ジェントル>
「(それはどんよりと暗い影を落とした。真夏の曇り空のように陰鬱で薄気味の悪い、僅かな光のみが差す雲幕が、紳士であった。)興味深い、モノだねえェ…(君の紅玉のような赤い瞳が、その『視力』が廊下の角から現れた鈍い光を見るだろう。)これが『威圧感』というものなのかなあァ…(見つめる黒い瞳が1つ。君を少し見上げていたが、危うさに暗雲は立ち込めているだろう。それはただ微笑んでいて、輝かぬもの。)人じゃないヒトは少なくないけどォ…君は、ボクと同じ学年じゃないよねえェ?(真っ暗な瞳、それは黒すぎた。洞穴のような瞳に、白はない。だがそれは、盲目であった。ジェントルは『ジェントル』らしくあるために、同級生の名と体をよく『知って』いた。)興味深いモノだねえェ…(そう、君が目に入った時点で彼が見つめたのはすでに君であった。ジェントルは気まぐれだ。今日は目の前にいる『恐らく別学年』の、『自分よりも大きい』、『シキガミ』に、彼は『興味』をひかれている。)」「ああそうだ!ボクとしたことが、自己紹介が送れたねえェ…(気まぐれだが、『紳士性』、『マナー』は彼に強く根付いたもの。)ボクは3年生の『ジェントル』。(名は体を表すとは、よく言ったものである。)君は?(微笑みは一切動かず、君を見つめたままで彼は名乗りを求めた。)」 (6/7 20:58:40)
レギオ>
(本日は快晴であった。空は一面が青く、そしてその青さに差し込む雲の白色も無かった程だ。大きく開かれ、心地の良い風が入り込む窓からぼうっとした様に天を眺めていた。手にすっぽりと収まってしまう黒色の携帯端末の中にある天気予報のアプリケーションでも快晴だと言っていたのを思い出す。例え種族が違えども、身体の作りが違えども、その空の青さは変わらない。その時先程よりも強い風が吹き込み、彼の三つ編みを揺らした。髪を軽く抑えつつ、ふと、その視線を横に流す。その先に、ぽつん、と引っ掛けたインクの染みの様な怪しげな曇天が見えたのだ。)「……………………おおや。」(ぴっしりとした服装に、痛々しくも巻かれた包帯。その微笑みは形式的な記号の様なもので、きっと自然では無いのだろう。けれども、〝勇者〟よ、〝輝ける者〟よ、〝我が愛〟よ。…その卵である事には、変わりは無いのだから。)「そう。そうなんだよね。ワガハイ1年生なの___ピカピカの。」(だから、敬語を使った方が良いのかしら。真っ黒で、映り込む隙間さえ無いその瞳を捉えながら、砕けた口調でそう伝える。赤い瞳は相も変わらず気だるげだが、怯んだ色は見せなかった。)「うむ。ワガハイは1年生のレギオ。……ああ、好きに呼ぶが良いぞ。そこいら寛容だし、許しちゃう。」(『ジェントル』。その名に相応しく、紳士的な所作で此方に向かって立つ貴方とは対照的に、大きな背丈を緩やかに曲げ、ぼさぼさの頭は直さぬままだ。)>ジェントル (6/7 21:39:26)
ジェントル>
「Mr.レギオ…(口の中に含めるように、味わってその名を呼ぶ。曇天は、緩やかな、冬の朝のような日差しを見つめた。夏のまっ最中へ突入しているというに。)いィね。(夏は嫌いだった。じっとりと汗ばみ、雨が降ってしまうから。彼女も夏が、嫌いだったのだろう。優しくほのかな暖かさに、彼は白い歯を少しだけ見せて笑えばふらりと不気味さが訪れる。)君はとても、涼しいィ…『居心地のいい』ィ、子だねェ…(しかしその笑顔も、すぐに引っ込められた。感情を露にしすぎては、ジェントルは失われる。)でも少し、驚いてしまったなあァ…(しかし緩やかな日差しもまた日差しだ。突然差されれば反応してしまうもので、一瞬たりとも露にしてはならないそれに触れた。)あァ…笑わなければ…(突然の出会いに、何の反応も示さなかったように見えただろうか。口角は本人にしかわからないほどの『許容範囲』より少しだけ下がっており、彼にとってそれは『反応』であった。曇天はしかし口角だけはどうあがいても隠さない。)レギオくん。(どれだけ感情が移り行いても。)一個食べるかァィ?(そして、彼の右手には学食の、カップに入ったからあげが握られていた。)」 (6/9 18:49:32)
レギオ>
『_________いィね。』(ぽつり、その紳士が呟いた言葉が、鼓膜を揺らした。宙を見ていた紅玉の瞳は、モノクロの貴方をその視界の中心に捉え直す。疑問符を浮かべながら、首をほんの少し横に傾げた。)『君はとても、涼しいィ…『居心地のいい』ィ、子だねェ…』(目の前の紳士は不気味に微笑む。それこそ足早に移り変わる雲間の様に、一瞬だけ見せたその表情は、先程とは違うものの様であると彼の目には映った事だろう。)「………………いや、あァ、そう?…其れなら良かったけど………」「……………………。」「………………………ほぉ………………」(キョトン、として。それから数秒後、想定していなかったその言葉に、ゆったりと視線を横に泳がせた。彼の中に居座るその感情の正体は、人で言うところの『驚き』が適当だろうか。ああ、だけれど、そうであると思われたのならば何よりだ。彼は、出来るだけヒトに近しいもので居る必要がある。____少なくとも、彼自身はそう考えているのだ。)「……………………ン?」(目線を貴方の顔と、その手元とに交互に送る。カップに入ったそれは、狐色に揚げられた、少し歪な形をしている。ええと、確か、これの名前は。1度だけ立ち寄っただけの事がある食堂で見た事があるぞ。)「……………………〝カラアゲ〟!」(そう、唐揚げ。)(顔の半分を覆い隠していた黒いマスクの鼻の部分を指で引っ掛け、顎まで下げる。露になった口元は、何の変哲も無い。けれど。)「…………イタダキマス。」(ぐぱぁ、と開かれた口内はどす黒く、けして血の通った人のそれではなかった。1つ指で摘んだ其れを、黒く長い舌で迎える。)「……………ン、………………美味____………………ン、!?……グ、ッゲホッ……………………」(食物がその中に収められてしまえば、真っ黒なソレも引っ込められる。その代わり、パ、と初めて食べるその味に、感心した様に目を輝かせた。だけれど、そもそも食事という行為にすら慣れていない彼は、苦しそうに噎せた。) (6/9 19:41:52)
レギオ>
『_________いィね。』(ぽつり、その紳士が呟いた言葉が、鼓膜を揺らした。宙を見ていた紅玉の瞳は、モノクロの貴方をその視界の中心に捉え直す。疑問符を浮かべながら、首をほんの少し横に傾げた。)『君はとても、涼しいィ…『居心地のいい』ィ、子だねェ…』(目の前の紳士は不気味に微笑む。それこそ足早に移り変わる雲間の様に、一瞬だけ見せたその表情は、先程とは違うものの様であると彼の目には映った事だろう。)「………………いや、あァ、そう?…其れなら良かったけど………」「……………………。」「………………………ほぉ………………」(キョトン、として。それから数秒後、想定していなかったその言葉に、ゆったりと視線を横に泳がせた。彼の中に居座るその感情の正体は、人で言うところの『驚き』が適当だろうか。ああ、だけれど、そうであると思われたのならば何よりだ。彼は、出来るだけヒトに近しいもので居る必要がある。____少なくとも、彼自身はそう考えているのだ。)「……………………ン?」(目線を貴方の顔と、その手元とに交互に送る。カップに入ったそれは、狐色に揚げられた、少し歪な形をしている。ええと、確か、これの名前は。1度だけ立ち寄っただけの事がある食堂で見た事があるぞ。)「……………………〝カラアゲ〟!」(そう、唐揚げ。)(顔の半分を覆い隠していた黒いマスクの鼻の部分を指で引っ掛け、顎まで下げる。露になった口元は、何の変哲も無い。けれど。)「…………イタダキマス。」(ぐぱぁ、と開かれた口内はどす黒く、けして血の通った人のそれではなかった。1つ指で摘んだ其れを、黒く長い舌で迎える。)「……………ン、………………美味____………………ン、!?……グ、ッゲホッ……………………」(食物がその中に収められてしまえば、真っ黒なソレも引っ込められる。その代わり、パ、と初めて食べるその味に、感心した様に目を輝かせた。だけれど、そもそも食事という行為にすら慣れていない彼は、苦しそうに噎せた。) (6/9 19:41:52)
ジェントル>
「なるほどゥ。(笑顔の端の上がるは、際限ない。とはいえ、際限の際限まで彼の笑顔は進んでいる。はち切れそうなくらいで君を見る。『ピカピカの1年生』であるわけだ、言葉遣いを人の高校生らしくしつつ、君はどこか野生を感じる。)はじめての体験は、大切だからねえェ…楽しィからねえェ…(例えば、『カラアゲ』の名が現れるのに少し時間がかかったことや、食事が下手なことなど。人らしさとして、少しばかりまだ未熟さを感じて。)美味しいィ?カラアゲ。(『ジェントルマン』は『優しい』ものだ。誰かの望むであろうことを先んじて、一手先で手助けをするものだ。)ねェ、食べるのは、好きかィ?(からあげの、1本の爪楊枝で噛み応えある衣を貫く。)ボクは、食べたり作ったりするのが好きなんだァ。ママは手を動かしてるときが一番優しかったから。ボクも、ママを見てたから、いろいろ覚えちゃってねえェ…(笑顔のまま口の中に放り入れ、ざり、と衣を砕く。噛めば衣より奥の鶏の脂に口内が溢れ、旨味を舌の上に滴らせていく。)」
「もし食べることが好きなら。ボクの料理、食べてくれるかなあァ。(そして噛み締められたカラアゲが喉の中へと引きずり込まれ、飲み下される。)誰かに料理を食べてもらえるって。きっと、幸せだからねえェ。(何度も、何度も、何度も、繰り返された行程だ。繰り返せば繰り返す度、彼女は笑った。それが『ジェントル』だった。『いいこ』だった。)ママと同じくらい、うまくは作れないけど、ねえェ。(そうだ。そんなときの彼女は幸せそうで、ボクの料理を食べるときも、そんな顔をした。食事はおいしい。)レギオくん。…君にいろいろ教えたいことができた。どうかなァ?(だからきっと、ママの気持ちをたどれる気がしたのだった。)」 (6/9 20:28:45)
レギオ>
(背中を震わせ、何度か噎せながらも、突っかかった其れを何とか嚥下する。どうすれば良いのか分からずにさ迷っていた手は胸元辺りを数回叩く形で収まった。まだ少し先程の余韻が尾を引いて、ケホ、と軽く空気を吐き出す。)「…ウ、ンン、ん゛……………………」(何だかよく分からないまま収束した事に気に食わないとでも感じているのか、小さな小さな人らしい唸り声をあげる。)『ねェ、食べるのは、好きかィ?』(一部始終を見ていた紳士はそう問いかける。〝はち切れんばかり〟の、笑顔を浮かべたまま。胸元に当てていた手をそのまま腹に滑らせ、思案した後、ゆったりと口を開いた。)「………む……『食べる』行為自体は………どうだろう。…そう…未だ、上手くは無いからね。」「………ああ……でも、『カラアゲ』は………………〝美味し〟い。うん、美味しい。………………油と……肉の味?がする。…………あーっと、それと、………………………………温かい。」(そう、確かに『カラアゲ』は〝美味い〟と、素直にそう思った。だって、初めて食べる味だ。切られて、加工されて、味付けが施された、ヒトのもの。食事が必要無いと言ったって、何も食べられない訳じゃあ無いのだから。)『レギオくん。…君にいろいろ教えたいことができた。』『どうかなァ?』「…………………………………………エ」(赤の双眸が、微かに見開かれる。)(それは思っても見ない提案だった。だけれど、数回瞬いた後_______)「………………………………ウン。良いよ。」(こくりと首を縦に振る。〝教えたいこと〟だなんて言われたら、彼の中にある好奇心が擽られ、一体其れがどのようなものなのかを知りたくなったから。)「そうだ、コウハイは、センパイから教えを授かる…もの、なんだって。」(……勿論、またアレと同じ美味しいものが食べられるのか、という下心も無い訳では無かったけれど。その誘いを断る理由なんて、彼の中には存在しなかった。)「だから……」(す、と緩慢な動作で片手を差し伸べる。青白い肌とは対照的に、褐色の肌だ。けれどやはり雲ひとつない空は、相対する彼らの後ろで平等に青色に広がっていた。)「……ヨロシク。〝センパイ〟。」 (6/9 21:38:35)
レギオ>
「……はぁ~~~~…………………………」(思わず漏れたのは、感心の溜息。ぐるりと辺りを見渡してみても、彩り鮮やかにそして煌びやかな物ばかりだ。この場に居る人々は誰もが少しばかり浮ついた様な表情を浮かべている。)「すっご……いねぇ。…ワガハイ、初めて来ちゃった。」(やや目線の下先に居る、ツンツンとした赤髪が特徴的な少年を見やる。)「キミはこういう所、たくさん来たことある?」(ゆったりと首を横に傾け、そう問いかけた。任務___とは言われているが、引率の教師も足早に去ってしまった。滅多に来る事など無い場所だ。周りのヒトの様に興じて見るのも悪くない筈だ。どうせならこの機会に堪能しておかなくちゃあ、勿体ないだろう。)>真紅郎くん (6/10 22:23:16)
秋守 真紅郎>
「……?なんだお前、こういうとこ初めてなのか。」(阿呆ほどデカいクレープを両手に持って、右手に持ったクレープを君の方へと戻りながらもっちょもっちょと頬張って、食べ物屋台から帰るなりそんな質問をしてくる君にきょとんといつもよりその鋭い目を開いて見せる。初めて来ちゃった、なんて言葉を聞くと、嬉しいような相手が男だけに複雑なような。俺も女の子と回りたかったなあ、なんて内心思いながら遠くではしゃぐ男女ペアの生徒達を眺めては、ン、なんてぶっきらぼうに口を付けていない方のバカでかいクレープを君に差し出す。【探索1回目】1d10を互いに回して数値が高い方が、同値ならどちらもお腹が鳴ってしまう。丁度近くに食べ物屋台がある。チュロス、ポップコーン、クレープ、ファンシーな物が多い様だ。食べれば追憶+1 ) (6/10 22:34:19)
秋守 真紅郎>
「まあ、子供の頃にな。ほら、あそこに舞台があるだろ?あそこで戦隊モノのヒーローショーとかやっててさ、友達と来た事もあったなぁ……にひ、難しい事は賢い奴らが何とかしてくれるだろうし、お前のドブパデビューを盛大に飾ってやんなきゃな?」(彼は君の質問に答えながら何か深く回想する様に今は何も起きていない伽藍洞の舞台を見つめて、それを振り払う様にニカっと笑えば、君の手を引きずんずんと進み始める。) 「な、まずはどこ行きたい?」https://eliade20.1web.jp/47031/51812.html#contents>レギ坊 (6/10 22:34:19)
レギオ>
(傍の少年の心情など露知らず、また物珍しいものを見るかのようにしてキョロキョロと辺りを見回していた。ずい、と差し出されたのはやけに大きなそれ。反射的に受け取ったは良いものの、一体名をなんと言うのか。〝美味しそう〟なものであるには、間違いない……気がする。その食べ物と、もちょもちょと頬を膨らませる貴方を交互に見て、はぐっ、と頬張ってみた。)「___ン、ぐ!…………おぉ、……美味い。」(初めて食べる生クリームの甘さに目を少しだけ輝かせ、口の中の物を嚥下すれば次いで二口目と進めた。)(貴方の思い出話を聴きながら、もくもくと片手間にそれを食べ進める。…すっかり虜になってしまったようだ。快活そうに笑う貴方に引っ張られつつ、周りを見てみれば、すぐ近くにあった大きなアトラクションが目に入る。)「________…あ、あれとか。面白そう……じゃあ、ない?」(探索2回目、 バイキングを見つけた、海賊船型の大型ブランコというべきか、前後に大きく揺られるあの感覚は、内臓が浮くスリルは、中毒性を否めない。…1d6でスリルの高さが決まります。)>真紅郎くん (6/10 22:58:22)
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依江>
■(楽しそうに談笑している君の服の裾を、ちいさな少年が泣きながら引っ張ることでしょう。年は9歳程度でしょうか、真ん丸の目には大粒の涙を浮かべ、言葉を探すように目を泳がせて忌ます。)「あ、あああの、あのえっと……っ、あの、おに、おおにいさんが、あの、こわ、怖いおじさんに、……っ、つれ、つれ……、」(涙でのどをしゃくり上げながら、何度も音を詰まらせながら少年は直近の森の中を指さしました。手には黄色のあめ玉をぎゅうと握りしめて、少年は君の服をぐいぐいと引っ張りながらそちらへ誘おうとしています。)「ひひぃ、ろ、ひーろー、たすけ、けけて、おに、ぃさん、」>れぎおくん (6/10 22:41:28)
秋守 真紅郎>
■「ん、ぁ、…いや、ちょっと待て。」(楽しそうに談笑している君の服の裾を、ちいさな少年が泣きながら引っ張っている。身長の高い君には声が届かなかったのだろうか、ならば自分に聞こえたのは、何故だろうか、うるさい、やかましい。とかく年は9歳程度だろうか、真ん丸の目には大粒の涙を浮かべ、言葉を探すように目を泳がせて忌ます。)『あ、あああの、あのえっと……っ、あの、おに、おおにいさんが、あの、こわ、怖いおじさんに、……っ、つれ、つれ……、』(涙でのどをしゃくり上げながら、何度も音を詰まらせながら少年は直近の森の中を指さしました。手には黄色のあめ玉をぎゅうと握りしめて、少年は君の服をぐいぐいと引っ張りながらそちらへ誘おうとしています。)『ひひぃ、ろ、ひーろー、たすけ、けけて、おに、ぃさん、』 (6/10 23:13:04)
秋守 真紅郎>
■「楽しむのはまたにしよう、……お前、アイツを追ってくれ。後から必ず追いつくから。どうしてもって時は、呼んでくれ、 " レッドスパイク " を。」(彼は君の手からクレープを取り上げては子供の前に両手にクレープを持って屈むと対話を試みようとする。) 「…ぼく、何があったかゆっくりで好いから教えてくれるか?応えられたらあのでっかいお兄さんから貰ったクレープやるから、な?」(彼はそう呟いて、【精神統一】を図る。)>レギ坊、黄色い飴玉の男の子 (6/10 23:13:07)
依江>
■「う”~~……っあの、のあの、おに、さん、やさしいひと、あのおかしくれたの、のに、そしたらおじさんが、おじさんが、ぼく、」(少年の話は途切れ途切れで要領を得るの葉難しいかもしれません。とにかくはやく、はやく、と少年は雑木林に連れて行こうとします。)「くれーぷ、もらったら、ら、だって、ひぃろ、も、おじさんに……っぅ、ぁあ……」(泣いてしまってろくな話はできないかもしれない。)>秋守 (6/10 23:25:30)
レギオ>
『ひひぃ、ろ、ひーろー、たすけ、けけて、おに、ぃさん、』「……………………!」(服の裾が掴まれたことにどうやら気が付かなかったらしい。幼い少年は、大粒の涙を流しながら〝ヒーロー〟に助けを求めている。)『楽しむのはまたにしよう、……お前、アイツを追ってくれ。後から必ず追いつくから。どうしてもって時は、呼んでくれ、 " レッドスパイク " を。』「…………おっけい。」「…ごめんね、このツンツン髪のヒーローと、待ってて。」(例の甘いもの____結局名前は知らずじまいだが____を取り上げられた時、あと1口だけ欲しそうな表情を浮かべたが、それも一瞬の事だ。飴玉の少年に対し声をかけ、少年が指さしていた森へと地面を蹴り走り出した。【空間把握】があるのなら、その中でも迷うことは無いだろう。)>真紅郎くん、少年 (6/10 23:29:25)
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秋守 真紅朗>
「あー、レギ坊、悪いさっきのアレ、あの、クレープ。さっきの子供に渡しちゃって、これ、代わりって云っちゃあれだけど、チュロスって云うんだ。食えるか?」(彼は解散後に君を探して声を掛ける。両手にはチュロスを持っていて、どちらも色が違うからきっとそれぞれ味が違うのだろう。)「バイキング?も乗れなかったし、初めてがこのままじゃつまんねえもんな。今日は最高の日にするぞ!…ほら、どっちがいい?」(彼は申し訳なさそうに眉尻を下げつつも口元ににぃっと笑みを浮かべて両手のチュロスを差し出す。)【探索2回目】1d10を互いに回して数値が高い方が、同値ならどちらも喉が渇いてしまう。丁度近くに自販機がある。先のダイスで素数を引いてしまった人はどろり濃厚芋けんぴサイダー(ラタトゥーユ&抹茶パフェ味)を誤って飲んでしまう!3なら甘えん坊に、5なら本音がポロポロと出てしまう、7なら無性にドキドキしてしまう。効果は1時間! >レギ坊 (6/11 00:48:41)
