レギオ>
(それはある日の放課後のことだ。教室に残って友人たちと雑談する者や、部活動へと急ぐ者、職員室へとノートを提出しに行く者…はたまた、遊びに行こうと友人と並んで歩く者。それか、1人の時間をゆっくりと過ごそうとするなんて者も居るかもしれない。兎にも角にもやや浮き足立った、一日の学業から自由になった開放感を持って、各々が思いのままに過ごそうとしているだろう。そんな空気を感じつつ、燃えるような髪をゆらめかしながら、彼もまた目的の場所へと足を運んでいた。廊下を通り、タン、タン、タン、とゆっくりとした足取りで階段を登っていく。最後の踊り場を通り、両開きの扉のノブを回す。フェンスの向こうには、初夏を知らせる空が広がっていた。後ろ手にドアを閉める。…この場所では『課題』をやるに相応しい場所かどうかと問われれば、適当では無いかもしれない。が、今日は風も強く吹いてはおらず、紙が飛ばされる心配も無いはずだ。日が当たりすぎると白色の紙が反射して見にくいと思っている彼は、さて何処でやろうかと周囲を見渡し、歩き回る筈だ。)「…………ン……………………」(そこで、1人の生徒を遠くに見つけるだろう。白金色の美しい絹髪を持つ、少女だ。彼はその〝視力〟を持ってして、じいと見詰める。)「___…………おぉ?」(いつか耳に挟んだ噂話、その特徴と視線の先のヒトが一致しあい、ふと合点が行ったかのようにして、気だるげな色を孕んでいた瞳は微かに見開かれた。)「…………あれは………………ああ、あれこそは………………………………」(彼は目が良い。ひとつだって見落とさない。だからこそ、キッチリとした服装に身を包む貴女が、この学び舎で特段鮮やかに君臨する者である言う事も見えたのだ。)(ああ、〝光輝く者〟よ、〝我が愛〟よ、〝勇ましい者〟_______) 「…………………………我が、【 勇者 】よ!」 (やけに大きいその背丈で、其方へ行くのにはさして時間はかからない。迷い無く向かったのならば、すっかり手に持っていた課題の事なんぞ頭から抜け落ちてしまっていた。…そして、ヒトのマナーなんてものも。) (6/8 19:57:57)
二条 硝華>
( それは、何でもないある日のことだ。日差しはいつにも増して強く、こちらの肌をじりじりと焼く。今からこの調子では夏が思いやられるわ…………と、薄く色付いた唇から吐息が漏れた。人のいない屋上。眼下に広がる、フェンスの網目に切り取られた世界では、ちいさな生徒たちが我先にと駆け回っている。部活に行く者、一目散に自宅や寮へと向かう者、友人と並び立つ者はこれから街へ遊びにでも出るのだろうか。視線の先にある光景は皆違えど、その顔に浮かぶのは変わらず笑顔である。) 「 ……毎日が楽しくって仕方がないみたいね、くだらないわ。」( 照りつける夕暮れの太陽とは正反対に、言葉の節々には冷めきった感情が乗っていた。私の目には〝 こんな世界で平和に生きる人間 〟のことが、馬鹿げた茶番を演じているようにしか映らないのだった。) ( __________二条硝華は、茶番を呪っている。 )( ギシ、と。握りしめた金網が高い音を立てたのと、声が聞こえたのはまったく同時のこと。 ) 『 …………………………我が、【 勇者 】よ! 』 「 ______ッ! 」( 人が来ていたことに、まったく気付かなかったと言えば嘘になる。ただ、まさか話しかけてくるなんて思いもしなかったのだ。ずかずかずかと近付いてきた姿に僅か、眉が顰められたことに貴方は気付いたであろうか。) 「 えっと…………貴方。そう、確か一年生の。」( 取り繕うように貼り付けた笑みは、完璧であると自負している。【 容姿端麗 】____ それは、嘘を隠すことにも使用できる、便利な才だから。) 「 ごめんなさい、貴方の言う『 勇者 』とやらが何であるのか、私には分からないのだけれど。人間違いをしていないかしら? 」( 貴方の高すぎる背丈を見上げ、にこやかに告げる。この男の噂は否が応でも耳に入ってくるのだ、あまり関わり合いになりたくもなかったし、余計な印象も植え付けたくはない。被り慣れた優等生の仮面は、咄嗟のことでもよく馴染んでくれた。 ) (6/8 20:28:04)
