M

JOKER

M≒JOKER> 
『へぇ、君って意外と家庭的』それは突然現れた。君が黙々と作業をして教室に静寂が広がったその瞬間。君の耳元で、高くも低くもない声に話しかけられる。あなたは家庭科室で料理をしていたかもしれないし裁縫をしていたかもしれない。ドアには鍵をかけていたかもしれないし、そうでは無いかもしれない。彼の前では嘘も真実も意味をなさない。何が虚像で何が現実かなど、彼女の前には無意味である。____とにかく、彼女は気がつけば君の後ろにいる。それはちょうど君が椅子に腰かけるか低い位置にいたかもしれない時に、後ろから覗き込むようにして君のことを見ていた。君がどんなに感覚に優れていようと、君がどんなに耳がよかろうと、彼の存在を感知することは直前まで出来なかったはずだ。なぜならそれが彼の能力だから。<容量____4>『ね、君はいつもここにいるの?』彼女は君がこちらに振り返るのなら、トトンと靴音を弾ませて後ろへ下がる。それから髪の人束をクルクルと指に巻き付け、愛らしい声で君に問いかけた。フリルのついた袖をヒラヒラと揺らす度に、どこか甘い香りが漂うようだった。こんなにも目立つシルクハットを被った奇怪な人物は、気がつけば君の隣にいた。>じぇんとる   (5/20 21:40:09)


ジェントル> 
「『紳士的』、と言ってくれると…嬉しィかなあァ。(右手のディスクは回転を続けている。…なぜなら夕下がりの教室、授業で使っている教室と比べかなり大きい曇りガラスから歪んで差す光がむし、と暑い。)…ママが帰ってくる前にねえェ。美味しィもの、作れるようになっておきたいからさあァ。(彼の足元は、鎖がぎっしりとしきつまっている。どうやらすぐに潜航するため。そしてそこから鎖化による開闢にて無理矢理通った、鍵もかかる扉に一本だけ巻き付けて『感知』するためだ。つまりここは放課後、彼は見回りの目を欺き料理している。寮にもキッチンはあるのだが、彼は家庭科室に固執した。)ここで、作ってあげるんだあァ…おいしくねえェ。(とんとんとん、と、『授業参観』の時より手際よく、もやし、人参、野菜を正しく切り分けて、じゅうと油のはね肉が白茶けた色になるフライパンに順序よく入れていく。優しく誉められたものだ。)」「…改めてごきげんよう、初めまして?(見てわかる通り、彼はあまり驚いてはいない。むしろこうあることを楽しんでさえいることは、見てわかるだろう。…頬がつらないのかというほど、彼は常に笑顔であるが、別に常に楽しくて笑っている、というわけではない。)君はそう、噂に聞く『JOKER』くんだね?(そして楽しんでいるのは君のサプライズに、というだけではない。)『奇術師』はボクのヒーローなんだ。…とっても、とっても、会いたかった。(君そのものとの出会いも、だ。)…ここにはよくいるよォ。放課後に来るには辺鄙な場所だからねえェ、噂にもいいんだろうねえェ。君の噂もいくらか聞ィたことがあるんだァ…(幻影を生む甘い香りと、ととんと足音。食欲をそそる旨い香りと、じゅじゅうと炒めの音。蓋を閉めた。)ボクはジェントル。見ての通りの紳士さァ…仲良くしてくれると嬉しいなあァ、奇術師、大好きだからさあァ………(そして挨拶は、しっかり君の目を見て恭しく。そして、ことことと煮立つ豆腐と昆布の鍋に大さじ一杯入れた溶き味噌を入れ、混ぜはじめた。)」   (5/20 22:23:22)