レギオ>
(やたら拳が飛び交った一騒動の後、引率の教師からは解散を命じられ、手持ち無沙汰になった頃。)「……ン。…………あぁ、気にしなくても…大丈夫。」(『レギ坊』と聞き慣れない呼び名で声を掛けられ、謝罪に対してはさして気にしていなさそうにそう受け答える。それよりもあの時口にした甘い物が『クレープ』と呼ばれるものだと言うことに関心が向いていたのだろう。……それと、両手に持たれた長い揚げ物に。)「ん……良いのか?…ありがとね。…」(差し出されば、右手に握られていた物を受け取った。薄桃色をしたそれは、彼の目には物珍しく映ることだろう。)「そう、そう。…結局乗れなかったのは惜しかったけど____……まだ、終わった訳じゃあ無いもんね。」(時間はまだあるのだ。少し落ち着いたこの場所で、互いに楽しもうじゃないか。)【 探索3回目 】 1d10を互いに回して数値が高い方が、同値なら女性側がナンパされてしまう。二人の合計が奇数ならばかなりテンションの高いイカつい集団が、偶数なら陰気でヤンデレ気質の人が声を掛けてくるのだろう。 (6/11 01:13:48)
秋守 真紅郎>
「おうよ!全然問題ない、なんならお前が満足するまで今日は付き合うぜ?」(彼は擦れ違いそうになった自販機に脚を止めて、お前もなんか飲む?なんて声を掛けてジュースを適当に買ってはマズそうなジュースをどろどろと喉に流し込んで暫くフリーズするだろう。そうだ、マズいのだ、味も分からないし得体も知れないそのジュースを一気に飲み下したせいか、虚空をじっと眺めたままジュース缶を煽ったポーズのまま微動だにしない。それはまるでダビデ像やらミロのヴィーナスなど石膏そのものだ、もはや生きているだけで活きていない真紅郎だったソレはパフォーマー顔負けである。そんな彼の隣を歩いていた君の元に前髪の長い陰気な女性が話しかけてくるだろう。) 『あ、あぁ…あにぉぅ……ヒーローぉぉ…の方、ですよねェ………ふひ、へ、へへ…あの、実はずっとファンでぇぇぇ…背も高いし、顔も良いし、俺様ってカンジのイケメンさんなのにぃ……クラスでは全然喋らなかったり、えへ、あと、あの、あの…この間お洋服屋さんに居た時も、あっ、ストーカーとかじゃなくぅぅ…えへ、でもいっぱい悩んで結局変な服選んじゃうところとかぁ……♡、ひひ、好きなんですよォ……♡』 (6/11 01:31:20)
レギオ>
(ずらりと並ぶ商品の中、思わず目移りしてしまう。どれが良いのかなどは分かる訳もなく、ならば先程彼に倣ってみようかと。)「〝どろり濃厚芋けんぴサイダー(ラタトゥーユ&抹茶パフェ味)〟ィ………………?」(はっきりいって、想像がつかない。何だこれは。知らない味ばかり並べられているし、そもそも味を掛け合わせることによって更に美味くなるとでも言うのか。どんな味なのかを尋ねようとして、彼の方へと顔を向けた。)「…ねぇ、これ、どんな味がする?」「……シンクロー。」「………………シンクロー?…………」
「……………………………………………………ェ、死んだ?」
(なぜだか、全く微動だにしないのだ。彼だけが切り取られ、時間が止まってしまったかのように。その脳内には広大な宇宙でも広がっているのだろうか。瞬きすらせず、その瞳は何処か遠い場所を眺めている。声を掛けても反応をせず、目の前で手を振っても反応をしない流石に心配になってしまった彼は、そっ…………と手首を握り、脈拍を確認した。良かった動いてはいると安堵したのも束の間だ。)『______あ、あぁ…あにぉぅ……ヒーローぉぉ…の方、ですよねェ………?』「…………………………………ェ?」(突如見知らぬ女性に声をかけられ面食らう。知り合いだっただろうか。前髪がやけに長くて顔を伺う事が出来ない。)「ああ、そう…ウン、ありがとね……?」(口を挟む隙すらなく、やや興奮したかのように喋りながらジリジリと詰め寄ってくる彼女に後退りしつつ、固まって動かないツンツン髪の彼に救いを求めるかのように声をかける。)「シンクロー、ちょっと……ねぇ、おい?」 (6/11 01:53:07)
秋守 真紅郎>
「あ、っぉ、あ"!馬鹿みたいにマズい!馬鹿みたいにマズいぞ!!レギ坊!あ、…あ"!?なんでお前モテてんだぁあぁああ!?!?」(君に何度目かの呼びかけをされてビクッと身体を跳ねさせてやっと意識を取り戻す。暫く停止していた分を取り戻すかのようにぼろぼろと早口でまくし立てた上に地団駄を踏み始めるだろう。そんな彼に根暗女はうわぁ、と云わんばかりに嫌そうな顔をして、邪魔をするなと言葉にはしないものの、レギオの身体に擦り寄って行く。)
「なぁああああんだその目はぁああ!!やっぱ背が高いのがモテるのかぁああ!?身長なんて!身長なんて!!ジョーホーカ社会と化した現代日本では何の意味も介さないはずなのになんでこんなにも女は身長の高さを求めるんだ意味分からんというか俺も身長を求めているなんでこんな高身長イケメン男と歩いてんだ俺はただただ惨めになるだけだろうがいやそんな事無かった全然惨めどころか楽しいわ馬鹿野郎が嗚呼ぁあぁあぁあぁああ俺も身長欲しいよぉぉぉぉぉ………」(更にまくし立てる様にバラバラと機関銃の如く言葉を発するが、次第にボロボロと本音を零していき、よたよたとレギオに歩み寄っては縋りつくようにその旨に額を押し当てて衣服にぎゅっとしがみ付くのだ。) (6/11 02:18:53)
レギオ>
(ようやく息を吹き返した魚のように、ビクゥッ!と体を痙攣させ、彼は意識を取り戻す。)「……シンクr」『あ"!?なんでお前モテてんだぁあぁああ!?!?』(____ぐわぁっと機関銃の様に激しく捲し立て始め、それを遮る隙などやはり無く。)『なぁああああんだその目はぁああ!!やっぱ背が高いのがモテるのかぁああ!?身長なんて!身長なんて!!』(一体どうしたって言うのだ。なぜこんなにも急に情緒が不安定になってしまったのか、それ程までに気にしている事だったのだろうか。どれにせよ、なんにせよ______)「………………………………エエェ………………」(_____カオス、実にカオスである。それに尽きる。場は混沌を極めて来た。やたらめったら騒ぐお陰で、なんだなんだと此方を見てくる他の客の視線を感じて仕方が無い。体の右側には衣服に縋り離さない彼、左側には擦り寄ってくる見知らぬ女性。両手に花(?)とはこういうことか……………と、いつの日かテキストで読み得た知識を思い出していた。
彼は愛情を愛している。だが、その『愛情』とは、博愛を指す言葉では無い。輝ける者、勇ましい者、我が『愛』___その言葉は、勇者たる君達へ捧ぐものだ。)(それ故に。)「………………ウン。…ありがと。これからもワガハイを…ヨロシク?……ね。」「…………………………………………じゃッ!」(縋り付く彼をひょいと腕で抱き抱え、女性との距離を開けるために颯爽とその場を去ろう。先ずは彼を宥める___情緒が崩れた原因と考えられるものと距離を置く事が優先だ。そして人があまり通らぬ場所を見つけたのなら、やっとそこで降ろすはずだろう。貴方が暴れなければ。) (6/11 03:02:28)
レギオ>
(それはある日の放課後のことだ。教室に残って友人たちと雑談する者や、部活動へと急ぐ者、職員室へとノートを提出しに行く者…はたまた、遊びに行こうと友人と並んで歩く者。それか、1人の時間をゆっくりと過ごそうとするなんて者も居るかもしれない。兎にも角にもやや浮き足立った、一日の学業から自由になった開放感を持って、各々が思いのままに過ごそうとしているだろう。そんな空気を感じつつ、燃えるような髪をゆらめかしながら、彼もまた目的の場所へと足を運んでいた。廊下を通り、タン、タン、タン、とゆっくりとした足取りで階段を登っていく。最後の踊り場を通り、両開きの扉のノブを回す。フェンスの向こうには、初夏を知らせる空が広がっていた。後ろ手にドアを閉める。…この場所では『課題』をやるに相応しい場所かどうかと問われれば、適当では無いかもしれない。が、今日は風も強く吹いてはおらず、紙が飛ばされる心配も無いはずだ。日が当たりすぎると白色の紙が反射して見にくいと思っている彼は、さて何処でやろうかと周囲を見渡し、歩き回る筈だ。)「…………ン……………………」(そこで、1人の生徒を遠くに見つけるだろう。白金色の美しい絹髪を持つ、少女だ。彼はその〝視力〟を持ってして、じいと見詰める。)「___…………おぉ?」(いつか耳に挟んだ噂話、その特徴と視線の先のヒトが一致しあい、ふと合点が行ったかのようにして、気だるげな色を孕んでいた瞳は微かに見開かれた。)「…………あれは………………ああ、あれこそは………………………………」(彼は目が良い。ひとつだって見落とさない。だからこそ、キッチリとした服装に身を包む貴女が、この学び舎で特段鮮やかに君臨する者である言う事も見えたのだ。)(ああ、〝光輝く者〟よ、〝我が愛〟よ、〝勇ましい者〟_______) 「…………………………我が、【 勇者 】よ!」 (やけに大きいその背丈で、其方へ行くのにはさして時間はかからない。迷い無く向かったのならば、すっかり手に持っていた課題の事なんぞ頭から抜け落ちてしまっていた。…そして、ヒトのマナーなんてものも。) (6/8 19:57:57)
二条 硝華>
( それは、何でもないある日のことだ。日差しはいつにも増して強く、こちらの肌をじりじりと焼く。今からこの調子では夏が思いやられるわ…………と、薄く色付いた唇から吐息が漏れた。人のいない屋上。眼下に広がる、フェンスの網目に切り取られた世界では、ちいさな生徒たちが我先にと駆け回っている。部活に行く者、一目散に自宅や寮へと向かう者、友人と並び立つ者はこれから街へ遊びにでも出るのだろうか。視線の先にある光景は皆違えど、その顔に浮かぶのは変わらず笑顔である。) 「 ……毎日が楽しくって仕方がないみたいね、くだらないわ。」( 照りつける夕暮れの太陽とは正反対に、言葉の節々には冷めきった感情が乗っていた。私の目には〝 こんな世界で平和に生きる人間 〟のことが、馬鹿げた茶番を演じているようにしか映らないのだった。) ( __________二条硝華は、茶番を呪っている。 )( ギシ、と。握りしめた金網が高い音を立てたのと、声が聞こえたのはまったく同時のこと。 ) 『 …………………………我が、【 勇者 】よ! 』 「 ______ッ! 」( 人が来ていたことに、まったく気付かなかったと言えば嘘になる。ただ、まさか話しかけてくるなんて思いもしなかったのだ。ずかずかずかと近付いてきた姿に僅か、眉が顰められたことに貴方は気付いたであろうか。) 「 えっと…………貴方。そう、確か一年生の。」( 取り繕うように貼り付けた笑みは、完璧であると自負している。【 容姿端麗 】____ それは、嘘を隠すことにも使用できる、便利な才だから。) 「 ごめんなさい、貴方の言う『 勇者 』とやらが何であるのか、私には分からないのだけれど。人間違いをしていないかしら? 」( 貴方の高すぎる背丈を見上げ、にこやかに告げる。この男の噂は否が応でも耳に入ってくるのだ、あまり関わり合いになりたくもなかったし、余計な印象も植え付けたくはない。被り慣れた優等生の仮面は、咄嗟のことでもよく馴染んでくれた。 ) (6/8 20:28:04)
レギオ>
(密やかに顰められた眉も、ほんの少しだけ動揺したかのようなその様子も、そのマスカレードの下に巧妙に隠されてしまえば、いくら〝目〟が良くたって気づくことは出来ないだろう。)『__人間違いをしていないかしら?』(その唇から紡がれた言葉に対して、片眉を上げた。やや不躾に貴女の頭部からつま先までをゆっくりと見直して_____そうして、否定を表すように緩やかに首を横に振った。)「いいや。」(緩慢な動作とは相反して、その口調はハッキリとしたものである。)「…そうであるな。まず、ワガハイの言った、勇者…とは。…………強く、逞しく、光り輝く者…のことを指す。」(目線の先に居る、己よりも遥かに小さなその体。然し、その中には有るのだろう。真の勇者たる彼らに最も近いであろうものが。)「この魔王…の代行であるが………ワガハイが、ヒト間違いなどするものか。……ああ、しない。しないとも。」(__________だって彼は、『愛情を愛している』のだから。〝愛〟たる者を、見誤る事など、ゼロに等しい。)「それについては、自信があるのだよ。」(やはり気だるげな雰囲気は崩れぬまま、だがしかしその瞳は確かに人間らしい生気を宿した様子でもあった。)「そう、そう。ワガハイは〝1年生〟であるから故に…………センパイ、であろう。確か。」(同学年では無いことは確かである。……しかしこの男は鈍感なのか、自己中心的なのか、それとも最初から気にしちゃあいないのか____この空気を読める訳もなく。ゆったりとしていて、しかし強引に、自分の流れを作り出し、それに無意識の領域で巻き込んで行こうとしているのだ。絶妙なタイミングで紡ぎ出される話題で、彼はようやく名を名乗っていない事に気が付いた。)「……ワガハイは、レギオ。…ああ、好きに呼んじゃっても良いよ。」(荷物を持っていない方の手で、自身の胸に手を当てる。くったりとした、その見た目の威圧感にやけにそぐわない喋り方だ。微かに首を傾けて、『勇者の名は?』と、問いかけた。) (6/8 21:14:16)
二条 硝華>
『 ……ワガハイは、レギオ。…ああ、好きに呼んじゃっても良いよ。』( 形の良い眉の動きも、遥か高みからこちらを見下ろす仕草も、どこかぼやけたような語り口も。初見の印象からは遠くかけ離れた、ぼんやりのんびりとしたもので。それ故に夢物語に似た言の葉の全てを否定させないという、特殊な空気感すら纏わせる。不思議を通り越して、不気味な男だ。体を向き合わせることはせず、右耳から左耳へ自己紹介を聞き流しつつ、そうおもった。 ) 「 まず、そう。」「 初めから訊いていないとは言え、名前を教えられたからには答えないと失礼になるわよね。」( ハリボテの仮面はそもそも長時間持つものではなく、それでも、初対面の相手に冷徹とも言える視線を向けるほど愚かでもなく。ただし言葉の端々から本音が見え隠れする辺り、仮面はまったくもって、貼り付けただけのものであるのだった。) 「 二条硝華、三年よ。貴方にとっては確かに先輩。」( 「 よろしくお願いするわね、レギオさん? 」なんて、綺麗なばかりの台詞に一欠片の真実も存在せず。笑顔と同じように形作られただけのものであると、貴方に気付かれたって構いやしない。『 強く、逞しく、光り輝く者 』がこんな風に扱ってくること、それに気分を害すなり何なりして立ち去ってくれれば御の字であった。) 「 それで…………ええと、なに? 魔王とか、勇者とかって、詳しく伺った方が良い話? 」「 それとも、何にも聞かなかったことにした方が宜しいかしら。」( いわゆる厨二病、と一笑に付すことは簡単だ。けれど、彼の〝 噂 〟を鑑みると馬鹿にも冗談にもできないのは確かで、だからこそ対応に困ってしまう。話を詳しく聞くなと言われれば、ただの空想であるのなら、このまま笑顔を向け続けて私が消えればいいだけだ。だって話はそこで終わりなんだもの。その方が、きっとお互いに楽な結果に終わってくれるだろう。)( …………いいえ、別に、初対面の彼自身を敵対視しているわけじゃあないけれど。 ) ( 横に仁王立つ貴方が、噂話でしか聞いた事のない魔王様とやらが、いったいどんな話をするのか。それとも、口を閉ざすのか。私は内心、戦々恐々としながら耳を傾ける準備をした。 ) > レギオくん (6/8 22:02:38)
レギオ>
「ニジョーショーカ……………ニジョウ………………………………………二条、硝華。…………成程、其れが貴殿の名前か。」「………………OK。ワガハイ、覚えたぞ。…………しっかりね。」(和名との縁がそこまである訳では無い彼は、何度か口の中でその名を反芻させる。……そういえば、名前とは、記号的な物であると。所詮、個体を識別するだけの物であると、誰かが言っていたことをふとこの瞬間思い出した。其れは直ぐに脳の隅に追いやられるだけのもので、至極些細な記憶だったけれど。)「ワガハイは、そう……覚えておかなければならない故に。」(彼からしてみれば、名前というものが、様々な面でどういった物として扱われるのかは知る由もない。教えられた所で、はあと微妙な表情で、やはりぼんやりした様に頷くのだろう。)(然し、瓶詰めした個をラベル分けするには必要で、そしてその理屈で行くのなら、〝勇者〟たる者の名は一層特別なものとしての意味合いを孕むだろう。ならば、覚えておかなければ。ならば、大切にしなければ。)(……等と、考えて居るのだから。彼女の美麗なマスカレードが徐々に剥がれ落ちて居るのだって、特段気にする様子も見受けられない。それこそ形式的で、綺麗な台詞に対しても素直に頷くしか出来なかった。)『それで…………ええと、なに? 魔王とか、勇者とかって、詳しく伺った方が良い話?』『それとも、何にも聞かなかったことにした方が宜しいかしら。』「………………む。」(彼女からそう投げかけられれば、顎に手を当て、少し考える様な動作を見せた。少しだけ顔は下向きに、人差し指と親指で顎を何度か横に摩る。そしてようやく鎌首を擡げる様にして、貴女の方へと目線を流した。)「割愛するけどね。」「…ワガハイは…ヒトじゃない。キミ達みたいにね。………そう、【魔王】で。」「ショーカチャンは、ワガハイが…〝我々〟が好きなタイプのニンゲン、所謂【勇者】。」(ぴ、ぴ、と己と貴女を交互に指さし、それを最後に天に向けて指した。)「それが、それが…答え。」「…そう、大体そんな感じ。」(………説明や解にすらなっていないその受け答えを、まるで模範解答ですとでも言うくらい、しどろもどろになる事も、尻すぼみになってしまうことも無く。…真面目に話すのも嫌になってしまうほど、彼は【適当】なバケモノだった。) (6/8 23:11:35)
二条 硝華>
( 幾度か反芻される自らの名。初めの素っ頓狂なイントネーションから、繰り返すごとに聞き馴染みのある音に変わっていく。だというのに目の前の少年から発されるそれは、自分のものではないような響きを纏うのだから気味が悪いものだ。『 覚えたぞ。』と言ったって、『 覚えておかなければならない。』と戒めたって、別な興味の対象が現れればすぐにぽかんと忘れてしまいそうな癖して、よくも言う。) 「 …………そ、どうも。」( 考える素振りを見せた男の、自身の輪郭をなぞる指先を目で追って。つい、と目を離しては、彼から見えない身体の陰で左手を握っては緩め。上方から流された視線に敏感に気が付いては、再び貴方を見上げる。その様子は、普段の ( この場合は優等生である二条硝華でも、笑顔をとっぱらった氷の女王のような二条硝華でも、どちらでもいい ) 彼女を知っている人間が見れば、『 随分と落ち着きがないな。』などと思うだろうが…………生憎、ここには自身と初対面の少年しかいないので意味が無い。)『 割愛するけどね。』『 …ワガハイは…ヒトじゃない。キミ達みたいにね。………そう、【魔王】で。』( 指差し確認みたいな動きをする貴方に、嗚呼、眼差しはすぅっと冷気を帯びていく。 )『 ショーカチャンは、ワガハイが…〝我々〟が好きなタイプのニンゲン、所謂【勇者】。 』「 …………………………………そう。何だかよく分からないけれど、好かれていらっしゃるみたいで、光栄だわ。」 ( 声音は、より一層温度を無くし。)「 でも、ねぇ、『 魔王様 』。」( 鈍感なのか、それとも人間如きの苛立ちなど取るに足らないと思っているのか。定かではないが、貴方はこちらの機嫌なんか気に止めもしない。)( だから。そう、だから。) 「 _____________私、貴方が嫌いなのよ。」 ( 自身の血が凍りついてしまうくらいに。)( 剥がれかけのヴェールは呆気なく風に飛んでいって、そうして貴方に見せる表情は〝 嫌悪 〟に近い。彼にしてみれば、突然拒絶を突きつけられている状況。憤慨したっておかしくはなく、その方が好都合だなんて思っているのだから、我ながら酷く気が立っているらしかった。パンプスの踵をかつりと鳴らし、貴方へ確りと身体を向ける。) (6/8 23:46:01)
