱりぼくは沈んでしまって、追いつけなくて泣きそうで____、) (ぽたり、と一つ大きな雫がこぼれ落ちて、それが夕日を閉じ込めて。ぼくはそれに一瞬目を奪われて、ぱっと視線を君に向けて、ぼくは、ぼくは、どうしよう、どうしましょう、わらってしまったんです。だって、だって君は空を飛んでいて、それはまるで、まるで。)  (__まるで、太陽のようで、ヒーローみたいで。それはむかし、ぼくをすくい上げてくれたあの頃の君と、ちっとも変わっていなかったから。)____「ちょ、ぇ、れっど!?!!」(ほんのちょっぴり呆然として、君の叫びがじんじんとした熱で公園を埋め尽くした頃。ゆるやかに落ち着いて揺れるブランコから転ばないていどに飛び降りて、ぼくは君に駆け寄りました。土埃に乱れたツンツン髪は、湿気なんか最初からなかったみたいにボサボサで。仰向けの君の顔にはおんなじようにオレンジが射していて。)「あーあ、もう、どろんこにしたらまた怒られるのに……、ふふ、へへ。」(ぼくはそれを覗き込みながら土を手で払って、起こすことも出来ないまんま隣にぺたりと座り込みながら、遠くのフェンスに沈んでいく太陽を眺めました。夜ご飯の匂いを乗せた風がひゅるりと抜けて、ぼくの短い髪を揺らしました。そっと指を伸ばして、君の頬についている泥を撫でました。……もっとこの指が、細くて、華奢で、もっと、もっと強かったら。……なんて、意味の無いことを考えて、それを誤魔化すみたいに、君の鼻をぎゅってつまみました。) 「っふ……へへ。かえろ。れっど。」(溶けた涙腺はゆっくりと塞がって、ぼくは払った土で汚れた手で、そのままぐしぐしと顔を擦りました。) 「いえに、かえろぉ。」   (6/8 04:12:33)

エレナ・ドラグノフ> 
放課後の図書室。橙色が差しかかって、影に当たる場所はより黒さを増していた。『……ん。』いつの間にか寝てしまったのだろう。顔が置かれていた本は目を覚ました腕が痛く、背中や腰から鈍い痛みが走った。『___げ、昼休みからぐっすりだったか。』昼休みあたりにここに勉強をしに来た記憶はある。そして……今や唾液やら寝苦しくて動いたからか、力がかかってしわくちゃになり破けた、無惨な状態の教科書を開いた記憶もある。しかし_____勉強なんてした記憶はないから、つまりバカみたいな話、教科書を開いてさっさと寝てしまったのだと考えられる。『えー、と。貴様は確か……じゃない。思いっきり、寝ていたか?私……。』肌がほのかに赤み、ソバカスの目立った西洋風の顔立ち。温和そうな雰囲気と正反対に見えるピアス。男子とも女子とも言える姿が、寝ぼけまなこに映った。彼ないし彼女が何をしているのか、すりガラスの向こうのようにぼやけて見えないけども____先程見ていた夢。私の下着を間違って持ち出したハチロクを一晩中、馬鹿者と叱るという悪夢を鑑みるに、随分悪態を着いたり寝言も多かったように見えて_____   (6/9 22:38:18)


キース・ハリソン> 
(ぼくはしばらくの間、その人に魅入ってしまっていたらしいことを、その人の目が覚めてから気が付きました。はっきりした目鼻立ちは彫刻みたいで、ゆるくうねる黒髪は夕の光を浴びて、ピアノ線みたいにつやつやと光を滑らせています。大人びた雰囲気と、遠めから見てもわかる大きな体躯は呑まれてしまいそうな存在感を放っていて、それでもそれは恐ろしさや威圧感を湛えるものではなかったから、ぼくはただ呆然と、ミロのヴィーナスに圧倒される小さな子供のように、じっと息を呑むことしか出来ませんでした。)(のそり、と君が目を覚ましたのをかわぎりに、ぼくは咄嗟に磨りガラスのついたてに隠れてから、その端からそうっと君を覗き見ます。)「え、えと! あの、えっと、その、ぐっすり……?すや、すよ……」(開けられた瞼から覗く水色はぼくのそれときっと同じなのに、君のそれは艶やかな透明感を持っていてキラキラしているようにみえました。)(いいなぁ、なんて思いながら、ぼくはこっそり隠れたまんま、配架予定の返却本を胸に抱きました。)「あの、ぼく、図書委員で…………あの、おねえさんが良ければあの、中の事務スペースのソファ、貸しましょうか……?」(授業が終わって、そろそろ放課後にこのスペースを利用する生徒が何人か来ることだろう。……とはいっても、テスト期間でもなんでもない今に来る生徒は殆ど少なく片手で数えられる程度のものだけれど。気持ちよさそうに寝ていた君をそのままにしておくのも、それでもこのまま寝かせておくままなのも忍びない。かといって閉館にする権限もないものだから……。こんな代案しかないけれど、どうかなあ、なんてぼくは君の顔をこっそりのぞき込みました。)   (6/9 23:04:11)


エレナ・ドラグノフ> 
『なんだ、見ていたのか。___悪い子だな?』自分の意志とは関係なく開閉を繰り返す瞳が焦れったく、そして声の主がこちらの顔を覗きこむのが見えたから____私も覗き返すように見上げて、寝ぼけたままの湿った声で小さく呟いた。悪い子だな、と、未だに抜けない癖で、小さい子供をあやす時のように、誰かに甘える時のように。『ああ、なら借りていくとしようか。……勝手に使ってるように見られても嫌だから、貴様も一緒に居てくれ。』含みを持たせて、そう口にした。一見妥当な申し出のようだが、随分ぐっすり寝て、それでもって今更起きたなら、さっさと帰るのが道理だろう。けれど、君に一緒にいて?なんて可愛らしいことを言った理由は『何か買ってこようか、せっかくだし。普段使わないような秘密基地に遊びに行けるんなら、食べ物くらいなくちゃな。……それとも____私と共犯になるのは、不満だったりするかい?』満点の笑顔で、お菓子なり食べ損ねた昼食なり飲み物なり、持ち寄って行こうよと快活に、少年じみた笑顔を作った。   (6/9 23:22:07)


キース・ハリソン> 
(甘えるみたいなのに、どこか煙草のにおいの香る大人のような。寝起きだからなのでしょうか、若干かすれたような甘い、それでいてどこか寂れたみたいなその声は、なんだかいけないものを見てしまったみたいでドキドキしてしまいます。大人のお姉さん……というのはこういうことなのでしょうか。) 『ああ、なら借りていくとしようか。……勝手に使ってるように見られても嫌だから、貴様も一緒に居てくれ。』「えとあの、ぼぼくでよければ……、」(直視するのができなくて視線を逸らして、案内したいその先へつま先を向けました。ドキドキするのも顔が熱いのも、きっときっとお姉さんのせいなんです。)(もう少し寝るのなら……、そんなつもりで言った申し出は、思わぬところで方向転換してしまった見たいです。お菓子とか飲み物とか、本当は図書館はいけないところなんです。でも……、ちらりと振り返って見上げてみたお姉さんの顔は、大人っぽいのに子供みたいで、なんだか、だめです、なんて言い出せなくて。首をぶんぶんと横に振り、手に持った配架図書をワゴンにそっと戻しました。)「えっと、あの、ほんとのほんとに内緒の、しー、なので……」(背ぃ高のっぽのお姉さんは、その分足がすらって長くて綺麗で、そんな姿に見とれてしまえば隣を歩くなんて出来ません。ほんのちょっぴり遅れて君の隣を早足で歩き、歩く度に揺れるその髪とふわりと香る残り香に、ぼくはまた心臓がひっぱられるんです。……ぼくも、こんなかっこいいお姉さんになってみたいなぁ、なんて。女性らしいその手指さえ、夕日に染まる廊下にぽっっかりと浮かべば、それはなんだか芸術品のようにすらおもえてしまうものだから、ぼくはいちいち言葉を失ってしまって困りました。)「……へへ、ふふ。」「おねーさんも、なんか、その…………買い食い?みたいなの、するんです、ね。」(芸術品みたい、なんてことを思えば、今の現状は殊更にどこかおかしくて。くふふ、なんて我慢しながらぼくは笑って、売店のおばあちゃんにお金を渡してクッキーとフルーツオレをかいました。)   (6/10 01:19:05)


エレナ・ドラグノフ> 
『ああ、もちろん二人だけの秘密だ。』思わずくす、と笑んだ。いけないこと、ふざけたこと。そういうのをやる時には、一人くらいやめようよなんて言う子が居てこそだ。だからお決まりの言葉を返して、それから_____『まあな。普段は穂坂……友達が作ってくれるから、わざわざ間食はいれないんだが。ちょうど昼休みを逃して昼食を食べ損ねたからな。夕食を兼ねて一気に行く。』大真面目に返した。はらぺこあおむしなんて言う不敬罪もののあだ名を、幼少期からの知り合いからはたまに使われたりすることもある。だが、これは無駄に腹にものを入れ続けているからでは無い。自慢ではないが、この身体(エンジン)を動かすためには相応の食事(ガソリン)が要る。従って激しい運動なんてしたら、まるで戦車を走らせたかのように体力や活力が消し飛ぶ。そうならないために三食ちゃんと摂取しているのだが……。こういう時には計画外に外れて消費されている分、なまなかな補給はできぬ。カップ麺、売れ残りの半額弁当をあるだけ、スポーツドリンク。大したことないじゃん?となりそうだが、加えて弁当があるのをゆめ忘れるな。『……と。そうだった。私は、エレナ・ドラグノフという。貴様は名前をなんて言うんだ』ソファに座って戦略物資を並べ、それを短距離走に食していく。その僅かな間隙に口を聞くという器用な真似をしながら、君の名前を問いかけ   (6/10 01:38:35)