レギオ>
(密やかに顰められた眉も、ほんの少しだけ動揺したかのようなその様子も、そのマスカレードの下に巧妙に隠されてしまえば、いくら〝目〟が良くたって気づくことは出来ないだろう。)『__人間違いをしていないかしら?』(その唇から紡がれた言葉に対して、片眉を上げた。やや不躾に貴女の頭部からつま先までをゆっくりと見直して_____そうして、否定を表すように緩やかに首を横に振った。)「いいや。」(緩慢な動作とは相反して、その口調はハッキリとしたものである。)「…そうであるな。まず、ワガハイの言った、勇者…とは。…………強く、逞しく、光り輝く者…のことを指す。」(目線の先に居る、己よりも遥かに小さなその体。然し、その中には有るのだろう。真の勇者たる彼らに最も近いであろうものが。)「この魔王…の代行であるが………ワガハイが、ヒト間違いなどするものか。……ああ、しない。しないとも。」(__________だって彼は、『愛情を愛している』のだから。〝愛〟たる者を、見誤る事など、ゼロに等しい。)「それについては、自信があるのだよ。」(やはり気だるげな雰囲気は崩れぬまま、だがしかしその瞳は確かに人間らしい生気を宿した様子でもあった。)「そう、そう。ワガハイは〝1年生〟であるから故に…………センパイ、であろう。確か。」(同学年では無いことは確かである。……しかしこの男は鈍感なのか、自己中心的なのか、それとも最初から気にしちゃあいないのか____この空気を読める訳もなく。ゆったりとしていて、しかし強引に、自分の流れを作り出し、それに無意識の領域で巻き込んで行こうとしているのだ。絶妙なタイミングで紡ぎ出される話題で、彼はようやく名を名乗っていない事に気が付いた。)「……ワガハイは、レギオ。…ああ、好きに呼んじゃっても良いよ。」(荷物を持っていない方の手で、自身の胸に手を当てる。くったりとした、その見た目の威圧感にやけにそぐわない喋り方だ。微かに首を傾けて、『勇者の名は?』と、問いかけた。) (6/8 21:14:16)
二条 硝華>
『 ……ワガハイは、レギオ。…ああ、好きに呼んじゃっても良いよ。』( 形の良い眉の動きも、遥か高みからこちらを見下ろす仕草も、どこかぼやけたような語り口も。初見の印象からは遠くかけ離れた、ぼんやりのんびりとしたもので。それ故に夢物語に似た言の葉の全てを否定させないという、特殊な空気感すら纏わせる。不思議を通り越して、不気味な男だ。体を向き合わせることはせず、右耳から左耳へ自己紹介を聞き流しつつ、そうおもった。 ) 「 まず、そう。」「 初めから訊いていないとは言え、名前を教えられたからには答えないと失礼になるわよね。」( ハリボテの仮面はそもそも長時間持つものではなく、それでも、初対面の相手に冷徹とも言える視線を向けるほど愚かでもなく。ただし言葉の端々から本音が見え隠れする辺り、仮面はまったくもって、貼り付けただけのものであるのだった。) 「 二条硝華、三年よ。貴方にとっては確かに先輩。」( 「 よろしくお願いするわね、レギオさん? 」なんて、綺麗なばかりの台詞に一欠片の真実も存在せず。笑顔と同じように形作られただけのものであると、貴方に気付かれたって構いやしない。『 強く、逞しく、光り輝く者 』がこんな風に扱ってくること、それに気分を害すなり何なりして立ち去ってくれれば御の字であった。) 「 それで…………ええと、なに? 