レギオ>
『…………………………………そう。何だかよく分からないけれど、好かれていらっしゃるみたいで、光栄だわ。』(取り巻く空気は温かみを無くし、肌に感じる温度が、すぅと冷たくなって行く様だ。そこで漸く何かを感じ取ったのか、緩やかに天に向けられていた指先は、手首からくたりと力を無くし、だらしなく垂らされた。)『でも、ねぇ、『 魔王様 』。』(表情の変化はやはり乏しいまま、紅玉の瞳は相変わらず貴女に向いたままである。そしてそのまま、言葉の続きを静かに聞いていた。)『_____________私、貴方が嫌いなのよ。』(…例えるならばそれは、氷点下。きっと他の生徒ならば凍り付いて粉々に砕け散ってしまいそうな程に、それは酷く冷ややかで、傷を付けるためだけに紡がれた言葉だ。拒絶、嫌悪、憤怒______それらが一色単に折混ぜられて、知らぬ間に刃物の切っ先を向けられていたのだ。)(その時だった。)「_______……あららぁ………………………………」( ゴ ウ ッ ッ ! ! ! ____という激しい音をたてて、先程まで穏やかだったはずの風が吹き荒れた。彼が手に持っていた白色のプリントが奪われ、宙に舞う。)「…………………ぅ………………と…………………」(風に煽られて余計乱れた長い前髪と黒色のマスクに隠されてしまって、目元すらも窺いにくい。けれど、それがあっても。)「………………ふ、は、は 、は は。」(足元に落ちたプリントに目もくれず、一歩踏み出す。クシャ、と紙切れの軽い音がした。)「 なぁ____我が愛よ、輝ける者よ、勇ましい者よ。」(もう1歩ずつ、踏み歩き、先程よりも貴女との距離を縮めて行く。そして手を伸ばせば触れられる程にまで近付けば、両の足をそこで止めた。)「_________やはり、勇者と呼ぶに相応しいよな。」(____憤慨するなんてとんでもない。だって、その【カミサマ】は、酷く満足したかのように、初めて〝笑顔〟らしきものを浮かべていたのだから。) (6/9 01:19:13)
二条 硝華>
( __________それは、一陣の。) ( よくよく手入れのされた、1ミリの乱れも無かった白銀が、強い強い風に巻き上げられる。思わずぎゅうと目を瞑ってしまって、次にその紅梅色を見開いたとき。聞こえてきたのは、 ) 『 ………………ふ、は、は 、は は。 』( 紛れもない、少年の、『 シキガミ 』の笑い声。 ) 『 なぁ____我が愛よ、輝ける者よ、勇ましい者よ。』「 ……何かしら、化け物さん。」( 彼は、私と同じように長い髪を乱され目元も曖昧になってしまっている彼は、長い足による広い歩幅でこちらに一歩。また一歩と近付く。およそ30センチ差の巨体が迫ってくる圧迫感。だが、勿論後ずさるなんて馬鹿げた真似はしないし、その発想すら浮かばない。細い顎をくいと上げ、白い喉を晒し、あくまでも挑戦的に、挑発的に。夕陽を背にした貴方の顔は、こちらからでは影になって見えにくいけれど、そんなことはお構い無しとばかりに、ひたと貴方を見据えて。手を伸ばせば触れられる距離。リーチの差は、大きい。〝 万が一 〟を頭の片隅で思い、悟られぬように重心を下に。) ( 立ち止まった彼は、果たして。) 『 _________やはり、勇者と呼ぶに相応しいよな。』( ____言って、わらう。) 「 ………………………………。 」「 ………、 」「 ………………………? 」( 言葉も、無かった。) ( ぱちりぱちりと瞬いて、何かを言おうと口を開け、息を吸い。しかし喉奥から絞り出すべきものが見つからず、呼吸に喘ぐ魚のように閉じては開くの繰り返し。) ( いったい何を言っているんだ、と言うのが真っ先に出た疑問。自分を嫌いだと言われて、面白そうにわらう。笑みはどういう意味か。人間が小動物の威嚇を可愛らしいと形容する、そんな見下しか。理解不能な現象にぐるぐると思考を回すだけ回して ( 常人より速い【 思考速度 】を、ここまで無為に使ったのは初めてであった ) 、ゆるりと首を傾けた。) 「 ええと。」「 何て言うのかしら。」( 逡巡。 )「 _____________貴方、マゾヒズムでもお持ち? 」 (6/9 01:56:31)
レギオ>
『 ええと。』『 何て言うのかしら。』 『 _____________貴方、マ ゾ ヒ ズ ム でもお持ち? 』(ぱち、ぱちと2、3度瞼を開閉させ、その常人より優れているであろう脳をフル回転させた結果。少し間を置いてから、目の前の少女は、そう言い放つ。)「_______________…………………………」(今度は、此方が動きを止める番であった。まるで先程の鏡写しの如く。浮かべていた笑みはそれと同時に消え去り、少し呆けた様な気の抜けた表情だ。かと言って、やはり貴女の言葉に気分を害した訳でも、予想外の反応に落胆した訳でも無いらしい。)「まさか。」(少し静寂を挟んだ後、片眉を上げながら告げる。)(……実はこの時、彼の脳内では彼女の発した【 マゾヒズム 】という単語に対して一斉に検索をかけていたのだけれど、其れは知らなくても良い話である。結果、人外たる彼の常識知らずな脳みそでは、柔いヴェール包まれた様なぼんやりしたものしか表示はされなかったのだが。)「_______やはり、豪胆で在るべきよな。勇者とは。」(怯むこと無く此方に突き刺す刃も。手折れてしまえそうな白い喉を晒し、ツンと顎を突き出し、挑戦的な顔付きで鋭く見据える表情も。全て、全て。)「………うん。」「…やっぱり、此処に来て……良かった。」(貴女が彼の行動に対して満足に解を導き出せるような受け答えもせずに、【カミサマ】だったものは音もなく姿を潜めてしまう。代わりになんら変哲のない、とてもセンスが良いとは言えない服装に身を包んだだらし無さそうで穏やかそうな青年だけが残り、貴女の目の前に立っているだけだ。右手を肩肘に添え、漫然とした様子である。刻々と色を濃くしていく空を背負い込みながら、一陣の風により少し乱れ靡いた彼女の髪が細かく煌めくのを見ているのだろう。無慈悲に足の下敷きにされてすっかり皺が寄ってしまったプリントを拾い上げ、埃を払う。)「…………ね。ショーカちゃん。」(ちら、と、視線を向けた。)「キミは、『嫌』だって言うかもしれないけど………」(嫌悪、敵対心、冷徹なまでの眼差し。3歩歩いたら忘れる小鳥じゃあるまいし、それが記憶に無い訳が無い。けれど、彼は。)「________ワガハイと、〝オトモダチ〟にさ。……なってよ。」(ただの嫌がらせにしては悪趣味で、純粋な思いであればタチの悪いその提案をけしかけたのだ。) (6/14 21:00:02)
二条 硝華>
( 『 まさか。』と、彼は言葉の意味をしっかりと理解出来ていないみたいな顔で。ただ、今の今までその端麗な顔立ち ( マスクと長い前髪によって隠されており、はっきりと見ることは一瞬しか叶わなかったが。) を飾っていた笑みが、どこかぽかんとしたものに変わったのを見て、私は少しだけ気分を良くした。そんな顔をしていたら、何だかちゃんと年相応の一年生のようじゃあないか。) 『…やっぱり、此処に来て……良かった。』( 挙句の果てにぼんやりと、だけれど穏やかに、そう呟くのだから。肩肘を張るこちらがとんだ役者みたいで、馬鹿らしくもなるだろう。貴方が腰を折り、長い脚を曲げて、飛ばされたのであろうプリントを拾い上げるのを、右手を腰に当てて見るともなしに見ていた。どういう反応をするのが正解なのかよく分からなくなってしまったから。嫌悪と困惑に混じって、ほんの少し拗ねたような表情を浮かべながら、だんまりを決め込むしかなかった。 )( 名前を呼ばれても口は開かず、ぱちりと瞬きだけを行った。例えば私が猫であったなら、そのピンと立った耳をちらちら動かしただろう、そういう意思表示。) 『________ワガハイと、〝オトモダチ〟にさ。……なってよ。』( 咀嚼。)「 嫌に決まっているじゃない。馬鹿なことを要求しないでくださる? 」( それは限りなく即答で、躊躇も間髪も無く。)( 彼が予想した通りの回答であった。)「 だって貴方、『 オトモダチ 』ならいくらだって出来そうだもの。一人もいないと言うのなら、哀れに思うくらいはしたかもしれないけれど。」( 「 多数の中の一なんて御免だわ。」と、そう言っては肩に掛かる髪を払い退けた。)「 ………………だから、そう。そうね。」( 払った指先を、自身のくちもとに持っていって。暗くなり始めた空に、校庭に逸らした視線。考える素振りは長く続かない。) 「 ____________〝 好敵手 〟くらいになら、なってあげても良いわよ。」「 貴方にこんな口を利ける女、他にいると思って? 」( 物事の全てを馬鹿にするように鼻で笑う仕草は、染み付いた癖であった。『 勇者 』や『 正義の味方 』というよりは、まるで『 悪役 』のような。人を見下す笑みで口角を上げて、貴方相手に小首を傾けてみせた。) ( ライバルとして切磋琢磨するつもりなんか、これっぽっちだって無いと言うのに。) (6/14 21:39:33)
レギオ>
(_____そう、それは、年相応の高校生がそわそわと落ち着かない気持ちを押し込めて、相手からの返事を待つ様な、そんな青い春を錯覚させるような間すら無く。)『 嫌に決まっているじゃない。馬鹿なことを要求しないでくださる? 』(出たのは、拒絶一択。)(…いっそ清々しさすら感じられる。ツンとした表情を浮かべ、その唇から吐き捨てられた。)「 そっか、うん。……そうだよねぇ… 」(見事玉砕したこの男から漏れ出るその声は、変わらず穏やかな波のようで、緩やかな起伏を持ち、落ち着いたものだ。落胆の色は滲んでいるが、微々たるものである。それは想定内の言葉だったからか。…それとも、前しか見ていないからなのか。)『だって貴方、『 オトモダチ 』ならいくらだって出来そうだもの。一人もいないと言うのなら、哀れに思うくらいはしたかもしれないけれど。』(そう聞いて頭の中に浮かべるのは、曇天の様な不可思議な紳士だったり、はたまた太陽の様な赤髪の青年、〝悪友〟と呼べる白衣の男、白百合の存外お喋りな彼女______どう思われているかは置いておき、彼からすれば『良き友人』出あることに何ら変わりは無い。)(言葉を繋ぎながら、何かを思案するかのような横顔。)『 ____________〝 好敵手 〟くらいになら、なってあげても良いわよ。 』(そして浮かべられたその笑みは、初めて邂逅を果たした時とは似つかないものだった。〝優等生〟の仮面を外したその下にある、彼女の表情。)「……………………ワガハイの?〝好敵手〟?」(ついつい、長く節だった指で自分の顔を指さして、そう問うてみる。オウム返しの様なそれは、貴女の返答は必要とはしなかった。)「…………ははッ____魔王たるワガハイの、好敵手、か!」「…………うん。うん。…………ああ、良いと思う。キミには…………〝勇者〟には相応しい。…………何せ当のワガハイが言うのだから、間違い無い。」(静かな湖に落ちた1粒の雨水のように、波紋は徐々に広がっていく。くつくつと広い背中を小刻みに震わせ、緩やかに瞳は弧を描かせる。燃える様な髪はそれに合わせて尾の様にして揺れるだろう。)(帰宅する者で騒がしかった校庭も、今では部活動に勤しむ声ばかり響いている。)(_____それでは、好敵手の第一歩として。白銀の勇者に、緩慢な動作で手を差し伸べた。其れを鼻で笑い飛ばし払い除けるか、ある猫のような気まぐれを持ってして握り返すか。何にせよ、その青年は……『魔王』と名乗るバケモノは、満足そうな笑みを浮かべていることでしょう。) (6/14 22:40:03)
二条 硝華>
『 ……………………ワガハイの?〝好敵手〟? 』( くつくつくつ。) ( 予想だにしなかったと、貴方は自らを指さして。直後。広い背中を揺らした静かな笑い声は魔王と言うにはあまりにも甘く、彼の頷きの合間に響いた。『 勇者 』と呼ばれるのは多少なりとも不快であったから、差し出された手のひらをどうするべきか僅かに悩んだ。手を、そして顔を。ちらりちらりと視線を投げるも、当の本人は満足そうな____否、何にも考えていなそうな笑みに瞳を歪めている。) ( 薄く、息を吐いた。)「 ………………レディのエスコートくらい、『 魔王様 』を名乗るなら学んだ方がいいと思うわ。」( そもそも、どこに好敵手と握手を交わす馬鹿がいるのかしら。言って、仕方ないわねと言わんばかりに肩を揺らして。その手のひらに、そっと自らの手を添えた。ざらついた指先をなぞって、平を合わせ、しかし握らず。それはたった一瞬のこと。)「 次は、そうね。アフタヌーンティーに招待してくれるとうれしいわ。 」「 貴方は人を持て成すなんて、てんで向いていないでしょうけれど。」( 一歩。距離を縮めて、秘めた囁きが貴方の鼓膜を揺らしただろう。約束なんて甘ったるいものではなく、これはただの〝 茶番 〟である。) ( 少女は茶番を呪っていて、同じくらいにカミサマやシキガミが、自身のディスコードが嫌いで。嫌いだからこそここまで昇ってきた。努力の結晶。…………それ故に。貴方のように謙ったり、見上げたり持ち上げたりせず、どこまでも不遜に相対してくる者を決して拒絶出来やしなかった。) ( ______________これは、内緒話。彼女すら気付かぬ、世迷言。)( 『 気を使わず 』『 お茶を嗜む相手が欲しい 』だなんて言う。孤独を選んだ少女の、ちょっとした夢のお話。)「 それじゃあ、また。______レギオさん。」 (6/14 23:28:47)
Gaill Monochoria>
(正午過ぎのお昼休憩。本日はお日柄も良く、地平の彼方まで雲一つ無く澄み渡る青。其の天辺から薙ぐ様に照らす陽光。然るに梅雨の時期にゃ珍しい爽快なお天気だ。)(が。)(遮光カーテンの閉め切られた理科室、幾つかの画面がブルーライトを放つ机上にて。)「........。」(窓塞ぐ暗幕は劇の始まりを示さない。外の快晴は何処へやら、電灯だけが照らす部屋で。瘦躯に怪しげな目付き、白衣を纏う其の科学者は。)「だぁぁぁああクソ!!!!!!!!!」(傍で試験管の中の薬品はコポコポ言って、光る液晶の内一つでは黒の背景に緑の文字が躍って。雰囲気マシマシな科学の部屋。然し此れ等一切は只の演出に他ならず、詰まる所が形から入りに行った烏滸の拘りの賜物である。言い換えるならば時間の無駄だ。)(さて。では何故こんな雰囲気作りに凝ったのか。何故一人虚しく咆哮したのか。理由は単純明快。)「終わらね~...............」(そう、国語の課題である。しかも提出→センセイがチェック→答えが渡されて自己採点と云う最も辛いタイプだ。バリバリに言語系が苦手な男にとって其れは地獄であり、作文問題を多く内包された暁には友人の回答を写す最終兵器すら採用出来ない。元より昼食を抜かす事の多い此の瘦身が時間に押され何も食べていないのは語る迄も無いだろう。)(課題、チェック有、苦手分野、写し不可と追い打ちに次ぐ追い打ちの中其れ等を薙ぎ払う究極の手札-ディスコード-が男には在るのだが.............ついこの前五年以上も停止空間に籠ってしまった都合上、嫌いも嫌いな課題如きに使用するのは少々気が引けた。)(完全な八方塞がり四面楚歌。結果男は。)「ああ。」(ペンを机の端へ投げ遣って。)「もういい。」「やめだやめェ...........」(諦観一色の声を放ったならゆっくりと立ち上がって。)「 フ ァ ー ー ー ッ ク ! ! ! ! ! ! 」(そう叫んで、プリントの束を思いっ切り投げた。.......ただ入口方面へ向かって散らかるだけなのだけど。)(もし忘れ物やらなんやらで、誰かさんがこの部屋を訪れたなら。屹度、此のシュールな光景を思いっ切り目撃する事になるでしょう。) (6/11 13:32:24)
レギオ>
(時刻は正午を過ぎた頃だろう。午前の授業が終了し、談笑を交えつつ食堂へと足を運ぶ生徒達の流れに逆らって、一人理科室へと足を進めていた。何時もの事なら屋上や外に出てぼうっとしながらゆっくりと人間観察に勤しんでいるものだが、今日ばかりはそうも行かなかったのである。何故なら、『えーー……次の授業の初めで提出してもらいますから、皆さん忘れずにやってくるように!』と言われ配られた課題のプリントをどうも置き忘れてしまったようなのだ。ノートに挟んでると思っていたが、逆さにしたって落ちて来ないのだから、座っていた場所にあるに違い無い。忘れ物を知らせてくれる親切な友人でも居れば別なんだろうが、上級生との交流はあれども生憎彼には未だに同学年で親しいと言える間柄の人間は居なかったのだ。年齢等の概念に関係の無い彼からすれば、その事などさして気にするようなものでもないようだが。)(真っ直ぐの廊下を暫く歩き、階段を降りて直ぐの突き当たり。ふと、廊下側の窓に暗幕が引いてあるのが気になった。まだ誰か中に居るのだろうか。もしかしたら教師が次の授業の準備をしているのかもしれない。)「……シツレイシマ」『 フ ァ ー ー ー ッ ク ! ! ! ! ! ! 』(ノックはせずに、引き戸を横にガラッと引いた、その瞬間。叫び声と共に目の前にバサバサァ!!と真っ白いプリントが広がった。あまりにも突然の出来事に流石に面食らい、扉に手をかけた形のままで硬直してしまう。目の前には白衣に身を包んだ痩躯の男性。彼が声の主であり、この混沌とした空間の首謀者だと言うのか。)「_____〝ファ〟…………………………?」「……ああ、いや……えェっと、」(この場合、なんて言うのが適当なのだろうか。)「…大丈夫、か?」(頭に乗っていたプリントをひっぺがす。少し動揺が残った声色で、何とでも取れそうな言葉でそう尋ねてみた。) (6/11 14:19:11)
Gaill Monochoria>
『_____〝ファ〟…………………………?』「え゛。」(ガラリと開いた扉。結われた火の様な赤髪を揺らす貴方。最終回ウラ全力投球を決めた体勢のまま痛みを発する運動不足の右肩に少し顔を顰める引きこもり。そして何より宙を舞うプリントの群。当惑の声が聞こえて来る頃、男もまた素っ頓狂な声を放って。脳内では貴方が知人か他人か、生徒か教師か、真面目そうかそうでもないかなんて情報と偏見の選択思考が繰り広げられる。此の間なんとコンマ数秒。だけれど、知人では無い以上その先の殆どは蛇足に終わっただろう。)『……ああ、いや……えェっと、』(然るに貴方が鸚鵡返しをし掛けた言葉を飲み込んで、思考する間の繋ぎの感嘆詞を挟んで、其れからなんとか意味不明極まりない此の状況へ適切に投げかけられる短かな質問を口にする迄の間。)『…大丈夫、か?』(科学者は精々ヘンテコポーズから体勢を直すくらいしか出来なかった訳だ。)「........。」「あァ。無問題。」(実際の所其の行動は意味を持たず、過去を変えられる訳でも無ければ貴方の記憶に干渉出来る訳でも無いのだけれど。ゴホン、なんて咳払いをしなければやってられないくらいの状況ではあった。思考放棄と言えば思考放棄だがこれくらいしかなかったんだ心の中でとびきり賢いウサギちゃんに謝ったりして。)「.....悪かった、些か課題が終わらんモンでね......」「......ンで君はァ?まだ五限目まで時間はあるだろう、我が理科室へ何か用かい?」(仕切り直し、と云うには随分手遅れ極まりない状況だが穴があったとて入っても背後からの視線が気になり寝れもしないのは間違い無い。無理矢理にでも言葉を返して、其れから問いを投げかけた。こんな時でも理科室に就いて“我が”なんて言ってしまう辺りのパワフルさを失わないから何処ぞのツンツン少女に怒られているのだが。よく言えば自分をしっかり持っている訳で、悪く言えば只の馬鹿だがまあ御愛嬌。)>レギオくん (6/11 14:47:24)
レギオ>