M≒JOKER> 
『わっ!!これやって驚かない人始めてみた!ふふ、いいなぁ、僕君のこと好きだな』彼女はパッと明るく笑った。とてもとても楽しそうに、身体を揺らして笑った。「君はそう、噂に聞く『JOKER』くんだね?」『えっ、僕ってもしかして有名人?びっくり。びっくり!嬉しいな、目立つのは大好きなんだ』彼はその話もっと聞かせて、というように君にぴったりくっつく。お肉を入れた途端激しく音を立てたフライパンにスンスン、と鼻を鳴らす。『とってもいい匂い。きっと"ママ"も喜ぶよ』彼は君とママの間にどう言った関係があるのかは全く知らないが、君にとってその存在が大切なことはとても分かりやすかった。君とママ、それらを結びつけて、彼が何を考えているかなど……誰にもわかりはしないだろう。彼が少し足を動かせば、散らかった鎖がジャラ、と音を立てるかもしれない。『はじめまして、ジェントル。』『僕は奇術師、JOKER、M。名前で呼びたい時は、エムって呼んでね』君の顔は目元と口元意外なんにも見えないけれど、彼はそれに答えるように笑い、存在しないスカートを持ち上げるような仕草でお辞儀した。『ねっ、ジェントル。これは何を作ってるの?』それから彼女は、クルクルと君の周りを回って問いかける。『君の大好きな奇術師が、一緒に食べたいって言ったら……分けてくれる?』彼女はへにゃりと笑った。ね?くれるでしょ?と笑いかける。紳士様が、まさかレディーをもてなさないわけ、ないでしょう?   (5/20 22:43:19)


ジェントル> 
「肉野菜炒め。(懐かしむような、愛おしいような。惜しいような、例えば掛け替えのない誰かの名前を呼ぶように、彼は自身の記憶を呼んだ。ふとしたたったひとつの料理名に、込められるものは重く深く。)だよ、奇術師Mx.JOKER…(そして、君の名と生業を呼んだ。刻まれたような、思い出すような、例えばエンターテイナーのこぼす言葉に感銘を受けるような。ふとした肩書きと名前に、込められるものは優しく暖かく。)驚くことは、たくさん目の前にしてきたからねえェ…(彼の根性は据わっている。それは捻じ曲がって、溢れたり撒き散らされた血やばらばらに乱れた薬、固く結ばれた縄を確かに確かに何かを耐える心で、だから君にも驚かなかった。)『ママ』のために料理したり、裁縫したりしてあげたり。『いいこ』にしていたらなんだか、それが遠ざかっていくみたいでさあァ。安心したんだァ。(小さな部屋の畳の上で。鈍く銀色に輝くシンクの上で。タイルの濡れる浴槽の上で。)…だからまた、遠ざけなきゃいけない。(帰ってきたら、帰ってきたら、また彼女はひとりになってしまうんでしょう。)だから…(左側に巻かれた包帯がずるりと落ちて、口角を隠す。)」「(ぐつ、と、味噌汁が煮えた。)」「そろそろ丁度いいみたいだねえェ。(隠す包帯を何事もなかったかのように直し、笑顔の口角も変わらずはち切れるように笑うだけだ。)もちろん君にもよそうともさあァ。代わりに、ここの事は黙っておいてほしィなあァ。(…机の上のトングと皿を取って、一盛りずつ。そして味噌汁もお玉ですくって溢れなく、茶碗に一杯づつ。ご飯も丁度『2合』炊けたようで。)…でもこの場合、レディ・ファーストはどうなるのかなあァ?(なんて、『ミクス』と呼んだわりには何も考えず言いながら、箸と食事を配った。まるでもとより、2人分の用意をしていたように。)」   (5/20 23:32:08)


M≒JOKER> 
『んふふ』『性別って、そんなに大事?』彼女は試すように笑った。君と似たように口角を釣り上げて、楽しそうに。『もちろん、ジェントルが女性を尊重しているのは素晴らしいことだと思うなぁ!でも、僕にとっては差程重要じゃないむしろ』彼は君に詰め寄るように身を乗り出す『必要ない』声のトーンがやや下がる。それからにっと笑って君から離れた。丁寧に並べられた食事の前に腰掛けて、少女のように笑いかける。『でも、今は女の子。その方が都合が良いからね』コロコロと鈴が転がるように笑う。食卓に並ぶ家庭的な料理は、決して豪華ではないがとびきりに美味しそうに見えた。箸を片手に、そっと手を合わせて。『いただきます。』彼女はそう言って、君と同時に食事を口へと運ぶだろう。シャキシャキとした野菜の新鮮な食感。ほろりと解けるお肉の香り。すぐにもう一口、手を伸ばしたくなるような味にきっと彼は嬉しそうにパタパタと足を動かす。ふっかりと炊けた白米を合わせて口に含み、やはり身体を揺らして今にも頬が落ちそうな表情をすることだろう。彼女が体を揺らす度に、不思議に伸びた髪の束が揺れた。『ふふ、おいしい。おいしいねぇ。……ね、ジェントル。君はこれを"ママ"に食べてもらいたいの?』気がつけば彼は箸を片手にじっっと君のことを見つめていた。君と目が合えば、少し猫目の瞳を細めて笑うだろう。   (5/20 23:50:24)