キース・ハリソン> 
(きみが買い込んだご飯は、まるでみたことのないくらいのたくさんのものでした。運動部の生徒のために用意されたのでしょうお弁当はたった一個でも随分と大きくて、カップ麺だってスープの事を考えたらそれはきっと、僕のお腹が何回もはち切れてしまうような量になりました。流石にカップ麺は買いだめ……と思っていたのですが、君はそれを急いて口の中に書き入れて、それでもそれはきっと見苦しいもの軟化じゃないのです。爽やかで爽快感があって、それでいて流れるような。素敵な君の容姿に似合うその優しい、柔らかい麗しい雰囲気をみていればそれはいくらか意外だけれど、それでもきっと、それもまた、魅力的なのでしょう。)「ぼく、ぼくはきぃ……キース・ハリソンっていいます、えっと……えへ、」(ちいさく笑いを零しながら、ぼくはさっき買ったクッキーをもそもそと食べました。フルーツオレでとかしながら呑むそれは甘くって優しくって、こんな状況のせいかもしれないけれど、夢なんじゃないかな、なんて思いました。) 「あの……、ごめんなさい、いやだったらいいんです、けど、あの……、」(実はさっきから、聞きたいことがあったんです。)「あの、あの、バンホーテンさんってあの、格闘技かなにか……?あの、すごくかっこいい、なって……」(筋肉はじろじろ見なくたってなんとなく伝わってくるほどです。でもきみは女性だし、体をみられるのは気持ち悪いかもしれないので、すこしずつ反応を見ながら聞いてみます。……もし、もしもそうなら、ちょっとだけでも、つよさの秘密とか教えてくれないかなぁ……なんて、思うんです。)「あの……ぼくも、僕も、みんなを救えるヒーローになりたいなって、それで……」(ぼくは、約束したんです。大好きな幼馴染みと、“どっちの方がたくさんヒーローできるか競おう”、なんて、ちっぽけで馬鹿らしいかも知れないけど、大切な約束を。)   (6/12 19:11:06)


エレナ・ドラグノフ> 
『ご馳走様です』かん、と軽快な音を鳴らしながら弁当箱を机に置く。食べ方が汚いタイプとかではないにしろ、誰かの前でこんなに食べる姿を見せてしまうのはバツが悪い。『いや、別にそんなに悪いことをしたみたいな言い方はしなくていい。お察しの通り、やってるのは格闘技。元々は身体だって弱かったんだが_____。鍛えたら段々、色んな技術……っていうと大層だけど、身につくようになっていった。』やっぱり、体が資本という言葉は正しいんだと思う。ボクシングにはあまり才能はなかったけど、鍛えてからは一気にひと角程度の才能は生まれた。基礎体力や筋力が備わっていたら、なるほどある程度モノになるのは納得出来る。『ただ……それをノウハウとして教えるのは無理だ。確かに、格闘技を習ったりするのはいいと思う。毎日身体を鍛えるのだって、場合によっては付き合ってやれる。が、貴様に才能がないとかの話じゃなくって、時間が足りない。身体(エンジン)を鍛えて技(アクセル)をぶっ飛ばすのがだめなら……』が、それには時間がかかりすぎる。だから、強さの秘密として口にしたのは____『最初から必殺技(ジェットエンジン)を持ってきたらいい。その場、その瞬間、その状況だけ誰にも負けないと貴様が考えるモノ。』『要するに____ほら、ヒーローには必殺技がつきものだろう?』   (6/12 19:37:36)


キース・ハリソン> 
(うなづきながら、僕は貴方の言葉を聞き零さないようじっと聞きました。もともと体が弱かった……というのなら、いつかいつかぼくにも君みたいになれる日が来るかも知れません! 沢山のご飯を食べたら体は大きくなれるでしょうか、強くてかっこいいになれるでしょうか。……なんて考えて、どこか小さな違和感が胸に浮かんだのを、知らんぷりしました。)『ただ……それをノウハウとして教えるのは無理だ。』「そ……っか……」(君の言葉にちいさな溜息を返しながら、僕は小さく俯きます。悲しいんです、ほんとうに、本当に悔しくて仕方ないんです、安心なんて、喜んでなんて居ないんです。)(ほんとうに、本当なんです。お姫様になんてなりたくないんです。お姉さんみたいに綺麗で美しくなんてなりたくないんです。女の子みたいな細い指や可愛い手足や、可愛いフリフリのドレスや、長い髪の似合う女の子らしさなんて、欲しくないんです。本当なんです。……本当に、ほんとう、なんです。) (ぼくは約束したんです。大好きな幼馴染みたちの隣に立つために、ヒーローになるんだって。彼の隣に立つためには、ぼくは、ぼくはお姫様になんてなれないんです。なっちゃいけないんです。僕は、ヒーローに、なるんです。)「必殺技……」(食事の音のやんだこの部屋には静寂が満ちて、ぼくらの声だけが寂しく響きます。僕のちいさな反芻の声は特に思い当たるような行き場を見つけられなくて、寂しくぽつんと落ちました。)「あの、えっと……シールダーズでいうところの、あの最後のさいごの合体技?みたいなやつですよね……んん、ぼくにできるのあるのかな……」(思い浮かべた憧れの戦隊ヒーローのそれは爆発や火花を伴っていて、ばちばちと格好良かったのを覚えています。いまでこそあれは演出……とおもえるようになりましたが、でもあれもだれかの能力だったらどうしようなんて夢も見てしまいます。でもあいにく、僕にはそんな能力はありません。)「エレナさんは必殺技、あるんです……?か?」(参考にできたらなぁ、なんてきもちで、ちらちらと君を見ながらきいてみました。)   (6/12 20:00:55)


エレナ・ドラグノフ> 
『シールダーズ、は知らないけど……』多分戦隊モノなのは分かる。それが最後に、何何キックやらパンチやらで決着を漬けるものだとくらいは理解出来た。つまりそういうこと、発想は間違っていないから話を続行『要するにそういうコト。ただ、アニメや漫画みたいに綺麗なものやら、かっこいいだけのものの話じゃなくて_____』しかし、これは遊びの話なんかじゃない。本当にそれでカミサマと戦い、或いは悪人と戦うのだから。だから、クソ真面目にその定義からちゃんと話しておくのが肝要だ。『""""相手が自分の能力を理解しても想像がつかないモノ""" """仮に何もかも筒抜けでもどうにもならないモノ""" 』『このどちらかを、必殺技っていう風に私は定義してる。たとえば、あの真紅朗(あかがみ)のホローポイントパンチなんかは、明らかに後者。ディスコードの強みをそのまま活かして、けれどあの規格外の破壊力はどうにもならないから必殺技足り得る。まあ多分そこまで考えていないだろうが。』その定義で行くなら_____『私の場合、前者に比重を置いている。』_____血染めの夜鷹に暁はなし(ダインスレイヴ)。この技は即ち、後出しジャンケンに当たる。相手が必殺を誓う切り札の発動と同タイミングに、拳を振り抜く。その瞬間にディスコードを発動、相手の目の前に一足で瞬間移動し、振り抜かれた拳が相手が「攻撃している真っ最中」にぶち当たる。状況が状況だから相手は反撃することを許されない_____ただし、薄氷を踏むような繊細なタイミングが要求されるため、自分なりの撃鉄(スイッチ)として何節かの詠唱を、拍子を図るために必要とされる。……と、そうした旨を一から説明した。『と、まあこんな形だ。何か発想するものはあるか?』   (6/12 20:27:00)


キース・ハリソン> 
「えと、ちょっとまってね……ふむ……」(思いのほか君がまじめに、真剣に丁寧にお話してくれるものだから、慌ててノートの空欄を広げて、僕は視線を落としました。真っ白の上にならんだ罫線は行儀良くて、平凡で、乱れがなくて飛び抜けなくて。僕はその罫線からはみ出ないように調整した小さな小さな文字を、行儀よくならべてメモを残します。途中でだされたしんちゃんの名前をノートの端にこっそり並べて、しんちゃんのデフォルメの落書きも添えました。赤ボールペンでツンツンした髪をかいて、絆創膏も書いて、それから眉をつんととがらせると、それはだいたいしんちゃんに見えるからすごいんです。しんちゃんはすごいんだぞ、なんて思えば何だか得意になってしまって、勝手に口角があがってにまにましてしまっていけません。)「へへ…………なるほど……」(君の語ってくれる事をメモしながら、あらためてぼくは僕のしたいことを考えてみることにしました。)「想像つかないのか、ついてもどうにもできないのか……うーん……」(思い浮かべるのはやっぱり、昔に友人と見たヒーローショーやテレビの戦隊もの。それでもやっぱり思い浮かぶのは、自分が先頭に立って敵を倒している姿よりも、しんちゃんやそらくん……幼馴染みの友人達がヒーローとして戦っている姿と、それから二人が僕を助け出してくれるような……、そんな光景ばっかりなんです。僕はやっぱりヒーローには成れないのかな、なんて小さく落ち込みそうになりました。)「……ごめんなさい、まだ思い浮かばなくて……」(気遣わせないように小さく笑いながら頬をかき、僕はノートを閉じました。これ以上考えたら、何だか泣いてしまいそうな、そんな気がするんです。)「あそうだ、えっと、コレはまた違うんですけど……、エレナさんもしんちゃん、あきもりくん、と知り合い?ナンですね、」(話を逸らすみたいに、僕はしんちゃんの名前を呼びました。エレナさんは綺麗だから、しんちゃんはきっとえっちなことを考えたりしたに違いありません。失礼なことをしてないといいんですけど……)   (6/12 21:00:00)


エレナ・ドラグノフ> 
『大丈夫だ。ゆっくり考えていけばいいし、何も相手を倒すことがすべてでもないのは前提に置いておくと良い。』出来ないこと、思いつかないこと。いきなり言い出されてならそれはやむを得ないし、この子のように穏やかそうな子には戦う術と言われても浮かばないかもしれない。だから、それは別に謝らなくてもいいことなのだとそう言った。『ああ、最近任務で顔を合わせたくらいだが_____随分大変だったぞ。考え無しに誰かを殴るし、ヒトを馬鹿だ馬鹿だと言うし。慎重にやれと言っても飛び込むし……。』情報に偏りがあることは仕方ない。鬼の居ぬ間に洗濯というなら、バカの居ぬ間に偏向報道。遊園地でいつの間にやら一緒に怒られる羽目になったことだとか、やり過ぎだろと騒いだり喧嘩したことだとか。色々根に持つことはあったので、すっとぼけて諸々言っておく。これぞ一計にござる。『……それはともかく、ひとつ聞きたいことがあったんだ。気にせずに流しちゃったけどさ、貴様さっき「バンホーテン」って口にしたよな。確かに母方の姓はあるが……なんで知ってるんだ?』   (6/12 21:24:45)