「ア、そう?なら別に良いんだけど。……何が起きたのかって…ワガハイ、ビックリしちゃった。」(素直に思ったことを口に出すのは、彼の美点である。のんびりとした穏やかな口調でそう告げたのなら、目線を理科室の中へと配る。それにしても色の奇抜な薬品が入ったビーカーだったり、薄暗く灯っているPCのデスクトップだったり。暗幕まで引いて居るのだから、怪しげな雰囲気が満載だ。すっかり雰囲気の変わってしまった理科室へと更に踏み入れようとすれば、先程下に散らばり落ちた紙が目に入る。……危ない、このままじゃあ踏んでしまう所だった。自分のプリントを自分で踏もうがどうだって良いことではあるが、人様のプリントの上を気にせずズカズカを歩くほど、一応彼は不躾でマナーのなっていない奴では無かった。腰を曲げて床に散らばっているソレを拾う。手に持った時に見えてしまったプリントの中身は、『課題が終わらなくて』と彼が言っている通りの様で、あまり埋まっては居ないようだ。)(頭からひっぺがした1枚と合わせて、白衣の主にプリントの束を差し出そう。)『......ンで君はァ?まだ五限目まで時間はあるだろう、我が理科室へ何か用かい?』「…………?…ああ〜、そうそう。ワガハイちょっと、忘れ物しちゃって。ソレ、取りに来たんだよね。」(すっかり本来の目的を見失う所だった。彼から尋ねられたことにより思い出し、先程の授業で座っていた席に目を向ける。ポツンと白いプリントが置かれた時のままであろう姿で残されており、やはりここにあったのかと。)「…ところで、キミは?よく此処に居るの………ああホラ、だって…すっかりキミの場所みたい。」(ひら、とプリントを指先で靡かせながら、少しだけ下に見える彼の方へと体を向けた。) (6/11 15:32:22)
Gaill Monochoria>
『ア、そう?なら別に良いんだけど。……何が起きたのかって…ワガハイ、ビックリしちゃった。』(なら別に良いだなんてさくっと飲み込んで、端的に思った事を口にする其の爽やかさが随分ありがたく思えた。頬に冷や汗を浮かべつつも一息吐くのは安堵の表れ。軌道修正と言うにはあまりにも強引でお粗末な立ち回りだったが、どうやら適当さとも呼べるであろう貴方の寛容さが正の方向へ働いたみたい。気付けば科学者は普段のニヤニヤ笑いに戻って居るだろう。)「あァすまない.........助かるよ」(腰を折って散乱したプリントを拾い始めた貴方を目にすれば自身も急いで拾い始める。他者のプリントの扱いはしっかりとしている貴方と同じ様に、男もまた貴方へ拾わせるのは些か気が引けて(プリントを当ててしまった直後であるならば猶更。)。だから自身も屈み込んで。床のプリントが無くなったら、向けられた束を受け取るのです。) 『…………?…ああ〜、そうそう。ワガハイちょっと、忘れ物しちゃって。ソレ、取りに来たんだよね。』(ワガハイ、なんて一人称は珍しいと云うか此方から探し回ったとて中々出会えないくらいには珍しいのだろうけれど、HolyShitの短縮して一人称にする様な子を知ってるだけにそう驚かなくて。そもそも此の個性の煮凝りみたいな学校で感覚が狂ってるのかも知れないけれど。兎角、貴方の言うプリントへ目を遣れば思い出したみたいに指を鳴らした。)[容量4→3]「Ah、ソレキミのだったのか。フザけた(国語の)クソッタレ(課題)に嫌気ェ差して休憩がてらにやっちまったよ。」(手元のプリントの束を態とらしく睨み付ければそんな事を言って。右手の指をわにゃわにゃやって、軽薄な笑みのままもう一つ。)「キミが課題に意欲的ならちゃんと消す.....と言うか新しいのを渡そう。どォせ準備室の棚に入ってンだろォし。」(因みにだが休憩がてらなんてのは大嘘で、お詫びにと言っちゃなんだがディスコードを用いてさっさと終わらせたのだけど。元の位置に置いてあるなんてのも変な話、気付くか気付かないかは貴方次第。)『…ところで、キミは?よく此処に居るの………ああホラ、だって…すっかりキミの場所みたい。』(放たれたるは追加の問い。赤髪が声を放ったなら、ちびっ子がやりがちな両手の親指と人差し指を立てる“けんじゅうのかたち”で貴方を指す。)「そォだ。休憩時間と放課後と一部授業中は何時でも此処だぜ赤髪-レッドヘア-......あ。」(地味に検挙されるべき不真面目な事を口にしながら視覚情報で貴方を呼んだ其の男は、少ししてから気付いた様に手を緩く広げ、自業自得のトラブルによって紡がれなかった本来最初にあるべき言葉を口にする。)「そォ言や名乗って無かったにィ。僕ァ三年のGaill Monochoriaだ。」(何時もならショーマンよろしく胸に両手を当てて軽く会釈をするのだが、プリントを持ってるわ肩は痛いわで断念。悉く自業自得だ。) (6/11 16:11:21)
レギオ>
(パチンッ、と白衣の主は指先で軽快な音を鳴らした。)【 レ ッ ド ド ア 】___________……………………『Ah、ソレキミのだったのか。フザけたクソッタレに嫌気ェ差して休憩がてらにやっちまったよ。』「……ェ?」(想定外の言葉にキョトンと呆けた様な表情をして。ニヤついた笑みを浮かべる貴方の顔から、自身の手元にある筈のプリントへと目線を移した。)(だけれども持っていたはずのそれは無く、何故か〝元の場所〟へと一瞬の隙に移動していたのだ。再度持ち上げてプリントの中身を見ていれば、自身の筆跡では無い文字で、全ての欄に解が埋まっているでは無いか。プリントの内容は生物基礎、1年生で学ぶ範囲だ。このまるでラボのような雰囲気が漂う空間がただのセットで、その白衣がただの衣装であると言うわけでは無いのならば、彼からすれば至極簡単な問題に違い無い。プリントを確認し終えたのならば、紅玉の瞳を彼に向け、思わず穴が開きそうな程にじぃっと見詰めた。)「………………………イヤ。」「…このまま、これ。……貰っちゃおっかな。………ありがとね。」「自分でやんないといけないものだろうけど。……ワガハイもちょっとだけ、〝不真面目〟だからさ。」「……………………………………………………………………………………………………実はちょっと、分かんなかったから。…………助かっちゃった。」(そのまま教室に数秒だけ静寂が訪れた後、漸く彼は言葉を発した。最後にボソリと付け加えられた言葉は、プリントの上端をマスク越しの口元に当てながら紡がれた。)『そォ言や名乗って無かったにィ。僕ァ三年のGaill Monochoriaだ。』「…〝Gaill Monochoria〟……ゲイル、〝センパイ〟か。」(教えられたその名を復唱する。)「…………………………ウン。きっと、……貴殿も〝勇者〟たる者に違い無い。」(その言葉は貴方の耳に届くか、届かないか、口の中で小さく呟かれたものだ。)「ワガハイはレギオ。ピカピカの1年生。……あ、好きに呼んで貰って構わないし_____もしケイゴ、が良いんなら、そうする。」(いつもの自己紹介を済ませた後、緩慢な動作で右手を差し出す。長い前髪と覆われた口で表情はよくは見えないだろうが、小さく笑みを浮かべていた。) (6/11 17:00:15)
Gaill Monochoria>
『……ェ?』(再び当惑。貴方の零した言葉を聴いたなら男は益々口を歪める。幾ら適当だって寛容だってそりゃあ驚くだろう。カミサマに次ぐ此の世の超常たるディスコード。其の宿主跋扈する此の学校に身を置いたとて、異常は異常であり、寧ろ反応も無くなるくらいに慣れてしまうのは危険の加速である。当然小さく驚く貴方だけれど、それでも。)『………………………イヤ。』『…このまま、これ。……貰っちゃおっかな。………ありがとね。』(貴方は、貴方であった。)『自分でやんないといけないものだろうけど。……ワガハイもちょっとだけ、〝不真面目〟だからさ。』(良く言えば、自分を強く持っており。そして悪く言うならば適当。『……………………………………………………………………………………………………実はちょっと、分かんなかったから。…………助かっちゃった。』(こんな不健全の塊みたいなふざけた科学者に仲間意識を持たれては少し可哀想かもしれないが。それでも男は、ニヤついた表情の中に小さな微笑みを隠した。貴方も言ったみたいに、お互いちょっぴり。ちょぴり“フマジメ”なモンだから。)「ククク.........」「まァプリントぶつけちまったお詫びも其れでツケといてくれ。今度たい焼きでも奢るよ。」(冗談粧して言った本心。普段なら“貸しにでもしよォかねェ”なんて言うのだけれど、なんだか貴方には言っておいた方が良い気がして。まあ真っ直ぐ素直に伝えるなんて性分じゃあ無いのは御覧の通りなのだけど。)『…〝Gaill Monochoria〟……ゲイル、〝センパイ〟か。』「...........。」『ワガハイはレギオ。ピカピカの1年生。……あ、好きに呼んで貰って構わないし_____もしケイゴ、が良いんなら、そうする。』(一瞬。ほんの一瞬だけ逡巡して。それから、孤児院で身振りの大きなアメリカンスタイルをガッツリ受け継いだ科学者は二つ、答えを返す。) 「呼び捨てでい~ぜィ“レギ男”ォ.........カワイイコーハイちゃんが増えて嬉しい限りだァ.......。」「あァ、それと。」「敬語も結構ォだ。見ての通り威厳もクソも無いセンパイ様だからにィ」(変わらずの軽薄な笑み。言い終わったなら先程迄座っていた机にプリントの束を置いて。白衣の内に入れてあった煙草を一本、取り出した。)「フー.........。」(金髪を白煙が覆う。〝悪友〟たるアンタの前なら良いだろう?も一つ煙を吐いたなら、後から気付いて換気扇を点けた。幸い理科室、リモコン式な上に性能は他より良い。) (都合、男は自身の能力をあまり話さない。意地でも隠したい訳じゃないけれど、自分から言いたいモノでもない。都合、此の学校に“年上”はあまり居ない。探求の為籠る静寂不動の其の世界。過程-プロセス-を背負う男の年齢は、書類上のモノとは大きくずれる。)(だから、だから。なんとなく。特に根拠も無く。男は貴方の年齢の真実なんて知らないけれど。説明出来ない安心感、みたいなものを感じたから。だから少し、カッコ付けなくても良いかな、なんて。)「〝勇者〟ァ........?よく分からんがまァ。」「万全潔白な〝正義のヒーロー〟じゃァねェんでなァ。」「よろしく頼むぜ?」(或いは、悪魔とすら称される探求者-ダークヒーロー-は。変わらず、変わらず笑う。) 「.....コーハイチャン。」 (6/11 17:43:40)
催涙雨 七日>
(『 - どうやらこの学校に、〝 魔法少女 〟が転校してきたらしい - 』)(放課後のことでした。狭い箱の中で収容されていた生徒たちは、息を吹き返したように笑い合い、放課後はどこへ行くだとか、或いは部活に行きましょうとか。淀んだ空気が一気に弾ける錯覚。 水彩パレットに沢山のパステルを零すような それ。 )(そんな中。)( まるでそこから切り取られたかのように、別世界の入り口が混在する本の塔は依然として沈黙を貫いているよう。薄く開いた窓からは微かに生徒たちの声がする。青混じりの朱色に当てられたクリーム色のカーテンは、その攻撃的な西日を柔く抱き締めて揺れるだけ。書物特有の匂いが充満したそこは、彼女 -七日 -にとっては安息の地でもあった。)腰まで伸びた白縹色の髪と、スラリと伸びた女性にしては高い身長。伏せたまつ毛は雪が降れば積もるほどに長く、本の羅列を追うために伏せられていた。俯いた際に垂れた髪を、ゆっくりとかきあげ、次のページを流し見する。何を借りましょうか、どこへ行きましょうか。本とは彼……彼女にとって、学校内での唯一の逃避行。 冒頭のあらすじまで呼んだところで、彼女は本を閉じたのならばこれも借りましょう、と抱え、もう1冊を指先でかけて、背伸びをしつつ斜めに引っ張った。 さて、今日はシリーズ物に手を出してみようか、なんて。心を微かに弾ませているのはここだけの話。 3、4冊ほど抱えたところで1度本棚から離れようと後ずさったその時に ──────────もし、貴方が後ろに居たのなら。)「…………………………、………………」(彼女は気づかず、トン、とぶつかってしまうかもしれない。何せここは本棚と本棚の狭い隙間。逃避行の入口に夢中になっていた彼女は、咄嗟のことに気づけやしない。相反したコントラスト。彼女が知るまであと何秒かしら。)(『この学校には【⠀魔王 】がいる』って。) (6/12 20:53:12)
レギオ>
(ある放課後の、なんてことの無い日だ。朝から夕方まで学校内に拘束されていた生徒達は、自由になったこれからの時間を思い思いに過ごすのだろう。友人と遊びに行く姿だとか、恋人が迎えに来て友人に手を振り2人で並んで歩き出す姿だとか、部活のユニフォームを抱えて慌ただしく走る姿だとか。教室は、それらの起点の場所となる。人が入り乱れる騒がしい教室の中では、談笑に交えて色々な噂話や俗っぽい話なんて言うのも飛び交っている。声が大きければ、それは嫌でも耳に入ってくるものだ。『 あの子、付き合い始めたんだね。 』『 明日の小テストの範囲見せて! 』)(『 ねぇ、ウチらの学校にさ、〝 魔法少女 〟が転校して来たって……知ってる? 』)(_____場所は変わり、此処は図書室。教室での騒がしさが嘘の様で、辺りは静けさに包まれていた。数歩進んで、棚に表紙を見せる形で置かれていた『めいさくえほん』と書いてある薄く大きめの本を手に取る。淡いタッチで狐の絵が描かれた、可愛らしいものだ。所謂幼児向けの本なのだが___彼は特に気にした様子も無く、それを持ち、そして本の塔へと進んで行く。炎の様に燃え上がる長い髪を雑に三つ編みでまとめあげ、安っぽいお花の付いたヘアゴムで括っているそれは、彼が動く度に揺れ尾の様にも見えるだろう。)「…………………………ン。」(『トン。』背中に感じた、軽い衝撃。この狭い通路の事だから、誰かとぶつかってしまうのも無理は無い。あまりにも膨大な書物の中、そこから選び抜くと言うのは、文学の面白さを知らない彼からすれば、とても簡単だとは言えない事だ。じっくりと見ていたために気付かなかった。) 「……………………ア、ごめん。ぶつかっちゃったね。……大丈夫、だった?」(くるり、と貴女の方へとその体を向け、普段から穏やかなその声色は、更に抑え目にしてボソボソと呟かれるだろう。そして、しゃんと伸びた白百合を連想させる貴女の姿を、紅玉の瞳は気怠げに捉えた。) (6/12 21:40:42)
催涙雨 七日>
(────────トン。)(壁のような何かにぶつかった瞬間。)『……………………ア、ごめん。ぶつかっちゃったね。……大丈夫、だった?』(低い声が頭上から、投げかけられる。彼女は咄嗟に振り返ることだろう。そしてまだ冬の寒さ残る中、控えめに咲いた花のように小さく小さく……)「………………ッ、………………ぁ、………………いえ、その、……………………大丈夫です。〝私 〟も、よく見てなかっ………………」(……言葉を。)「………………………………た。」(…紡ごうと。)「──────────ッッッ゛…………………………(う゛おおおァァァあああああああ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああッッッ…………………………!!????????!!!!!!、)」( 彼女の時が、【止まった】。ヒュ、と喉が鳴り、貴方を見るなり目を見開く。燃えるような赤い髪、褐色の肌と黒いマスク。その特徴を見て、何も分からない馬鹿じゃない。)(『ねぇ、ナノカ。この学校ってさ『魔王様』が居るんだって。』『1年生なんだとか。』『髪は赤色で、背がすっごく高いみたい。なんでもシキガミのぶるいでね……………………………………』)(【◁ リプレイ 】)(『この学校ってさ『魔王様』が居るんだって』)(【◁ リプレイ】)(『『魔王様』が居るんだって』)(【◁リプレイ】)(『魔王様』)(『魔王様』)(『魔王様』)(【■ストップ 】)(◁『この学校ってさ──────────………………』)「『ま、ぉうさま、……………………………………』」(……彼女は、貴方から目を離さずに小さく呟いた。もしかしたら怯えきっているとも思われるかもしれない。彼女は顔を思わず持っていた本で隠し、後ずさった。後ろは本棚であるにも関わらず、にだ。) 「……………………ああ、ぁ、ッッッあ……あの……………………………( おおあおおあおおおあおお落ち着け落ち着け落ち着け相手はシキガミ人間と友好的な筈なんだからだってほら今だって持ってる本は愛らしいッッッ………………)」「……………………そ、その……………………(へ、下手なことさえ言わなければ大丈夫ッッ、とって食われやしないだろッッッ………て、ていうか、ていうかッッッ……………………)」(彼女の内心はどんちゃん騒ぎだった。取り乱すのもいい所。次の言葉は上手く出てこない。あがり症であるが故に寧ろその寡黙さが不幸中の幸いか。ドッドッドッドッド…………………………………心臓がこれでもかと言わんばかりに主張を始める。彼女はそぉーーーーーーーーうっと本を下げ、目元だけで貴方を見やった。)「…………………ぁぁぁ…………………… (実物初めて見たけどめちゃくちゃに顔が良いなァァ゛~~~~~~~~~~!!!!!!!!)」(涙目である。誰が言った?〝白百合 〟と。彼女、基彼の本質は『引きこもりのヲタク』。もう情緒はぐちゃぐちゃだ。筆舌に尽くし難い。だがしかし、姉は確かに『高嶺の花』だった。最期まで演じきる。ステッキを手に取った時に確かに誓った心意気。彼女は熱が溜まった顔を落ち着かせるように深呼吸をひとつ。目を泳がせ、前髪を弄りながら控えめな調子で答えるだろう。)「………………け、怪我はないの。本当に。……………………そ、その、…………ごめんなさいね私も良く、周りを見ていなくて、………………………貴方は確か、その、…………『魔王』様…………よね。お噂はかねがね聞いているわ。それで、……………………その、……………………………………」「……………………黒いマスク、お揃いだねえっ、………………な、なぁんてっ。」(ニコ、と彼女は柔く、微笑んだ。)「………………………………………………」「………………………………………………ッ………………(あ゛あああああああああああああああああああああああ何を言ってるんだミスリードオオオオオオォッッッ!!!!!俺はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ゛ッッッ!!!!!!!!!!!!距離感可笑しいだろ姉貴はそんなこと言うかッッッ?!?!言うかなぁ?!?!言っちゃうかな?!?言わないな?!?!?、?!)」(手をわたわたと顔の前で振り、再び顔を赤らめながら後退する隙間もないのに後ろに下がろうとする彼女。見てわかる通り、相当動揺している。)「………………………………ッ、ちがうちがうちがうの違うのよっっ………ああもう何言ってるのかな私っ………ご、ごめんねっ、忘れてねっ………………あ、あの、……………………」(ああもうちくしょう、ボロボロだ。きっと目前の貴方には、変な奴だと思われる。) (6/12 22:07:15)
レギオ>
