菱沼華

ブルーメ

蕪木 千歳> 
……………。………、……………………、……………。…………っ………………は、はなちゃん………っ!( 見なかったことにしちゃったって良かった。周りには誰も居なかったし、中に居るその子と目があっちゃった訳でもない。トイレからの帰り道。何も見なかったことにして、バス停に行ってバスを待ってても、図書館に行ってバスが来るまでの時間を潰してたって良かった。けれど、1人で掃除をする姿を見掛けて、それが出来るほどに気が強くなんてなかったものだから。見て見ぬふりをしたら、厄介な良心のふりをした何かがその事を果敢に責め立ててくるものだから。だから、暫く迷った末に、私は小さく肩を落として、そうしてもう1度、深呼吸して背筋を伸ばした。夕日の差し込むオレンジ色の空き教室。机も、そしてそこを1人でお掃除するあの子も秋色で、秋教室、なんて風にも言えたかもしれない。ガラガラと音が響く引き戸は、存在を示すには十分だった。『 …………で、あってるー……よね…?あの、その、お名前………、お邪魔じゃなかったら、その、お掃除、…お手伝いしたいなー……とか、思っちゃって 』高い身長。真ん丸眼鏡。同じ学年、生徒数が減ってしまったものだから、つまるところ同じクラスメイト。菱沼 華。えへへ、と、少しだけ照れた風に、恥ずかしそうに微笑みながら、頬を指先で引っ掻いた。)   (5/24 22:45:21)


菱沼 華> 
「 ( ひとりきりで何かをするには、慣れすぎていた。自らが良かれと思って行う行為が内申稼ぎだとか、あるいは偽善だとかいう風に言われるのは良くあることで、けれど大多数の人々に評価されないからと言って手を抜くわけにはいかなかった。神様は常日頃の行いを見ていると言うし、それに、何より。ヒーローを目指すなら、言動のどれをとっても恥じない人間でいたいと、そう思ったから。背面黒板の下に散らばるチョークの粉を濡らした雑巾で一旦拭き取り、大きな埃や消しカスは箒で前へと掃く。少し進めては、箒を窓際の出窓に置いてまた別の濡れ雑巾を手に取り雑巾がけを。腰は痛くなるし黒板掃除をしていたらシャツをうっかり汚してしまうなんてしょっちゅうだけど、教室が汚くなるということは、それだけこの学校の人が、先生が、熱心に授業に取り組んだ証だから。何も苦に思うことなんてなかった。パサパサ、キューッ と、掃除用具たちの仕事をこなす声だけが、茜色のさす教室にはあった。そして――――)( ガラガラ、と古めかしい音が教室に生まれる。それは常日頃よく耳にしている、扉を開ける時の音だ。雑巾がけの手を止めてドアの方へ視線をやれば、見覚えのある生徒の姿。蕪木千歳さん。もちろん、クラスメイトの名前ぐらいはしっかり覚えているとも。“ その、お掃除、…お手伝いしたいなー……とか、思っちゃって “ 彼女のなんとも有難い申し出に翠玉の瞳はきらり、一際煌めいた。) 蕪木さん…、ありがとうございます!あ、それなら、…箒で埃とか掃いてもらえますか?何回も立ったり座ったりするの大変で。( 既に汚れた手で何度も触れた箒を彼女に渡すのは憚られて、掃除用具の一式詰まったロッカーからまだ毛先の折れていない箒を選び、彼女が握るだろう箇所より幾らか下の、毛先に近い部分を持って差し出した。わざとらしく空いた手で腰をトントンと叩き、ほんの少しの苦笑いを添えて。)」   (5/24 23:10:50)


蕪木 千歳> 
( あ"っもしかして、距離感近かった…? 華ちゃんと、蕪木さん。女の子は基本的に名前で呼ぶようにしている。普段から親しくお話ししている訳でもないし、彼女が名字で呼ぶのは何も不自然じゃない。どうせ、このことだって_____。けれど、それはそれ、というか。何こいつって思われてたらどうしようとか、そういうことはどうしても、思ってしまうわけで。心の中の自分がノータイムでやってしまった………と頭を抱えた。けれど今更、呼び直すことだって出来はしない。『 ………ん、りょーかいしました。ぱぱっと終わらせて、私もそっち、手伝っちゃうね。 』 心情は顔に出さずに、へにょんと微笑んで。了解しました、隊長、…なんて、一瞬敬礼をして承服した。外に出ている箒があるのに、と疑問を覚えることはあったけれど、態々触れるよりも、何も気にせずに始めてしまった方が早い。腰が痛いなら変わろうか?そんな提案が出来なかったのは、断られるのを危惧したから、指示に従った方が楽だったから、腰が疲れるのが嫌だから?…何れが正解でも、ろくなものじゃなかった。均等にぶら下がってる箒の内から、綺麗な1本を手にとって。埃と床の境界線。その1歩手前から丁寧に、けれど素早く箒掛けを始めた。変わろうか?とは聞けなかったけれど、二人でやってしまった方が早いし、疲労もちょっとだけ半分こだから。埃の群れを奥へ奥へ、端へ端へと一纏めになるように追い込みながら、掃除に関する記憶を探す。漸く見付けられたものも、確か、とついてしまいそうなほど曖昧なものしか残っていなかった。『 ……小学校の修了式の前の日とか、床をスポンジで掃除とか……ね、したよね。あれ、大変だったなぁ………。 』   (5/24 23:35:04)


菱沼 華> 
蕪木さん>「 ( ぱちぱち、と瞬きをした。“ 私もそっち、手伝っちゃうね。“ … たいていの子は楽な方を担当したがる。掃除当番のとき、箒係がジャンケンで決まるのは。箒の方が楽だからで、冬場なら冷たい水にわざわざ手を入れるのが嫌だからで、何よりも汚れた雑巾に触れることが嫌だからで。それを考慮して箒がけを頼んだというのに、彼女はさして気にした様子もなく雑巾がけの方まで手伝ってくれると、そういって微笑んだ。まこと、幸運である。ひとりきりでもいいと思っていた時間に進んで手伝いを申し出てくれたこと、嫌な顔もせずに頼みごとを引き受けてくれたこと。いちばんは、このような素敵な女性がクラスメイトとして切磋琢磨しあえる状況にあること。 『 お願いします!』 こちらも敬礼を彼女に贈ろう。) 」「 学期末や学年末のの掃除は大変でしたよね。ワックスをかけるのもちょっと手間でしたし。…黒板消しクリーナーなんかは普段から洗わないから、その日は流しも手も服も真っ白になっちゃったりして!蕪木さんはやったことある?( 彼女が箒で掃いた通りを雑巾とともになぞる。少しばかり乾燥してきた雑巾を予め用意していたバケツにいれて、箒でははらいきれなかった微細なものたちが水に浮かぶのをよそにふと目に付いた黒板消しクリーナーにまつわる話をひとつ。きっとこの教室のクリーナーも同じ状況だろう。おしろいを重ねたみたいに白くなったある時の自分がどことなく面白おかしくて、ふふ、と抑えきれない笑い声が零れる。ぎゅうと固く絞った雑巾とともに再び床に向かいながら、彼女にも尋ねてみよう。)」   (5/25 00:00:06)


蕪木 千歳> 
…………私のとこは…確か、先生が頑張ってたかも…? あんまりやった覚えはないなぁ…………。……………ぁ、…でも、クリーナーを開けたときに凄く煙たかったのは、なんとなく覚えてるかも……? あと…クリーナーが掃除中だったから、ベランダに出て、黒板消しをばふばふ…って、したのとか。( 記憶の糸は引っ張れば案外引きずり出せて、その癖変なところでぷつりと切られていた。担任の先生とか、顔とか、なんだったっけ。ベランダに出ることの楽しさとか、そのときに見た景色とか。非日常に感動した幼心は、遠い昔に色褪せてしまったか、もう忘れてしまったらしい。…けどそのわりに、チョークの粉のあの匂いは、好きでもなかったはずなのに鮮明に思い出せるのだから、不思議。楽しそうな貴方に釣られて、懐かしむような笑みを溢した。四方八方に散らばっていた埃は今や一纏め。箒を壁にかけて、1度ロッカー前に戻って、ちりとりと小箒を取りにロッカー前に戻れば、埃は此処からおさらばだ。謝りはすまい。掃除をする以上、これも定め。…ふざけたことを思いながら、敢えなく埃はゴミ箱の中に吸い込まれた。ちりとり等を戻すついでに、ロッカーに掛けられた雑巾の1つを手に取る。そうして、絞り終えた貴方と代わり番こで、バケツの中に水を浸した。『 うひゃ…………っ、……………バケツ、運ぶの重かったなぁ……。…………此方側からやっちゃうね。 』からっと乾いていた筈の雑巾が、僅かな抵抗だけを見せて水中へと飲み込まれていく。意を決して手を突っ込めば、ひやりとした水に此方まで飲み込まれそうで、ほんのちょっぴり声が出た。固く水気を絞りながら、ふと思い出したこと。呟いた言葉に大した意味はない。立ち上がり、貴方と反対側、後々合流するように、箒をかけたばかり側から雑巾がけを始めた。……確かに結構、腰に来る。)   (5/25 00:27:58)