ジェントル> 
「(何も変わらない。はち切れるように広がる口角の、薄ら笑いは変わらない。ジェントルに怒りや悲しみはスマートでない。)そォっかあァ…。(しかし。不条理を呪う故、不条理に抗うものに出せる口はない。『ジェントル』に雄弁は銀、沈黙は金である。衣装哲学のマナー、君に持ち込む『マナー』はもう知った。)じゃあァ。今日は『Ms Mx』かァィ?エム。(何も変わらない。『Ms』『Mr』のルールに、性別が必要だったまでだ。君にないならそれでいい。)ボクが気にしなくなる時が来るとは、思わなかったねえェ。(ならば彼の前で縛られるものは何だろう。組み立ててきたモノ、縛る鎖、『一途になる理由』は、千切る鎖はない、Mxと出会うのは初めてだったから。)…面白いことだ。(ある意味でもう既に、鎖は千切れていた。彼も君も、何も気にすることはなく。)エム。君はそう呼ぶのが一番、相応しいんだねェ。(きっとどちらも、ある意味で高い壁があり、しかしどこか壁がないのだろう。)」「食べるときはちゃんと上げるんだよゥ、食事前に『レスト・ルーム』でが本来一番望ましいのだけれどォ…。(目が合ってまず気になったのは、ぱたぱた揺れる髪。高級旅館やレストランじゃあるまいが、ぱたぱた揺れる髪が落ちて食事に入るのは望ましくない。)一般的なのはハーフ・アップだよゥ。まァ今は…(そっと細い両腕を君の顔にそっと伸ばし、もみあげを耳の後ろへ。)留められないからねえェ…これで。(…縛るものはない。だがやはり、あくまでジェントルとして『マナー』を整え、食事の席に着く。)…食べてもらいたいよォ、それはもちろん、とォっても。(噛めば溢れる肉の旨味、噛めば溢れる野菜の甘味。ジェントルの舌にもそれは自分の物ながら『美味しい』。)でも。どちらかというと、作ってあげたいんだァ。…たったひとりだから、あの人は。ボクだけでも、『優しい条理』でありたいからねえェ。(だが美味しいのは、彼が器用だからであり、求めるのはそれではなかった。)彼女のために、何かをする人でありたい。…の、さァ。(寂しい母を救う手を、探しているのだ。)」   (5/21 00:26:43)


M≒JOKER> 
『んふふ、ありがとぉ』『そうだよ、僕はエムなんだよ』手を伸ばされると少し驚くが、彼女はそれを甘んじて受け入れると柔らかく笑った。少しくすぐったそうに身を捩って、耳にかけられた髪に触れる。それから1口、野菜炒めをつまみ上げたと思えば"パンッ_____"何かが両手を叩いた音がする。途端、景色は一転するだろう。そこは家だった。狭いワンルーム、廊下に佇む無愛想なキッチン。ここは今、学校では無く、人1人しか住めないようなワンルームの部屋だ。『君のおうちは、もう少し広かった?』今、僕らはどこかもしれない一室の部屋で向かい合って食事をしている。とても落ち着きのある君になるすぐに分かることだろう。"これは幻覚だ"。彼女は問いかける。"君の住んでた家は、2人暮らしできるくらいのもう少し広い部屋だったか?"と。彼女は君の心を擽るように、笑いかけるのだ。君の鎖に触れて、確かめて、その一途を覗き込む。彼女は相変わらず美味しそうにハムハムと食事を続けている。髪はいつの間にかハーフアップへと変わっていた。それが当然であったかのように。それが元から、そうであったかのように。彼女の前には嘘も誠も意味をなさない。<容量______3>   (5/21 00:44:04)