(ゆっくり、ゆっくりと、そのマスクの下で紡がれる言葉。可憐な白百合は、長い睫毛を震わせながら此方に目を向けた途端_______……文字通り、〝止まって〟しまった。人が〝停止〟する姿を見るのは初めてのことでは無い。それは、あまりにも衝撃的な外部からの刺激に体が追いつかず、思考が止まる場合だったり……目の前の対象に恐怖を抱いた時、体が硬直してしまう場合だったり。理由は様々だが、兎にも角にも『びっくり』した時に起こる現象だ、と。彼はそう考えていたのだ。それ故に、目の前の彼女も例に漏れず、『びっくり』したんだろう。もれなくその対象は、目の前の己。)「………ネ、どうかし____」(彼女の驚き様に、『えっと……………………』と首を緩かに傾げ、『どうかしたのか』と問うてみようと、その口を開いた瞬間。)「『ま、ぉうさま、……………………………………』」「………………ウ、ン?」(ぽつり、幾ら気が長い彼とて焦れったくなってしまうほどに、あれこれ思考を巡らせながら適切な言葉を探して……)(いやはやしかし、かの教室に居たどの生徒よりも騒がしい貴女の脳の中なんて知る由もない。幾らその目が良くったって、考えていることまでは見透かす事などは出来ないのだから。それ故に、彼の中では、未だに花の様な少女か_____ぷるぷると震える、小動物の様だと言う印象は、崩れてはいなかった。)『………………け、怪我はないの。本当に。……………………そ、その、…………ごめんなさいね私も良く、周りを見ていなくて、………………………貴方は確か、その、…………『魔王』様…………よね。お噂はかねがね聞いているわ。それで、……………………その、……………………………………』『……………………黒いマスク、お揃いだねえっ、………………な、なぁんてっ。』(…ただでさえ静かなこの空間の事だ。訪れた静寂は2人を包み込んで、通路を挟んで鳴るページを捲る音まで聞こえてきそうな程。)『………………………………ッ、ちがうちがうちがうの違うのよっっ………ああもう何言ってるのかな私っ………ご、ごめんねっ、忘れてねっ………………あ、あの、……………………』「ああ_____いや、ほら……待って、…大丈夫、大丈夫。」 (失言だったと慌てふためく貴女を見て、落ち着いた声色で宥める。絵本を片手に、空いた片手を貴女の方へと出して、緩かに行われる『どうどう』というようなアクション。それはとても『魔王様』として噂されている様な姿とは、全く待って似つかわしくないものに違い無い。)「……キミ、結構喋るんだね。……ア、いや、悪い意味とかじゃないけど。何となく、静かそうって………………ん?これってヘンケン…ってヤツなの、かな。」「えーーっ…と……?それで………………何だっけ……………………………………」「……ああ、そう。確かに……『コレ』。…お揃いだね。あんまり、使わないのかな、皆。」(すり、と顎を撫でながら、ほんの少しだけ目を細めて微笑んだ。ひとつひとつ思い出しながら…忘れてしまったものは省きながら、巡回させる。)「…………あと。」「怖がらせたのなら…………ゴメン、ね。」(緩く頭を傾げて、彼女の中に産まれているはずの『恐怖心』をいくらか和らげようと、そうやって魔王は言葉を紡ぐのだ。) (6/12 23:02:11)
催涙雨 七日>
(どうどう、と。落ち着けと言わんばかりのジェスチャーをされれば肩を竦めてこくこく、と頷く。そうともさ。何を怖がる必要がある。見たところ、穏やかそうな青年じゃあないか。きっと歳も幾許行かない、恐らくは同じぐらいの年齢の〝 男同士〟。女子に異様な距離感でくっつかれて会話を進められるより百倍マシってもんでしょう。)『……キミ、結構喋るんだね。……ア、いや、悪い意味とかじゃないけど。何となく、静かそうって………………ん?これってヘンケン…ってヤツなの、かな。』「…………………………あ、あは、………………よ、く。言われる。………………緊張すると、昔から、変にね。口が回っちゃって、………………………恥ずかしいわ、ほんと。」(長い前髪で目元が隠れた。極めて女性的な声ではあるが、少し掠れているところからそのマスクは『喉の調子が悪いから』というのが見て取れる。まだ緊張しているのか、以降は目を合わせることなく泳がせて、髪を耳にかけながら本をきゅう、と握りこんだ。)『…………あと。』『怖がらせたのなら…………ゴメン、ね。』「………………んーんっ、違うわっ。違うの。(……………………ああいや、違くはないんだが。)」( 緩く首を傾げては、謝罪の言葉を零す貴方に彼女はふるふると首を横に振る。内心のどんちゃん騒ぎもだいぶ落ち着いた。僅かに目を見開く彼女は、そろりそろりと目を再び泳がせたあと、貴方を控えめに見上げ、小さく口にする。)「…………………怖がってなんか、…………ないのは、嘘。………………ごめんなさい。……………貴方が【⠀魔王様 】だから、というよりも。………………………人と話すの、あんまりその、………………得意じゃ、なくて。」「………………でも、貴方のほうこそ、ほら。………………………………『魔王』と言う割には、……………………案外穏やかで、…………………これも………………〝偏見 〟ってやつかしら。……………私の知ってる魔王様は────────…………………………」「………………………………………………」( そこまで口にしたところで、彼女は貴方を見つめて不思議そうにする。そもそも、『魔王』と名乗る立場が、なぜ学生をやっているのかという疑問。『魔法少女』が『学園に』というのは在り来りなものだけれど、貴方はイレギュラー。朱色の教室に柔く風が靡く。 彼女の固定観念に縛られたセオリー通りなら、言葉にするセリフはこうだ。)「…………………………………〝 よく来たな、勇者〟よ。」「………………………………………………って。」「………………………………まさか自分の足で探しに来たりなんか、しないもの。」「………………、……………… なんて、………………冗談。これも………………〝 偏見〟……かもなんて。」(彼女は困ったように小さく笑った。貴方はゲームの世界の住人じゃない。同一化するのは些か失礼だったかも。だってまさか、ないでしょう?)(──────────魔王直々に勇者を探す御足労を働くなんてさ。)(目に痛い赤色の極彩色から、彼女は再び目を逸らす。) (6/12 23:50:11)
レギオ>
「そ。」(単調で素っ気なく聞こえてしまうかもしれないけれど、それは極めて穏やかなものだ。あっさりとしていて、悪くいうのならば適当。そもそもの話、彼からすればさして珍しい反応でもなかった。やはり〝シキガミ〟と言えど〝カミサマ〟と同種であるという事になんら変わりはないし、揺らがない事実のひとつだ。あれらと違い人類に対して友好的というだけであって、同じように番号で識別された存在なのである。故に、驚かれ、畏怖を向けられ、そのまま相手が去って行ってしまう……というオチだって経験済みだ。けれども逃げ出さず此方との会話を続けてくれる人々も居る訳で___それは、『嬉しい』ことだと思っていたのだ。おずおずと此方を伺いながらも漸く落ち着きを取り戻して来たのか、雪解けの如く徐々に言葉を発する貴女。其れに横やりを入れるでも無く、そしてたまに頷きを交えながら、次の言葉を促していた。)『…………………………………〝 よく来たな、勇者〟よ。』『………………………………………………って。』『………………………………まさか自分の足で探しに来たりなんか、しないもの。』「…………………………ふ、は、…はははッ」(キョトン……と呆けたような顔。ポクポクと三拍子が挟まったあと、直後くつくつと背中を震わせて低く笑う。図書室だと言うことをすっかり忘れて居て、通路の向こう側で横切った担当の教諭がゴホン、と咳払いをした事で思い出す。目の前の貴女を置いてけぼりにしたまま、ひとしきり収まるまでそうやっていた。そして、気だるげな瞳にほんの少しだけ悪戯っぽい光を宿らせながら、あくまでも優雅な所作で、す、と腕を広げたのだ。)「…………〝よく来たな、勇者よ。〟」「〝我輩こそが、魔王たるワールレギュシである。〟」「〝我輩は待っておった、……………………………〟」「〝貴様のような勇者があらわれることを。〟」「…………………………………………って?」(頬を優しく撫でていた風は、その時ざあと力強く吹き、カーテンを激しく揺らした。あまりにも慣れた堂々たる口上の後。赤髪が靡いて、蛇のような瞳孔は貴女を見つめているでしょう。)「______ふ、確かに。…これじゃあ、ワガハイから敵地に飛び込んで来てるみたい。」(乱れた髪を適当に払って、空気はいつの間にか緩やかに飽和していた。)「そうだね。…………思ったより、アクティブだったり。…………するんじゃあ、無い?」(はぐらかす気は無い様ではあるが、核心を付いた回答はせずに、緩やかな声色でそう答えた。)(そこで、貴女が先程から手にしていた書物が目に入る。)「…………あ。…ねぇ、キミ。もし、…そうだな……読書家だったら、本に詳しかったら、で良いんだけど。」「ジャンルとか、分厚さとか、気にしなくても良いから……………………オススメの本……って、ある?」(今の所これくらいしか見つからなくて…と、手に持っている絵本の表紙をさらと撫ぜる。そして、きゅ、と両手で持ち直した。) (6/13 00:45:55)
ほりしぃ>
(……──────────あのね。最近あまり、早く家に帰りたくはないの。) (──── ■□■□■□■□■□■□■ ────)「……………………………………、……………………」( 街が西日に焼かれ、影絵のように伸びた頃。教室に箱詰めにされていた生徒達は息を吹き返したように、びっくり箱同様、弾けて飛び出る時間帯。彼女もまた、席を立ち、借りた本を返してとっとと門限までに家に帰らなくちゃいけないはずなのだけれど。 冒頭でも言った通り、この頃はあまり急いで〝 彼処 〟に帰ろうとは、思わなくなっちゃった。別に学校が好きなわけじゃない。いっそ授業中であることな方が〝マシ 〟だと、寧ろ先生が馬鹿でさえなければ授業の方が〝楽しい 〟とさえ思っている。 だって友達なんか居ないし、何かに打ち込める趣味だって、予定だって、約束なんてのもない。)………………嗚呼、いいえ。勿論誰とも一緒にいないことが寂しいだとか、友達同士で肩を並べて笑い合う姿に何かを思うとか、そういう訳じゃあない。部活に行こうだとか、放課後は駅前のカフェだとか、カラオケだとか。……そんな人間って、『馬鹿みたい』でしょう。)(……でも何となく、帰りたくない。門限までまだ時間はある。)(こういう時は毎回図書室に立ち寄って、本の虫になるのだけれど、今日という日はその逃避行さえも生徒がチラホラ居るものだから使えない。なら、足を運ぶ場所はただひとつ。僅かに軋む義足を鳴らし、アホみたく騒ぐ生徒や、吹奏楽部のチューニング、そんなのは知らん顔をしながら迷いなく曲がり角を曲がり、校舎の端まで一直線。そして。)「……………………………………、」(──────────ガラリ。) (乾いた扉の音が、〝 教室〟に鳴り響いた。埃っぽい匂い。ほんの少し破れたカーテンと、描き変わらない日付け。止まった時計。 此処は彼女が見つけた第2の避難場所。『空きき教室』である。 彼女は帽子を外して、鞄を降ろしそれらを机に乗せる。 お世辞にも綺麗な場所とは呼べないけれど、家に帰るよりも、たくさん生徒がいる教室にいるよりも、ずっとマシ。時間まで少しここで時間を潰しましょうかと、扉を半分まで閉めて中へと入ったのならば、慣れたように鞄を開けて、 今日出された宿題を取り出そうするでしょう。)(その時。 ) 「………………………………ッ、………………」 (自分以外の足音が、恐らく彼女の耳には届いてしまう。 目を見開く彼女。 まさかこんなところに人が来るなんて有り得ない。有り得るはずもない。だがこの世に『絶対』なんて言葉はないのもまた事実。 近づく足音。もしかしたら開いちゃう教室。もしも、もしもその『誰か』がここに入ったのならば。)「…………………………………………………………はァ?」「………………………………ねえちょっと、……………………なァァァんでオマエが来るんですか?」 ( 彼女はぐッ…………と眉を顰め、あからさまに【嫌そうな顔】をしながら、その主に棘のある言葉を投げ掛ける。彼女はその赤髪を知っていた。倦怠感に隠れた蛇のような瞳と高身長、黒マスク。名を、【⠀ワールレギュシ 】。自称【⠀魔王 】。)(断言しよう。彼女はきっと、貴方〝も 〟嫌いだ。) (6/15 23:41:22)
レギオ>
(〝日が暮れたらのなら、真っ直ぐお家に帰りましょう〟_____親が子にかけるおまじないに近しい其れ。しかし、高等学校に通う歳になってしまえば意味を成さない。時刻は既に夕方を回っていて、眩しさに思わず目を細めた日も徐々に落ちてきているでしょう。それでも校舎にはまだ沢山の生徒が残っていて、生活の音は消えずにあちこちで響いている。これがどっぷりと夜が更けてしまえば、物音一つ、息を吸う音一つしないということを『彼』は知っていた。そうなってしまうと厄介なもので、自身の偽物の鼓動の音しか聞こえないのだから、あまり良い気分とは言えないのだ。彼は耳が痛くなってしまうような静寂より、人のざわめきが多少ある方を好んでいたのだ。)(彼はこの高校に身を置く一人の生徒という訳だが。例えば、何か委員会に入っているだとか、部活動に所属しているだとかは一切無く、ましてや友人との約束何てものもあるはずも無く。どう言ったわけだか一つ二つ上の学年の生徒との交流は色濃くあっても、同学年___所謂タメの生徒との関わりはどうも希薄なものだったのだ。それ故に、放課後は決まって真っ直ぐお家に帰るなんて事はせずに、校舎に残ってゆっくり過ごすことがお決まりのことであった。この日も例に漏れず、与えられた課題をついでにこなす為、人も疎らになった廊下を歩いていた。)「______……」(道に迷わないこと、瞬時に道順を覚えることに対しては自信がある彼だが、どうもぼうっとしながら歩いて居たためか、いつの間にかあまり立ち寄ったことの無い空き教室の前へと。外から聞こえてくる部活動の掛け声が無ければ、閑静もいい所だろう。半分だけ開いている引き戸に手をかけ、中を覗いたのなら_________)『…………………………………………………………はァ?』「…………………………………………………………………ェ。」(…その少女の声に、驚いた様に双眸を見開く。)『………………………………ねえちょっと、……………………なァァァんでオマエが来るんですか?』「………………………………………………ワガハイも、キミが居ると思わなかった。…………〝グーゼン〟。」 (ふわふわとして柔らかそうな質感の髪を結い、丸っこい愛らしい顔を嫌悪感に歪め、此方を睨み付けるまるで《仔猫》の様な貴女。)(彼はそう言いながらドアの所で緩やかに小首を傾げた。明らかにお前の事が嫌いですと言わんばかりの棘の付いた態度すらも気をかけず、悠々と教室の中へと歩んで行く。黒マスクの鼻部分を指で擦りながら、「此処ちょっと埃っぽいね」なんて言いつつ、貴女が鞄を降ろしたであろう席の、その隣の椅子を引いたのだ。)「…ワガハイも、此処で課題やってい?」(良い?なんて口では問いかけながらも、その行動は既にやる気で満々だ。邪魔はしないし、静かな彼ならやたらめったら騒がない。けれど、彼女にとってみればそれ以前の問題なのでしょう。しかし目の前の男ときたら、それを気にかける様子もなく。ただただいつもの様に穏やかに問うてくるのだ。) (6/16 00:25:09)
ほりしぃ>
「………あ゛ァ………????〝偶然 〟ンンンンン………………????」 (彼女は貴方の発言に、ピキリと苛立ち1つ2つ。そう、そうだ。彼女はこの【⠀ふわついた態度 】でさえも気に食わない。確か貴方とは同学年。恐らくは同じクラスだろうか。ならば貴方は知っているはずだ。彼女の私生活、昼休みはふらりとどこかに行ってしまうし、休み時間はひたすら勉強したり、周りをわざと遮断するみたくとにかくなにかに没頭する。所謂【ぼっち】って奴。それもそのはず、彼女はソレを自ら望んでいる。貴方はシキガミである立場であるくせして……否、シキガミ〝 だからこそ〟ニンゲンと友好的であるが彼女は違う。ヒトとして堕ちることではなく、寧ろカミサマになることを【⠀望まれているんだから 】。ニンゲンと仲良しごっこなんて誰が──────────………)『…ワガハイも、此処で課題やっt「【⠀絶対嫌(や)です⠀】。」 (…食い気味だった。)(しかしそんな否定もなんのその。彼女の心情なんて露知らずと言った具合に椅子を引く様子を見たのならば、手にしていたペンケースを握り締め、もう我慢ならないと言わんばかりに つかつかと歩み寄るだろう。そして…………) (【⠀バン⠀】ッッッッッッッッッ…………!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)(……と、彼女は貴方の目前の机を叩く。反動で高く飛び上がったツインテールが、スローモーションで重力に従い落ちる錯覚。勢いよく顔を上げ、貴方に顔を近づけた彼女は次の瞬間、火蓋を切ったように怒鳴るだろう。)「オマエ耳がねェんですかッ?!?!オマエが【⠀魔王 】だか【シキガミ】だか知らねェですがッ……………オマエなんてその気になればほりしぃがパクッと食えちまう ンですからねェッ!!!!!!分かってンですかッ?!??!?」「大体ねェッ!!!!空き教室なら他にもあったでしょッ…………?!?!そもそも此処はほりしぃが最初に見つけた場所なんですからッ!!!!!ほらわかったらほらとっとと出てってください、バカ!!!デカブツ!!」( 本来彼女にとって【⠀カミサマ 】とは敬うものではあるが、シキガミは別だ。人間じゃないのに人間になろうとしたり、ニンゲンと仲良しごっこをしてみたり。目前の貴方は特にそう。彼女にとっては【自称】のレッテルが剥がれずにいる。彼女はペンケースを机に置いたのならば、貴方の腕をぐいーーーっと引っ張り扉まで引きずろうとするかもしれない。 なんでわざわざここなんだ、こんなにも自分は貴方を嫌いだと言ってるじゃないか。) (6/16 01:00:05)
レギオ>
「…ワガハイも、此処で課題やっ『【⠀絶対嫌(や)です⠀】。』(その一つの提案は、最後まで言われる前に、彼女によって食い気味に却下されてしまった。ゆらりと貴女を方を見て、両の眼を向けたのなら、「食い気味だねぇ…」だなんて思ったまんまの感想を口から出すだろう。ちゃっかり座った横の席にその長身故のすらりと伸びた足を組んで座り、頬杖を付きながら。少女が手にペンケースをぎゅっと握りしめ、肩を震わせながらつかつかと歩み寄るのを目線で追いながら__________)( バ ン ッ ッ ッ ッ ッ……!!!!!!!!!!!!)(_____と、ちょうど頬杖を付いていた目の前を思いっきり叩きつけたのだ。その行動に思わず目を見開き、気だるそうな瞳は驚いた様に真ん丸な形で浮かんでいる。椅子に座ったままでやや体を後退させて、オノマトペにするのなら、「ヒャッ」といった具合の様な。そのやや威圧的な見た目にそぐわず、素直なものだった。それは1秒だったか、それともコンマ0.5程の事だったか。ただ一瞬の筋肉の緊張を感じた後、表情と同じくして先程のように緩やかに筋肉を緩和させ、変わらず頬杖を付いているのだ。)『____オマエ耳がねェんですかッ?!?!オマエが【⠀魔王 】だか【シキガミ】だか知らねェですがッ……………オマエなんてその気になればほりしぃがパクッと食えちまう ンですからねェッ!!!!!!分かってンですかッ?!??!?』「 はい、はい。聞いてる、聞いてる。聞いてるってば………そう、ほりしぃちゃんは、強いからね… 」(その小さな肩を怒りに震わせ、すっかり怒り心頭といった様子で喚き散らす彼女をまるで幼子をあやすかのようにして、彼はどうどうと宥めるだろう。あまりの声量に鼓膜が震え、キーンと耳鳴りが起こる。節だった指で、片方の耳を抑えた。)『大体ねェッ!!!!空き教室なら他にもあったでしょッ…………?!?!そもそも此処はほりしぃが最初に見つけた場所なんですからッ!!!!!ほらわかったらほらとっとと出てってください、バカ!!!デカブツ!!』(小さな肩を震わせそう彼を罵り、ぐいーっと腕を引っ張ってくる。しかし、両者の身長は約190cmと約140cm。幾ら貴女が逞しいと言ったって、一般成人男性よりも高い長身を持つこの男を引き摺るのは至難の業ってものだろう。その結果、やはり彼女が引っ張っている腕だけが其方に連れて行かれるばかりで、座っている席から彼の腰が浮くことは無いのだから。「あ〜〜〜…」とか、「ジャージが伸びる…」なんて、それに乗じた様な抜けた鳴き声も聞こえてくるだろう。)「うーん……そうは言ってもねぇ。ワガハイも此処に来ちゃった訳だし……いっかなって。ああ、でも、キミは気に食わないみたいだけど……」「どうせ_____……とか、言ったら、〝失礼〟か…」「ほりしぃちゃんも暇でしょう。そう、そう。ワガハイも、なんだよね。だから、暇同士。」(この空き教室で、課題でもお喋りでもして、時間でも潰しましょう、と。再度頬杖を着いたのならば、目前の赤い髪を持った男は、適当な理由を付けておっとりとした口調でそう述べてくるだろう。だって、キミ、勉強が好きみたいだし____丁度良いじゃないか。) (6/16 01:39:02)