菱沼 華> 
蕪木ちゃん>「 ( 会話のさながら、掃き掃除を終えたらしい。あまり長時間掃除に付き合わせるのも悪いだろうと雑巾がけのペースをあげる。それは小学生がよーいドンで教室を駆ける様子にも似ていることだろう。もっとも、あれは身体が小さく若いから出来る芸当で、今となっては前傾姿勢のまま雑巾を置き去りに転倒してしまいそうであるから。流石にそこまでのスピードは出せないけれど、1人で意味もなくゆっくりと進める時よりは俄然気合いが入っている…ような、気がする。) …そうだ、クリーナー、今度一緒に洗いませんか?いや、あの、…べつに無理にとは言いません。わたしは嫌いじゃないですけど、服も汚れることがありますし…。蕪木さんの都合とかも、あるので…。( きゅうー…ッと雑巾を滑らせ、教室の端へと辿り着いて。すっかり疲労気味の腰を労わるように握った拳でトントンと優しく叩きつつ一休み。そして同時に、同じく雑巾を滑らせる彼女に提案をひとつ。今度、というのは願掛けに似たものなのだろう。) 」「 ( この掃除が終わったあとに彼女を帰らせて一人でやったっていいことには違いなかった。或いは今日のところは途中まで共に帰途を辿り、次の日に暇を見つけてやってもよかった。けれど、もし彼女が嫌でないのなら。せっかく声を掛けてくれた彼女と、これっきりでまた暫く話すことがなくなってしまうのは、少し、寂しいような気がして。とどのつまり、彼女との “ 次 “ が欲しいだけだった。)( 人間というものは移り気だから。今日声をかけてくれたことが彼女の気まぐれで、この提案を断られてしまったら?否定されるのは誰だって怖いもの。沈黙を生むまいと再び床と向き合った。残されたスペースは一往復もすれば終わるだろうところまで進んでいて、これさえ終われば後は机を元の位置まで戻し、椅子を降ろすだけだ。心臓がどくどくと大袈裟に拍動しているような気がした。) 」   (5/30 23:21:19)


蕪木 千歳> 
( 雑巾をかけた場所とかけていない場所の違いは濡れているか否かで、細かな埃も拭われた分かけ終えた場所の方が幾分か綺麗。とはいえ拭きながらそんなに意識も出来なくて、はたとずれていることに気が付けばそっと軌道修正を。端まで辿り着いてから、ずれたせいで拭き忘れた場所を拭いて、と。小さい頃は多分、もっと無邪気にやっていたような、そんな気がする。或いは部屋を掃除するとき、棚を拭くときはこんなに手こずらなかったような。やっぱり規模と、体勢のせい?モップがほしい……なんてのは、現役の小中学生にも通ずる願いだろうか。『 、じゃあ次は、汚れても大丈夫な服、持ってきとくね。今度ーって、あの、…あくまでも私の偏見だよ?絶対そうだしそうだろぉーって、言ってるとかじゃなくって、その、偏見として、結構なあなあになっちゃうこととか、あるから……、授業予定確認して、この後時間あったらいつやるか決めちゃったり……………とか、 』今度、次の縁が繋がるのは、ちょっぴり予想外。でも確かに、お泊まり会とか、また雨宿りとか、コンビニとか、次への縁は結構多くて、…そういうのが俗に言う、高校の頃に出来た友達というのになるのだろうか。貴方からの提案は予想外で、だけど、一方的に馴れ馴れしくしすぎたか、なんて思っていたものだから、歩み寄られるのは嬉しかった。ふんにゃと、その思いを柔い笑みに滲ませて。それから、困らせてしまわないかとまごまごしながら提案を1つ。ずるい子だから、雑巾がけの体勢に顔を隠して、少しずつ近付く声がこそばゆい。今度って約束をして、今度が来なかったら、どうせ忘れてしまうとしても寂しいから。だから、戸惑って、なかなか本題に踏み込めずに回り道までして、あの、とか、その、とか、小さな唸り声の邪魔っぱり。『 ……ね、どう…でしょう。 』最後まで拭き終えてしまえば逃げ場はなくって、ちょっぴり照れてしまいながら、顔を上げて首を傾げた。)   (5/30 23:59:18)


菱沼 華> 
蕪木ちゃん>「 ( 終業の挨拶をしてから、一時間かそれ以上の時間が経過していた。廊下、黒板とチョークの置き場、それから、教室の床。一人で片すには途方もない労力と気力を伴う行為が今ようやっと終止符を打とうとしている。清掃の任務を全うした雑巾は先ほど水に浸したというのに既にほとんどの水分を失い、パリパリだ。裏側はきっと灰色に塗れて、手で触れていた表側の真新しそうな白色とは見事なコントラストを見せてくれることだろう。……もっとも。それほどまでに教室が汚れたまま放置されていたというのは問題だが。それはそれ。床に置いたままの雑巾を滑らせながら半分に折るようにして持ち上げ、チリの類が残されたままにならぬように細心の注意を払った。ゴミ箱の上で折った雑巾を開き、ぱたぱたと開いて閉じてを繰り返し付着物を落とす。) ( 自分よりちょっぴり遅れて。ズレを許さず、丁寧に、ていねいに作業していたらしい彼女が顔を上げる瞬間を見た。)」「( 『授業予定確認して、この後時間あったらいつやるか決めちゃったり……………とか、 』『 ……ね、どう…でしょう。 』確かに。首を傾げながら提案をする彼女に対し大きく二度か三度頷いて、肯定の意志を示した。それから黒板横のカレンダーに視線を移し、余裕のありそうな日を探して。それから、ひとつ。親睦を深めるための口実を見つけ、思わず口角が上がる。) そうだ、決めるならついでに。もし万が一急な予定が入っちゃったときのために、もしよければ、もしよければですけど!連絡先の交換、…しませんか?( クラスの時間割表とカレンダーとを目にして思いついた “ 親睦を深めるための口実 “ 。このあと予定を決めるだけの時間があるならいいけれど、もしなかったら?予め決めた予定に別な急を要する用事、…たとえばそれこそヒーローとして活動なんかが入ったときのためにも。連絡ツールは必要不可欠だ。水の入ったバケツを持ち上げ、ちゃぷちゃぷと揺れる水面にいつ零すだろうかと肝を冷やしながら 終点に到着したばかりの彼女に問うた。交換するとしても、手をキレイキレイしてからだけれど。)」   (5/31 00:30:16)


蕪木 千歳> 
( そわそわして、遠距離からプレゼントを受け取ってもらえたらと提案するような、そんな距離感はなんだか似た者同士な気がして、…気がしてから、自分はこんなに良い子ではなかったことに気が付いて、似てる、なんて風に思ってしまったことが、申し訳なくもなった。雑巾を折り畳み、黒い面を隠して。まだ綺麗な、それでいて体温が伝わって温くなった白い面を掴んで持ち上げる。『 最近結構ばたばたしてるもんね……、…………その、LINEで、良ければ 』私はよわっちいから。任務にお呼ばれすることは殆んど無い。でも、何人かの生徒はもうヒーローとして活動していて、ああ~…なんて苦笑しときながら、万が一が無いことを願った。もし貴方が死んでしまったら、返事が来ることはない連絡先は何れ程寂しいことなのだろう。下に埃が落ちてしまわないように気を付けながら立ち上がると、曲がったままで固まってしまっていた腰がよく伸びた。虚しい気分もそのまま、真っ直ぐになった腰から滑り落ちてしまえば良いのに。あまり汚してしまわないように、指1本に力を込めて引き戸を開けた。バケツを代わりに持てるほど、紳士でも、力持ちでも生憎無くて。2人気で持つのも寧ろ難しく、だからせめてものサポートを。水道場までそう遠くもない。けれど、持たせてもらえそうなら途中交代も視野にいれて。掃除は後ちょっとで終わる。雑巾とバケツを洗って、手を洗って机を直して。それは30分もかからない。これが終わったら連絡先を交換するんだ、と、そう思うとそわそわしてしまって、時間なんて尚更あっという間で。もしも、…もしも千歳ちゃんと呼んで貰えたら、それは苦しいけれど私は喜ぶだろうなと、そんな風に思えた夕刻のこと。/〆)   (5/31 00:54:32)