ジェントル> 
「(君の白すぎる、そしてどこか幼い肌にぷつと開くほの赤い切れ目、口の中に、とろりとタレにしなるキャベツが放り込まれる一瞬一瞬を見る。ママがそうであったように。)…流石に、びっくりしたよゥ。(君に注目を向けていた。だからさらに、瞬きすると広がる『我が家』に驚いた。表情は全く変わっていない、強いて言うならはち切れそうな口角がより満ちて、歪んだ目はさらに歪む。つまり、『笑っている』、自分が騙され驚いたことに。)ボクは子供だったし、ママも『あの人』もお金持ちじゃなかったらしくてねえェ…家は大人二人じゃ窮屈、くらいかなァ。(少し不格好な野菜炒め。辛すぎた味噌汁。ちょっとだけ湿ったご飯。今はもう、テーブルの上にはどれもない。それがこの風景を『幻影』とする象徴だった。)…うん。この通りだよ。(だがそれは精巧で、『器用に』出来上がった食事が不在を表すのだから皮肉なものだ。)サルバトール・ダリ、『記憶の固執』。(図画工作。あるいは、中学の美術でも。その絵を見たときに震えた。歪んでしまった時計、彼には『戻したい』と歪めた認識に映った。)…ああ。『君』はいつも、ボクに触れる。(『だまし』は、いつも彼のそばにあった。)」「エム。奇術師、JOKER…君はボクに、一体何を見せてくれるんだァィ?(左手のディスクが読み込まれはじめ、彼の頭に黒いシルクハットが浮かんだ。…目線を隠し、右目は暗く君を見る。右手のディスクは未だに回り続け、触れるその手を丁重に、優しくひとつだけ巻きつけた。縛るのではない。ただ何かにすがるように。食事はまだ、続いている。)」   (5/21 01:19:08)


M≒JOKER> 
「…うん。この通りだよ。」『それは良かった』彼女は嬉しそうに笑った。しばらく食器とご飯を食べる音だけが空間を支配する。チクタクと鳴る音は、彼女の持つ歪んだ時計かそれとも、この部屋の時計か。彼女は君の言葉に首をかしげ笑った。『ふふ、間違えているよジェントル』彼女は、いつの間にかあと1口となってしまった野菜炒めを前に箸を置く。身を乗り出せばすぐに近づいてしまえる程度の小さな机に乗っかって、大層行儀が悪いがその上に膝を乗せて、じっと君に顔を近づけた。『僕が見せるんじゃない。』『君が見るんだ、ジェントル』その包帯に手を伸ばし、そっと顔を撫でようとする。それは母のように、君を慈しむように、そういう演技だとバレぬような自然な仕草で。『僕には生憎、人の心を読むような力はないんだ。でも……お前がお前のことを語ってくれるのなら、私はそれを見せてあげられる。』だから、見せて、僕に。君の心の内を、君の過去を。君の望む全てを寸分違わず与えてあげる。僕の前に嘘も現実も関係ない。たとえそれが幻覚であったとしても、君が本物だと思えば如何様にも姿を変える幻だ。『君の笑顔はどこか歪んで見える。どうしてだろう?』『何か心に"重たいもの"を抱えてる?』『それを僕に預けてみてよ』『君が喜び笑う姿が僕は見てみたい。』_____funny、ほら""笑って""   (5/21 01:36:37)


ジェントル> 
「ボクは。(紳士的じゃない。)ダメ、だ(『ジェントルマンリー』じゃない。だってそんなこと、ボクが誰かに甘えるということは、僕が弱くあるということは。)ダメだ、できない、ダメだダメだダメだッ…(錯乱している。君が母のように底無しに優しいから、その奥にある底無しのほの暗いどす黒い怒りとどうしようもない穴と、全て、全て、全て、あるのかないのかわからないのに、見えてしまう。ぎゅる、ぎゅる、ぎゅるるるるる。右手のディスクは回転を早める。)痛いのは嫌だッ!僕も、母さんも、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だッ(君を突き飛ばした。どうやら彼は錯乱している、突き飛ばしたのにどういうわけか、鎖で君を優しく受け止めて、さらになぜか束縛している。)やめて、やめて、やめてよ。僕、いいこにするから。優しくしないで、そしたら僕も、母さん、母さんも、(はらりと包帯が落ちる。)死んじゃう。(その奥にあったのは火傷だけではない。深い切り傷や歪んだ額、さらにおそらく視神経はもう絶たれているのだろう。真っ白になって焦点の合わない目だ。彼はもう笑っていなかった。)」「(彼は優しさを欲していない。変わる過去も欲していない。一途を愛す、今の母を愛す。)…あ、ァ。(funny。お望み通り、しかし彼はやはり笑い出す。)か、か、はふふは、かか…(喉の潰れたような音を出して、眉間に横皺を増やしながら、悲しく笑う。)ごめんね。ごめん。ごめん、ごめん。ボクは優しくされたくない。君が目の前で自分を傷つけるのを見たくない。(彼が背負う『重さ』は。背負われることの恐れである。束縛はほどけるだろう。元より傷つけるつもりはないから、痛みは伴わないはずだ。)…ごめんねえ、ェ。(彼は席を立とうとした。…きっと今去れば、彼は鋭い。優しさを仇にしたことは、それでも理解している。だからこそ、二度と君と、顔を合わせることはないだろう。)」   (5/21 02:05:06)