魔王とか、勇者とかって、詳しく伺った方が良い話? 」「 それとも、何にも聞かなかったことにした方が宜しいかしら。」( いわゆる厨二病、と一笑に付すことは簡単だ。けれど、彼の〝 噂 〟を鑑みると馬鹿にも冗談にもできないのは確かで、だからこそ対応に困ってしまう。話を詳しく聞くなと言われれば、ただの空想であるのなら、このまま笑顔を向け続けて私が消えればいいだけだ。だって話はそこで終わりなんだもの。その方が、きっとお互いに楽な結果に終わってくれるだろう。)( …………いいえ、別に、初対面の彼自身を敵対視しているわけじゃあないけれど。 ) ( 横に仁王立つ貴方が、噂話でしか聞いた事のない魔王様とやらが、いったいどんな話をするのか。それとも、口を閉ざすのか。私は内心、戦々恐々としながら耳を傾ける準備をした。 ) > レギオくん (6/8 22:02:38)
レギオ>
「ニジョーショーカ……………ニジョウ………………………………………二条、硝華。…………成程、其れが貴殿の名前か。」「………………OK。ワガハイ、覚えたぞ。…………しっかりね。」(和名との縁がそこまである訳では無い彼は、何度か口の中でその名を反芻させる。……そういえば、名前とは、記号的な物であると。所詮、個体を識別するだけの物であると、誰かが言っていたことをふとこの瞬間思い出した。其れは直ぐに脳の隅に追いやられるだけのもので、至極些細な記憶だったけれど。)「ワガハイは、そう……覚えておかなければならない故に。」(彼からしてみれば、名前というものが、様々な面でどういった物として扱われるのかは知る由もない。教えられた所で、はあと微妙な表情で、やはりぼんやりした様に頷くのだろう。)(然し、瓶詰めした個をラベル分けするには必要で、そしてその理屈で行くのなら、〝勇者〟たる者の名は一層特別なものとしての意味合いを孕むだろう。ならば、覚えておかなければ。ならば、大切にしなければ。)(……等と、考えて居るのだから。彼女の美麗なマスカレードが徐々に剥がれ落ちて居るのだって、特段気にする様子も見受けられない。それこそ形式的で、綺麗な台詞に対しても素直に頷くしか出来なかった。)『それで…………ええと、なに? 魔王とか、勇者とかって、詳しく伺った方が良い話?』『それとも、何にも聞かなかったことにした方が宜しいかしら。』「………………む。」(彼女からそう投げかけられれば、顎に手を当て、少し考える様な動作を見せた。少しだけ顔は下向きに、人差し指と親指で顎を何度か横に摩る。そしてようやく鎌首を擡げる様にして、貴女の方へと目線を流した。)「割愛するけどね。」「…ワガハイは…ヒトじゃない。キミ達みたいにね。………そう、【魔王】で。」「ショーカチャンは、ワガハイが…〝我々〟が好きなタイプのニンゲン、所謂【勇者】。」(ぴ、ぴ、と己と貴女を交互に指さし、それを最後に天に向けて指した。)「それが、それが…答え。」「…そう、大体そんな感じ。」(………説明や解にすらなっていないその受け答えを、まるで模範解答ですとでも言うくらい、しどろもどろになる事も、尻すぼみになってしまうことも無く。…真面目に話すのも嫌になってしまうほど、彼は【適当】なバケモノだった。) (6/8 23:11:35)
二条 硝華>