彎蜿 一/わんわん>

 ─(彼は蕪木 千歳に用があった。この前の約束の続き、一緒に帰ろうと誘おうと2年の教室に訪れた訳なのだが。)「…あれ、いるのは君だけ?」(いたのは目的の人物ではなく、─個人的に近づきたい人間リストの─1人でいる君だった。)「ちょっと来るのが遅かったかな。…君、千歳……あぁ、蕪木 千歳が何処にいるか知っている?」(もう帰っちゃったかな?、と付け加えて、彼は自然な流れで君の前まで来るだろう。)(彼は君より少しだけ背が高かった。)(彼は仮面を付けていた。)(彼の左腕はひらりと風に靡き、空白を告げていた。)(【洞察】彼は、君を見つめていた。君の一挙一動を見逃さないように。)「──その前に、このままじゃ不審者だよね。僕は3年のはじめ。…良かったら、君の名前も教えて欲しいな。」>華ちゃん   (5/27 17:54:04)


菱沼 華> 
はじめくん>「 ( 黒板に残された薄い文字の跡が気になって、黒板消しを手に取った。刻まれた白い文字の消し方に性格が出るな、と彼女は思う。隅から隅まで一方向に消して、跡ひとつ残すまいとする人。見える程度まで綺麗になればいいと思って乱雑に、まだらに文字をなぞる人。どちらかといえば前者に近い彼女には、ほんの少し、掠れたそれを見逃すことが出来なかった。…それから、黒板の上部に残された、線にも。) ( 黒板消しの裏側は、カラフルだった。白の中に赤も青も黄色も散らばっていて。紫色もあった。板書にこだわりがあって、筆圧の強い先生の授業があっただろうことは簡単に予想がついた。筆圧の強い先生と、黒板の枠めいっぱいに字を書く先生の授業のあとは係が大変なのは、経験則からだ。きっと長いことクリーナーにもかけられないままだった黒板消しで出来る限りで文字を消して、そして何かに急かされるようにして、中途半端に、ここを離れたのだろう。)( 人間だもの。急かしたのは友人かもしれないし、恋人かもしれない。先生から呼び出しを受けていた可能性だってもちろんある。誰が係だったかは今ここで知る術はないし、代わりに、わたしが。)」「( そうして、自分一人の静まり返った教室に、来客がひとり。不思議な風貌の人だな、と素直な感想を、胸に抱いた。同級生ならば頭に入っているはずだけれど。該当する容姿のものは見つからず。首を傾げていれば、相手方から、名乗りが。) …ああ、通りで見覚えがないと思ったら。3年生の方なのですね。わたしは華、と申します。菱沼 華。…そう、それで………えっと、蕪木さんなら帰宅されたのではないでしょうか? ( 名乗られたからには此方も名乗るのが礼儀。クリーナーにかけようと手に取った黒板消しを教卓に裏向きに置いて、彼の方へ向き直り、そしてフルネームを口にする。そして、彼が探しているという、それはそれは心の綺麗な優しくて素敵な女の子の行先を思案した。クラスメイトではあるけれど、友人だと思っているけれど。今ここで帰宅の有無を答えられるほどの仲ではなくて、彼女がよく足を運ぶ場所もわかりはしなくて。恐らく帰宅した、と。無難な答えを返すことしか出来なかった。眉を下げて、視線を俯かせて。少し、困っているようにも見えるだろう。明確な答えを与えられない申し訳なさも、ちょっぴり。)」   (5/27 18:11:10)


彎蜿 一/わんわん> 
「…そっか、教えてくれてありがとう。」(君の答えに、彼は満足したように─仮面で見えないけれど─微笑んで、君に1歩、近づいた。)「じゃあ…ここで会ったのも何かの縁だし、華が良ければ一緒に帰らない?」(そう言って、彼は。)(空いていた黒板消しを手に取り、君が背伸びをして届かなかった上の部分を綺麗に消した。)「─華が良ければ、だけれど。それに……先約とかあったら、そっちを優先して大丈夫。」(仮面を付けた、不思議な風貌をした彼は、今会ったばかりの君に優しかった。)(【愛情】──例えそれが、歪な愛の1部だとしても。)(とても、優しく。穏やかな雰囲気で君に提案するのだった。)   (5/27 18:20:50)


菱沼 華> 
一くん>「 ( さして背丈は変わらないはずなのに。性別という差があるだけで、手の届く場所にこうも違いがあるとは。いとも容易く掠れた線をなぞり、なぞったそばから彼らは姿を消した。そうしたら、もう、この教室に残る理由はない。) … いいですよ。蕪木さんの代わりが務まるかどうかはわかりませんが、それでも良ければ。( 警戒のしようもないほど穏やかな雰囲気があたりに満ちていた。もっとも、大前提として同じ学校で、ヒーローを目指す、一学年上の先輩に対して警戒なんてそんな失礼なことをするわけがないのけれど。…けれど、これは気を許しているとは言わない。朝通学の時におはようと声を掛けてくれたおばあさんにニッコリと笑って挨拶を返すように。反射的なコミュニケーション、とでも言うのだろうか。まさにそれだ。) ( ひとつ。そういえば、やり残したことがあった。彼の手元にあるひとつの黒板消しと、教卓に置いたもうひとつ。それらを手にして、教室の端にちょこんと置かれたクリーナーのスイッチを入れる。溝に黒板消しを滑らせ、元の緑色…いや、黒色? それが返ってくるように。丁寧に粉を落とすことを、帰宅前に忘れずにやっておくこととしよう。)」   (5/27 18:34:11)


彎蜿 一/わんわん> 
─(【洞察】君は優しいけれど、どうやらその優しさは誰にでも与えられる上っ面の、そう、平等な優しさだ。)「…タイミング的には代わりになってしまうけれど……でも、これから先、どこかの任務で一緒になるかもしれない。また会うかもしれないから、“代わり”、だなんて言わないで。」(君が黒板消しを綺麗にしに行く。暫くうるさい音が鳴り響いて、少しすれば綺麗になったそれを元の場所に戻すのだろう。)「─これも、何かの縁だと思ってくれれば僕は嬉しいな。」(【演技】優しく、ふわふわとした、そんな雰囲気で。まるでわたあめのような、優しい声色で君に語りかける。その姿は、ただ後輩と仲良くなりたい先輩、のように見えただろうか。)「それに、華は少し優しすぎると思うな。」(そう言って清掃当番の表をトントン、と指さした。)「今日の当番は、華じゃないでしょ?」>華ちゃん   (5/27 18:48:17)


菱沼 華> 
「 ( 『“代わり”、だなんて言わないで。』確かに、理由は至極真っ当なものだった。任務で一緒になったらば、それは勿論意思疎通が出来るに越したことはないし、ひとつの些細な連携ミスが大きな失敗を招くことだってありうる。それが、ヒーローというものなんだろうと、彼女は考えている。『─これも、何かの縁だと思ってくれれば僕は嬉しいな。』縁。偶然が巡り巡っていつか結ばれるそれ。今日この場にあの少女がいなかったことも。係の誰かが黒板を雑に消したままにしていたことも。それもこれも、全部。自分と彼を引き合せるための偶然。偶然?いいや、もはや必然だったのだろう。きっと交友関係を広げるべきだという縁を司る者からのありがたいプレゼント。確かに、それは。悪くない。黒板消しを定位置に戻した彼女は、先程より幾らか明るい表情で彼のそばへ寄っていく。まるでお手本のような、にっこり笑顔。それから彼の指先が指し示すその文字を目で追いかけて。) 」「 わたしではないですけど、…いえ、いいんです。こういうのは気付いた時に、気付いた人がやるものでしょう?( 一転。彼の優しいの言葉の意味を図りれない様子で彼女は首を傾げ、きょとん、としていた。できる人がやる。それが当然で、当たり前。そして暫くの後、むしろ彼はそうでないのかと、眉間に皺を寄せることだろう。)」   (5/27 19:06:26)


彎蜿 一/わんわん> 
「──、」(【思案】君の言葉を飲み込んで、考える。そうして出した結論は。)「…確かに、気づいたらやってあげるのも、優しさであって、それは当然のことなのかもしれない。」「…けど。」「─時に優しさは、人をダメにするよ。」(君の優しさは、あまりにも優しくて、甘くて、人をダメにする毒になり得ると思ったから。)「…もしも、今はただの黒板消しだけど。これが、ヒーローに課せられた課題だとしたら、それすらも華がやってあげるの?」(それは、違うだろう?)「清掃くらいなら、まだいいよ。──でも、もしも。…そうやって、気づいたらやってあげて、それが万が一、人の成長を奪っていたとしたら…」「─それは、優しさではなくなってしまう、よね?」>華   (5/27 19:16:03)