キース・ハリソン> 
「あはは……ぼくあの、しんちゃんと幼馴染みで。彼ならやりそう……」(閉じたノートを自分の膝の上に乗せて、彼の姿を想像してみます。……付き合いの長さ故でしょうか、しんちゃんのそんな姿が容易に想像出来てしまって、できすぎてしまってなんとなくばつが悪くおもえてきてしまいます。視線を床にそろりと逃がして、紙パックのフルーツオレのストローに口をつけました。ずず……と底で音が鳴って、もうこんなにのんじゃったのか、とちらりと視線を壁掛け時計に滑らせたのなら、)「えっっっま、ぁ、の!」(僕はあわてて立ち上がり、びっと時計を指さしました。夕焼けが溶け始めていたときから君に出会って、そうして今の時刻はもう19時を過ぎてしまう頃。そろそろ締め作業の先生が確認にやってきてしまう頃で、それはつまり、飲食厳禁のこの部屋の状態をもとに戻さなきゃあ、二人の秘密のイケナイこと、ちいさな共犯がバレてしまう、ということです。) 「あの、先生、せんせいが……その、お菓子、しーだからえっと、」(君の問いに答える余裕もないまま、ぼくばバタバタとクッキーを買った袋にやたらめったらにゴミを詰め込んでいきます。ああでもどうしましょう、分別しなきゃいけないんですけど、そんな時間はあんまりなさそうに見えます。それでも、幸い綺麗に平らげられた容器の類いは片付けも簡単で、たたみやすくて助かりました。)「あのあの、これぼく、あの、帰りにすてるので……っあの、みつかったらちょっと大変、なのであの……っ、また!」(ゴミ袋を僕のかばんの影に押し込んで、先生に見つからないようにかくしました。先生が来るまであと5分、案外時間はあるけれど……、こんなところに二人っきりで、あらぬ誤解を受けてしまえば君が報われませんから。)「あの、えっと、……“最後の”、は。」(最後の最後、僕は締め作業が残っているから、貴方を送り出すその一瞬。唇のさきに人差し指をあてて、「しぃ」のポーズをつくりました。)「つぎにあうときに答え合わせ、にします。だから、その。」「また“いけないこと”、たのしみに、その。まってます。ね。」   (6/12 22:12:05)

ジェントル> 
「(噴水から、ざあざあと水は流れ落ちる。かちゃ、かちゃと、彼はいつものように笑顔でナイフをいじっていた。)ン…?(すれ違うことなど、人は何度も経験する。すれ違いすぎるくらいで、数十万には上るであろう。そしてその内で『出会う』のは数百人程度まで落ちるだろうか。出会いは、知から始まる。)おや。(君には彼が、『すれ違うだけの人物』にしか映らなかった。ただの、変わった人間。彼の一方的な知を、彼は思い出し、笑顔を向けた。ゆらりと立ち上がれば、ナイフを『鎖』に変えて。)君が、『イエローカイト』…(彼には仲間がいなかった。彼には友達がいなかった。彼には『パパ』がいなかった。あらゆることを、知りたがった。武器を捨てて、君へと静かに歩を進める。)で、合ってるかなあァ…?(彼の『男らしさ』とは、自らを救った奇術師であり紳士であった。)…やはり写真で見た通り…君は、『ミクス』『ミス』『ミスター』、どう定義付けるべきなのだろゥ?(どこか伏せる癖があって、なおかつ直接的な部分もある。あえて聞きづらいことは直接的だ。)ジェントルとはスマートでなければ、ならないからねえェ。(それが彼なりの『スマートな解決法』なのだ。)」「あァそゥだ。自己紹介が遅れたね…(オールバックの髪が落ちることなく、右腕を胸の前に、左腕を少し開いて、腰を曲げる。相手のことを知るにはまず自らのことを明かし低い腰であたるものだ。手遅れといえば、手遅れだろうが。)ボクはジェントル。『転校生』さァ…3年のね。(いつもの笑顔が、変わらない笑顔が君を見る。)君のことは、『アキモリ』くんから教えてもらってねえェ…(それは君が、彼の大切にしている人だったから。きっと大切にし合う、人だったから。)『仲間』に、興味があったんだァ。だから、会ってみたかった。巡り合うものだねえェ、感慨深いものだねえェ…改めて、ごきげんよォゥ…(挨拶は、大切だ。)」   (6/16 20:38:34)


キース・ハリソン> 
『君が、『イエローカイト』…』(今日は、今の梅雨に良く似合う、寂しげな晴れの日でした。太陽は高く上がっているのに空はなんだか白っぽく、僕の影はコンクリートの灰色に溶けちゃうくらい薄いんです。このあいだからちらちら降る雪のせいでしょうか、どんなときでも何だか胸が浮いていて、じんわりとした寂しさが、ピッタリと張り付いて消えてくれないんです。)「……ぁ、え、」『で、合ってるかなあァ…?』(先生へ出すプリントを出し終えて、職員室から帰る途中。なんだかちょっぴり"余計なこと"がしたくなって、わざわざ遠回りをして、噴水の前を横切った時、その声は聞こえました。……それが僕のヒーロー名だと気付いたのは、通り過ぎてから3歩過ぎて、カラスがばさばさと空を舞った時でした。)『…やはり写真で見た通り…君は、『ミクス』『ミス』『ミスター』、どう定義付けるべきなのだろゥ?』(かしゃん。ゆら、と立ち上がり歩み寄ってくる君の先までいたところで、放られたらしいなにかの悲鳴が上がります。)(何が放られたのか、確認しようと目を向けることすら許されないような空気で僕を包みながら、君はじわりと滲んできます。空気を揺らした君の言葉に僕は返答を窮してしまいました。だって……、だってそれは、ぼくが、僕が。)「ぇと………、」(逃げたい、と思いました。さく、と刺さった質問が溶けだして、僕の心に良くない毒を染み込ませているのだと思いました。けれど、僕の足は動かずに、君から視線を外すことすらできないでいました。)『君のことは、『アキモリ』くんから教えてもらってねえェ…』「しょーちゃん、から…、?」(ぽつぽつと、気まぐれに水溜まりに垂らされるインクのように、それはうすぼんやりとしたもやを描きます。息をこぼすように小さな返事を返しながら、僕は羽織っているジャケットの裾をぎゅっと握りました。)『『仲間』に、興味があったんだァ。______…改めて、ごきげんよォゥ…』「ごき、げよ…、」(小さくぺこりとお辞儀をしてから、僕は視線を噴水に逃がし、言葉を必死に探しました。)(なかま。)「なかま………、は、えっと。…安っぽいけど、きっと、同じ"ヒーロー"だから……、僕らもきっと、なかま、なんだと思います。」(ただ、友達ではない。きっとそんな、小さな小さな違いなんです。…僕が愛してるのは、友人なんです。)「そうだ名前…、『イエローカイト』であってます、きぃす……キース・ハリソンです。…えっと、その…………あきくんからその、なにか…?」(思い出したようにお名前を返しながら、僕は君の様子を伺いました。)   (6/16 21:29:23)


ジェントル> 
「(『質問を繰り返さないこと』。罵られようが傷つけられようが、あるいは今のように恐怖されようが。彼が笑顔を止めることはないが、君が応えきれなかった質問に、彼は追求することはなかった。)ミクスというのは、『第三者から見て性別がわからない』人に向けるモノさァ…ミクス・キース。(少なくとも。君を傷つけようと発言したのではないことは、わかるだろう。)ごめんなさい。(怖がるような君を見て、やはり口角は隠さないが、)ごめんなさい…(彼は、謝った。カラスが飛び鳴き、今にも降りだしそうでなかなか降らない、曇り空の下。陰鬱な湿度の中で、彼はやはり、不気味に映るだろうか。)心配しないで。ボクは君を傷つけたりしないから。(心は紳士である。)何かしたら殴るってアキモリくんに言われちゃってるし、ねえェ…(そしてそんな冗談(笑顔のせいでわかりづらく、言われたことも同じだが)も言う、人間である。ただ少しだけ、未熟すぎるだけの。)」「(しかし混迷するのも少しの間だ。)彼とは知り合いさァ…(そして正気になりすぎたか。彼を『友人』などとは、言わなかった。)昔のことを、少しだけ聞いてねえェ…『一緒に戦う仲間がいる』ってことが、とっても、羨ましいなって。(彼には友人も『仲間』も、パパもいない。)キースくん。君は。(彼には呼べなかった。)『裁縫』、好きかィ…?(鎖の輪の一つ一つがぶつかり合う金属音が、けたたましく鳴る。そして彼の声はどこか恐る恐るしたものであり、君を誘っていた。)ボクは裁縫が好きでねえェ。放課後は、たまに家庭科室に忍び込んだりしてねえェ…とってもスマートな方法で、『ジェントルマンリー』に、ね。(『大事な仲間の友情』を、その気持ちを、彼は少しでも触れてみたかった。)」   (6/16 22:09:50)


キース・ハリソン> 
『ごめんなさい。』(噴水の音は変わらずさわさわとなっていて、涼しい風を吹かせます。ただ……、)『ごめんなさい…』(君は、謝った。こんなふうに晴れているのに寂しい日には、涼しい風はちょっぴり肌寒いように感じます。裾を掴んでいた手を自身の腕に滑らせて、自分の腕を抱きながら、僕はちいさく頷いて、後ずさっていた片足を一歩前に出して、そっと君に近づきました。)『何かしたら殴るってアキモリくんに言われちゃってるし、ねえェ…』「……ふふ、」(ぼくよりも随分背丈も大きくて、僕なんかよりずっと流暢にお話が出来て。僕なんかよりきっと随分ヒーローが似合うだろうに。ごめんなさいとぽつりと零して、傷つけない、なんて言葉を述べて。仲間が分からない……なんて嘆く君の、どことなくたどたどしい在り方は、ちいさな迷子の泣いてる子供を彷彿とさせるものでした。)「えへ……、たしかに。しんちゃんなら、言いそう、ですね」(小さく不器用に笑いながら、僕は両足をぴったりとつけて立ち、どうか相手と目が合いますようにと意気込んで、僕は君を見上げました。) (……本当は、ちょっぴりまだ痛いんです。隠しごとを指摘されるのも、それを覗かれるのも。でもきっと、それが痛いと言えるのは周囲の皆が優しく聞かないで居てくれるからで、きっと君が悪いことではないんです。だから、僕も小さく、空気に滑り込ませるみたいに、溶かすみたいにこっそり、「ごめんね」、といいました。)「」『キースくん。君は。』(ぽつりぽつり、途切れ途切れに、気になりはするけれど咎められない絶妙な空気感と間をもって、君は言葉を零します。)『『裁縫』、好きかィ…?』(僕は雨の日の雨の足跡を尋ねるみたいにゆっくりと瞬きをして、銀色の細い糸と、真っ白で汚れのない糸を思い浮かべました。)「お裁縫……は、えっと」(それから僕は、君のその指の間にそれらが収まって、布の上を滑らかに泳いでいく姿を想像しました。それはどこか浮世離れしたような君の姿とは似合わず、それでもその包帯は真っ白な糸を想起させて、僕はなんだかそれがどうしようもなく愛おしいものに、今すぐにでも抱き締めてあげなければならない気がしてどうしようもなくなりました。)(だから。)「お裁縫は、えっとね、あんまりしたことないの、……“まだ”。だから、」(ぼくは一歩君に近づいて、したからそうっと、君の顔を覗きます。まだ本のちょっぴり不気味で怖いけれど、人と話すのは成れないけれど、見た目など三日で慣れるといいますから、だから。)「よければ、その。……おしえてくれたら、うれしいな、とか、とか……」(僕は、友人を愛しています。僕はぼくの抱くこの愛を、誰かにわかってほしいのかも知れません。まだ未熟で、醜くて、ぐちゃぐちゃにねじれた、この愛を。)   (6/16 22:45:13)