( 幾度か反芻される自らの名。初めの素っ頓狂なイントネーションから、繰り返すごとに聞き馴染みのある音に変わっていく。だというのに目の前の少年から発されるそれは、自分のものではないような響きを纏うのだから気味が悪いものだ。『 覚えたぞ。』と言ったって、『 覚えておかなければならない。』と戒めたって、別な興味の対象が現れればすぐにぽかんと忘れてしまいそうな癖して、よくも言う。) 「 …………そ、どうも。」( 考える素振りを見せた男の、自身の輪郭をなぞる指先を目で追って。つい、と目を離しては、彼から見えない身体の陰で左手を握っては緩め。上方から流された視線に敏感に気が付いては、再び貴方を見上げる。その様子は、普段の ( この場合は優等生である二条硝華でも、笑顔をとっぱらった氷の女王のような二条硝華でも、どちらでもいい ) 彼女を知っている人間が見れば、『 随分と落ち着きがないな。』などと思うだろうが…………生憎、ここには自身と初対面の少年しかいないので意味が無い。)『 割愛するけどね。』『 …ワガハイは…ヒトじゃない。キミ達みたいにね。………そう、【魔王】で。』( 指差し確認みたいな動きをする貴方に、嗚呼、眼差しはすぅっと冷気を帯びていく。 )『 ショーカチャンは、ワガハイが…〝我々〟が好きなタイプのニンゲン、所謂【勇者】。 』「 …………………………………そう。何だかよく分からないけれど、好かれていらっしゃるみたいで、光栄だわ。」 ( 声音は、より一層温度を無くし。)「 でも、ねぇ、『 魔王様 』。」( 鈍感なのか、それとも人間如きの苛立ちなど取るに足らないと思っているのか。定かではないが、貴方はこちらの機嫌なんか気に止めもしない。)( だから。そう、だから。) 「 _____________私、貴方が嫌いなのよ。」 ( 自身の血が凍りついてしまうくらいに。)( 剥がれかけのヴェールは呆気なく風に飛んでいって、そうして貴方に見せる表情は〝 嫌悪 〟に近い。彼にしてみれば、突然拒絶を突きつけられている状況。憤慨したっておかしくはなく、その方が好都合だなんて思っているのだから、我ながら酷く気が立っているらしかった。パンプスの踵をかつりと鳴らし、貴方へ確りと身体を向ける。) (6/8 23:46:01)
レギオ>
『…………………………………そう。何だかよく分からないけれど、好かれていらっしゃるみたいで、光栄だわ。』(取り巻く空気は温かみを無くし、肌に感じる温度が、すぅと冷たくなって行く様だ。そこで漸く何かを感じ取ったのか、緩やかに天に向けられていた指先は、手首からくたりと力を無くし、だらしなく垂らされた。)『でも、ねぇ、『 魔王様 』。』(表情の変化はやはり乏しいまま、紅玉の瞳は相変わらず貴女に向いたままである。そしてそのまま、言葉の続きを静かに聞いていた。)『_____________私、貴方が嫌いなのよ。』(…例えるならばそれは、氷点下。きっと他の生徒ならば凍り付いて粉々に砕け散ってしまいそうな程に、それは酷く冷ややかで、傷を付けるためだけに紡がれた言葉だ。拒絶、嫌悪、憤怒______それらが一色単に折混ぜられて、知らぬ間に刃物の切っ先を向けられていたのだ。)(その時だった。)「_______……あららぁ………………………………」( ゴ ウ ッ ッ ! ! ! ____という激しい音をたてて、先程まで穏やかだったはずの風が吹き荒れた。彼が手に持っていた白色のプリントが奪われ、宙に舞う。)「…………………ぅ………………と…………………」(風に煽られて余計乱れた長い前髪と黒色のマスクに隠されてしまって、目元すらも窺いにくい。けれど、それがあっても。)「………………ふ、は、は 、は は。」(足元に落ちたプリントに目もくれず、一歩踏み出す。クシャ、と紙切れの軽い音がした。)「 なぁ____我が愛よ、輝ける者よ、勇ましい者よ。」(もう1歩ずつ、踏み歩き、先程よりも貴女との距離を縮めて行く。そして手を伸ばせば触れられる程にまで近付けば、両の足をそこで止めた。)「_________やはり、勇者と呼ぶに相応しいよな。」(____憤慨するなんてとんでもない。だって、その【カミサマ】は、酷く満足したかのように、初めて〝笑顔〟らしきものを浮かべていたのだから。) (6/9 01:19:13)
二条 硝華>