菱沼 華> 
はじめくん>「 あ、ぁ、…………それ、は……… ( 翠玉の瞳を大きく見開いて。右の手のひらで口元を覆い隠して。ひゅう、と鳴った喉に、気づかない、フリをして。) ( 良いこと、のはずでしょう。困っている人を助けることは。誰かの不得手なことを得手としている誰かが代わってあげることは。―――人を、助けようと思うことは。) ( 頼られることが嫌いではなかった。どちらかといえば好む傾向にあった。だって、それは相手が頼れる友人だと、仲間だと認めてくれている証で。) ( 『これが、ヒーローに課せられた課題だとしたら、それすらも華がやってあげるの?』 仲間が困っているなら手を貸したい。その課題ひとつが出来ないだけでヒーロー失格の烙印を押されてしまおうとしているのなら、助けてあげたい。だってわたしは、“ 仲間 “ を愛しているから。 “ 仲間 “ を失う訳には、いかないから。) ( 『人の成長を奪っていたとしたら…』 それ以上何も言わないで。『─それは、優しさではなくなってしまう、よね?』やめてッ!!!) 」「…はは、まさか!さすがに、そこまでのことはしませんよ。人の人生に関わるようなことは、気軽に請け負うもんじゃありませんから。( 動揺の色はこれっぽっちも隠せていない。背に隠した指先は震えているし、声も、先程会話していた時のようなハリがない。それもそのはず、彼女は演技に長けてなどいない。虚勢を張っているだけなのだから。)(ここで彼に怒声を浴びせることは、正しくないこと。彼は教えてくれただけなのだ。彼の言うところの優しさが危ういものであることを。時に、他者を害するものであると。そんな親切に、何を怒ることがある。大きく息を吸い込んで。数秒かけて吐き出して。二度、三度、繰り返し、…平静を、装った。)」   (5/27 19:36:25)


彎蜿 一/わんわん> 
「……」(【洞察】彼は君を見つめていた。君の動揺を、その心情を、全てを見逃さないように。じっ、と。)「─本当に?」「華は優しいから、つい、うっかり。……その、優しさで、人を“殺して”しまわない?」(───じっっっとり、と。)(───ゆっっっっっくり、と。)(君の心に、踏み込む彼は、あくまでその声色は優しい。君のことを思い、ヒーローのことを思い、君に優しく優しく、可能性の話をするのだ。)「そうなる前に、君は───、」「優しさの加減を知るべきだと思う、な。」(──気持ち悪いほど、君の心にゆっくりと入っていった彼は、途端にその足を止める。)(君の震える手をそっと握り、君の手を彼の低い体温で温める。)「………大丈夫。」「華の優しさは周りに伝わってるよ。」「皆、迷惑だとは思っていない。」「─ただそれが、バタフライエフェクトのように、ならないか心配なだけで。」(【洞察】君の、怒り、には触れないように。そっと、加減をしながら。言葉を選びながら、毒と、飴を。)「──もしもそれが出来たら、さ。」──────「──君は、誰よりも、“仲間”の役に立つ事が出来ると、思わないかい?」>華ちゃん   (5/27 20:21:08)


菱沼 華> 
はじめくん>「 ( ふ、と小さく吐息を零した。) ―――違う。違うんです。( 彼の言葉を、噛み砕いて、噛み砕いて。その異物感に吐き戻しそうになるのを堪えて、胃の奥底へと押し込んで。) わたしは、そもそも、優しくなんかないんです。( 彼女は薄く、自傷気味に微笑んだ。) わたしはただ、やるべきだと思ったことに背を向けたくないだけで。( 首をいくらか横に振って。ぽつり。呟くような、小さな声で言葉を紡ぐ。) 何もしなかったとき、わたしが愛した “ 仲間 “ に見放されることが嫌なんです。( 少しづつ、声が、萎む。) だから結局、……自分のためなんだと、思います。エゴと…言うのでしょうか。誰かに伝わっている必要なんて、…なくて。(ぬるくなった指先が、思考までもを侵して行くような気がして、怖かった。)」「…ねえ、はじめさん。( 彼の手を握り返して、彼の名前を柔らかく呼んで。…そして、笑うのだ。) これでもわたし、運だけはいいんですよ?( すべての可能性の話。自らが間違いを起こすことも、それによって他者に害をなすことも、何より、 “ 自らの優しさで人を殺すこと “ も………すべてが、 存在し得る未来だ。360度どこから見たって正しい人間なんてものは居ない。一方にとってみれば悪でも、他方から見れば案外そうでもなかったりする。人間は結局、その人自身が持つ価値観でしか物事を見ることは出来ない。自分が絶対に正しいだなんて烏滸がましいことを言うつもりはありゃしないけれど。自身が身に宿すその豪運は、自身の、他者の運命をも捻じ曲げるだけの代物だから。たとえば、そう。工事現場の付近を通りがかった時に、偶然、頭上に落ちたはずの鉄骨が自らを避けるようにしてその背後に落下したように。 ニアリーイコール。それが示すことは、彼女の運の良さは過ちを修正し得るだけの可能性を秘めている。ということ。) 」「( 自覚している。自覚しているから、笑う。) それに、本当に誰かが助けを求めているとき。毎回自分のしていることが正しいのかと自問自答していたら、……多分、誰のことも救えませんから。( ヒーローでありたいと願う彼女に、人を救えない以上の後悔などありはしない。もし彼女の豪運でもってしても抗えない運命があるとするならば。自らの優しさが他者を殺すというのならば。その間際に、助けにいくだけのこと。これがヒーローってもんだと思う。)(声量は決して大きくない。トラックが通ればかき消されてもおかしくないような、その程度だ。けれど、何かひとつ、芯の通った声で、彼女は最後にそう語った。)(彼の提案はひどく魅力的で、つい惹かれてしまうけれど。ここで自らの身の振り方を考え直すことは、彼の言うところの優しさを加減するということは。志を同じくしてきた仲間を裏切る行為だから。だから、その提案には、承諾し兼ねるのだ。)」   (5/27 21:18:59)


彎蜿 一/わんわん> 
「────そっか。」(君の言葉を、最後まで静かに聞いていた。君の言葉を、最後まで否定せずに、聞いていた。)「──…華は自分の優しさを、エゴだというけれど、僕はそうは思わないな。」(ぎゅっと握った手を、そっと離して。)「そうじゃないと、普通は僕の見た目で引いて、左腕がないことを蔑んで、それがきだと、“普通”だ。」(あくまでもこれは、彼の中での普通なのだろうけれど、それでもそれがずっと普通だった。君だって、最初に声をかけた時点で気味が悪いと避けてもおかしくなかったのを、君は質問に答えてくれた。)「僕からすれば、華は優しい。……優しいからこそ、心配になった。」「心配になったからこそ、余計なことを言った。」「────…余計なことを言って、華を傷つけた。」(君の消え書けそうな声もきちんと拾って、震えていた身体にも気づいて。それなのに、心に入り込んだのは。)「だから、ごめんね。」「……華を、傷つけた。」(──少し、落ち込んだ様子で。心配だったんだ。それが、伝わればいい、と。)(───。)(────────────────なぁんて。)(───────【愛情】あのまま自分の甘言にのってくれれば良かったのに。とっても、残念だと思う。けれどそれはすべて、仮面と演技の下に隠して。)>華ちゃん   (5/27 22:12:21)


菱沼 華> 
はじめくん>「 ( 普通とは何だろう。何を以て人々は普通を定義するのだろう。…時折、考えることがある。例えば、身体的な欠損は、五体満足の人間からすれば異常かもしれない。けれどそれを抱える本人からすれば普通のことだ。誰かにとっての異常は、誰かにとっての普通であって、表裏一体の概念なのだと、いつかの自分は結論づけた。) ( 見た目ひとつで厭うことは彼を異常扱いすることであり。それ即ち、自らの普通を異常として処理され得るということ。) ( 反対の立場となった時のことを思えば、耐え難いと言う他になかった。それゆえに、異常として扱うことをしなかった。それだけ。) 」優しいと思うなら、それでも構いません。有難いことです。けど、直球でわたしに向けられると、ちょっと恥ずかしいので。心のうちに、しまっておいてもらえれば。( 45度。しっかり頭を下げて、彼にお礼の言葉と、それから、お願いを。離れていった手のひら。すうと彼の体温が失われて、少し、名残惜しいような気もした。そうして、何事も無かったかのように。彼がこの教室を訪れた時のように。ハリのある声で、にこりとお手本のような笑みを浮かべて。) この程度で傷ついてたんじゃ、ヒーローなんて名乗れません!わたしは、ちっとも傷ついてなんかいませんよ。( 仮面の下の素顔など知るはずもない。知る術がない。目の前の落ち込んでいる彼を見過ごしてはおけないという、ただの正義感のもとに、笑って見せた。)」   (5/27 22:41:38)