ジェントル> 
「(近づく君に、動じることなく受け入れた。悲しいだとか苦しいだとか辛いだとか、自分を見つめる度に『間違っている』と叩きつけられる中で、歩み寄られることは、冗談に微笑まれることは、傷ついた彼の体を優しく抱いて。)…彼は。(白いネクタイが、静かな風に揺られて緩やかになびいている。昨日の夜は雨が降っていて傘も差さないで、今日のネクタイは少しばかり湿っていた。)『優しい子』なんだろうねえェ…(それは、君の友人が彼を最後まで見ていてくれた証拠でもある。彼にどうして、友人がいないのか。それは一目瞭然であろう。)君のような『友人』が、呼び寄せられるわけだねえェ。(話すことはできる。感情だってないわけではない。こうして、赤い彼や黄色い君に正直な心情をぶつけることもできるのだから。自分がおかしいと自覚することも、できているのだから。突然、こちらに目が向くと、驚いて1度だけ目を反らしてしまい、けれどゆっくり、恐る恐る、君の方へと視線を戻した。)…類は友を呼ぶものだ、ねえェ。(目を合わせる歩み寄りは、そう。彼には優しいものなのだ。)」「ウン。いいよ、教えてあげる…ボクも、とっても得意って訳じゃ無いけど…ちょっとだけなら。(彼から勇んで歩むことはできた。というより、歩まないことを理解できずに、歩まれることに彼は慣れていなかった。)かふ、か、ふふ、か…(しゃがれたような喉が鳴る音で、彼は。だから声を出して笑うことは少なかった。周囲が、そして彼自身がそれを許さなかった。)ああいけない…ボクはジェントル…ごめんなさい…(このように。彼はいい子でなければいけないから。)駄目だ、駄目だね。(だから、ぎゅっと握りしめるもの。放り捨てられたはずの鎖は、彼の手の中にあった。それは、折り畳みナイフ。)…君を傷つけたいんじゃないんだ。でも、ボクは、駄目だから。(鎖が激しく擦れ合う音がする。地面から鎖が蠢いて溢れ出している。『鎖に固有の理性はない』。だから、それは体の一部のようなものである。だから、表情のないような彼の、それは感情であった。)それでもいィかな。ボクはジェントルじゃないと、いけないから。(隠すことはできないそれが、彼を突き放すものであった。君は受け入れるだろうか。)」   (6/17 15:45:14)


キース・ハリソン> 
(君はなんだか、昔のぼくと、そう変わらないんじゃないか。……なんだか、そんな気がしたんです。)『…彼は。』(ぼくも昔、今もだけれど、お話が苦手でうまく話せませんでした。体も強くないし危険が沢山で、お友達なんて滅多に出来なかったんです。泣いてばっかで、いろんな事を周りのせいにして我儘を言ってかんしゃくを起こして、お母さんを沢山困らせて。……でも。)『『優しい子』なんだろうねえェ……』(ぼくには今、友達が居ます。それはきっとぼくが強くなれたからの結果なんかじゃあなくて、ぼくに声をかけてくれたヒーローが。レッドやブルーや、……誰よりやさしい、ピンクがいたから。ぼくは、世界でひとりぼっちじゃ、なくなったんです。)「へへ。……ともだち、同じ。」(逸らされた目は再びゆっくりと重なりました。類は友を呼ぶのなら、ぼくだってヒーローになれるんです。類を友と呼ぶのなら、ぼくは、)「ぼく、ね。だったら……、君に声をかけられた理由が、分かった気がする。」(それは、世界のちいさなひとりぼっちとして。ヒーローの友の、ヒーローとして。)(類は、友を呼ぶんでしょう。)「かか、ふ、かふ。……ふふ、」(君の隣を歩きながら、君の零す音をこっそりこっそり繰り返して見ます。ぼくにはまだ君の分からない事があるから、それが問いかけか鼻歌か、それともなにかのサインなのか、分からないのです。分からないけれど、それなりに一緒に居て、理解してみたいとは思うので、取り敢えず繰り返す……そんな癖を零して、その音の奇妙な感覚にくすぐったさを覚えた、ちょうどその時でした。)『ああいけない…ボクはジェントル…ごめんなさい…』「……、どう、したの……?」(唐突に零された『ごめんなさい』は、なんだかとっても苦しくなります。ぼくも、同じだから分かります。きっと気にしなくても良いはずの小さな事が気になって、胸の中で広がって、息が出来なくなるんです。)(……鎖の音が、聞こえます。それは最初に噴水の前で君は零した音によく似ていて、ぼくはその正体を見て_____)「っ、……、じぇ、とるくん……、?」(ぼくははた、と立ち止まり、ちいさく身を固めました。心臓がドキドキして、足ががくがくと震えます。)(___昔、おんなじことがありました。分からないおおきなおじさんに連れ去られて、悲しい事をたくさんされました。ナイフの冷たさも大人の人の妙な熱も、覆い被さる真っ暗な大きな体も、ぼくはまだ、苦手です。______でも)「ぼく、ぼくは、」(ぼくは、ヒーローの。)「ぼくは、れっどの、友達! 、で、だから、」(ヒーローは、負けないんです。)「じぇんとる、くん、あのね。」(君は、傷つけたくないと言いました。ジェントル……紳士であると宣言しました。ぼくはきっと君に似ているから、ぼくの感じる君の悲しみは、きっとおおきな相違はないんじゃないかと思うんです。だから、だったら、ぼくは。)「……大丈夫、だよ。だいじょうぶ、」(大丈夫。だって、)「ぼくは、ぼくらはだって、“同じ”で、“友達”だから。」(友達は、苦しめられたら切れるような、そんなものじゃあ無い事を。友人を愛するぼくは、誰よりも強く、知っているんです。)   (6/17 16:55:25)


ジェントル> 
「…あの。(また視線が彼のジェントルは、崖の上で風に揺られる建て付けが悪いトタン家屋だ。ぎぃ、と音を立てて、今にも崩れて落ちてきそうな。小さな声はきっと、君が大丈夫と言ってくれたから、だろう。)ボク、は。(折り畳みナイフの刃は出ているが、振り回されたり向けられたりなんてことはなく、ただ曇り空に遮られた揺らめく陽光を弾いて、陰鬱に鈍く光っていた。)笑うのが、苦手、で。(彼の瞳には陰鬱さが宿っているが、笑顔だけは陽光のように明るさを常に保っていた。もはや、狂ったように。)だから、だから笑っちゃいけなくて。(縛られて。)でも、悲しい顔をしたら。…ボクはママに、『痛いこと』をしてほしく、なくって。(クラスメイトは痛みで。『ママ』は『ママ』であることで。ジェントルは、誰かを傷つけてはならない。ジェントルは、誰かが誰かを傷つける道を絶たなくてはならない。そして何より、いたいことは嫌いで、それでも向き合わなければならないことで。)『声を出して笑っちゃいけない』。『笑わなすぎちゃいけない』。だからずっと、笑顔でいないと『いけない』、から。(彼を追い詰めるもので。)」「(彼ははじめて、少しだけだけれど、『吐露する』ことを、経験した。)ともだち、で、いィ…の?(それでもいいの。と、問うためにだ。)」「(彼は自らがおかしいことを知っている。知っていて、それでも変えられなくて、変えられない僕でも、それでもいいのかと歩み寄ることしかできず、時に足踏む彼には、『友達』がいなかった。『友達になる』なんて、夢に見たようなものだった。)ボクはおかしいのに。君は、どうして。(彼と君の相違点があるとするならば。彼には今まで、友人も仲間もいなかったこと。君にはナイフが、恐ろしいこと。彼にはママを困らせてはならなかったこと。君にはママを困らせてしまったこと。真反対でもあって、触れ合うものでもあって。)キースくん。ボク…(刃はようやく畳まれて、鎖となって彼の腰ポケットにこぼれ落ちていく。)君と会って、よかったのかなあァ。君が、ボクの友達になって、よかったのかなあァ。(鎖に蠢きはなく、今なら落ち着いてゆっくりと、目的まで向かうことができるはずだった。それでも彼にはまだ君に聞きたいことがある。君が自分を友人と呼んでくれることに、彼は罪悪感さえ感じた。だから静かに俯いて、今度はまた、視線を反らしてしまっていた。)」   (6/17 17:59:11)


キース・ハリソン> 
『笑うのが、苦手、で。』「うん。」(出来る事なら、ぼくはそうっと、君の手に手を重ねようと、ぼくはそっと手を伸ばします。) 『だから、だから笑っちゃいけなくて。』「うん。」(君のその行き場を失ったナイフが、どうかどうか、自分自身に向かないことを祈りながら。) 『だからずっと、笑顔でいないと『いけない』、から。』「……うん。」(君の手の握られた指から、いつかするりと力が溶けたら。そんなことを、ぼくはちいさく願ってみるんです。) ____『ともだち、で、いィ…の?』(ぼくは、きっと君を完全に理解することは出来ないけれど。__出来ないけれど、それでもきっと、きっとなんとなくでも“知れる”から。)「あのね、……あのね。言い方が、悪かったかもしれない。」(ぼくだって、きみとはちょっぴり違うかも知れないけれど、それでもやっぱり“おかしい”側の人間なんです。)(君の最初の問いにだって、ぼくは答えられませんでした。僕の性別は曖昧で、形ばっかりが僕の意図しない方向へ膨らんでしまって困ります。言葉だって、君ほどじゃあ無いかもしれないけれど、他の人のように流暢にこぼせるわけではありません。怖いことは沢山あるし、けれどもそれは大多数の他の人にとっては恐るに足るようなものではなくて、人一倍臆病で軟弱で不安定な僕は、やっぱりどこか、きっと形や、方向性や、程度の違いはあれど、ぼくだって"おかしい"と呼ばれてしまう側の人間なのに変わりは無いのです。)「じぇんとるくん…、」『キースくん。ボク…』(落ちかけている夕日が、僕らの立ち止まるこの空間に、柔らかな日差しと濃い影を落とします。下から覗き込む君の顔の半分は影になってしまって、僕は君をもっと知って、見てみたいのに、世界はそれをとざそうなんて意地悪を画策しているんです。僕は泣きたくなりました。あぁ、どうして。)『君と会って、よかったのかなあァ。君が、ボクの友達になって、よかったのかなあァ。』(どうして、世界はこんなにも、ちっぽけで、孤独で、遠いのでしょうか。)「………、ぼく、は。」(ぼくは、ヒーローになりたい。かつてのしんちゃんや、そらくんや、……彼女みたいに、僕も僕に手をさしのべられるヒーローになりたいんです。_本当です、ほんとうなんです。僕はまだ弱くて、ヒーローになる覚悟なんて出来てやいないけれど、それでも僕もいつか、みんなと肩を並べられるヒーローになりたいんです。)「……えへ、ごめんね。」(…深く、息を吸って僕は君の手をとって、家庭科室へ歩みだします。)「ともだち、って難しくて、僕もよくわかんなくなるんだ。だから…、」(僕はかつての彼らのように、君の手をそっととって、こんな深い影のさす所から逃げて、空気の柔らかい家庭科室へ、連れ出したいなと思いました。)「むずかしいのは、ゆっくり考えよ。…それよりその、えっと、あの。…へへ、おさいほう。ぼく、やってみたいんだ。」   (6/19 17:00:26)