( __________それは、一陣の。) ( よくよく手入れのされた、1ミリの乱れも無かった白銀が、強い強い風に巻き上げられる。思わずぎゅうと目を瞑ってしまって、次にその紅梅色を見開いたとき。聞こえてきたのは、 ) 『 ………………ふ、は、は 、は は。 』( 紛れもない、少年の、『 シキガミ 』の笑い声。 ) 『 なぁ____我が愛よ、輝ける者よ、勇ましい者よ。』「 ……何かしら、化け物さん。」( 彼は、私と同じように長い髪を乱され目元も曖昧になってしまっている彼は、長い足による広い歩幅でこちらに一歩。また一歩と近付く。およそ30センチ差の巨体が迫ってくる圧迫感。だが、勿論後ずさるなんて馬鹿げた真似はしないし、その発想すら浮かばない。細い顎をくいと上げ、白い喉を晒し、あくまでも挑戦的に、挑発的に。夕陽を背にした貴方の顔は、こちらからでは影になって見えにくいけれど、そんなことはお構い無しとばかりに、ひたと貴方を見据えて。手を伸ばせば触れられる距離。リーチの差は、大きい。〝 万が一 〟を頭の片隅で思い、悟られぬように重心を下に。) ( 立ち止まった彼は、果たして。) 『 _________やはり、勇者と呼ぶに相応しいよな。』( ____言って、わらう。) 「 ………………………………。 」「 ………、 」「 ………………………? 」( 言葉も、無かった。) ( ぱちりぱちりと瞬いて、何かを言おうと口を開け、息を吸い。しかし喉奥から絞り出すべきものが見つからず、呼吸に喘ぐ魚のように閉じては開くの繰り返し。) ( いったい何を言っているんだ、と言うのが真っ先に出た疑問。自分を嫌いだと言われて、面白そうにわらう。笑みはどういう意味か。人間が小動物の威嚇を可愛らしいと形容する、そんな見下しか。理解不能な現象にぐるぐると思考を回すだけ回して ( 常人より速い【 思考速度 】を、ここまで無為に使ったのは初めてであった ) 、ゆるりと首を傾けた。) 「 ええと。」「 何て言うのかしら。」( 逡巡。 )「 _____________貴方、マゾヒズムでもお持ち? 」 (6/9 01:56:31)
レギオ>
『 ええと。』『 何て言うのかしら。』 『 _____________貴方、マ ゾ ヒ ズ ム でもお持ち? 』(ぱち、ぱちと2、3度瞼を開閉させ、その常人より優れているであろう脳をフル回転させた結果。少し間を置いてから、目の前の少女は、そう言い放つ。)「_______________…………………………」(今度は、此方が動きを止める番であった。まるで先程の鏡写しの如く。浮かべていた笑みはそれと同時に消え去り、少し呆けた様な気の抜けた表情だ。かと言って、やはり貴女の言葉に気分を害した訳でも、予想外の反応に落胆した訳でも無いらしい。)「まさか。」(少し静寂を挟んだ後、片眉を上げながら告げる。)(……実はこの時、彼の脳内では彼女の発した【 マゾヒズム 】という単語に対して一斉に検索をかけていたのだけれど、其れは知らなくても良い話である。結果、人外たる彼の常識知らずな脳みそでは、柔いヴェール包まれた様なぼんやりしたものしか表示はされなかったのだが。)「_______やはり、豪胆で在るべきよな。勇者とは。」(怯むこと無く此方に突き刺す刃も。手折れてしまえそうな白い喉を晒し、ツンと顎を突き出し、挑戦的な顔付きで鋭く見据える表情も。全て、全て。)「………うん。」「…やっぱり、此処に来て……良かった。」(貴女が彼の行動に対して満足に解を導き出せるような受け答えもせずに、【カミサマ】だったものは音もなく姿を潜めてしまう。代わりになんら変哲のない、とてもセンスが良いとは言えない服装に身を包んだだらし無さそうで穏やかそうな青年だけが残り、貴女の目の前に立っているだけだ。右手を肩肘に添え、漫然とした様子である。