M≒JOKER> 
"あぁ、これは………触れてはいけないところに触れてしまったな。"彼女は困ったように考えたが、しかしそれこそが彼の企みであった。自身のカバンとどちらが重くなるか、君の精神的負担と自身の負担、どちらが大きいか、だなんて。そんなこと試そうと思わなければ良かったのだ。そんな傲慢で身勝手な試みのせいで、君の抱えるその闇は抑えきれずにこうして溢れ出した。君に突き飛ばされて彼は大きく体勢を崩す。受身を取ろうとして、しかし鎖に受け止められた。矛盾してると思った。歪だと思った。しかしその歪さで、君は支えられてきたんだろう。彼はしばしそのまま君の様子を見る。その時の彼女が笑っていたかどうかなんて、きっとどうでもいいしよく分かりはしないだろう。______パンッ。再度、手を叩く音が聞こえた。景色は崩れ、瞬きの間にそこは教室へと戻るだろう。『ちょっとやりすぎちゃったね、』彼女は申し訳なさそうに笑った。解けた鎖にグッパと手を伸ばして、背伸びのように体を伸ばした。そのまま去ろうとする君の背中に続ける。『君にこういうのは相応しくなかったみたいだ。もっと、単純な手段で楽しませるべきだったね』……『だからこれからは、お前の前ではお前の"奇術師"で居続けよう。』『君がいったい、どんな奇術師に魅せられたかは知らないけれど』『僕はここにはいない。』『君は今日、僕のことを1度も見ていない。だからね、』『私はあなたに突き飛ばされてなどいないし、食事をしたのも私ではない。優しくしたのも私でなければ、"そこにいるのは私じゃない"』私、と呼称したその声は女性的であった。その声は君が出ていこうとする"廊下"から聞こえた。しかし、すぐに君の背後にいるMは語り出すだろう。『だから、今日のことはなかったことにしよう。きっと次お前に会う時、僕は今日のことを覚えていないし、お前の名前も知らないのさ。』『おやすみジェントル、酷いことをしてすまなかったね。』____そうして、Mだったそれは誰だか知らぬ女のピエロへと姿を戻し、寂しそうに笑うだろう。それがディスコードであることは、君にももしかすれば分かるかもしれない。ディスコードはふわりと姿を消して、扉越しの廊下からは2人分の靴音が聞こえた。   (5/21 02:31:09)


エレナ・ドラグノフ> 
帰り道、空の色は私たちの心境を反映したかのように薄ぼけた色をしていた。確かに、誰かを救った。確かに、命は助かった。けれど、取りこぼした部分もあった。___ヒーローが助けられるのは、間に合った悲劇だけだ。人の全てを助けられるようなことは無理なのがむしろ道理。いても場合によっては手を差し伸べられないし、そもそもその時にいなかったら手も差し伸べられない。だから、あの子が抱えていた過去なんかに触れられなくたって仕方ないのかもしれない___『悔しいな。予想以上に。』いや。違う。触れられなかったんじゃなくて、触れなかった。自分が誰かに助けて貰えなかった傷があるから、戦えとしか口に出来なかったし、しなかった。あの病院のように寂しい街並みの真ん中、学校に帰る帰り道。気分転換に買ったアイスを開ける気にすらならなくて、そのままそれを吐き出した自販機に寄りかかった。『……笑うか?』自嘲する。見た目は酔っぱらいが電柱にもたれているようなだらけた様態。君はわらうだろうかと軽く振り返り_____そこには、流した記憶がない涙が溢れていた。   (6/8 00:54:16)


M≒JOKER.> 
「アイス、溶けちゃうよ?」君の隣で嬉しそうに袋をあけ、ポテトチップスをシャクシャクと頬張るのは奇抜な格好をしたピエロのような生徒だった。君の纏う憂いや感情を気にする様子なんて微塵もなくて、彼は君どころかアイスの心配をしている。しかし、それでも開かないアイスの袋を見て、少し考えるように袋に手を入れることをやめた。「笑って欲しいの?ボクはいつでも笑ってるけど」へらり、何かをバカにするように。しかし、それはこの状況を楽しんでいるかのように浮かべられた笑顔。君の表情を見なかったことにして、もう一度袋に手を突っ込んだ。チープな音がガサゴソと静かな街に煩い。「ヒーローなんてそんなもんだろう?都合よく現れた悪を都合よく救って、そういう象徴だよ。僕らは万能じゃないし、なによりまだ子供だし。」「よくやった方だと思うけどなぁ」世界中にいる救済を求める声は耐えない。ヒーローは無限じゃない。万能じゃない。一生の中できっと、救えない命の方が多いだろう。   (6/8 01:16:56)