ほりしぃ>
『はい、はい。聞いてる、聞いてる。聞いてるってば………そう、ほりしぃちゃんは、強いからね… 』「オマエッッッ………………この期に及んで【餓鬼扱い】たァ良い度胸ですねッ゛ッッ……………」(どうやら貴方の【⠀宥める 】ことを目的とした素振りと発言は、彼女にとって神経を逆撫ですること意外何者でも無かった。〝 強い〟であればそれはもう恐れ慄きここから逃げるように立ち去るはずなのだ。なのに貴方と来たら退かない。そりゃもう、山の如く。ただ曇天のような倦怠感を纏ったまま、仔猫の威嚇を高みの見物しているかのよう。腸が煮えくり返りそうだ。ぐいーーーっ!!!と彼女が一生懸命貴方の腕を引っ張ったところで、190cm程ある男を引きずり、運ぶことは至難の業。小学校高学年、……良くて中学生並の体格からずっと止まったままの『―アポリア― 彼女』が貴方をどうこうすることは不可能である。ジャージが伸びることを気にする貴方とは裏腹に、すっかり息の上がった彼女は腕を離したのならば、「ッッッ゛~~~~~~~~~…………………………」と、言った具合に顔を赤くし、声にならない声を上げつつ肩を震わせるのだった。)『うーん……そうは言ってもねぇ。ワガハイも此処に来ちゃった訳だし……いっかなって。ああ、でも、キミは気に食わないみたいだけど……』「だから出てきゃあ良いでしょうッッッ!?!?!?」『………………………………』『どうせ_____……とか、言ったら、〝失礼〟か…』『ほりしぃちゃんも暇でしょう。そう、そう。ワガハイも、なんだよね。だから、暇同士。』「………………ハッ……………………なんです?放課後に予定がなさそうだからですか?それともずっと〝 独り 〟でいるからですか?〝 誰かと過ごしている 〟時間や人数= 暇かどうかの いかにも〝 ニンゲン〟らしい馬鹿な尺度を、まさかとは思いますがこのほりしぃに宛がって考えてるンじゃねェでしょうね?」(彼女はふるりとツインテールを揺らし、半ば苛立ち、半ば煽り混じりに鼻で笑い口にした。貴方と彼女の共通点は、〝一人でいることが多い 〟こと。当然友人に囲まれているニンゲンは放課後に遊びに行ったりする可能性が高い。それに比べたら一人きりでいる時間が多そうってのは、予定に空きがあるのは明白だ。しかし彼女は続ける。) 「………でもお生憎様。ほりしぃは望んで〝独り 〟でいるんです。暇なんてあったもんじゃありません。空き時間は有効的に使うもんでしょう?勉強して、本を読んで、またお勉強。ほりしぃはそりゃもう「賢い良い子ちゃん」ですから…アホみたいなニンゲンや、オマエみたいな『ワガハイまおーだからぁ~~』とか言ってるちゃらんぽらんと話して馬鹿が移るのはごめんです。」 「……──────────ああそうだ、ニンゲン共に言えばいいんじゃないですか?『なにしてんのー、ワガハイも混ぜてー』って。『課題教えてーー』って。……ちゃらんぽらん同士、………………気が合うでしょ。」 ( あなたのことを動かせないのはよく分かった。だから彼女は腕を組み、貴方を見下すように目を細めながら口にする。どうやら彼女は貴方と違ってニンゲンを好いちゃいないらしい。友好的なシキガミ様なら、ニンゲンも快く貴方を迎えてくれるんじゃないの?と。彼女は僅かに目を伏せて、貴方に小さく問い掛ける。)「…………………暇とは言え、………………どうせオマエだって………………………………オトモダチの1人や2人、……………………居るんでしょ。」 (6/16 02:12:19)
レギオ>
(ぜいぜいと真っ白な肌を赤色に蒸気させ、声にならない声を喉から絞り出す其れを聞いていた。其れはもう悠然とした様子で。普段からよくよく人を観察する紅玉の瞳は、どうにもその意思が読み取りにくいだろう。どうどうと宥めて落ち着かせることも反対に逆上させてしまって、失敗に終わったようだし、何を言っても噛み付かれる。やはりとんでもなく気に入られていない____否、単純に〝嫌われている〟というのは誰の目にも明白だ。そのことは彼も承知をしている。人を振り回す鈍感さを持ってして、その嫌悪に気付かない訳では無い。けれど言うなれば暖簾に腕押し、焼け石に水。彼女が手酷く罵る言葉にさえ気分を害した様子もなく、ましてや憤慨する様子もなく。今この場所では、彼は実に不変的な存在だった。彼女が何と言ったって、何をやったって、今のままでは手応えもない筈だろう。) 『………………ハッ……………………なんです?放課後に予定がなさそうだからですか?それともずっと〝 独り 〟でいるからですか?〝 誰かと過ごしている 〟時間や人数= 暇かどうかの いかにも〝 ニンゲン〟らしい馬鹿な尺度を、まさかとは思いますがこのほりしぃに宛がって考えてるンじゃねェでしょうね?』(緩やかに、その言葉に首を傾けた。「____そうだけど?」と言いたげな視線を投げ掛けながら。しかし貴女の言葉を遮って、それでその先の話が飛んでしまうのを望んじゃ居なかったから。押し黙ったまま、その続きを促していた。耳を傾けて居た。)『………でもお生憎様。ほりしぃは望んで〝独り 〟でいるんです。暇なんてあったもんじゃありません。空き時間は有効的に使うもんでしょう?勉強して、本を読んで、またお勉強。ほりしぃはそりゃもう「賢い良い子ちゃん」ですから…アホみたいなニンゲンや、オマエみたいな『ワガハイまおーだからぁ~~』とか言ってるちゃらんぽらんと話して馬鹿が移るのはごめんです。』「__________………………」(立っている貴女に、腰掛けている彼。身長差は自然と埋まり、目線は近いものになるだろう。パレットで言えば同じ色彩の瞳をかち合わせながら、「ふぅん」と一つ。軽いため息混じりに呟くのだ。)「 キミは…やっぱり、ニンゲンを酷く愚かな存在だと、救いのない、愚鈍で卑しい存在だと……思ってるみたい。 」(ガタン、と座っていた席から立ち上がる。彼らの間には、40cmの物理的な差が再度形成された。)「____まァね、あのね。……これさ、秘密なんだけれど。…………幾ら【シキガミ】になっても。……やっぱりワガハイの価値基準、思考基準、判断基準は【カミサマ】だから。…………どうして、何で……こうすれば良いのに、って思うこともある。理解に苦しむ事もある。」「 でも、ワガハイは…《軍団兵》である《ワガハイ達》は、だからこそ、知りたい。《王》から与えられた好奇心を持ってして、《勇者》足り得る彼らと対話をしたい。」(だからぁ……と繋ぎの言葉をボヤきながら、その長く燃えるような赤髪を数回かいて、数秒思案するような素振りを見せる。)「……そう。なんて言うのかな。………………キミとも、話がしたかった。…………《トモダチ》みたいにさ。」(やはり彼はゆったりとした口調で、一体どこからかどこまでが本心なのか汲み取りにくい表情を浮かべながら。けれど、彼は人間の様に嘘は、取り繕いは、上手くは無いのだ。) (6/16 02:59:34)
ほりしぃ>
『キミは…やっぱり、ニンゲンを酷く愚かな存在だと、救いのない、愚鈍で卑しい存在だと……思ってるみたい。』「……………………ッ、…………」(先程まで悠然として振舞っていた貴方、そこに威圧感の欠片もなかったはずなのに。1度立ち上がったその姿は聳え立つ白。野うさぎほどの大きさの彼女と、絶対的な百獣の王。彼女は目を見開き、思わず息を呑み、1歩、後ずさった。)『____まァね、あのね。……これさ、【⠀秘密 ⠀】なんだけれど。…………幾ら【シキガミ】になっても。……やっぱりワガハイの価値基準、思考基準、判断基準は【カミサマ】だから。…………どうして、何で……こうすれば良いのに、って思うこともある。理解に苦しむ事もある。』(貴方は釈然とした様子で口を開き、変わらぬ倦怠感を含んだ煙を吐露し彼女を取り囲む。 )『でも、ワガハイは…《軍団兵》である《ワガハイ達》は、だからこそ、知りたい。《王》から与えられた好奇心を持ってして、《勇者》足り得る彼らと対話をしたい。』 「………………、……………………」『……そう。なんて言うのかな。………………キミとも、話がしたかった。…………《トモダチ》みたいにさ。』 (………………そうか。貴方は、【⠀貴方達 】は王の爪先でしかない。自我のあるコピーペースト。云わば偵察機。その1個体に過ぎない。貴方の本体は別にいる。貴方はワールレギュシであるが、その本質は【誰でもない】。そのはずだった。しかし好奇心と言う感情を持った今、貴方はワールレギュシであるが、それ以前に【貴方という別の自我】が芽生えつつあるのかもしれない。……あくまでも、憶測だが。不変の王、燃えるような赤髪、蛇のような瞳と恵まれた体格。そして【好奇を善しとする唯一の王】の存在。……何もかも、何もかも自身とは違った。今にも壊れそうな虚勢の足場と、成長しない小さな身体、自由を許さぬ【赤の女王(ママ達)】。貴方と同じ目を持っているはずなのに、彼女と貴方じゃ見る世界も、目線も違う。)
(………………少し、羨ましかった。だから言っちゃった。またひねくれたこと。引きつった笑みを浮かべながら、次のように。)「…………………………へェ。……【⠀それで 】?」「………………その勇者達とオトモダチになって、どうすんです?敵をよォく知ってから、負け役を勝手出る運命から【⠀おさらば 】してェッてわけですか?ニンゲンをよく知って、勇者の性質を理解して、どうやったら効率よく【⠀くびり殺せるか 】と……………………そういうお話ですか?」「………………【⠀勇者(ヒーロー) 】のこと知りてェのに、ほりしぃにその尺度を宛てがうのは間違いです。」( 彼女は目を細めた。なんせこちとら【⠀ヒト 】じゃない。生まれながらにして死産の、蚕蟲の卵。蠱毒を生き抜く少女である。………………勇者と言うには些か手遅れ、どちらかと言えば、貴方風に言うなれば【魔物】なるもの。故に。)「………………………………そもそもそんなん、知るわけねェでしょ。」「…………………、………………だって。」「………………………………………………だって。」「……………。」「……………………………………、……」「…………………………………………オマエは。」「オマエは、……………………魔王なんでしょ、………………【ヒトとか殺したこと】ないんですか。」「………………………………、…………………誰かを傷付けたり、………【⠀ヒトを喰ったり 】する奴とは、ニンゲンはオトモダチになんかなりたがらないんじゃないですか。」「………………………………………ホントにニンゲン共とオトモダチになりてェなら、ですけど。…………………ま、別に。……ほりしぃは心底どうでもいいですが。」 (………………魔物が魔王に尋ねたこと。これはニンゲンには誰にも、誰にも質問したことがなかったこと。きっと彼ら、私達とはオトモダチになりたくなんかないわよ、と。オトモダチになっちゃいけないのよ、と。もしも食うために、もしも殺すために仲良くするなら話は別だけど。)(…………彼女も密やかに、ニンゲンの観察をしていて。そしたらヒーローは大抵言うじゃない。【⠀人を傷つける奴は悪だ 】って。 ……知ってる中で、変な奴も何人かいるけど。でも大体の人間ってそうじゃない。)…………………………貴方は、【⠀悪役 】じゃないんですか。)(ニンゲンを見下さなくちゃ、喰いずらくなって、いずれ死んでしまうのは彼女の方。貴方はどうだ。…………そうやって、殺しにくる勇者の受け入れ方を。理解することで自分なりに解釈して、尚も関わる術を、考えているのか。…………それとも。) 「……………………決して【⠀勇者 ⠀】なんかじゃねェほりしぃと、友達ごっこして……なんの得があんですか。」 (6/16 03:52:29)
レギオ>
(【識別番号】Rex_0091_ITA【通称学名】王の軍団兵 _______以下、保護時に作成された記事より一部抜粋。《 …Rex_0091_ITA とは彼の事を指し、通称『王の軍団兵』と呼ばれる男性の人型をしたカミサマです。研究の結果Rex_0001_ITAの分裂固体であるとされ、その中でも意思疎通を可能とし、人類に対して非常に友好的且つ協力的な姿勢を示す個体です。…… 》)「 ____________………… 」( 其れは、王であり兵である。其れは、万能にして無能である。其れは、唯一無二であり有象無象である。 )( 王の分身として全ての可能性を持ちながら、全ての素質に恵まれない、愛なる者を求めて彷徨う〝亡霊〟である。絶対的な君主から産み出された、一個体。世界の歯車。有象無象。大きな泉の、たった一つの雫の如く。)( 我が王は、新たな『勇者』との邂逅を望んでおられる。其れは我々の意思であり、揺らぐことの無い、たった一つの思いである。 )(しかし、あくまでも『秘密』だと言うことを、何故目の前の少女に対して密やかに伝えてしまったのか。それはただの気まぐれか、それともただの好奇心からか。___________それとも、貴女が【 ヒト 】では無く、限りなく【 此方側 】に近い生き物だったからか。)『………………………………………オマエは。』『オマエは、……………………魔王なんでしょ、………………【ヒトとか殺したこと】ないんですか。』『………………………………、…………………誰かを傷付けたり、………【⠀ヒトを喰ったり 】する奴とは、ニンゲンはオトモダチになんかなりたがらないんじゃないですか。』「…………………………………………。」「そう。………………………………」「………………………………」「………否、【殺したこと】が【ある】、と……そう、言ったのならば。」「………………………………………………ワガハイは、キミの言うように。ヒトとオトモダチになど……なっちゃあ、いけないんだろう。」 (何せ彼らは〝勇者(ヒーロー)〟なのだから。……浅く、息を吐き出す。肯定とも否定とも取れない、その真ん中の言葉だ。濁した訳では無い。何せ彼らは多数なのだから。貴女と向かい合い、話しているこの個体が人類に対し友好的というだけであり、全てがそうという訳では無い筈なのだ。王は好奇心を重んじる。故に、猫を殺す様な、無邪気な歪みを生じさせる個体だって………きっと、存在してしまう。ならば、其れは彼であり、その罪さえも彼のものだ。) 『……………………決して【⠀勇者 ⠀】なんかじゃねェほりしぃと、友達ごっこして……なんの得があんですか。』(王は、ふ、と目を伏せる。貴女を先程から捉えてた紅玉の瞳は何の変哲もない地面へと。)「__手に入れた物を失うのは、酷く恐ろしい。」「…………心が欠けた様で、酷く寂しくて、その欠けた部分を補得るものなどは無いだろう。……例えば、温かさを知った時。冷たい手を握り返された時の温もりを知ったら、其れを離すのは…………………………きっと、酷く、惜しいだろう。」「それならば、初めから知らない方がましだ。遠ざけていた方が楽だ。冷たさに慣れていれば、きっとずっと変わらないのだから。」(経験と、憶測。ぽっかり空いた穴を埋めるべくして、彼は此処にやってきた。)(目前の貴女は、まるで何かを恐れているような。そんな風に、彼の目には写ったのだろうか。やけに埃っぽいこの教室で、止まってしまって動かない秒針に、随分前から変わっていない日付け。騒がしい校舎の、忘れ去られたみたいなこな空間。偽物の心臓を抱えながら、自らを柔く抱きこみながら、血の通っていない喉元へと手を添えた。)「けれどね、《Holy shit.》」「……………………………放課後にカラオケに行ったりだとか、駄菓子屋に寄ってみたりだとか、学食の唐揚げが美味しいだとか、休み時間に友人とくだらない雑談をするだとか、………………………………………………それに、全部全部、無駄なことなど、無いのだろうよ。」(一息。静寂の帳が落ちてきて辺りを包む前に、彼は口を開いた。) 「………………………………………………………………………」「…………《Lonely・Esuka》…キミは、何をしてみたいのだろう。」(貴女が学校が終わってから真っ直ぐ家に帰らなくなった理由なんて、彼は知らない。何が好きで、何が嫌いで。どういう理由があって、わざわざ此処に居るのか。何も知らない。知る由もない。……だからこそ。王より与えられた《好奇心》は、《愛情》を持ってして、貴女への問いを生み出した。) (6/17 01:20:34)
ほりしぃ>
『……否、【殺したこと】が【ある】、と……そう、言ったのならば。』『……………………………………………ワガハイは、キミの言うように。ヒトとオトモダチになど……なっちゃあ、いけないんだろう。』「………………………………、……」(群衆の中の1個体は呟いた。それは曖昧に。殺してないなら殺してないと、殺したのなら殺したと、白黒はっきり言えばいいのに。言わなかった、否。『言えなかった』のだろう。貴方は個でなく『種』。分断した1部に過ぎない。そこに個体識別番号なる、云わば『自ら』という証明は出来なくて、……つまり。『愛情』を愛しているのに、『愛』を、『i』を証明出来ない 『虚像』である可能性が高いのだ。彼女の目には、貴方はカミサマに違いないし、無論それなりの【⠀存在感 】さえも感じていたが、……今こうして貴方が言葉を紡いでいる間は、カミサマと言うには吹き消したら消えてしまいそうな程、淡く見えた。だから、彼女は貴方の言葉を吹き消さないように、口を出しやしなかったのかもしれない。)『__手に入れた物を失うのは、酷く恐ろしい。』『…………心が欠けた様で、酷く寂しくて、その欠けた部分を補得るものなどは無いだろう。……例えば、温かさを知った時。冷たい手を握り返された時の温もりを知ったら、其れを離すのは…………………………きっと、酷く、惜しいだろう。』『それならば、初めから知らない方がましだ。遠ざけていた方が楽だ。冷たさに慣れていれば、きっとずっと変わらないのだから。』 「………………………、…………………」「……………………………………如何にも、【⠀脆弱なニンゲン 】らしい発想ですね。 」(彼女は貴方の言葉に、またも弄れた解を提示した。ニンゲンを見下す、その姿勢を、風が吹けば倒れそうな程に脆い砦の上で保っている。 腕を組み、馬鹿らしいと言わんばかりに呆れたような口振り1つ。)『けれどね、《Holy shit.》』「………………………………」(視線だけを持ち上げて、貴方を捉える。双方同じ赤い夢。伏せた瞳をそのままに、貴方は言葉を続けるだろう。)『……………………………放課後にカラオケに行ったりだとか、駄菓子屋に寄ってみたりだとか、学食の唐揚げが美味しいだとか、休み時間に友人とくだらない雑談をするだとか、………………………………………………それに、全部全部、無駄なことなど、無いのだろうよ。』 「…………」 『………──────────《Lonely・Esuka》』『…キミは、何をしてみたいのだろう。』「………………………………、……………………」(……………………放課後、楽しそうにすれ違う生徒たちを毎日見る。休み時間は憂鬱だった。昼休みだってそう。……眺めるのも、声を聞くのも何となく嫌で、自分だけが切り取られていて、でも混ぜてなんて口が裂けても言えない。言わない。自分は強い、だから独りで生きていける。)(…………そう、言い聞かせていた。) (…………魔王は、少女の心中を見透かしたように問いを投げ掛けていた。 今度はこちらが目を伏せて、貴方とは一切目を合わさない。別に羨ましいなんて、思ってない。 )( 思ってないけど、………………でも。)「……、……………………………──────────【⠀〝 カミサマ〟⠀】に。」「…………………………【⠀カミサマ 】に、なるために産まれてきたんです。ロネリーは。……………………それをママ達は期待しています。」「………………………………ニンゲンを食べなきゃ【⠀死体 】に戻っちまうんです。………………ニンゲン共が食ってるもンは、食うなってママ達に言われてます。」「……………………此処に生まれてから17年経つまでに…………ほりしぃは完璧な、〝 シャングリオ(カミサマ)〟になんなくちゃ………………いけないんです。」「……………………そうじゃなくちゃ、今度はロネリーが妹や、姉様方に食われます。」 (……………………彼女はロネリー。ロネリー・エスカ。【⠀蠱毒 】を【⠀生き抜く 】少女である。)(生まれ損ない、死に続けてから【9歳(救済)】の時に、彼女の運命は決まった。【エスカトロジー (最期の審判)⠀】に備えた 【 シャングリオ⠀( 理想郷 )】への部品になることを。) ( 家畜のように切られた耳、タグのようなピアス。 ) 「放課後にカラオケ?駄菓子屋?学食の唐揚げ、休み時間にオトモダチとくだらない雑談。……………………くだんねェこと言ってる場合じゃないでしょ。」「……………………………………何をしたいって。だってもう決まってんじゃないですか。」「…………………………………………【⠀カミサマ 】になります。【⠀ママ達 】に愛されたいから 【⠀シャングリオ 】になります。」「………………………………、……………………………………」 「…………そうじゃなくちゃなんねェのに、……………………………………」「……………………………………、…………………………」「………………………………これ以上ほりしぃが弱くなるわけにゃぁ、行かないじゃないですか。」(……誰にも話したことのない秘密。それは貴方がニンゲンじゃないからだったのだろうか。それとも単なる【⠀気まぐれ 】か。 前までそれが自分の世界の当たり前だったんだ。でも最近、……最近になって可笑しいんだ。ニンゲンを知れば知るほど、家に帰る憂鬱が溜まって行くんだ。こんな話をしたってもうどうしようもない。そんなことは分かっている。誰かに話したところでなんにもならないことも、自分が今どれだけ貴方の間に惨めに映っているかもわかっている。この学校には【⠀ダビ 】という生徒がいる。あの子もまた、彼女の家族のはずだった。)「………………だったら全部要らないです、………………オトモダチも、温もりも。…………………………ほりしぃカミサマになったら、…………全部全部壊してやるんです。」 「………………………………」「…………………………ねェ、もしそうなったら………………【⠀ニンゲン 】を愛してる魔王は…………………………」「………………………………ロネリーを倒す、〝 勇者 〟にでもなるんですかねェ………………?」 (………………もしも話は、叶わぬ夢は毒になると誰かが言った。彼女は顔を上げたのならば、柔く笑みを作り、貴方に問う。 )「…………………………世界が壊れちまったら、オマエの愛するもんみぃーーーんな消えちまいますよ。」 (6/17 02:14:27)