彎蜿 一/わんわん> 
「…恥ずかしがらないでもいいのに。」(君の優しさは、今までに何人の人たちを救ってきたのだろうか。)(─その、優しさにつけ込めなかったのはとても残念だけれども。)(45度のしっかりとしたお礼も、ハリのある声も、お手本のような笑みも。)(きっと、1度は誰もが憧れたことのある姿だ。)「…それなら、ひとつだけ。僕からの、おねがい。」(これだけでお別れ、なんてことはないだろうけれど。少しでもキッカケは自分の手で作っておいた方が、確実だから。──だから、子供の頃を思い出すかのように、君の小指を小指で絡めとった。)「──約束して。」(【愛情】いつか君の優しさで、人が死んでしまった時。その時の表情が見たいと思う。)「──華は、“そのまま”、“優しいまま”でいてね。」(【愛情】ぎゅっと、少しだけ力を込めて。)「──────────── 僕 を 避 け な い で ね 。 」>華ちゃん   (5/30 21:40:36)


菱沼 華> 
はじめくん>「 ( 絡めとられた小指。幼かったいつの日か、誰かとこういうふうに約束をしたことを思い出す。“ 針千本のーます! “ なんて、その本当の意味の理解もままならない頃に交わした言葉。17歳、高校2年生。この歳になってまさか指切りをするとは思わなかったけれど、わるくない。誓約書のような形に残るものではないとはいえ、そんなものよりずっとこの行為は心の内に棲みつき、深く、深く根を張る。『──────────── 僕 を 避 け な い で ね 。 』その瞬間に言葉の真意ははっきりと汲み取ることは出来なくて。しかし一拍置いて少し首を傾げる素振りは見せつつも、およその意味合いを推測し満足げに頷いた。) ええ、ええ、避けるなんてしません。その約束を、お守りします。」「――――はじめさんが、 “ 良 い 人 “ である限り。( その風貌のせいで、人に避けられるような過去があったのだろう。そのせいで人との関わりに慎重な部分があるのだろう。そう推測した彼女は彼の条件を呑むことを明言する。言質、と言うのだろうか。彼を不安にさせないために、オウム返しのようにはなってしまったけれど。確かに言葉にして、そして “ 指きった “ と。その小指を離そうか。) ( そして。一足先に教室から一歩、外へ出て。左手を彼に伸ばし、誘う。) そろそろ帰りましょうか?」   (5/30 21:56:34)


彎蜿 一/わんわん> 
─(あぁ、全く。やられてしまった。“良い人”である限り、だなんて。)(彼は自分が良い人である、だなんて思っていない。彼は自分がどちらかと言えば悪い人であることを自覚している。)(だって、優しくて、ヒーローのような、良い人ならば。)(───人の死を、絶望する姿を、壊れていく姿を、見たいと願ったりしないだろうから。)(【常識】それが、この世界の“普通”だ。)「───そうだね。………随分と、長いこと話してしまったし、帰ろうか。」(夕暮れはまだまだ沈むまで猶予はあるけれど、鴉はもう鳴いていて、校庭に響く部活動を行っている生徒の声も疎らになって来た。)(そろそろ帰らなければ、暗くなってしまう。─そうしたら、君の表情が見えなくなってしまうから。)「引き止めてしまったせめてものお詫び。…家まで送るよ。嫌だったら、最寄りくらいまででも。」>華ちゃん   (5/30 22:12:24)


菱沼 華> 
はじめくん>「 ( 最近の世の中は物騒で、カミサマに関連する事件が頻発する。元からそういう世界だったといえばそれは確かに違いないが。やはり、短期間の間に自分がヒーローとして動く必要があるほどと思えば、その性質は厄介を増していると考えられる。ヒーローを志す者としては少し辺りが暗くなった程度で一々怯えてられないし、弱気になってはいられない。そうはいっても夕方から夜にかけては『逢魔が時』なんて呼ばれ、魔に出逢う時間とされている。陽が沈みきった夜よりもカミサマの好みそうな時間だな、と、彼女自身は思う。それゆえ警戒してしまうのも無理はなく、何事もなく帰宅を遂行する度に胸を撫で下ろし安堵している。気を張りつめてばかりでは疲れるのも無理はなく、一人よりは二人の方がある程度気が楽になると考えたから。)では、最寄り駅まで。お願いします。( 彼への申し出を有難く受けながら、けれどあまり彼の負担にならぬよう、最寄り駅までと定めて。一歩、二歩、教室から遠ざかっていく。)「 ( 傍から見れば不思議な組み合わせかもしれない。左腕を失くしてしまったらしい仮面の男性と、少し背の高いことを除けば何の変哲もない女子高生。けれど周囲の声など耳にも入りはしない。するべきことをしたと思っているし、なにより、つまらない理由で彼を避けることはしないと、約束したばかりだから。) ( 共通の友人の話でも。近頃あったヒーローとして活動の話でも。すこし特殊なコード高等専門学校で共に勉学に、ヒーローに励む者同士。きっと最寄り駅に至るその時まで、話題は尽きないことだろう。) ( “ それでは、また。 “ 次を含ませる言葉で以て、別れるその時間まで。)」〆   (5/30 22:36:29) 」

枸橘 茨> 
「ふんふふ~ん、おっ待ちかっねの、ほーかーご、だー!!(全学年の授業が終わり、ほぼ全ての学生が帰宅するなり部活に行くなりして人気のなくなった教室、その静寂を破る意気揚々とした声が一つ。その声の主は人目をはばかるようにしてその教室にするりと忍び込むと、手に持つリュックサックを漁りなにか光沢のある物を取り出すと、それを人跡未踏の古代遺跡から秘宝を発掘したとレジャーハンターのように高々と掲げた。その秘宝の正体とは驚くなかれ、ベルトである。それもただのベルトにあらず。かつて平成と呼ばれた世の日曜朝において子供たちを熱狂と興奮、そして憧憬の渦に突き落とした変身ヒーローのベルト(9350円(税込み))である。今となっては滅多に手に入らないレア物であるが、それが市場に出たという情報をキャッチした少女は朝一番で購入に走り、見事ゲットしたのである。勿論学業には一切関係がないため、先生にでも見つかれば即没収もの。ではなぜ今ここで取り出したのか?そんなもの、家まで待ちきれなかったからに決まってる!!)」「これを巻いて~、変身!うわあああ!!もう一回、もう一回!変身!(その危険物なベルトを腰に巻いてチャンチャンチャン!!タカ!トラ!バッタ!と機械音が年代物にも関わらず淀みなく流れる。ただそれだけで世代外れのヒーローマニアはキャッキャっと楽しそうにはしゃぎ飛び跳ね、アンコール、ワンスモア、と心のままに軽快な音を響かせるのだ。そう、この教室に誰が来ても気付かぬほどに大きく)」   (6/6 19:57:02)


菱沼 華> 
茨ちゃん>「 ( 空き教室。それは移動教室で授業に特別に使われることもあれば、授業をサボりたい人のための溜まり場にもなり得る場所。本来であれば鍵を閉めるなりなんなりして管理されるべき場所ではあるはずだが、貴重品のひとつもありはしないこの場所を厳重に管理するほどの理由は学校側にないらしく、鍵穴は使われることもないまま錆びつつある。)( 彼女がそこへ足を運んだのは、施錠確認のためだった。陽の沈む頃、校舎を閉鎖するような頃に日当の先生が見回りに来る手筈ではあるが、万が一見逃しがあってはいけない。コード専門の学校という点で、かつ生徒がヒーロー扱いされはじめているという点で、この学校はどうしたって目立ってしまう。好奇心に駆られた他校の生徒や地域住民が、偶然にも開いたままの窓に気付き侵入しないとも限らない。そうならないために、彼女は冷暖房や電気の付けっぱなしがないかを確認すると同時に様々な教室、特に空き教室を回っている。)」「( 階段を上がりきったその頃。生徒の往来も殆ど無くなった廊下には少女の楽しそうな声がよく響く。正確には興奮を抑えられない様子の少女の声と、なにか、自分にはわからない機械の声。こっそり、本来の半分ほど開いたままのドアからその声の主を覗き見た。少女が校則違反のためにこの教室を使ってさえなければ、一先ず水を差すのも宜しくないことであるから。他の教室を回ろうと、して。) …あ!キミ、そのアイテム!( ガタンッッ、と。建付けの悪い扉が一気に開く音がするだろう。どれだけ没頭していようが否が応でも意識を引き戻すような派手な音。ほぼ反射的な行為である。およそ学業に関係があるとは考えられないアイテム…彼女の手にしたそのベルトを指さし、眉間にシワを寄せて声の主へ視線を向けた。) 校則違反、じゃないですか?( 最も、没収するだけの権利は彼女にはないけれど。規律は守られるに越したことはない。責めるつもりはないけれど、少し不満げで、そのくせどこか羨ましいそうな声であることは特別な技能を持たなくとも容易にわかるだろう。)」   (6/6 20:20:06)