ジェントル> 
「(彼は化け物ではなかった。だから、『仲間』。『みんな』のために生きることを知りたかった。包帯で包まれた、狭くなってしまっている眼孔。そこに空洞も、そして瞳もあるはずはなく。)…ああいけない。『ジェントル』としたことが、誰かに手をとられるなんてねえェ…(きっと君と手を固く結んでしまうのは、恐ろしさだろう。影に隠れた右目はひどく怯えている。ありもしない眼球が痛くて、ナイフを持った握りこぶしで目を抑えた。)どうして…(それはどうして、そんなにも優しさを与えてくれるのかという疑念。いい子でいれば傷つかない。痛めば痛むほどに笑顔は強く深んでいくのは、逃れられるから。ジェントルは献身的であらねばならず、そして拾われることなどない。恐れられるのは、傷つけられるのは、スマートではないから。どうして君は、拾うのか?与えてくれたのはママだけで、いつもその先にあったのは。)…ゆっくり…(痛んだ。きっとあの『ぶどう』は、白くなって枯れてしまっているだろうか。右目でまじまじとした、自分の物であったはずのそれは、まるでぶどうで。)ゆっくり。(君が拾うのは、ぶどうではなく痛むその手だったから。)」「キースくん。(敬意を払うべき『ミクス・ハリソン』は外れた。敬意を持った、遠慮がちな、恐れるそれを、取り外した。)『キースくん』。(『キース・ハリソン』の手を握る力は緩み、彼の足は早くなった。友達はまだわからないけれど、君という、拾ってくれる存在に少しでも触れることができたから。彼の滞り続けた足を、君が手をとって『歩ませた』のだ。ゆっくり、だけれど。)教えて、あげる。(今日の彼には、もうナイフは必要なかった。鎖へと姿を変え、彼の懐へ帰る。)スマートにね。(君の足元に鎖が蔓延り、そしてそれは易々と君の体を持ち上げ、彼は君をお姫様抱っこの態勢にした。)ボクのことは、ノゾム。って呼んで。『キース』。(あくまでジェントルであった。それをやめることはできない。だって、誰が相手でも。いや君が相手だからこそ、『紳士であらねばならない』のだ。ただひとつ、彼の心がほどけたとするなら、君には名前を呼んでほしくなって。かつかつと、歩みを進めながら。)」「か、ふふ。かふふ、かふ。(君の前ではなぜだか安心して、彼は『笑っていたのだ』と、彼の影なき顔を見上げる君は、控えめに口を開けたその表情からわかるだろう。)あァ…いけない。ごめんなさい。(…ジェントルには、まだ少しだけ、繋がれているが。)」   (6/19 17:52:20)


キース・ハリソン> 
『キースくん。』「…うん。」(ふわり、ゆるり。錆び付き、傷付き、いつしかその身をそっと据えて目を閉じていた重い鉄道が、緩やかにその体を起こし、そろりそろりと銀河を駆けるように。)『『キースくん』。』「うん。……えへ、へへ。」(きっとそれはまだぎこちないけれど、錆が剥がれた訳では無いけれど。それでも、その身を動かす感触も、動かし方も、その身を浮かせるほんのちょっぴりの恐怖と楽しさも、思い出せただろうから。)「ん、ん。"だいじょうぶ"。」(つないだ手は軽く、君の足は僕よりずいぶん長いから、簡単に先を歩いてしまいます。でも、置いてかれる寂しさも劣等感も感じずに、今はただ、純粋なよろこびが、僕の胸を満たしていました。わかるでしょうか、うれしいんです。…ほんのちょっとの僕のエゴ、ぼくのしたかった"ヒーロー"に君を付き合わせてしまったような罪悪感がわかないわけではありませんが、そんなことより。)(僕が、僕一人の手で作った友達は、きっと君が、はじめてなんです!)(君のペースにあわせて、僕はしゃかりきに足を動かさなければなりません。それは大変だけれど、それでも苦ではありません。だって、なんだってぼくは、きみという"友達"と一緒にいるために、望んでそれをしたいのです。)『教えて、あげる。』「ほんと?へへ、うれしい。……っ、へ、ゎあ!?」(……と、思っていたのだけど。軽く繋いだ手をグッと引かれ、引き寄せられたと思えば、僕の足は宙に浮き、僕の眼前には君がめいっぱいに広がるのです。)「ぅ、ぇえあのあ、あの、じぇ……ッ、へへ、えへ、の『ノゾム』くん!」(ふわふわと君が歩くのにあわせて、体の中身が擽られるみたいに浮かびます。僕は怖くて思わず君にしがみつきながら声をあげようとしたのですが………、だって、だって、こんなのずるいじゃないですか。)「へへ………、ばか、ばか」(君は、だって。僕が、ぼく自身のたったひとりの手で、はじめて掴んだ宝物、なのですから。)(人前でお姫様抱っこなんて恥ずかしいし、軽々持ち上げられてしまうのはちょっぴり癪、でも嬉しくもあって。だってそれはなんだか、僕がまるでおひめさまみたいで。)(堪えきれないよろこびがどうしようもなく顔に出てしまって、ヒーローになりきれないなぁ、なんて口惜しさと恥ずかしさと、真っ赤になってもにょもにょして、こんなの見られたらみんなにきっと笑われてしまいます。)「ひとりで、1人でちゃんと歩けるのに……、のぞむ、くん、ばか」(顔を見られないように君の胸元に顔をすり、と押し当てて、僕は君に体を任せます。心地よい体温と守られているゆりかごのような体温に若干微睡みながら、きみをしっかりと捕まえながら。)「……おとさ、ないでね。」(君もいつか、立派なヒーローになって、僕を置いていってしまうのでしょうか。…なんて、余計なことをそっと胸の奥にしまいこんで、揺られるそれに、僕はそっと目を閉じました。)   (6/19 18:39:13)


ジェントル> 
「(銀河を行く列車は未だ、車輪を回しきるには至らず、さらには不安定だ。がたごとと、揺れている。)落としやしない。(ゆっくりと、静かに、けれど揺れている。だが心地よいだろう、そう。まるで揺りかごのように。君をゆっくりと揺らしているのは、まだまだ銀河を行く列車とは言い難い、でも必ず君を取り落としたりしないようにゆっくりと見えてきた線路を進んでいく、揺りかごなのだ。)だってボクが抱えているのは、君だもの、(もうそれは、鉄の棺桶ではなくなった。墓場から揺りかごへ、彼は知った。)ねえェ。(先頭車両だけでぽつりとひとつ、静かに語るだけだった汽車に、繋がった車両。初めて乗せるのは、君だった。彼が変わったのは少しだけで、もう既に君は乗車していた。頭を優しく、胸で受け止めよう。)…そうだねえェ…手始めに、ハンカチなんか作ってみよっかァ。(だからその両腕から、『キース・ハリソン』を。彼は全く、落とす気などはなく。)か、ふふ。(…そして実際に、このあと君がこの腕から降りられるのは、家庭科室に着いてからだった。)」   (6/19 19:31:46)

キース・ハリソン> 
「ぅ~…………」(今日は修学旅行のお祭りの、ちょっとだけ慣れてきた一日の夕方くらい。あの鬼ごっこの日からこれで四日がたち、町並みの勝手を、漸く知り始めた頃でした。最初の数日は幼馴染みのレッドとお友達ののぞむくんと一緒に居たのですが、ずっと一緒というわけにも行かないのです。お部屋で一人で過ごしても良かったのですが……、折角の異国の地、腐っているのは勿体ないと、こうしてひとりでお祭りの市に身を乗り出してきた、というわけなのですが…………)「ひと、多い…………、」(友人と共に回ったときは平気だったので安心して失念していたのを思い出しました。僕は人混みが、大の苦手だったのです。胸の中に渦巻く淀みとじわじわと広がる頭痛に顔をしかめ、なんとか屋台の建ち並ぶ大通りをぬけようと画策するのですが、流石お祭り市のど真ん中。人の流れは激流の如く、ふらふらと歩いていれば流れに身を任せるのに精一杯で、横切って抜けるのは至難の業です。)「ひと、すくない、所…………、」(市に来る前に買った水は既に温く、額にあてようにも腕をずっと上げ続けるにも限界があります。服の首もとを緩められれば多少は楽になるのでしょうが、立ち止まってボタンを外す余裕などあるはずもなく。)「っ、あ、の、ごめっなさ、い、」(ふらふらと流れていれば一人の女性にぶつかってしまいました。慌てて謝罪をくちにしますが、さらりと溢れたのは日本の言葉。顔つきが似ているので相手が日本人か中国人かも分からず、謝罪が相手に伝わっているのか、それすら分からず通り過ぎていくのは罪悪感で泣いてしまいそうなくらいでした。こんなことなら部屋に一人で居れば良かった、なんて後悔しながらよたよたと歩き、視界は徐々に白く包まれていきます。ホワイトアウトしそうになる視界に見えたのは、先ほどぶつかってしまった君でした。)   (7/11 21:37:57)