エレナ・ドラグノフ> 
ヒーローとは、そういうものだ。山落ち、何もかもが終わったあとの事後処理係であり、学生でしかない自分たちは万能な訳でもない。『……違う』何が違うのか、自分でも分からないままに声が漏れた。溶けると言われたアイスを、強がるように無理やり袋を引きちぎって開けて。味も分からないままに口に流し込んでやっと気を取り直した。『子供だからって、上手くやれなくていい訳じゃない。子供だから仕方ないよ、なんて……私たちが言っていい言葉じゃない。』学生として、年相応の子供として____………そんな幸せや甘えは、放棄してきた。ヒーローはヒーローでさえあれば良く、それは今はもう居なくなった彼らを下回るのではダメであり、何より自分という機能はあの七日間の犠牲者達を越えるためにだけあればいい。『……そんなふうに思って、やってきた。子供だったらなんだ、子供だから戦えないなんて認めたくなくて。』ほかの機能は要らない。ただその身体は無色の力でさえあればいいとすら考えた。正味、少女に救いはない。いくら今強くなったところで、自分の前で友達を殺した人間を、あの当時絶望そのものだったその人を殺すことは難しいし、壁一枚隔てた向こうで、致命傷になりきらない傷を腹に刻み込まれて、助けてと___いや、最終的には死にたいと言った友達を救うのは不可能だ。『だから、出なかった。言ってやれる言葉があったのに「一緒に戦おう」じゃなく「友達になろう」とか、そういうの……。そういうのが欲しいやつを、どうしようもなく弱った、弱いやつを、多分私は救えない。』だから、理解を求めるのは弱いこと、助けを求めるのは悪しきことだと。自分を罪人と定義し、そういう場所に引きこもった。逃げ込んだのではなく、死地にむしろ定住し続けている。『____そう考えたら、まあ、オマエに笑われても仕方ない気が確かにしてきた。』だから、言葉を結んで出たのは気が抜けたような笑いだった。   (6/8 01:38:09)


M≒JOKER.> 
ぱり、ぽり。薄いお菓子が砕ける音がする。食べ終わったお菓子の袋をクシャリと握りしめ、彼女はパチン、と指を慣らした。容量3→2「それ、持ち上げてみなよ。」彼は持っていた鞄を君の前にトン、と置いた。「そのカバンには、今日子供たちから貰った嫌な記憶がたくさん詰まってる。」嫌な記憶、重圧の記憶、重くて重くて、小さな子達には抱えきれなかった記憶。君にそのカバンは持ち上げられない。そういう幻覚を見せているから。であれば、きっと彼の言葉も嘘なんだろう。彼が引き受けた重さは、そのカバンではなく彼女のディスコードが引き受けたのだから。「それだけのものを彼ら一人一人が抱えてる。それを1人で全部どうにかして、世界中の人を救うなんて無理な話だ。それは君がたとえどれだけ強くてもだよ。」「でも」「君は、そこにある重たい記憶の分だけ今日子供を救った。掴み損ねた手はあるかもしれないが、何もしなかったわけじゃない。」彼は腰に着いたガンホルダーからフックガンを取り出す。それをくるりと回して遊んだ。「適材適所さ、ボクは、」「目の前にいたのに、名前を呼べなかったからね」それに比べれば君は立派なもんだ。自分にやれるだけのことをやったのだから。彼は名前を呼ぶことが最善だとは気がつけなかった。同じ"逃げ続けている"立場でありながら。しかしそれでも彼はヘラりと笑うのだ。   (6/8 01:52:35)