枸橘 茨> 
「もう一回だけ、へんしっ!?……………………あ(遠くから聞こえる運動部の掛け声、壊れたレコードのように何度も何度も同じ音を響かせるベルト、それにまるで飽きることのない自分の弾むような声。それら以外一切存在しなかった教室に突如加わった、背後で扉の開く音に、周囲に気を払っていなかった少女の肩はビクッ!と大きく跳ね上がる。ぎこちない動きで振り返れば、そこにいたのは先輩であろう女子生徒。教師ではなかったことにほっ、と息を吐き────)あ、いやえっと、あのこれはですね違くていや違わないんですけどその!??(『校則違反、じゃないですか?』高揚から安堵に移り変わりかけた少女の顔が急転直下、血の気が引いたように蒼褪めていく。たとえ没収する権利を保有していなかったとしても、言われた通り校則違反である自分にはそれ以上に抵抗できる権利がない。バタバタと所在なさげな両手は前に出たり腰を隠したりと落ち着きがない。言い訳なんてカッコよくないし、かくなる上は古来より日本人の切り札にして基本技のザ・DOGEZAをして許してもらうしか、と貴方の足元に滑り込む決意を固めたところで)」「もしかして……先輩もお好きなんですか?ヒーロー(その表情に、その声に、その仕草に、自分の大切な宝物が守られる僅かな光明と───自分と同じものに憧れる、『夢』の片鱗を感じ取った)」   (6/6 20:49:21)


菱沼 華> 
茨ちゃん>「 ( 忙しなくバタバタと振り回される身体。蒼くなっていく表情からしても、少女がそのアイテムを大切に想い、何とかしてこの場を見逃してもらおうというつもりらしいのは明白だった。見つかったらマズイとわかっていたのであれば最初からやらなければいいのに。それでも、ダメと言われたことほどやりたくなってしまうのな人間というもの。自分だってそこまで鬼ではないし、ヒーローはいつだって優しいもの。何より少女の違反行為を見たのはこれが一度目、初犯である。やれやれ、と肩を落とし大きな溜め息を零す。仕方がないから、注意だけして立ち去ろうと背を向けかけたその時のこと。) 」( 『 もしかして……先輩もお好きなんですか?ヒーロー』少女が、そう問いかけた。踏み出しかけた一歩は引っ込められ、まるで時が止まったように、自身の身体が硬直するのがわかった。) …そりゃ、まあ、好きですよ。ヒーローになりたくてこの学校に入りましたし。( 身長差はおよそ20cmだっただろうか。顔立ちも幼く、同学年には居ないことからして年下だろうという見当は付けられた。その年下の少女に、好きなことを好きだということが何だか気恥ずかいような気がして。背を向けたまま、ぽつぽつと投げ掛けられた問いに対する答えを紡ぐ。ヒーローに憧れ、他者を救わんとするその姿勢に尊敬の念を抱き、きらきらと瞳を輝かせた結果の今だ。嘘だとしても嫌いだと言えるはずがない。憧れを、好きであることを公言することが恥ずかしいことであるはずがない。ゆえに、もう一度。少女の方へ体を向け、翠玉の瞳に少女の姿を捉えて。それはもう、大きな声で。) 大ッッ好きですよ!そりゃあもう昔から!( 廊下中に響き渡るほど、威勢の良い声である。)」   (6/6 21:11:10)


枸橘 茨> 
(ワクワク、ワクワク、ワクワクワクワク。『…そりゃ、まあ、好きですよ。ヒーローになりたくてこの学校に入りましたし。』背を向けて小声で小さく、面と向かって話すことを避けるようにポツリと。まだまだ。きっと貴方も恥ずかしくなっちゃったんですね。かつては、小学校では誰もが明け透けに誰に恥じることもなく答えていたことなのに、中学、高校と歳を経るごとにその声は段々小さく、少なくなっていった。それは時と共に現実の方が視界に多く映るようになってきて、自分を周囲に曝け出すことが怖くなっていったから。でも、まだまだ。まだまだまだまだ。その程度で消える思い。冷める情熱。飽きる羨望。霞む憧憬。たったそれだけの障害に屈する【夢】ではないと、この【夢】に恥じ入るところは何一つとしてないと、【夢中】の貴方の輝く瞳は確かにそう叫んでいる!!『 大ッッ好きですよ!そりゃあもう昔から!』それが本音。それが真実。誰が嘲笑うものか。誰が蔑めようか。それに応えるはただ一つ)「私 も で す !!!!」(廊下を超えて学校中に伝播する、ただ【夢】だけを見つめる少女の屈託のない笑顔から放たれる爆発のような同調である)「じゃあこれ、先輩も一緒にやってみませんか!?実はもう一つあるんですよ!ほらこれ、同じ作品の2号ライダーのベルト!これもセットで市場に出てきたんですよ!すっごいですよね!!(貴方が同志なら遠慮することはない。再びリュックを漁ればもう一つ、異なる意匠のベルトがその手に現れる。彼女に恥じらいは存在しない。【夢】見ることはカッコいいことに他ならず、そこに年齢も性別も善悪も一切合切関係ないと信じているから。校則もさっき怒られたこともすっかり忘れて、さあどうぞ!と懐かしささえ感じさせる満面の笑顔で、意図せず貴方を共犯者に仕立て上げようとしている)」   (6/6 21:45:54)


菱沼 華> 
茨ちゃん>「 ( おおよそ、“ 先輩も “ という問い方をされた時点で察しはついていた。少女もまたヒーローに憧れた側の人間なのだということは。嬉しかった。こうして志を同じくする少女と出会えたこと。夢は恥ずべきことではないと、少女の肯定によって証明されたこと。本当に、幸運なことだと思わずにはいられない。)( そればかりか。少女は先程とはまた異なる意匠のベルトを取り出して見せた。)(少女の手にした2本のベルトは、幼き頃、いつかの自分がそうであればと夢を抱かせたヒーローの証だ。ヒーローになりたくて、なれなくて。今まさに必死になって彼らに追いつこうとさえしている自分が、ヒーローの証に気安く触れてもいいものなのだろうか。少女の元へ歩み寄り、手を伸ばしては引っ込めて、躊躇っている様子で。)( それから。三拍。)( ウジウジしてたってヒーローにはなれない!と。)( 少女に差し出されたベルトを手に取り、腰に巻き付けた。)」「( 作中に登場したメダルを差し込めば音楽が流れ、様々な色に変化しながら効果音が流れ出す。目を閉じて、自分の回りにはエフェクトが飛んでいるのだという錯覚を得ながら変身音に身を任せた。ハンドルを数度回し、パッコーンッと気持ち良くカプセルが割れるような音が流れたかと思えば、同時にアームやら何やらが装着されていく。)(遠い記憶のはずなのに、不思議と変身の仕方は簡単に思い出せた。さながら一話で初変身するヒーローの気分だった。) ………、……はあ…ッ、( うっとりとした様子で息を吐く。擬似的な変身とはいえ、ヒーローになるその瞬間にひどく昂揚するものがあった。筆舌に尽くし難い体験だった。) これ、私も変身しちゃいましたから、……今回の校則違反はわたしとキミと、2人の秘密ということにしましょうか。(暫く余韻を味わった後に、ベルトを巻きとって、少女に差し出した。ありがとうございます、と貴重な体験をさせてもらえた感謝も共に述べ、そして、少女の頭からすっかり抜け落ちているに違いない校則違反の話を持ち出した。2人の秘密。先生にはちょっぴり申し訳ない気持ちであるけれど、憧れの誘惑には、やっぱり勝てなかったから仕方ない。)」   (6/6 22:14:33)