音戯華子> 
(パンケーキにかける蜂蜜を、とろりと空一面に塗りたくったような。そんな一日の半分の終わりを告げる、またはもう半分の始まりを告げるかのような色でした。目張りされた白いテントの下、ペットボトルの水をこく、こく、と飲んでいた彼女はギターの調子をほんの少しばかり確認。ポロン、コロン、カラン、と鳴った相棒、調子はいつも通り最高みたい。)(お祭り市の一角、催されているのはミュージックフェスティバル。誰でも飛び入り参戦可能らしかったので、中国の人たちに日本の音楽を広めたり、できたらいいなぁって。うそ、これは建前。中国の人にも、彼女の伝えたい想いは、伝わるのかなって。表では、拍手が鳴り響いていた。どうやら、前の人の出番が終わったみたい。)「ンッんー、あー、あーー!」(少しだけ声の調子を確認、おっけー最高。彼女は白紙の紙切れを一枚手に取れば、額にピッと貼り付けた。)『下一个音乐家!这是日本的英雄,[Otogihanashi]。!!!!。请继续:!!!!』(響くアナウンス、名前が呼ばれたことだけわかればじゅーぶん。)(彼女は白いテントから出れば、階段を登って小さな即席舞台に上がった。そして、貴方と目が合うの。そう、10分くらい前にぶつかってしまったかわいい貴方。びっくりしていたのはお互い様だったのだけれど、貴方は気づいていただろうか。彼女は貴方にウィンクすれば、右手を広げて大空に振り上げた。)「にーはお!」(それだけ、叫んだら。振り下ろした手には、ギターが握られていた。それは。)(どんな楽器の音色だって出してくれる、魔法みたいなギターなんだ。どんな曲にしよっかな、ってちょっと考えてから。「フーーーーーー!」(貴方を見つめ、しっかり息を吐いて歌い出す。)『モノクロを裂いた 目を細めたんだ光が 繰り返す現象 その意味も知らないまま』(始まりは、静かに。ボーカルソロで、楽器はなし。それから、夢に現実が追いついてくるかのように。ギターの指を走らせれば、かき鳴らされたビートが歌声に乗り出すの。さぁ、顔を上げて、と言わんばかりにね。)   (7/11 22:13:43)


キース・ハリソン> 
(連れてこられたその先は、僕の倦厭する人混みそのものの様な場所でした。) (短く切られた君の髪はこの熱気の中でも一際はじけるように揺れ、赤と黒、街灯の橙で彩られた街の空に浮かぶオーロラのようで、僕は手を伸ばしてしまったのです。この喧騒でかき消されて締まったのかも知れないけれど、君はきっとこの道中僕に何にも話やしなかった。君はきっと僕を無言であの荒波から連れ出して、きっと無言で子の場所へ連れてきた。ぐるぐると巡る気持ち悪さや胸の中の埃っぽさは増すばかりで、なんでこんな……なんて、君に悪態を抱いてしまったのも事実でした。)  (ただ。)「______っ、」(ぱちり、と目が合った。)(ステージ上の君は、君の姿は雄弁で、なんと言えばいいのでしょう、僕なんかの語彙では言い表せないけれど……、君の放つ沢山の事は、僕が抱え切れに程に沢山すぎてしまうのです。) (なんとなしに、図書館に配架された本たちが沈黙を守っているみたいに、君の唇は閉じていました。それはきっと拒絶ではない、と思うのです、ただそうであるのが自然で、ありのままで、きれいに落ち着くから、といったふうに。__ひとたびその本を手に取って、その世界に身を投じたのなら、もしその世界が僕の体を、心を、五感全てを包み込んでしまったら。僕はきっといてもたっても居られなくなって、きっとほら、今みたいに。) 「ぁ、ぅ、…………、」(歌詞をなぞるには、そのメロディをなぞるには、あまりにもその音楽は刹那的で、あまりにも。)(体調を考慮してか、身を置かせて貰った関係者席はあんまりにスピーカーが近いものですから、君の声があんまりにも鮮明に届くのです。くらくらと揺れる頭は、その音圧の振動のせいもあるのでしょうか、胸の奥から、心臓のそこから鷲摑みにされるみたいな感じがするのです。くぐもっていた空は晴れて、じんわりとかいた汗が頬を垂れ、着ていたシャツを濡らすのです。)(こういうフェス?のようなところに来るのは初めてでした。人が多いのは嫌いです、騒がしいのも苦手です。それでも。)(それでも、君が僕を見てくれたから、僕は君だけを世界にした。君が見射止めてくれたから、きっと、怖くはないのです。)________(君の出番が終わり、はっとして瞬くと、目の前に広がるのは、またおんなじ喧騒と人混みと、熱気が渦巻いているのです。僕はとたんに怖くなって、舞台裏に逃がして貰って必死に君を探すのです。__僕を見てくれたその真意を聞けたら、なんて、そんな口実を一緒に持って。)   (7/11 23:15:11)


オトギハナシ> 
『絡みつく葛藤 答えの出ない僕らは 息を吸って またこうやって何かを捨てた』(瞳を閉じて、色とりどりの世界を飛び回る。透明な羽が生えたかのように、歌声はのびのびと人々の周りを飛び回る。かき鳴らされるギターからはキーボードの音からドラムの音、ベースだってお手の物。五倍、五十倍、五億倍の音色が重なり合って織りなす音色は、貴方の耳に届いてくれるだろうか。届かないのなら、届くまで何度でもここから発信し続けよう。)『フラフラしたっていいさ 下を向いて歩いていくよりも ただあの景色を目指すんだ 愚直に信じていようそれぞれが思い描く青を塗り重ねて作り上がる今 鮮やかな群青 僕は紛れもなくその一部分だ 使い果たそう大切なこの日々を 青く光る一瞬の煌めきを』(最高の歌声を。)(戦闘ライセンス【ロックンロール】。貴方の気分が少しでも、良くなりますように。)(ジャジャン!)(最後の一音が響き終わり、会場の閑静が歓声へと包み変わる。ペンキで青一色に塗りたくられた皆の声が、高揚した心臓にジンジンと染みた。貴方は、いつのまにかいなくなっているみたい。どこかへ行ってしまったのだろうか。彼女は階段を降りて舞台裏に降りれば、楽屋のペットボトルを取って。そのままペットボトルの蓋を回してから口に水を流し込んで、喉の痛みが少しずつ快感に変わる頃合い。その瞬間、貴方を見つけた。彼女はなぜか紙を顔に貼り付けたまま、貴方に近づくの。)「気分はマシになったかい?ほら、飲みな。」(彼女は貴方に、新しく冷えたペットボトルを手渡した。そのキザで、流れるような仕草は先程貴方を引っ張ってきた時の彼女の仕草とは全く異なるものでした。きっと貴方を引っ張り回していた彼女は、頬も真っ赤で言葉も出なかった様子だけれど。今度は、どこか大胆不敵、それでいて深く静かな深海のような、奥深さを合わせ持つ声が貴方の耳を優しくつつく。)   (7/11 23:48:58)


キース・ハリソン> 
『気分はマシになったかい?ほら、飲みな。』「えと、あの、あの……っ、」(君から渡されたペットボトルを両手で持ち、興奮冷めやらぬままに僕はあなたを見つめました。うまく言葉がでないままに話したい欲ばかりが先行してしまって、音ばかりが出てしまって困ります。ぼたぼたと垂れた汗は着ているシャツをびったりと濡らし、ああ、厚い生地を着てきてて良かった、なんて的外れな事を考えながら、僕はなんとか言葉を探すのです。)「あの、……っ、すごいかっこよくて、あの……、」(呑み込むみたいに、包み込むみたいに。熱狂するあの世界をたったひとりで作り上げてしまった、僕より背の低い君のその底が、その透き通り手を伸ばせど触れられないような遙かな声のせいでしょうか、どうしようもなく見えなくて、それでも触れてみたくて仕方なくて、手を伸ばすことを辞められないのです。)「かっこ、よかった、です、あの、」(だらだらと垂れる汗が目に入って染み、僕はぎゅっと目を閉じては、はしたなくシャツの袖で額を拭いました。貰ったお水を一口分口に注ぎ、口の中で何度かに分けて嚥下しながら、その冷気を自身の首に押し当てます。気遣ってくれた現場スタッフに塩分チャージのタブレットを貰っていたのを思い出し、一つ口に含んでは、もう一つを君に差し出します。)「これ、あの、塩分……さっきもらったので、」「あの、さっきの曲はなんていう……」「あ、あ、えっとごめんなさい僕ハリソンと言います、あの、お名前……、」「さっき、さっき、あの……勘違いかも知れないけど……」(目が合いませんでしたか、なんて。言いたいことは山ほどあって、どうしましょう、どこから何から言えば良いのか何一つ分からないのです。言葉は子供が遊ぶピアノの音の雨粒のように、大きさもタイミングも、その調子なんかもばらばらで。それでも、)「あの、……、ありがとう、ございました」(言いたいことも伝えたいことも、全部全部たったひとつ、ただ、きっとこれだけなのです。)   (7/12 00:12:52)


オトギハナシ> 
(言葉につまっておどおどしている姿は、まるでいつもの自分を見ている気分。お山みたいに言葉を集めて集めて、つなげようと糸を縫い合わせていくの。だけど繋いだ端からほどけ落ちていってしまって、うまく繋がらないの。気持ちは痛いほどわかるから、彼女は急かすこともなく「うん、うん」って時々相槌を打ったりしながらゆっくり、ゆっくり貴方の返答を待つの。)『かっこ、よかった、です、あの』「─────..........ありがとう。」(額の紙切れのせいで、貴方には彼女の表情は見えないでしょう。だけれど、彼女からは貴方の緊張しているような、それでいて興奮冷めやらぬような、可愛らしい表情がくっきりと見えている。)(彼女は貴方が伸ばした手に、紺色のタオルを握らせた。貴方が手を伸ばしながら汗を流しているものだから、なにか拭くものが欲しいのかと考えたみたい。)「ありがとね。塩分大事だからね............アンタも熱中症対策はしっかりするんだよ............」(震える貴方の声の奥に、ほんの少しだけの迷いや優しさが垣間見えて。)「...............ハリソン、さん。」「オトギハナシのライブ、気が向いたら.............. また、来てね。」(目が合いませんでしたか、なんて質問には答えない。これくらいでいいの、ヒーローのファンサービスはこれ以上はいらない。)『あの、……、ありがとう、ございました』(はず、だったのに。)(紙切れが、風に吹かれてほんの少しだけ捲れる。もしかしたら、貴方には一瞬だけ。ほんの一瞬だけ、見えてしまったかもしれない。"真っ赤に染まった頬"。だけどそれもほんの一瞬のできごと、刹那の色の違いを貴方は見逃してしまうかもしれない。)「....................、.................。」「連れ回しちゃって、ごめんね。」(ちょっとだけ、付け足すの。)   (7/12 00:57:23)