エレナ・ドラグノフ> 
カバンに手をかける。それを引き上げる。引き上げる、引き上げる、引き上げる、引き上げる、引き上げ……られないと知って力を込める。関節がきしみを上げ、骨がもうやめろと答えても無視した。黙りやがれ____激痛が走る。だが、黙れと言って無視をした。警告、警告、警告。それを黙れと脳内で叫ぶ。重さは幻かもしれないが、掛けている力は本物だ。然るに、人類が自らの凶器で自分たちを滅ぼす術を手に入れたように『あ_____ッ、っっっっ!!』手首の関節を面白いくらいにあっけなく、遠慮なく、両方とも破壊(ぶちこわ)してそれで、漸く無駄な挑戦を辞めた。『そう言ってくれるなら、嬉しい。確かに何もしなかった訳じゃない。何も出来なかったわけなんかじゃ、ないかもしれないけど……。』思い上がりだったのかもしれない。自分が強くなれば、誰かの重さを支えられるというのは。『それでも、目に入る誰もかもを救うっていうのは、間違いじゃないと思うから_____……』『今日のこれは、失敗でいい。今の私じゃ支えられない痛みがあるなら、それを支えられる人間になればいいんだから。それだけ、だったな。』『付き合わせて悪い。何か……ああ、せっかくだから、アイスくらい食べるか?』務めて、笑った。自分でも、答えが出てくれた気がした。吹っ切れた顔をしても、それがどれだけ歪な話なのかなんて露ほど思いついてなんかいなくて_____   (6/8 02:09:39)


M≒JOKER.> 
「君がそのカバンを持ち上げられないみたいに、無理なものは無理なんだ」彼にもそれが持ち上げられない。だってその中に入っているのは______。「死にたい人の気持ちってそう簡単に変わらないんだ」「君がいくら力強く支えたって、その人がもう一度立ちたいって思わなきゃダメなんだ。」それは自分がそうだったから。あの日現れた天使に、自分の"荷物"を預けなかったら、きっと自分は今頃。___、あの子みたいに、彼女の名前を呼んでくれる人はもう居ない。それは君が、救えなかった過去を救おうとするほど無理な話だ。「ばかだなぁ……だめだよ、怪我しちゃ。」彼は君の手を優しくとって、撫でた。誤魔化しでしかないけれど、きっと痛みは引くだろう。幻覚とは便利なものだ。…彼は君の持ちあげられなかった荷物をひょいと手に取り、君のアイスを見る。「そうだなぁ……じゃあ、それ。一口ちょうだい?」いたずらっぽく笑い、君の顔をのぞきこむ。君に救えなかった無力感があるように、きっと彼女にも似たようなものはあるのだ。 救えなかった、救いたかった、救って欲しかった。彼にできるのは、ただ。預かることだけで。それはあの子と、やっていることはなんにも変わらなくて。それをただ、笑い飛ばすことしかできない。   (6/8 02:21:02)


エレナ・ドラグノフ> 
『……無理なこと、なんてあっちゃダメだ。』死にたいくらいなんだ。「生きさせる」だけなら、どうにでもなるじゃないか。無理やり「立ち上がらせ」続けてしまえばいい。慈しむさ、愛すさ、優しくだってするんだから、きっと大丈夫なはずだ。何も殺そうっていうんじゃない、人を助けようっていうのが、間違いなはずがない。その人が満たされるまで、生き方を思い次ぐで動かなくすればいいだけ。だってそれでも____生きてるし、チャンスはあるじゃないか。『ヒーローなんだから、出来ないことだとか、無理なことだとかがあったら嘘だ。……なんだ、わざわざ。別に、手首が砕けたくらいだから、治療なんて大丈夫だ。上手く場所を合わせたら、普通にくっつく訳だし。ディスコードにだってたまに意思があるんだから、無理をさせなくていいのに。』別に手首くらいいいのに。と、他人ごとのように言った。自分が痛いくらいは我慢出来る。別にそれは自分が傷ついただけで、誰かを傷つけたわけでも、誰かが傷ついたわけでもない。なら、どうってことない話____『や ら な い。買ってやるから、それを食べればいいじゃないか。』   (6/8 02:32:03)


M≒JOKER.> 
「ふふ、でもお前、カバンを持ち上げられなかったろ」"無理なことなんてあっちゃだめ"、たった今無理だったことがあったのによく言う。諦めてしまえばいいのに。それはそういうもので、手の届く範囲で、無理のないだけ救えばいいのに。そうすればそれだけできっと、みんな君をヒーローだと呼んでくれる。なのに、君のその考えはまるで呪いみたいで「立ててしまう人には立てない人の気持ちは一生理解できないさ」「理解して寄り添いたいなら、1度同じ場所まで落ちればいい。」お望みとあらば、その感覚をいつでも君に"見せて"あげよう。苦しく辛いこと、きっと君はなんでも受け入れ受け止め立ち上がってしまうだろうけれど。その足を折ればなにか気がつくこともあるかもしれないから。……なんて。そんな事しないけれど。「いーや。ボクは君のがいいんだ。」君のじゃなきゃいらない。そう言ってフイとそっぽを向き頬を膨らませる。ただをこねる子供のような、わざとらしい態度で   (6/8 02:40:06)