枸橘 茨> 
「(いまだ僅かに躊躇う様子の先輩改め同志を固唾を飲んで見守り、遂に覚悟を決めて受け取られたベルトが腰に巻かれるのを見て、いざ自分も隣で一緒にポーズを!といそいそと準備をしようとして──その手が止まった。ベルトを巻いた瞬間、否、手に取った瞬間から、目の前の同志の姿が先輩の菱沼 華から、ヒーローそのものへ変わる姿を幻視した。見える。音声は作り物、エフェクトは錯覚に過ぎないはずなのに。メダルを投入し、スーツを身に纏う様がありありと目に浮かんでくるほどに、その立ち振る舞いは堂に入っていた。所作は流れるように、風貌は凛々しく、眼光は立ちふさがる敵を射抜くように。本物が、【夢】が乗り移ったような光景に、思わず見惚れてしまった)」「…………っ、はい!私達だけの秘密です!(茫然、後に滂沱の如く押し寄せる歓喜の感情を余すことなく受け止め、飲み干し、グイッとサムズアップをしつついつもの笑顔を作る。ああ、ああ、感無量だ。宝物を守れたこと以上に、この【夢】が羽化するその刻を目の当たりにできたことが、堪らなく、どうしようもなく喜ばしい。枸橘 茨は、【夢】を愛している。二人の変身ヒーローは、共に笑い合えただろう)あの、先輩!よかったら今度うちに遊びに来ませんか!まだまだいっぱい、いっぱいあるんですよ!ライダー以外にも、戦隊とか、アメリカのヒーローとか!(それから少女は、久しくしていなかった、同性を家に招待するということを実行することにした。今までは趣味の合う人がいなかったため一人楽しく遊んでいたが、これからの放課後、休日は、この同志と過ごすことができるかもしれないと、期待と【夢】に胸を弾ませて)」(なにより、このヒーロー志望の少女が、将来どのようなヒーローになって、どんな未来を創ることになるのか、それがとてもとても楽しみだった。枸橘 茨は、貴方の【夢】を愛している)>菱沼さん   (6/6 22:53:17)


菱沼 華> 
茨ちゃん>「 …それは、なかなか魅力的な提案ですね。アメリカのヒーローなんて、なかなかお目にかかる機会もありませんし。( 変身を終え、少女にベルトを返却し。一息ついたところで少女の誘いに驚いた様子でまたたきを三度。自分はヒーローに詳しいわけではなく、今回のことも偶然知っていた程度。けれど、折角の少女からの誘いを断るのは申し訳なく、またヒーローたちを知ることが自分がヒーローになるための役に立つこともあるかもしれないと考えて。翠玉の瞳はきゅうと細まり、口角は上がりきって。それはもう、喜色満面の笑みが浮かぶことだろう。)…………、ああ、そうでした。( それから数秒の間を置いて、本来の目的を思い出したらしい。窓際に駆け寄っていって、施錠がなされていることを余すことなく確認する。それから窓側の一番後ろ。アニメやラノベじゃ主人公席という扱いを受けるその傍にある冷暖房のパネルも忘れずにチェックを。万一切り忘れで今年の夏は冷房が使えない、なんてことになったら笑えない。勉学に励むにあたっては非常に重要な事項だ。) 」「 わたし、菱沼 華と申します。( そういえば、と。名乗りを挙げずにいたことにふいに気付き、一礼と共に少女に名を告げた。広く透き通った窓の向こう側、彼女の背後には目にも鮮やかな西日が添えられ、それはそれはヒーローの名乗りに相応しく映るだろうか。) “ 仲 間 “として、どうか、これから宜しくお願いします!( 一方的にはなってしまうけれど、彼女はそれだけを少女に言い残し、入室した当時とは反対側の扉からこの教室を去ろう。校舎が締め切られるまでにやらなければいけないことはまだ山積みだから。)」〆   (6/6 23:14:55)

菱沼 華> 
蕪木ちゃん>「 ( チャイムの音を聞いたのは幾分か前のことになる。ある生徒は鞄を手に足早に教室を去り、ある生徒は友人と談笑をしながらノートを机に広げる。窓の外。晴れているには違いないのに、雪のようで雪でない粒がちらついている以外には、…変わらない日常の光景だった。)( であれば。彼女の行いも普段と何ら変更されるものはない。教室の清掃や散らかった学級文庫の整理に確認、窓の施錠に至るまで。勉学に励むための最適な機関としてあるべき姿を実現するために彼女は今日も雑用に精を出す。)( しかし。しかしである。)( この日は先約があった。)( 街に繰り出して甘いものを食べたり、お洋服を吟味したりするわけではないけれど、彼女にとっては大切で、それはそれは心の踊るような出来事。)( 友人と、清掃をする日である。)( 厳密に言えば、清掃自体に胸を弾ませている訳ではなく。)( 蕪木 千歳という同い年の少女と約束を交わしたこと。ひいては、少女と時間を共に出来ると言う事実に頬が緩みきっていた。) 」「 もう来てますかね〜…? ( 度々すれ違う先生方に “ さようなら “ と挨拶をして、向かった先のある一室。以前少女と二人でほうきで掃いたり、ぞうきんをかけたりしたあの時の教室の入口。小さな声でそぉ〜…っと、覗くように、中の様子を伺った。)( 相手を待つのは許せても、待たせることに申し訳なさを感じるもので。もちろん、隠密行動のライセンスを持っていないから、生徒の声の遠くなったこの場所ではあまり意味のある行為とも思われないが。さて、少女はいるだろうか。)」   (6/11 21:37:24)


蕪木 千歳> 
…………………は、な………っちゃん! ( ぎゅっと、小さな肩に両手を乗せた。──遡ること少し前のこと。昨日の遊園地で僅かにイーコールを取り込み、カミサマ化していた小瓶の提出は帰って直ぐに済ませていた。けれど、それに伴いきちんとした経緯説明のレポートなどが必要なことを知ったのが昼休みのこと。慌ててレポート用紙を受け取り、書き終えた頃には昼休みは終わっていて。漸くの放課後にきちんと提出することが出来た。問題は、記憶の内には今日の放課後は約束があったことで、LINEのトーク画面を確認すればそれは容易に確信に変わった。何度見返しても日付は変わらず、なんなら今朝は確り覚えていたし、その前の日から覚えていた。だから忘れる筈もなく、まずい、遅れた、そんな意識からの逃避にすぎない。職員室を出るや否や、スタートのピストルが鳴り響き………くれぐれも転ばないように、人にぶつからないように気を付けながら、私は階段を駆け上がった、……のだった。それがどうしたことだろう、教室の前にはこそこそと中を覗こうとする貴女の背中が1つ。背後は完全に取れている。となると、やることは決まっていた。『 ………ごめんね、ちょっと遅れちゃって… 』驚かす為に背後から乗せた肩から手を退けて、私は手を合わせて頭を下げる。遅れた上に、人を驚かせようとした重罪人。貴女が怒って帰ってしまう可能性に今更気付いて、静かなお祈りタイムが始まった。)   (6/11 21:59:58)


菱沼 華> 
蕪木ちゃん>「 ( 覗いた教室には、少女の姿はなかった。恐る恐る視線を教室の隅々まで向けてみても少女の姿はなく。どうやら自分の方が先に着いたらしかった。)( そうして、)( 気付く。)( 彼女は耳が良かった。探索ライセンス:聴覚×2で以て階段の方から誰かの足音を捉えた。タン、タン、と登る落ち着いたものではない。もっと早いペースの、そう、恐らくは走っているだろう音。それは着実に音を増し、段々と近付く。)( まさか侵入者?いや、そんなことになれば先生たちが黙ってない。ああ、きっと。部活に急ぐ一年生とか、そのあたりのはず。その、はず。)( 一直線に向かう何者か。少し音が軽い。女子生徒だろうか?こんなところでヴィランと出会うなんてはずはないけれど、…) 」「____________ッッ!??( 足音が止まったその瞬間に、どくりと心臓は一際大きく跳ねた。)( 肩に乗せられた小さな手のひらに、丸めていた背がピンッと伸びた。『 …………………は、な………っちゃん!』名前を呼ぶ、少女の声。振り返ってその姿を確認しては、 “ はあぁぁ、……っ “ と、大きな安堵の溜息を漏らす。そのまま壁伝いにずるずるとしゃがみこみ、トクトクと早まった胸の辺りに手を当てた。) ああ、いや、全然大丈夫ですよ。わたしも今来たばかりなので!…ね、ほら、やりましょ。( ぱ、と顔をあげれば少女は不思議と祈りを捧げるように手を組んでおり、それを不思議に思いながらも、ぶんぶんと左右に両手を振って、とんでもない!と弁解をして見せた。それから少しだけ見えるクリーナーを指さして、どっちが早いとか遅いとか、そんな言い争いにならないようにと次を促した。) 」   (6/11 22:22:56)