刻々と色を濃くしていく空を背負い込みながら、一陣の風により少し乱れ靡いた彼女の髪が細かく煌めくのを見ているのだろう。無慈悲に足の下敷きにされてすっかり皺が寄ってしまったプリントを拾い上げ、埃を払う。)「…………ね。ショーカちゃん。」(ちら、と、視線を向けた。)「キミは、『嫌』だって言うかもしれないけど………」(嫌悪、敵対心、冷徹なまでの眼差し。3歩歩いたら忘れる小鳥じゃあるまいし、それが記憶に無い訳が無い。けれど、彼は。)「________ワガハイと、〝オトモダチ〟にさ。……なってよ。」(ただの嫌がらせにしては悪趣味で、純粋な思いであればタチの悪いその提案をけしかけたのだ。) (6/14 21:00:02)
二条 硝華>
( 『 まさか。』と、彼は言葉の意味をしっかりと理解出来ていないみたいな顔で。ただ、今の今までその端麗な顔立ち ( マスクと長い前髪によって隠されており、はっきりと見ることは一瞬しか叶わなかったが。) を飾っていた笑みが、どこかぽかんとしたものに変わったのを見て、私は少しだけ気分を良くした。そんな顔をしていたら、何だかちゃんと年相応の一年生のようじゃあないか。) 『…やっぱり、此処に来て……良かった。』( 挙句の果てにぼんやりと、だけれど穏やかに、そう呟くのだから。肩肘を張るこちらがとんだ役者みたいで、馬鹿らしくもなるだろう。貴方が腰を折り、長い脚を曲げて、飛ばされたのであろうプリントを拾い上げるのを、右手を腰に当てて見るともなしに見ていた。どういう反応をするのが正解なのかよく分からなくなってしまったから。嫌悪と困惑に混じって、ほんの少し拗ねたような表情を浮かべながら、だんまりを決め込むしかなかった。 )( 名前を呼ばれても口は開かず、ぱちりと瞬きだけを行った。例えば私が猫であったなら、そのピンと立った耳をちらちら動かしただろう、そういう意思表示。) 『________ワガハイと、〝オトモダチ〟にさ。……なってよ。』( 咀嚼。)「 嫌に決まっているじゃない。馬鹿なことを要求しないでくださる? 」( それは限りなく即答で、躊躇も間髪も無く。)( 彼が予想した通りの回答であった。)「 だって貴方、『 オトモダチ 』ならいくらだって出来そうだもの。一人もいないと言うのなら、哀れに思うくらいはしたかもしれないけれど。」( 「 多数の中の一なんて御免だわ。」と、そう言っては肩に掛かる髪を払い退けた。)「 ………………だから、そう。そうね。」( 払った指先を、自身のくちもとに持っていって。暗くなり始めた空に、校庭に逸らした視線。考える素振りは長く続かない。) 「 ____________〝 好敵手 〟くらいになら、なってあげても良いわよ。」「 貴方にこんな口を利ける女、他にいると思って? 」( 物事の全てを馬鹿にするように鼻で笑う仕草は、染み付いた癖であった。『 勇者 』や『 正義の味方 』というよりは、まるで『 悪役 』のような。人を見下す笑みで口角を上げて、貴方相手に小首を傾けてみせた。) ( ライバルとして切磋琢磨するつもりなんか、これっぽっちだって無いと言うのに。) (6/14 21:39:33)
レギオ>
(_____そう、それは、年相応の高校生がそわそわと落ち着かない気持ちを押し込めて、相手からの返事を待つ様な、そんな青い春を錯覚させるような間すら無く。)『 嫌に決まっているじゃない。馬鹿なことを要求しないでくださる? 』(出たのは、拒絶一択。)(…いっそ清々しさすら感じられる。ツンとした表情を浮かべ、その唇から吐き捨てられた。)「 そっか、うん。……そうだよねぇ… 」(見事玉砕したこの男から漏れ出るその声は、変わらず穏やかな波のようで、緩やかな起伏を持ち、落ち着いたものだ。落胆の色は滲んでいるが、微々たるものである。それは想定内の言葉だったからか。