レギオ>
(【 セブンス・イクリプス 】それは、平々凡々な、何の変哲もない筈の日常が、突如として崩壊した日。多くの者が傷付き、倒れ、混迷した世界で、誰もが救いを求めていた。そう、強く輝く一等星に! どれだけの者がその姿に奮い立たされただろう。どれだけの者に輝けるその姿を焼き付けただろう。【 失われた7日間 】…………そして、それは、我々の〝勇者(ヒーロー)〟の輝きが消えた日。)『………………………、…………………』『……………………………………如何にも、【⠀脆弱なニンゲン 】らしい発想ですね。 』(その言葉に、伏せていた瞳を上げる。そのマスクの下に隠れてしまって見えないだろうけれど、ほんの少しだけ口角を緩めた。其れはけしてヒトとしては正しい反応では無いのだろう。__________けれどこんな時でさえも、まるでヒトらしいと言うのならば、それは彼を多少なりとも喜ばせてしまう言葉には違いなかった。取ってつけたかの様な言葉遣いは、最近漸く馴染んでいた筈なのだけれど。ヴェールは徐々に剥がれ、落ちかけてしまっていた。)『……、……………………………──────────【⠀〝 カミサマ〟 ⠀】に。』『…………………………【⠀カミサマ 】に、なるために産まれてきたんです。ロネリーは。……………………それをママ達は期待しています。』『………………………………ニンゲンを食べなきゃ【⠀死体 】に戻っちまうんです。………………ニンゲン共が食ってるもンは、食うなってママ達に言われてます。』(小さなウサギは、目を伏せる。長く生え揃った睫毛が細やかな影を落としていた。音は無い。いつの間にか、ざわめきも消えてしまっている。秒針を刻まないこの空間では、貴女の息遣いしか聞こえない。)『………………だった全部要らないです、………………オトモダチも、温もりも。…………………………ほりしぃカミサマになったら、…………全部全部壊してやるんです。』『………………………………』『…………………………ねェ、もしそうなったら………………【⠀ニンゲン 】を愛してる魔王は…………………………』『………………………………ロネリーを倒す、〝 勇者 〟にでもなるんですかねェ………………?』(少女は言葉を紡ぐ。影を顔に落としながら。そしてまた、薄桃色に染まる薄い唇を開いた。)『…………………………世界が壊れちまったら、オマエの愛するもんみぃーーーんな消えちまいますよ。』「………………………………………、………………………」( 赤の目を、閉じる。 )(ああ、と思う。)(微かな吐息と共に小さな呻き声の様にして其れは吐き出され、空気中に溶けて行った。)《 …………………………………………………………違う。 》《違う。》《 違う______違う、違う、違う、違う 違う 違う 違う 違う 違う 違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う 》「 ……………………………………………………… 」《〝これ〟では無い。》《 違う。 》《何故なら〝くすんで〟しまっている。》「……………………ああ………………」《 解るだろう 》( 王は、大衆は、そう叫ぶ。強く、否定する。目の前の、野ウサギを。柔い笑みを浮かべる、目の前の、幼子を。 )《 違う。 》《何故ならそれは、〝輝ける者〟〝勇ましい者〟〝我が愛〟_____【 勇者 】と呼ぶには、あまりにも、相応しく無い存在である。》「 …………………、………………………王よ。 」(其れは、一歩、踏み出した。赤の燃えるような髪はそれに合わせて、揺らめく。聞こえないほどの小さな声で、彼は、己に言う。王に、言う。)「………………………………………………」( 彼は愛情を愛している。何に変えても、どうなったとしても。 )( 貴女の両の手を握り、包み込んだ。……温もりなど持たない手だ。まるで、生きていないみたいだ。 )「…………………………………………………………ロネリー。」(君は、〝勇者(ヒーロー)〟では無いかもしれない。そこに輝きは持たないのかもしれない。)「………………………………………吾輩は、恐ろしい。」 (男は、言う。) 「………………………………世界が壊れてしまう、その前に………」「___________…………キミが壊れてしまうことが。」 (6/17 19:23:08)
ほりしぃ>
( 彼女は確信していた。貴方は【人類】を愛していると。貴方が選ぶのは【⠀ニンゲン 】だと。ニンゲンのようにわざわざ振る舞い、ニンゲンのように課題をやって、あろうことかカミとも違わぬ魔王という立場である癖して、尚もニンゲンに歩み寄る好奇を持っているならば。もしかしたらニンゲンらしく言葉を選ぶかもしれない。でもそれでも、彼女の確信は塗り替えるには足りえないと思っていたのだ。さァ、と隙間風が生ぬるく教室内に入る。窓枠は額縁、朱色の油絵、そこに描かれたロネリー・エスカという名の少女。その少女の目に映るのは、燃えるような赤髪を持つ【絶対値】。)「……………………ああ……………』『………………………………………………………ロネリー。』『……………………………………吾輩は、恐ろしい。』(…………嗚呼、そうさ。さぞ恐ろしいだろう、自分の世界が壊れるのは。当たり前だと言わんばかりに、彼女は目を細めては軽く鼻を鳴らし、如何にも高飛車そうに振舞っている。足場はまだ、この時は崩れちゃいなかった。しかし、続く言葉は。)『………………………………世界が壊れてしまう、その前に………』(貴方は不変だった。)『___________…………キミが壊れてしまうことが』(…………────────筈だ。)「……………………ッッ、………………」(嫌な夢を見ていた時、飛び起きたように、或いは彼女はこれまでそれらを忘れていたかのように息を呑んだことだろう。 気付けば両手を包むように握られていた。貴方の手は、彼女と同じで冷たかった。互いに【⠀ヒトの形を模倣した 何か 】であることを、物語っているようだった。 目を見開き、顔を上げる彼女は貴方と目が合うんだろう。同じ赤目だ、幾度となく合わさった視線だ。なのに、今、この時は。)「…………………………、………………な、んで、………………………………」 (………………………どうして、…………そんな。) (…………言葉を紡がぬ代わりに、戸惑いの色を見せていた彼女だったが、次第にその表情は警戒心を取り戻す。眉をひそめ貴方を睨み、苛立ち混じりと言わんばかりに口元に笑みを浮かべてみせる。)「……………………………、…………ねェそれって、【同情】ってやつですか。」 (……曲解だった。握られた手はそのままに、笑みを消え失せさせた彼女は、言葉を続ける。)「……………さすがですねェ、寛容な【⠀魔王様 】は。……………………………ッ、……全く反吐が出る。」「………………ほりしぃは壊れたりなんかしません。壊れちまうのは世界の方です。…………嗚呼、オマエには関係ありませんでしたか?そりゃそうですよね、オマエの本体はこの世界が潰えちまったところで消えやしないんですから。そうでしょう?、ほりしぃはな、オマエみたいな──────ッ……………………!!」「………………オマエ、みたいなッ……、ッ……………………」( …………そこまで言ったくせに。彼女は最後の言葉を紡がなかった。そこまで言ったら遅いけど、言い切る前に じくりと、どこかが傷んだ。 今までの彼女なら全部言い切っていた。『コピーペースト野郎』『オマエの言葉は所詮偽物』『偽善』だと。 ……………………いえなかった。だって貴方の表情が。本当に、本当にくだらない理由かもしれないんだけれど。【折檻部屋の扉の隙間を覗いた時、目が合った姉様に少し似ていた】とか。嗚呼、本当に小さなフラッシュバック。……………………………ああ言うのを、ああいう顔をきっと、寂しそう、とでも言えばいいんだと思う。でも彼女は、思いつかない。苦虫をかみ潰したような表情。彼女は乱雑に、包まれていた手を離した。) 「…………………ッ、………………そういうの、ニンゲンなら好きなんじゃないですか。そうやって、……………………………………媚びるとこ。」「……………………………………………オマエ、良かったですね。【⠀ニンゲン 】と仲良く出来そうで。………安直に、無垢に『愛してる』とでも吐いてやれば、ヤツらはきっと。オマエに靡くんでしょう。…………………放課後のカラオケも、談笑も、……………………それから、なんでしたっけ?ニンゲン共と一緒に、オマエが〝 やりたい事〟って。…………あんまりにもくだらなすぎて忘れちまいました。」「………………………………」「………………………………別に、……………………………………どォでもいいですもん。」 (ロネリーは、ママに愛されさえすればそれでいい筈だ。)(………………………………でも、家には帰りたくない矛盾。)(…………………………貴方は愛情を愛している。彼女は。)(劣等を呪っている。腕を組み、くだらない問いかけをしちゃったと、どうでもいいと自ら流した。…………懐中時計の針が鳴る。門限まで、あと少しだけ。) (6/17 20:23:46)
レギオ>
(赤髪の王は、不明で、不変的な存在だった。)(産まれた瞬間から成長すること無く、変わらぬ肉体。切り落とされた〝亡霊〟は、外部からの刺激によって、王より全く同じに与えられた性質をまるで粘土細工の様に、ほんの少し形を変えることしか出来ない。あくまでも、彼ら多数は王で無くてはならないのだから。それ故に、不変。)(………………………………だった、筈なのだ。)(【 シキガミ 】と【 人では無い者 】 まるで同じ様な性質を持ちながらも、其れはけして交わることの無い、交わることの出来ない、ただただ平行線の存在。けれど、一歩、貴女の方へと踏み出した瞬間。其れは、彼の立つ【 不変 】という枠組みから、超えてしまった瞬間だったのだろう。)(彼は。彼は、人では無い。シキガミ。化け物だ。幾ら人のような風貌を持ち、人のように振る舞い、人のような話をしたって、それら全てが『真似事』であるには違いない。あるいは、『おままごと』のようにも見えるだろう。なにせ彼は_______彼の王は、【 ニンゲン 】を愛していたのだから。純然たる気持ちで、あの輝きをまたこの目に映したいと、願っているのだから。)(その瞳に浮かぶのは、困惑の色。まるで迷子の子供みたいに、不安気な歳相応の表情をしていて。…思わず、握っていた手は、きゅうとその力を強くした。)『……………………………、…………ねェそれって、【同情】ってやつですか。』(けれど、其れは歪められて彼女に届いた様だ。正しく届くことの無かった言葉は、彼女を苛立たせるものにしかなり得なかったのだろうか。彼女は言葉を続ける。)「…………………………………。」(彼は真っ直ぐに結んだ口を開くことは無く。ただ、押し黙って貴女から吐き出される言葉を聞いていた。そこに憤慨した様子は無く。ましてや不快に感じる訳でも無く。先程と同じように悠然とした様子で______だけれど、その顔には、その瞳には、何処か寂しそうな色が孕んでいるでしょう。貴女が言葉を詰まらせた理由なんてのも知らずに。)(……乱雑に振り払われる手。例えの話だ。これがもしも、どちらかが【 ニンゲン 】だったとしたのなら。その温もりは、今でも拳の中でじわりと尾を引いて居たのだろうけれど。彼らの手はただただ無機物的な冷たさから、熱を持つことは無かった。)「…………………………なんて………………………………………」「…………なんて、……………………………………」(群衆は、彼女という存在を拒絶した。自ら《カミサマ》になりたいと言い、この世界を《壊す》と言った彼女を。)(けれど彼は、レギオは、その〝目〟で見ていたのだ。じいと凝らして見てみれば分かる、ほんの小さな弱い光で、けれども確かに灯っている、〝輝き〟に似たその存在を。……それは不確定要素しかないけれど。確信などは無いけれど。)「……………………………………ロネリー。」(何度目かの、君の名を呼ぶ低い声。)「…………キミは、賢い良い子だ。家族を想っていて、限られた時間だって無駄にしないんだから。」「…ロネリー。」「…放課後にカラオケに行ったりだとか、休み時間に友人とくだらない雑談をするだとか。ワガハイは、そういう…………まるで【 普通の高校生 】の様なことをしてみたいと、言ったね。」「……けれど何故そこに、キミは居ないと思うのだろう。…………ニンゲンなら、ニンゲンならって________……キミの話は全て、全てキミがそこに居ない話なんだ。」「………………ロネリー。」「………言ったろう、キミが壊れる事が恐ろしいと。……キミはそれを否定したけれど。………………けれど、あの日消えた輝ける者達のように、失う______喪う事は、酷く寂しい。」「……ロネリー。」「ワガハイと同じような、ただ形を模しただけの存在のキミが。…………どうしても、ワガハイの目には、今にも消えてしまいそうに見えて、仕方ないんだ。」(その男は足を折り曲げて膝を付く。…引かれた白線から踏み出した、どう言い表して良いのか分からないこの感情は、むず痒く、けれどどうか伝えたい。きっと伝えなければならない。感じたそれは、同情ではなく、哀れみでもなく________親愛と称される、ひとつの愛情だった。) (6/19 00:05:35)
ほりしぃ>
( 離れた手先に温もりなんて当然存在しなかった。だって2人ともヒトじゃない。産声を上げぬ水子と、母親も知らぬ複合体。貴方が貴方である証明は誰にもできないし、彼女の心臓が動くことは1度だって、この先だってないんだろう。 )(でも貴方は違った。…………朱色に照らされたその顔は魔王というには程遠かった。不変だったんじゃないのか。貴方の悠然たる立ち振る舞いはどこに行ってしまったんだ。貴方から目を逸らす彼女は、きっとその顔が嫌いなんだ。 )『……………………………………ロネリー。』「…………………………」『…………キミは、賢い良い子だ。家族を想っていて、限られた時間だって無駄にしないんだから。』『…ロネリー。』「……………………………ッ、………」 (鼓膜を揺さぶる低い声。聞きたくなかった、それ以上。しかし貴方は辞めない。やめてくれない。)『…………ロネリー。』『………言ったろう、キミが壊れる事が恐ろしいと。……キミはそれを否定したけれど。………………けれど、あの日消えた輝ける者達のように、失う______喪う事は、酷く寂しい。』 『……ロネリー。』『ワガハイと同じような、ただ形を模しただけの存在のキミが。…………どうしても、ワガハイの目には、今にも消えてしまいそうに見えて、仕方ないんだ。』(まるで言い聞かせるような優しい声色だった。そのくせして触れたら貴方が消えてしまいそうな程に、悲しくて、寂しそうで、迷子の子供のように、細かった。だから、彼女は動けなかったんだと思う。【ママ達】に囲まれる彼女の世界に、【⠀父親 】は居ない。でもそれでも良かった。【⠀ママ達 】を愛していたからだ。)(己は。………愛していたからこそ。『賢くて良い子』『死んで欲しくない』 『居なくなってしまうのが寂しい』 その言葉達は、貴方じゃなくて。)「…………ッ、………(──────────それをロネリーは、ママ達に、言ってもらいたかったんだ。)」
(唇を噛み締めた。俯いた目元は前髪に隠れてしまうだろう。…………悔しかった。なんで目前の貴方が、どうしてなんで、そんな顔して、そんなことを言えてしまうのか。悲しかった。1番言って欲しいのに、未だにママ達に言われていない事実を自覚させられたようで。慈悲に満ちたその言葉が、振る舞いが。彼女の劣等をより煽ることを。困惑を助長させることを貴方は知らないのだろう。心の中の少女が、暗い部屋で膝を抱えて縮こまる。)「…………………、…………………」「………………………ロネリー、ロネリー、って。…………気安く名前呼びやかって。うるせェんですよ。」(………漸く口を、開いた頃。出てくるのは相変わらずの悪態だ。)「…………ただのクラスメイトにしか過ぎないオマエが、赤の他人のオマエが、………何をぺちゃくちゃとほざいてやがるんですか。……………………… 」「………、…………ほりしぃが…………」「……………………………………………、…ほりしぃが賢いことは、良い子だってことはほりしぃが1番よく分かってます。…………ママ達を『愛しています』。オマエに言われるまでもない。………………分かってんです、ンなことは。」「…………………………、………分かってるから、……………もういいです。 」(彼女は小さく呟いて視線に合わせてくれた貴方を睨みつけては、それを冷たく逸らす様子は相変わらずだ。まるで貴方の言葉が届いちゃいないよう。懐中時計を見やった彼女の動きがやや、早まる。彼女は鞄に筆箱をしまうだろう 。そして鞄の隣に置いてある、彼女が冒頭に脱いだ帽子を、確かにこの時チラリと、『見ていた』。密やかにそこから目を逸らす彼女は、帽子を〝 そのまま〟に義足を鳴らして、貴方の横を通り過ぎることだろう。) (……貴方がきっと帽子と呟いても彼女は聞こえないフリをする。要らなかったのかもしれない、と放置をしても良いし、貴方が預かってもいい。捨てたって構わない。)( 今日は2人の足場が崩れた日。 貴方は民衆から、【⠀ニンゲンのみ 】を愛する不変が、少女によって危うく崩れ掛けている。) (対する彼女は。)