キース・ハリソン> 
「あ、ありがと、ございます」(差し出されたタオルを受取ったなら、また同じお礼を口にして。あんなにも全身から意思を放っていた様とはまるで真反対の君のそれはどこかいじらしくて愛おしくて、遠い遠いステージから手元に届く場所まできてくれたようで、安心して笑ってしまった。表情はうまく窺えず、言葉からの色だってわずか。それでも、)「わっ……、」(ふわっと強い風が吹いて、さらりといろんなものをさらってくれたなら。そうしたらきっと、僕はちょっとだけ落ち着いて、君をみて。そうしてきっと等身大で、君を見つめられる気がするのです。) (人の弱いところを見て安心する……なんてあんまり胸を張って言えることではないけれど、僕はそんなんでも、良いんじゃないかな、なんて思うんです。)「ん……、えへ、」「大丈夫、です。たすかりました……あのままじゃあ、きっと倒れてたから」(君に借りたタオルでおずおずと汗をふきながら、ふく風にそっと目を閉じました。ベリーショートの髪は柔らかくそよぎ、汗を纏ってつんつんととがってはつやつやと輝くのでしょう。ふるふると頭を振れば、ぴ、ぴ、と汗が飛んでしまうので、慌てて僕は君に謝りました。)「ご、あのごめんんなさい、あの、何も考えてなくて、あの、タオルもその、借りちゃって……」「あの……、きっと同じ学校、だから……タオル、今度返したくて、だから。」(聞いて、思い返して漸く分かりました。この間の鬼ごっこの時や、他の任務の時だって。僕らが大変なときにいつだってエールをくれたあの歌声は君だったのだと、漸く見つけた一番星。)「また、あえませんか。」(できることなら、君を見失いたくはないのです。)   (7/12 01:28:58)


オトギハナシ> 
(彼女は。貴方がタオルで汗を拭き取り、静かに貴方のうなじを風が撫でてはさっていくのを見つめて。それから、汗が少しとんだのに気がつけば、紙切れの下で少しだけ喉を震わせるの。くふっ、て、なにか可愛いものを見つけたときに笑うみたいに。だけどそれもほんの一瞬、すぐに無表情に戻れば、その場から立ち去ろうとしてしまうの。)(けれど。)『あの……、きっと同じ学校、だから……タオル、今度返したくて、だから。』(どうやら貴方は、彼女と同じヒーロー見たい。彼女は少しだけ紙を揺らして、それから貴方の方へ振り向けば。)「───────、─────────。」「──────。」「────────────────────................................また、会えるさ。」(長い長い静寂。数秒間なのだけれど、貴方と彼女の間。そこはまるで夏の夜の天体観測のときみたいな静寂に包まれて。それから、彼女はたった一言。静かに、だけどほんの少しだけ。ほんの少しだけ、楽しそうな声色で答えたんだ。それからすぐに、彼女は貴方の前から姿を消してしまう。人混みに掻き消されるかのように、彼女の姿は埋もれてしまいました。)(───────────ペラリ。)(そこで、貴方との物語は終わり。これが、今日の最後の一ページ。)(─────────けれど。背表紙には、まだ物語の続きがあるのです。)(彼女は貴方と別れてから少しだけ歩いて、それから路地裏に入ったかとおもえば。壁にもたれかかって、ズルズルと座り込んでしまいました。紙切れを顔から剥がして、力なく地面に腕を投げ出して。)「.......................ハァっ、はぁっ、はあぁっ、はぁっ............!!!!」(ほっぺが真っ赤に染まって、汗だくになった額を腕で拭う気力もなくて。ただ、息を整えることしかできていない様子で。)(そこにあったのは、【ヒーロー】オトギハナシではなく、紛れもなくただの高校生である、音戯華子の姿でした。)「う、............ふぅ、...............つ、つかれた..................」「おんなじ.............学校の、.............せいとさん...........!?」「.............つぎ、どうやって話せばいいの.............!?」(ずうっと貴方の前で無理をしていたの。演じていたの。本来の彼女はあんなにキザでかっこよくはない。だけど、ヒーローをしている間は。紙切れを額に貼っつけている間は、【オトギハナシ】でいなきゃいけないから。だけど、もし学校で会ったときに彼女が【オトギハナシ】ではなく「音戯華子」だったら。まさかこんな醜態を晒すわけにはいかない。どうすれば、いいのでしょう。バクバクと飛び跳ねる心臓を両手で押さえながら、墜ちてゆく夕日が差し込む路地裏に、少しだけ身を沈めていたのでした。)(────────────パタン。)(おしまい。)【〆】   (7/12 15:52:35)

エレナ・ドラグノフ> 
_____そこは、灰色の水面が揺れる海岸線。天気は曇天、気温はやや低く波は高い。人気のない埠頭で、波が碎ける音を聞きながらしゃがみこんでいた。何を思っているわけでもなく、誰か助けてくれると思っているわけではない。けど今は、自分より寂しい場所にいたかっただけだ。友達が死に、学友が死んだ。私は何も出来なかったし、誰かに、誰かを助けられない私を助けても貰えなかった。『なあ、私何やってるんだろうな。拗ねたって、頭にきたってしょうがないのに。』誰にものを言っているのか、私自身にものを言っているのか。水平線の遠くに向かって人知れず呟いてから_____『で、貴様もやさぐれに来た、という所か?大方。なんだかんだ、最近は大事件も多かった、余裕があるのも今一度きりかもしれん。』金属に包まれた体を軋ませながら振り返り、君に笑いかけた。当然ながら、酷く自嘲して____   (9/3 23:29:47)


キース・ハリソン> 
「エレナ、さん。…………そんなところ、危ない、ですよ。」(僕はただ、貴方がどこかに歩いて行くのが遠目に見えたから。それがなんだか、ほんの少しだけ僕の胸をざわざわと揺らしたから、僕はただ、貴方を追いかけただけなんです。埠頭は案外騒がしくて、賑やかで、それはそっと他のざわめきを覆い隠してしまうほどに煩いものですから。だからきっと此処でなら、ざわめくいろんなたくさんのことが、ひっそり隠せてしまうのでしょう。)「あの、これ、よかったら……」(いつもオーバーサイズ気味に羽織っている黒のアウターを、そっと貴方の肩にかけたいなと思うのです。僕なんかよりも体躯のおおきな貴方にとってはぴったりか、少し窮屈かもしれないけれど、それでも何にも無いよりは、いくらかマシな筈ですから。) 「……エレナさん、あの、へへ。これ、こっそり持ってきたんです。よかったらどうぞ」(貴方の隣にぴたりと寄り添うみたいに腰掛けて、ハンカチに包んだクッキーを手の平に広げて見せ、潮に混じる甘い匂いを、鼻腔の奥で探すのです。貴方の肩の温度を、空気をそっと受け入れて。なんだか、レッドと。しんちゃんと一緒に居るときみたいだなぁ、なんてぼんやりと思うのです。彼みたいに、貴方だって馬鹿みたいにまっすぐで、無鉄砲で、熱くて、優しい。そんな不器用さを、まっすぐさを抱き締めたくて、僕は言葉を探すのです。)「僕は……僕は酷い、人間だから。貴方が生きていて、良かったと思ってる、よ。」(それでも僕はきっとヒーローなんかではないから、こんな言葉にも自信は無くて。海風の声にそっと紛れ込ませるように、そう、小さく零すのです。)   (9/3 23:47:03)


エレナ・ドラグノフ>
 『……身投げをしに来たでもないさ。』別にやる気になれば、5分後だってしたかもしれない癖に。強がって危ない真似はしないさなんて口にした。寄り添った体温が微かに冷たい潮風に縁取られていくようで、こんな場所だからかなおのこと暖かかった。『随分悪い遊びを覚えてしまったらしいな、貴様も。それに、女の扱いもどうやら上手くなったようだ。』掛けられたアウターをきゅ、と意味もなく握って空いた手ではクッキーを口に運んだ。随分悪い子になったななんて呟きながら、くしゃりと頭に手を伸ばして触れて_____『生きていてよかった、か。』『確かに、そうだよな。死ねなんて言われても腹が立つし、生きてても仕方なかったなんて言えるようなやつも、ここの連中にそうそういないのは知ってるけれども。』『……でも、どうしても思うんだ。ヒーローとして、いや、私が私であるために命を捨ててでも何かやらなきゃいけないことがあったとして_____』言葉を区切る。空白と困ったような目線は、ごめんねの意味だった。『それを果たせないまま、ダラっと生きていたとして何がなにやら。なんて……あまっちょろいかな、そんなことを悩むのは。』   (9/4 00:13:38)


キース・ハリソン> 
(僕は、ヒーローにはなれません。誰かを救う力も無ければ、よりそう言葉も吐けません。僕は誰かを心から願うことなんかより先に、僕のこころをあやすことや、僕の気持ちを落ち着けることばかり考えてしまいます。そんな汚い人間なことをひたかくして、出来うるかぎり、誰かに優しくしてみたりするのです。だから、貴方に施してみたりするのも、ただ結局、僕が汚いことを隠したいだけの、結局は自己満足なのです。)「悪い……のは、たぶん本当は、元からだから、ね。」(ただ、ほら。ここは海で、ざわざわと覆うから。僕もクッキーを一枚食んで、君の指先に合わせて弛む柔らかい髪に、そっと思いを馳せてみたりなんてするのです。)「僕はー、ねぇ。僕は……しんちゃんと、よぞくんと、のぞむくんと、ねこさんと、エレナさんと、お父さんと、お母さんと……、それから、それからね。」「学校の先生とか、みんなとか……あんまり、友達は多くないんだけど。」(柔らかくて白くって、あんまり傷のついていない、甘やかされた指を折って、大事な名前を呼ぶのです。僕の手をあらためて見てみれば、やっぱり柔らかくて弱くって、きっときっと、誰のことも守れないような非力さをありありと湛えているけれど。)「それでも、ね、僕ね。……エレナさんとは、きっと僕は違うから、こんなんじゃあ、晴れないかもしれないけれど。」(僕は、こんなちいさな僕の指が、結構好きだったりするんです。)__きたないきたない、内緒の話。__「僕は、それだけの、少ない大事な人たちが、幸せに生きていてくれたら、他のことなんてどうでも良い、とか思っちゃうの。目の前で知らない人が殺されそうになっても、好きな人がそれを庇って殺されるくらいなら、僕はそのまま好きな人と、逃げちゃいたいなぁ、とか…………あの、これ、内緒ね。きっと怒られちゃうから……」「僕は、好きな人だけを守って、好きな人だけを抱えて居られれば、それで良いんだ。…………しんちゃんも、エレナさんも。僕には、ちょっと欲張りに、見える。」「そうやって、たくさんの人を抱え込んで、僕の大事な人がつぶれちゃう……の、は。嫌だよ。」(君が、皆が、ヒーローが、どこかに行ってしまいそうで。)「……ここに、居ようよ。」   (9/4 00:44:27)