…それとも、前しか見ていないからなのか。)『だって貴方、『 オトモダチ 』ならいくらだって出来そうだもの。一人もいないと言うのなら、哀れに思うくらいはしたかもしれないけれど。』(そう聞いて頭の中に浮かべるのは、曇天の様な不可思議な紳士だったり、はたまた太陽の様な赤髪の青年、〝悪友〟と呼べる白衣の男、白百合の存外お喋りな彼女______どう思われているかは置いておき、彼からすれば『良き友人』出あることに何ら変わりは無い。)(言葉を繋ぎながら、何かを思案するかのような横顔。)『 ____________〝 好敵手 〟くらいになら、なってあげても良いわよ。 』(そして浮かべられたその笑みは、初めて邂逅を果たした時とは似つかないものだった。〝優等生〟の仮面を外したその下にある、彼女の表情。)「……………………ワガハイの?〝好敵手〟?」(ついつい、長く節だった指で自分の顔を指さして、そう問うてみる。オウム返しの様なそれは、貴女の返答は必要とはしなかった。)「…………ははッ____魔王たるワガハイの、好敵手、か!」「…………うん。うん。…………ああ、良いと思う。キミには…………〝勇者〟には相応しい。…………何せ当のワガハイが言うのだから、間違い無い。」(静かな湖に落ちた1粒の雨水のように、波紋は徐々に広がっていく。くつくつと広い背中を小刻みに震わせ、緩やかに瞳は弧を描かせる。燃える様な髪はそれに合わせて尾の様にして揺れるだろう。)(帰宅する者で騒がしかった校庭も、今では部活動に勤しむ声ばかり響いている。)(_____それでは、好敵手の第一歩として。白銀の勇者に、緩慢な動作で手を差し伸べた。其れを鼻で笑い飛ばし払い除けるか、ある猫のような気まぐれを持ってして握り返すか。何にせよ、その青年は……『魔王』と名乗るバケモノは、満足そうな笑みを浮かべていることでしょう。) (6/14 22:40:03)
二条 硝華>
『 ……………………ワガハイの?〝好敵手〟? 』( くつくつくつ。) ( 予想だにしなかったと、貴方は自らを指さして。直後。広い背中を揺らした静かな笑い声は魔王と言うにはあまりにも甘く、彼の頷きの合間に響いた。『 勇者 』と呼ばれるのは多少なりとも不快であったから、差し出された手のひらをどうするべきか僅かに悩んだ。手を、そして顔を。ちらりちらりと視線を投げるも、当の本人は満足そうな____否、何にも考えていなそうな笑みに瞳を歪めている。) ( 薄く、息を吐いた。)「 ………………レディのエスコートくらい、『 魔王様 』を名乗るなら学んだ方がいいと思うわ。」( そもそも、どこに好敵手と握手を交わす馬鹿がいるのかしら。言って、仕方ないわねと言わんばかりに肩を揺らして。その手のひらに、そっと自らの手を添えた。ざらついた指先をなぞって、平を合わせ、しかし握らず。それはたった一瞬のこと。)「 次は、そうね。アフタヌーンティーに招待してくれるとうれしいわ。 」「 貴方は人を持て成すなんて、てんで向いていないでしょうけれど。」( 一歩。距離を縮めて、秘めた囁きが貴方の鼓膜を揺らしただろう。約束なんて甘ったるいものではなく、これはただの〝 茶番 〟である。) ( 少女は茶番を呪っていて、同じくらいにカミサマやシキガミが、自身のディスコードが嫌いで。嫌いだからこそここまで昇ってきた。努力の結晶。…………それ故に。貴方のように謙ったり、見上げたり持ち上げたりせず、どこまでも不遜に相対してくる者を決して拒絶出来やしなかった。) ( ______________これは、内緒話。彼女すら気付かぬ、世迷言。)( 『 気を使わず 』『 お茶を嗜む相手が欲しい 』だなんて言う。孤独を選んだ少女の、ちょっとした夢のお話。)「 それじゃあ、また。______レギオさん。」 (6/14 23:28:47)