エレナ・ドラグノフ> 
『……それは、私がまだまだ弱いからだ。私が弱くさえなければいい。他の誰かが持てたかもしれないなら、いつか私だって持てるかもしれないじゃないか。手が折れただけで辞めたのは……正直、甘えた。』腕を引きちぎる覚悟なら、もしかしたかもしれない。腰を裂いてもいいなら、もしかしたかもしれない。甘えていた、出来ないことにぶち当たって、出来ないからと終わるんだったら、そのまま死んでしまえばちょうどいいのに。普段ものの試しがこれじゃ、実戦は余計怖がるだろうに。『む。そんなことはないぞ。別に私なんかは挫折を知らなかったわけじゃないし、できることだってまだまだ少ない。失敗したら立ち直れなくだってなるかもしれないだろ。』____そんなことはないと、自分の内側から声がした。そんなことはない。失敗を悔やむことはあるかもしれない。振り返り涙もするかもしれない。けれど、立ち直れなくなるような失敗なんてする頃にはもう命日だと、確信めいたものがあった。『じゃあ知らないぞ。そもそも不衛生だし、食べ掛けを誰かに渡すなんてよっぽど仲良くないと。』う。自分から言っておいてなんだが、失言だ。なんだってまあいいと渡せるような相手は異性ばかりなのか。変な想像、しなければよかった。『そろそろ帰ろう。皆、心配してるかもしれないし。』   (6/8 02:53:04)


M≒JOKER.> 
「ストイックだねぇ。ヒーローだってたまには甘えて、休めばいいのさ。」ヒーローにも休日は必要だ。君の許可がおりたとたん、彼女はパクリと貴方のアイスを一口かじる。しゃりしゃりとした食感に目を閉じて、君のことを嬉しそうに見上げ「じゃあこれで、ボクら仲良しだね。」君の言葉を逆手にとって、少し困っている君を楽しそうに笑う。「君は機械じゃない、一人の人間だろう?そのストイックさは素晴らしいけれどね、厳しすぎても身を滅ぼすよ」これは助言のようなもので。君のその強さが脆く、いつか崩れてしまうような気がしたから。もしその重責に耐えきれなくなったとしたら、きっとそれを僕が預かってあげようなんて傲慢にも考えてしまって。そんなお節介しなくても、その弱ささえも君は蹴飛ばして進んでしまうのだろうか。ヒーローとはみんな、そういうものなのだろうか。彼女はきっとそうは成れない。『そろそろ帰ろう。皆、心配してるかもしれないし。』「はぁい。女の子2人の夜道、気をつけて帰らないとね?」彼女は、性別が定かではない顔で柔らかく君に笑う。君のそばに寄り添い、手が触れるほどに近寄って。それは、今日の"子供たち"に流されて寂しくなってしまったからかもしれない。___帽子から垂れ下がる歪んだ時計が時を刻んでいないことを君は気がつくだろうか。____別に、気がついてもらえなくたって。僕は1人で立てるけど。   (6/8 03:08:13)


エレナ・ドラグノフ> 
『……う。同じことを言われたことがあるから、気をつけてるつもりなんだけどな……。無茶とかしてるように見えるか、私?』痛いところを突かれた。そうだ、時たまに似たような事を言われているからには、私は余程むちゃくちゃしているように思われているらしい。……弱った、と砕けて笑う。多分私が怪我したら怒るだろう人達のことを、今や重さが気にならなくなったネックレスや、帰ってからの食事云々に気を巡らせてから思い出して。____あんまり怪我はしないようにしよう。とくらいは、やっぱり思い直した。『別に仲良くなるのはいいけど……』いいけど。こんな感じからスタートする人間関係ってなんかディープすぎはしませんこと……『確かに、何か変なヤツがいたりしたら危ないし……』そうだ、私はともかくこの娘については、変なやつが目をつけたりもするかも分からない。そうした時、どうしようかと考えてから、寄り添うように隣にいるのを見て。『ん。仲良しになったんだろ、確か。』前だけ向いたまま、手を握ってやった。学校までは少し遠いけれど、あくまでその足取りは軽く_____   (6/8 03:19:17)