エレナ・ドラグノフ> 
『_____ここに居よう、か。』大きな世界を守るのも、小さな暮らしを守るのも何が違うだろうか。どちらが良くてどちらが悪いかとかきっとなくて、どちらが正しいかと言われたら……あまりそういうことは、考えちゃいけないように思われた。私はこの子の願いを果たしてふみにじれるのたろうか。私は、この子が泣きそうに呟いた言葉を_____裏切ることが出来るのか。『確かに、私は欲張りかもしれないな。誰も彼も助けようなんていうのは、確かに破綻してる。じゃなくちゃ、今頃誰もがスーパーヒーローにだってなれるし。』血のにじむほどに、何かを殴り、誰かを壊し、鍛えあげた拳を見つめる。誰も彼もを救いたいからと拳を振り回してきたが、取りこぼしたものは無数にある。正義の味方は____それが味方したいものしか救えない。誰かを救わないことの引き換えに、誰かを助けるのが正義の味方の構成要件だ。『私は_____』私は、どうする。『私だけの、私の身の回りだけの正義の味方にはなれない。』『ごめん。』『私も、確かに一緒にいたい。オマエの願ってることも、無駄にしたくない。でも……私がヒーローを志したのも。』『いくらひねくれても、辞められないのも。』『起源(はじまり)は、願いだったんだ。』『誰かにこの状況を変えて欲しい。誰かに助けて欲しい。この地獄を、何もかも壊して欲しい。そんなふうに思ったから_____それが出来るように、ヒーローに憧れた。私の憧れなんてのも、案外ろくでもなくてさ。下手をしたら、何もかも壊したいってやけっぱちもあった。』『でも、なんだかんだ色々酷い目にあったから、だからこそ余計に______』こく、と優しく頷いた。ごめん、なんて何回繰り返しても足らないだろう。悪かった、じゃ済まないだろうけど。『それが、誰かを、誰かの守りたい人を。それが顔の知らない誰かでも、傷つけることを許したくない。』『それを諦めて、まあ私はこんなもんだからって顔をしたくない______』『……だからごめん、私はオマエのヒーローには、なれないかもしれない。』『でもさ。』『オマエの味方では、居てやりたいから。教えてくれよ_____オマエの愛も、呪いも。』   (9/4 01:16:51)


キース・ハリソン> 
(__拙い惨めなピーターパンは、大人になるのを拒むのです。稚拙で、幼稚で、手が届かなくたって許されるようなぬるま湯で、大海など望まないのです。もういい加減、大人になり始めなければいけないのに、夢から覚めなければいけないのに。___我儘、なんて言葉を押しつけて、前進を辞めてしまったのは彼の方だ。僕の方だ。手を伸ばすことを諦めたのは、僕、だというに。) 「……、そ、っか。」(辞められない、なんて言われてしまえば、やっぱりもう、僕に言えることも、出来る事も無いのです。何度見てきた背中でしょう、何度追ってきた足跡でしょう。貴方の見据え、手を伸ばす範囲は、どうしようもなく、途方もない程に遠く、広い。 誰かを捨てて、誰かを救う。のならば、必要最低限だけを救えばきっと捨てる数だって少なく出来て。その他なんて、目を瞑ってしまえれば__なんて願えるのも、きっとそれは、僕が恵まれてしまったから、なのでしょう。)(責任転嫁はお手の物です。もし僕が今の環境じゃなくて、もっと世界を呪っていたら、僕も貴方やあの子の様に、もっともっとと、遠くまで手を伸ばせたり出来たのでしょうか。もっと僕が強い人なら、守られてばっかりじゃなくて誰かを沢山救えたりしたのでしょうか。もっと僕が自分に厳しくて、もっと僕が頑張れる人で、もっと、もっと僕が、僕のことを嫌いになっていられたら。こんなふやふやで真っ白な、どうしても愛おしく思えてしまう自分の手を、切り裂きたくなるほどに恨んでしまえたら。いっそのこと、貴方のいう“酷い目”に、ぼくもいくらかあえていたら。僕も、貴方に肩を並べて、頑張って前を見つめられたのかなぁ、なんて。環境ばかり過去ばかり、これだからダメなんだろうな、なんて嫌悪を繰り返しながら、僕はそれでも持ち上がらない抱えた膝を、そうっと下に下ろすのです。)
(浮いた足先はふらりと揺れ、かすかにあがる水しぶきを受けながら不安定に揺れています。潮のべたついた風が肌を舐め、足下の波はうねり、呑み込まんとばかりに深い海の底を匂わせます。)「えへ、いいんだよう。なんか、ね。ホントはこう言われるの、ちょっと分かってたんだ。」(ふらつく足はブランコの様に。錆びた空は橙なんて差さず、風だって乱暴だ。)「しんちゃん……エレナさんも知ってるかなぁ、レッドって言われてたりする……秋森くん、なんだけどね。……なんか、やっぱり似てる、よね」(ぴょん、と飛び出そうとして、足が竦んで立ち止まって。クッキーののったハンカチを強引に貴方に押しつけて、僕はひょい、と立ちました。)「僕、ぼくはねぇ。友達が大好き。エレナさんも勿論、のぞむくんもしんちゃんもよぞくんも、ねこちゃんも……他にも、たくさん。」「ただ、それだけ。」「たった、それだけ、なんだよ。」  (__泣きそうな海のご機嫌なんて、とろうとなんてしないまま。叫びだしそうな荒れた波の頭なんて撫でないまま、ただそれの都合良さに感謝して。僕はただ、それだけで。)「えれなさんは、何が好き?」   (9/4 14:28:56)


エレナ・ドラグノフ> 
『……私が言うのも、本当におかしい話なんだ。これは_____同情とか、そう言う類。自分のことはてんで棚に上げて話してることなんだが。』いいよ。いいんだよ。それは、使い古された言葉に聞こえた。きっとこの子は真紅郎(かれ)とは対義語で、彼らの冒険に置いて行かれたり、行かないでと言えなくって。そんなことを繰り返したんだとそう思えた。『真紅郎(あのばか)には、いいよ、なんて言わなくってもいいと思うぞ。何せ私と違ってバカだし、馬鹿だからな。随分危なっかしい奴だ。帰ってくる保証のないタイプだろう。』だから_____だから。裏切ることを前提に、私は知らないけどねとかぶりを振ることを前提に、約束をする。それは末期(わかれ)の際、遺す言葉にも似ていて。『行って欲しくない奴と……好きなやつが同じなら躊躇うな。口に出さないと後々堪えるぞ。』私はもう戻れないけど、アイツはそろそろ助けてやれと微笑んだ。自分の侵蝕が上がるのも顧みないで人を助けようとした。事件は終わって意味も無いのに話を聞きに行った。そんな行動は_____「馬鹿だから」で見過ごされてきた、ヒーローという名前の自傷行為じゃないだろうか。だから、助けてやるなら今のうちだぞと、クッキーをしまい込んで穏やかに、母が子に口にする言葉にも似せて告げた。『好きな物……人に聞いたくせに、考えたこともなかった。』『はは、何が好きなんだろうな、私は。オマエの言葉一つ叶えられないくせに……私はそれでも、私たちが救ってきた人を、関わってきた人を愛している。』『_____私をヒーローと呼ぶ、ヒーローを私と呼ぶ誰かが居るだけで、それを守るために戦いたいと考えてしまっている。バカみたいだ。オマエの正義 "に" 味方してやりたくても出来ない、不出来なヒーローをどうか許してやってくれ。』   (9/4 14:53:34)


キース・ハリソン> 
「んん“、ぅー……ぅ、ん。がんばってみる……」(帰ってきた言葉は柔らかいくせに、どこまでも見透かして居るような。しんみりと冷えつつあった脳裏に刺さった君の言葉に、僕はほんのすこし躓いて、バレないように小さく笑いながら、そんな言葉を返してみます。何度も言いたくて、言えなかったその言葉を、今更言ってもいいのかなぁ、なんて。答えなんてどこにもなくて、探しているふりをして考えないようにしていたことの期限が近づいているらしいことを、今ようやく思い知って。それは、つまり、だって。くしゃりと歪みそうになる心をなんとか胸の内に堪え、僕はそうっと、貴方の後ろに立ちました。)「じゃあ、えっと……、一回、練習。」(貴方の後ろにそっと膝をついて、座っているその肩に、そうっと腕を回すのです。)(__これは、ただの練習だからと言い訳をして、ちいさく願いを零すのです。貴方の正義の始まりが、壊してしまいたいという願いなら。僕の正義の始まりだって、こんな汚い、独善的な願いだって、許されやしませんか。)「えれなさん……、『どこにもいっちゃやだよ、“ヒーロー”。』」 (肩から緩く腕を回し、きゅうと貴方を抱き締めながら、その肩口に額を当てて。そうっとお祈りをするように目を閉じたのなら、どうか、どうか。どうか貴方も、どこにも行ってしまいませんようにと、酷く残忍なお願いを込めて。僕だってダメみたいだ、僕だって貴方の正義に、味方はどうしたってできやしない。)「……、ゆるす、よ。それが、その正義が、エレナさんなんだもんね。」(だから、どうか。どうか僕の醜い正義も許してくれたらいいな、なんて。)「……へへ。風邪引いちゃう前に、かえろ。」(つけた額をぱっと上げ、僕はあらためて立ちました。灰色の空は時刻を映さないけれど、お腹が泣きそうなくらいだから、きっとご飯にはいい時間、だと思うのです。)「いつか、エレナさんの好きな物を探すお散歩、いっしょにしよ。ステキな道、沢山教えてあげるから。」   (9/4 15:15:04)


エレナ・ドラグノフ> 
『ああ。』短く答えた。どこにも行って欲しくはないと、背中の辺りから声がする。それは、練習だなんて口にしてはいるがきっと本物で。本当は私だって、私の正義なんて大それたものは、まだまだカタチにできていなくて。誰かにするお別れの練習でもするはずが、それが本物になってしまうのが怖くって。泣いても立ち止まっても訴えてもいいのに____それをやるのも怖いだけの偽物なのかもしれない。『きっと、行こう。』『別に死にたいって訳でもないし、明日死ぬって訳でもないんだ_____約束は、いっぱいあるに越したことはない。』『そうだな、オマエの知ってる場所、気に入ってる場所なら楽しそうだし。』けれど、この偽物を張り続けると決めたからには。いや、逆だ。こんな偽物でも、張り続けたからには。私の傷も、過去も、現在も、未来も。きっと何か意味があるんじゃないかと______亡くしたものは帰らないし、喪ったものは戻ってこないけれど______そう願うことくらいは、きっと許されてもいいんじゃないかって思う。『_____本当に、楽しみにしてる。』明日の約束を取り付けたように、昨日の予定を思い出したように、私はそう答えた。漣は少しづつ遠ざかり、歩みを進めていく。ああ、その日が来るのなら、今日みたいな曇り空じゃなく、天気だったらいいななんて________   (9/4 15:42:07)