蕪木 千歳> 
え、ぇ……っ!? ご、ごめんね、そんなに驚くと思わってなくて…… ( 普段は私より高い頭が、ずるずると下に下がっていく。まさかそんな、腰を抜かすほどとは思っていなかった。慌てるのに無理はなく、遅れたこと以上の申し訳無さにぺこぺこと頭を下げた。大丈夫かと心配になりながら、しゃがみこんだ貴女の助けになればと片手を伸ばす。掴んでくれたのなら、よいしょっと立ち上がるのに力を貸すことだろう。『 ん、やりましょう!…クリーナーの掃除の仕方とか、分からなかったから、ちゃんと調べてきました。 』あの日と変わらないオレンジ色の教室。日が開いた分細かな埃などはあるだろうけれど、それは今日は気にしない。ふんっと両手でガッツポーズみたいな気合いも込めて、準備万端、やる気も満単。ほんの数mの距離は直ぐに埋まって、到達したクリーナーの前。ポケットから先ず取り出されたのは、コンビニ袋だった。『 へこんでる所に力を込めて蓋を開けるみたい…だけど、開けたときに粉とか散ったら大変だなって、思って。だから、ね、この中で開けたら大丈夫…! 』コンセントから線を抜く。コンビニ袋はちょっと大きめで、広げて中に入れても腕を入れる分には問題も無さそうなサイズをしていた。秘密兵器、というほどでもないけれど、きっとあることで助かる筈。『 ただ、開けたときに腕とかは汚れちゃいそうだから、腕捲りして、どっちが開けるかはじゃんけんで、………どう、かな…? 』   (6/11 22:48:33)


菱沼 華> 
蕪木ちゃん>「 んしょ、…っ ( 差し出された手を取り、ぐ、と引いて立ち上がる。それから床に着いてしまったであろうスカートの裾を撫でるように払い小さな塵を落とした。宙を舞うそれが沈みゆく太陽の光線を受けきらりと光ってみえる現象、ええと、たしか…チンダル現象、と言っただろうか。そんな関係ないことを頭の片隅に追いやって、すぐに少女のあとを着いていく。) やり方調べてくれたんですね?いつもその場の勢いでやっちゃうから考えたこともなかったです。( ポケットから取り出されたビニール袋を一瞥し、コンセントから線を抜く少女の手つきを見ては随分手馴れてる人のようだな、と率直な感想を抱く。初めてだと聞いていたけれど、前調べもしている分心強いことこの上ない。より円滑に作業が進みそうなことは、嬉しくもあり、また少女との時間が減ってしまうという点では切なくもあり。けれど決して悪いことではない。“ えらいなあ、“ と独り言も交えつつ、袖口のボタンを外しシャツを肘の辺りまで捲りあげて、ジャンケンとの言葉にわざとらしく肩を回した。) いざ尋常に………じゃん、けん、ぽん!」   (6/11 23:09:20)


蕪木 千歳> 
大惨事になったら大変だなぁと思って…… ( それから、足手まといにもなりたくなかったし。記憶の中にクリーナーを掃除したものなんてなくって、何も分からずにまごまごしてしまうのは嫌だった。苦笑混じり、ちょっぴり褒められたことを照れた風に語りながらも、真実なんてその程度だった。経緯は何にしろ、役に立てたのならそれが1番ではあるけれど。じゃんけんに気合い十分な姿に思わずくすりと笑ってから、私も控えめに腕を巻くって 『 ぽんっ!……………あぁ~… 』初手、蕪木選手グーをチョイス。対する華ちゃん選手、パー。……勝負が決まるのは一瞬だった。敗因は気合いの量、かもしれない。がくりと肩を落とし、固められた拳が無惨に下げられた。『 …………では、僭越ながら。っ…………ふ、ん…………ぬ…………ッッ!! 』じゃんけんに負けただけだけど。粛々と、まるで神聖な儀式でも執り行うようにそっと、クリーナーを机の上に置かれた袋の中にしまう。腕捲りの妨げになるパーカーは脱ぎ、1つ隣の机の上に置いた。確りYシャツは腕捲りをして、これでok。開けられるか、どの程度粉が飛び散るかの少しの緊張。無理に押し広げないでください。破損の原因になります。そんな注意書を思い出しながら、窪みに指を嵌めて出来る限りの力を込めた。蓋は固く、少しの葛藤の末 『 っ、ぁ……………ッけほ、っ……あ、いた………! …ふぅぅ……………かたかった…………。 』ランプならまるで魔人の登場。蓋は開くやいなや、溜め込んでいた分の粉を吐き出し、袋の中を僅かに曇らせる。その余波は力を込めるために背を丸めていた分近付いた顔にもやんわりとかかり、チョーク粉特有の香りに意識が一瞬満たされる。咳き込んで吐き出しても、口内に香りの味が残っているようなそんな気がして、若干口の中が不味い。開きにくさの原因は、入り口の隙間にまで細かく充満した粉のせいのようだった。取り出した手は仄かに粉で色付いていて、固まった腕を解したくってその粉を散らさないように柔く揺らした。『 後は集じん袋っていうのを取り出して……中にあるスポンジを取り出してからチョーク粉を捨てればおっけー………の、はず、でも結構溜まってるから、袋と、スポンジも洗った方が良いかな………? 』   (6/11 23:37:32)


菱沼 華> 
蕪木ちゃん>「 ( 気合を入れた1度目のじゃんけんで、呆気なく勝敗はついた。がくりと肩を落とす少女に “ そういう時もありますよ “ … なんて風に励ましの言葉を投げながら、袋の中に手を差し込んだ少女を見守る役に徹した。)( 透視能力を持たない彼女はクリーナーの蓋部分と少女の戦いを見ることはできない。おおよそ少女の様子から察しとるのがせいぜいで、どうやらかなり苦戦しているらしかった。一点に力を込めるせいか、すこし腕が震えているような。 “ 変わろうか “ と声を掛けようとしたとき、一際大きく袋が波打って、ぶわりと少女の付近にチョークの粉が舞う。開けるのには何とか成功した、のだろうか。)( 袋を隙間から覗き込めば、それはまあ随分な粉が静電気によってか内側に張り付いていて、非常に長い期間気にも留められぬまま仕事をしていたのだと容易に理解出来た。はあ、と溜息をひとつ。道具に感謝するのは、大切なことでしょうに。)」「 それにしても、………はは、可愛いお顔に粉がついちゃってますね。( 先程開けた時の勢いで舞ったうちの一部。頬の辺りに黄色と赤の混じった粉が付着しているのを目にとめて、スカートから取り出したハンカチで優しく拭おうと手を伸ばす。髪がつやつやと美しくて印象的な分、顔にチョークの粉をつけているのがどこかアンバランスで、つい笑ってしまうのは仕方の無いことだと言い訳を用意しながら。きっと粉に塗れた手じゃ二次災害まで起きかねないからと、そのままハンカチで拭えたなら、それから、) そう、ですね。一旦全部出して、はたいて、それで〜……えっと、…洗剤で洗ってちゃんと乾かせば大丈夫なはずです。( いつもの大雑把なやり方を回想しながらこの先の段取りを組んだ。集じん袋。どれのことだろうと、片隅に疑問を追いやりながら。)」   (6/12 00:01:24)


蕪木 千歳> 
かわ…………っ、…ぁ、りがとう…?………ん、( ぴゃっと肩を竦めて、お世辞だとしても照れてしまうのは仕方無い。言われ慣れるほどに、誰かに見惚れられる程に整った顔立ちなんてしてないことは、ちゃんと自分で分かっている。けれどそれはそれだろう。ぎこちなく礼を述べ、近付くハンカチに目を瞑った。ハンカチを汚してしまう申し訳なさはあるけれど、いつまでも顔に付けていたくもなくて。つまるところ、お言葉に甘えて自らに優先順位を置いた。開いた頃には顔は綺麗になっている筈で、有難う、と今度は笑いながら口に出来た事だろう。『 ん、だよね…………よし、…………………華ちゃん、蓋を開けて、ゴミ箱持ってきてもらっても良い…? 』蓋を開けたクリーナーの中はいっそう粉で満ちていて、その中に手を入れるのはやっぱり気持ち的に憚られるものがあった。だからこそここまでの事態になっていたのだろう、なんてことは想像できて、誰かがそんな負の連鎖は止めなくてはいけない。覚悟を、決める。細く息を吐いてから、一息に袋の端を掴んで持ち上げた。粉にまみれた袋は粉の中に手を突っ込んでいるようで、ぞわりとした感覚が伝わる。それでも手を離せばまた覚悟を入れ直さなければならないのだから、嫌な根性の見せ所だ。半ばまで持ち上げてから、はたと気付いたのはこの粉を先ず捨てる場所がないことで、申し訳なさそうに眉を下げながら、救助要請は為された。無事に申請が受理されたなら、たっぷりと粉の詰まった袋、所謂集じん袋がゴミ箱の上空に鎮座する事だろう。中には四角形のスポンジも入っていて、スポンジを抜けば粉は多少減ると、そう信じたい。)   (6/12 00:28:05)