(──────────……)(………………)「…………………………、………ただいま、ママ。」「………………帽子?」「…………嗚呼。ごめんなさい、ロネリーったら。〝 学校に忘れてきちゃった 〟の。」「…………もう学校は閉まっているから」「──────────また今度、〝取りに行くわ 〟。」( 『今まで忘れ物なんてしたことがなかった』)(それは貴方がカミサマだったからか。単なる気まぐれか。それとも、あんまり寂しそうな表情が、『あの子』によぉく、似てたからか。)(兎にも角にも彼女は今日。)(【あの、愛するママ達にまた秘密を作った】。) (6/19 01:04:47)
レギオ>
(今まで綺麗に整理されていたものが、途端にぐちゃぐちゃに散らかってしまったような感覚。見渡す限り、全てとっちらかってしまっていて、どれか正しいのかだなんて分かりやしない。何時もなら丁寧に分類分けされたそれをお手本にすれば良かったんだ。…その感覚が生じたのは、王であり群衆である『彼ら』から多少なりとも離れてしまったからなのだろうか。もしくはその不変が自らの手によって脅かされているからなのだろうか。それでも必死に見つけようとして、言葉を繋げて、伝えて。ああ、それでもなんだか腑に落ちない。とても気分が良いとは言えやしないんだ。……だって、貴女にそんな顔をさせたかったのでは無いのだから。)(『我が王よ』それは、まるで神父が〝神〟に語りかけるための言葉のよう。それは、ただひとつの絶対的な道。だけれど、此処に救いを求められる我が王は、もはや存在しちゃいない。)『…………………、…………………』『………………………ロネリー、ロネリー、って。…………気安く名前呼びやかって。うるせェんですよ。』「……………………………………………。」(吐かれる悪態。彼はそれを、静かに聞いていた。)『…………ただのクラスメイトにしか過ぎないオマエが、赤の他人のオマエが、………何をぺちゃくちゃとほざいてやがるんですか。……………………… 』『………、…………ほりしぃが…………』「………………………………うん。」『……………………………………………、…ほりしぃが賢いことは、良い子だってことはほりしぃが1番よく分かってます。…………ママ達を『愛しています』。オマエに言われるまでもない。………………分かってんです、ンなことは。』「……………………………………うん。」(紅玉の瞳を閉じる。広がるのは瞼の裏の暗闇だけで、そこに群衆は映らない。居るはずも無い。)『…………………………、………分かってるから、……………もういいです。 』「……………………………………………そっか。」(冷たく鋭い視線だ。それを受け取れば、少し『困ったような』笑みを浮かべた。少しばかりぎこちがない。それはこの空気に耐えかねた気まずさから来るものでは無かった。……先程よりも少し、その真似事に『自信が無くなってしまった』からなのだろうか。) 「………………ああ、もうこんな時間。………………………………そっか、もう、家に帰るんだ。」(身支度をする彼女。残されている物に気付く。「帽子を___」と言い、貴女を呼び止めようとするけれど、それは彼女の耳には届かなかったのか。独特の金属音を鳴らし、その長い髪を揺らしながら、足早に出ていってしまった。そうして彼だけが、時の止まった部屋に取り残された。)【_____________…………】(何も聞こえない。耳が痛くなるような静けさだ。)「……さようなら。ロネリー・エスカ。……………………………どうか、良い夢を。」 (暫くした後、ぼそりと、言い忘れてしまっていた言葉を呟く。誰の耳にも届かぬまま、それは空気中に溶けていき、また夜の帳が彼を包み込んだ。)(机に腰掛け、帽子のバイザーを掴んで、ゆるりと弄んだ。きっと彼は後日返しに行くんだろう。忘れ物だって言って。それでまた、貴女と話がしたいって。また、あんな顔をさせてしまうのは嫌だけれど。………あともう少しだけ、学校に残れる時間がある。誰も見てないのを良い事に、だらしなく片膝を抱えこんだ。体を居れば聞こえてくる偽物の心臓の鼓動で、この静けさを誤魔化そうとして______後の事を考えながら、静かに目を閉じた。) (6/19 02:27:06)
エレナ・ドラグノフ>
ムサシ。ふざけた名前だが、アレは本物の剣豪だ。一度相手にしたことがあるからこそ分かるが、一回目は作戦勝ち、それも自傷覚悟の特攻なんて言う褒められたものじゃない邪道(いかさま)でどっこい。二度も三度も切り結ぶとなるとさしもの私でも相手が悪いところだった。が____しかし。『今日相手にするカミサマは、ムサシ。どうやら山奥にある道場に殴り込んで以降、ものの数分で負傷者多数、死者若干名という次第だ。』『能力やカミサマの異常性をはねつけ、そのくせ本人も強いなんていう反則みたいな相手だ。真正面から殴り合うなら、拮抗できて2~3分。能力ありきでも1分そこに伸びるか伸びないか、という所だ。』それでもやらなければならないという事実を、ありのまま同行している彼に伝えた。場所はある山寺、昔ながらの山岳修行や修験の延長に武術の訓練を組み込んだ肉体派、実践派の宗派で、宗教家というか武芸者集団とでも言うべき所だ。 山門は古く時を重ねたからかところどころ朽ちており、深山幽谷というにふさわしい真っ暗で真っ黒な山々は獣の声がひっきりなしに鳴り止まず、最早風の音をたまに聞き逃すかのような無音の空間を作り上げていた。見上げても尽きないくらい遠く見える石段。都会の明かりがないからか、嫌というくらい照りつける月光が芒と道標を照らし、多分あの世に行く道があるならこんなものだろうかと想像させた。『____前回、奴は教会の墓場に居た。その時はなんでかじっと待っていてくれたが、今回はそうはいかない。』なんでか、なんて理解している。それは単に、見なされていなかったからだ、脅威だと_____『だから、1つ約束をして欲しい。貴様は……仲間のピンチに黙って動かないことが出来るか______?』 (6/18 14:38:02)
レギオ>
(人工的な光の届かないこの山奥では、ぽっかりと浮かぶ月明かりだけが石段を照らしていた。所々苔むしていて手入れのされていない事が分かるその場所は、独特の不気味さを演出している。一歩一歩重さを感じさせない足取りで登りつつ、その赤髪を揺らしていた。)『今日相手にするカミサマは、ムサシ。どうやら山奥にある道場に殴り込んで以降、ものの数分で負傷者多数、死者若干名という次第だ。』『能力やカミサマの異常性をはねつけ、そのくせ本人も強いなんていう反則みたいな相手だ。真正面から殴り合うなら、拮抗できて2~3分。能力ありきでも1分そこに伸びるか伸びないか、という所だ。』(凡そ同じほどの長身を並べならが話す彼女と向かうのは、識別番号Uns_0634_JPN___『ムサシ』の調査。彼女の口から語られるそれは、容易とは思えないものだ。一言一句聞き逃さずに嚥下して、ゆっくりと頷いた。)『だから、1つ約束をして欲しい。貴様は……仲間のピンチに黙って動かないことが出来るか______?』「………………………………………………」(隣を歩く彼女の問いかけを聞き、少し、黙る。何か思案した素振りを見せた後、ちらと目線だけをやった。)「…………………我が〝勇者〟の危機。……それを、目前で黙って見過ごせ、なんて………………普通なら、出来ない。…………ワガハイは、きっと動いちゃうかな。」(けれど、理解している。相手はカミサマ。それもただ力のみで押してくるだけの相手でも無く、高度な駆け引きを要求されると聞いた。彼女がそう約束してくれと言ってきたのも、咄嗟の対応力と冷静な判断が必要だからこそなのだろう。)「………善処は、するね。」(悩ましいものだけれど、彼は頷いた。風が吹き付けて来て、初夏だと言うのに、少しばかり彼らの体を冷やすだろう。) (6/18 15:09:10)
エレナ・ドラグノフ>
『あ……おい。私から言っておいてなんだが、そう悲しい事のようにものを言うな。簡単な話、おびき寄せたいポイントがあるから_____』いや、実際軽々しい頼みではないんだけども。けれど、彼を必要以上に深刻な気持ちにしたり悲しませたりしたのなら、それは問題だ。まさか、よりにもよって死にに行くんじゃない、勝ちに行くんだからとそう伝えた矢先______闇が、翻った。『_____手が空いている時には来ないくせに、忙しい時にばかり張り切るな、カミサマとやらは。』多分、マントやレインコートなどを継ぎ接いでいるのだろう。シルエットの捉えにくい膨らんだ格好は、巨大なフクロウを思わせる。それがよりによって、石段のすぐ傍らに広がる闇から現れ_____それは言わば鉤爪。黒に塗装した短刀が直線上に放たれ『聞こえているな』がき。という音と共に、それを払う手甲(ガントレット)の一打で地に落ちた。奇襲の成否で言うならこの場合は成。何せ、エレナ・ドラグノフは彼に標的を誘導するポイントすら言えていない____『黙って掴まっておけ、少しばかり走る。飛び道具その他、撃ち漏らすものがあれば貴様が止めろ。』なら、最適解はこれだ。彼に今は黙って抱えられておけと短く伝え、そのまま鍛え抜かれた健足を踏み込む_____王子様がやるような、お姫様抱っこでの逃避行にしては、追ってくる側に容赦がないが。説明無しならそう見えなくもない (6/18 15:26:35)
レギオ>
「ああ、そっか。………………なるほど。」(確かに、先に暗く考えしまうものでは無い。緩やかな空気を持ってして、ゆっくりと頷きで返そうとした、その時だ。)「……………………ああ、何か……それ。……分かるかも。」(どうにもタイミングの合わない所で遮ってくる。其れは覚えのある事だ。蛇の様な赤の双眸でそれを捉える。______あれが、ムサシ。影になっていてその全貌は分からないが、一般的な男性程の身長である。暗闇からの奇襲を素早く交わしたのならば、「勇者」と呼びかけるだろう。走り出す為に、最終的な目的地を聞くために。何故なら彼はその場所を聞いては居なかったのだから。)(然し。)『黙って掴まっておけ、少しばかり走る。飛び道具その他、撃ち漏らすものがあれば貴様が止めろ。』「______________…………………………!!?!!!?、ゆうッ…………………………」(ふわり、突然の浮遊感。抱えられたのだと分かったのは、体が折り畳まれ、彼女の顔が上に見えてから、ほんの少し後の事だった。同じ長身の、それも男を何の障害も無く楽々と運んでしまう辺り、両者では貴女の方が逞しいと言わざるを得ないだろう。都会の明かりも届かず、星灯がよく瞬く空。本来ならば逆であるはずのその逃避行、月明かりに照らされて2人の影は伸びている。ロマンチックなものだったのならば、ときめきと共に連れ去られる所だろうが_____状況も状況である。健足で走り抜く彼女の背後からは黒いシルエットが変わらぬ速度で此方を追う。先程撃ってきた短刀と同じものが放たれる。けれどそれは此方へと届く事はなく、鋭い音を響かせて石段の上に落ちた。このまま走り続けたのならば、人一人分抱えている此方が不利だろう。____しかし、貴女がそんなことをものともしないのならば、話は別だけれど。) (6/18 16:14:29)
エレナ・ドラグノフ>
『____問題ない。人間のひとりやふたり、抱えた所で物の数にはならん。』結論から言うと、山を駆け下りる形になる彼女の走る速度は、ムサシの上をいっていた。一点目は、鍛え抜かれた筋力が、人間一人を抱えるくらいなら行動を阻害される道理もないという事実。二点目は、追撃側はこの速さのからくりに気づいていること。これはあくまで、人間一人支えても全力疾走できるからこそ成り立つ超人技。自動車に人を一人乗せるか二人乗せるかで最高速度が変わるはずもないが、しかし搭載している体力(ガソリン)は一定だ。速度は確かに今は出せても燃費にガタがくる。なら、のんびりと時間をかけて追走劇(チェイス)を演じるだけで十分_____『鋭いが、それではあまりにも実直すぎる。真っ直ぐに飛ばすだけなら赤子にもできるぞ。』従って、そんな口三味線も無意味な強がりだと理解している。『貴様、ヤツの足止めを出来るか。ディスコードそれだけで攻撃しても無意味だが、ディスコードで倒した木や砕いた岩ならヤツに耐性はない。』体を翻し、向かい合うように一瞬視線が合わさる。飛来する紫電は合わせること三。それらは、馬鹿正直に致命傷を狙ってくる。確かに防御をするなら容易いが、しかしそれ故に一々躱したり受けたりしなくてはならないのは今のエレナには非常に効果的な妨害となっていて_____闇夜の森に、花火のように鋼が打ち合わさる。先程から混ざりこんでいる、クナイやら投石やら指弾により刃渡りを掴ませないようにしているが、それらはあくまで柔らかな人体に投げるべきもの。逆立ちしても鋼は貫けまい_____拳で叩き落とし、蹴りで薙ぎ払う。されどそれも、今の状況ではやや骨『できるかできないか聞いてすまないが____どちらにせよ、今のままならやれねば死ぬぞ。』 (6/18 16:37:47)
レギオ>
(けれどやはり、それも無限という訳でも無い。全てに必ず終りがあるように、体力にも限界が存在する。速度としては彼女の方が上である。そこそこに体重もある男1人を抱えてさえも尚_____そこに引っかかる、どうも飲み込めない感情が1つ。それは言うなれば、「不服」の様な。だけれど美しく、そして逞しく鍛え抜かれた圧倒的とも言えるその体を目前にしてしまえば、そんなものは陰に引っ込んでしまうのだ。威嚇射撃の様なそれも、此方を迫り立てる為のものだろう。)「 そう、そうだね。_______おっけい。…やってみよっか。 」(変わらずして緩やかな口調と雰囲気は、この状況にはあまりそぐわないだろう。余裕があるのか、やたらと肝が座っているのか。何にせよ、【 精神力 】が彼をそうさせているのだろう。……チョコラバーズ。それは実態を持たぬ、少し大ぶりのただの多面体だ。その持ち主である彼も触れることは出来ず、全てのものがこれについての干渉は不可能。勿論それに攻撃の手段などは無い。これに出来ることは、《サイコロを振ること》 それだけだ。)______【 1d100→92 】______《 マンダリンオーキッド 》『 君 は 支 配 を 呪 っ て い る 』(パキン、と音が鳴る。多面体はその姿を、その出目に相対したディスコードへと変貌させた。これの能力は、〝空中や体表などに現れエネルギー弾を精製し精度の低い追尾性を付与しながら宿主が認識した方向へと射出する〟ものだ。件のカミサマに直接ぶつけるのが手っ取り早いというものだが、それは能力や異常性を跳ね除けてくる。やはり非常に厄介な相手だ。貫通、拘束、それらが相手に使えないと言うのなら_______)(〝ドガンッッッッ!!!!!!!!!〟という激しい音をたて、ムサシのすぐ目前で半径1m程の爆発を起こした。爆発した際に崩れた石が辺りに飛び散り、閑静な森の中に木霊する。風が彼らの髪を揺らす。突然の爆破により、多少なりともムサシの動きを止める事だろう。) (6/18 17:47:48)
エレナ・ドラグノフ>
『……いいタイミングだ。このまま所定の場所まで突っ切る。』足止めは上々。能力による損傷はしなくても、能力により弾き飛ばされた木や枝や石は、散弾銃のように強かに彼の身体を打ち付け、肉を抉っている。だが____致命傷ではない。普通のカミサマならあれで詰み(チェック)だが、能力それ自体にはダメージを受けない性質により攻撃力の何割かが削られているのが手痛い。が、今はそれはもういいと思考を切り替えた。それは飛来する矢。あるいは駿馬だ。木に刺さった短刀を引き抜いてくすねたのをスタートの合図に、加速をつけて一直線に山を駆け下りて_____『一つ、改めて作戦を言い含めておく。私が絶体絶命のピンチになった時には、何があっても手を出すな。その一手後に……貴様には働いてもらう。』よりによって、廃れたキャンプ場かロッジ、山小屋の跡地にたどり着いた。石造りの、それなりに高い二階建て。見方によってはあるいは塔にも見える細長い建築は、多分何個かでセットであり、いくつかは既に倒壊した後なのだろう。だが、それに関してははっきりいってなんのしかけも問題もない。タダの開けた_______そう。開けた野原、先程の入り組んだ場所、日本刀なんて振り回す訳にいかない場所ではなく、わざわざ障害物など草木程度のここでケリをつけると口にして『それまでは、この廃墟に隠れていてくれ。やつを倒すとしたら____奇襲、その上で意味不明なものをぶつける他ない。』 (6/18 18:38:37)
レギオ>
(このディスコードは言わば博打だ。何が出るのか分からない、全てが運任せ。例えば物理的な攻撃を可とせず、精神に影響を与える、もしくは錯覚を起こさせるなどの能力を持つものであったのならば、能力を跳ね除けるムサシに対するにはあまり都合が良いものでは無かっただろう。爆発した時の土煙がその場所にはもうもうと立ち込め、2人の姿を遮るはずだ。結果的にこの時間稼ぎは成功とも言えるが、無論それだけで終わる訳にもいかない。彼本体の動きを停止させなければ、意味は無い。)『一つ、改めて作戦を言い含めておく。私が絶体絶命のピンチになった時には、何があっても手を出すな。その一手後に……貴様には働いてもらう。』「…………………………………」「……………………………………うん、うん_______分かった。そうする。」(まるで弓矢の様に、直線的に下っていく。周りの背景は加速し、鬱蒼とした木々が流れていく。ゆっくりと間を取った後に、渋々といった様子ではあったが、頷き返す。)(もう暫く人が立ち寄っていないのだろう。何かが起こるにはぴったりの雰囲気を持つこの場所は、暗闇に包まれていてとても動きやすいとは言い難い。)『それまでは、この廃墟に隠れていてくれ。やつを倒すとしたら____奇襲、その上で意味不明なものをぶつける他ない。』「……そうだね。……どうも、一筋縄じゃあいかない相手………」(月明かりがやけに開けた草地での唯一の明かりだ。黒い影だったムサシは継ぎ接ぎの布を捨て去り、時代錯誤の様な服装に身を包んだその姿を見せる。腰には大小の刀を帯びており、成人男性と何ら変わりのない人型である。獲物を探すかのような素振りをして、鋭い瞳を辺りにさ迷わせていた。) (6/18 19:10:06)
エレナ・ドラグノフ>
『_____行くぜ。』立ち向かうのは真正面。踏み込み、裂帛の気勢をもって衝突する。しかし、勝算がある___いや、なくてはならない状況下にしては、それに反し刀対拳。間合い(リーチ)の差は如何ともし難いままに進んでいく。故に、ムサシは特徴のない顔を憮然としていても、内心は嘲笑っただろう。ヤケ、それ以外は状況とするなら有り得べからざる盤面____『術式・起動(ディスコード・セフティオフ)』投擲したのは、先程くすねた短刀。そんなもの、悪あがきでこそあれ相手を討ち果たすことも出来なければ、かすり傷くらいにもなるか怪しい。しかし、ムサシはそれで尚手を抜かなかった。【秘剣______】腰元の刀を振り下ろし、投擲された短刀は軽すぎたのか地面に落下するというよりは、野球のファールボールのように奇想天外なる軌道を描いてあっけなく頭上に弾き上がる。そこから、半歩進みながら雷電の速さで股下から身体を断つ手首を返しての一刀。さる剣豪が鍛えに鍛え、一振の刀として、一人の男として研ぎ澄ませた究極の一刃_____【燕返し】『_____』化け物だ。投擲した短刀を弾くのは理解の内、しかし、それと同時に必殺の一撃をこちらに目掛けて飛ばしてくるという異次元。これを化け物としてなんと言う。『術式施行(オーダー)・空間跳躍(ビヨンド・ザ・エア)』だが、逆に言うのならば_____化け物でないなら、布石をうった意味はない。翻った短刀を手に取る。必殺の斬撃は空を切り、本来真っ二つのはずだった女はムサシの背後にいる。この摩訶不思議は、エレナ・ドラグノフのディスコードであるオムニア・ピンクサファイアによるもの。そう、このディスコードは徒歩や、あるいは登攀、跳躍が可能な範疇ならそこに宿主を届ける。ならば、短刀とて何十メートルかち上がるでもない。なら、手が届くのも道理。そして、同時に使われた二つ目の容量____『術式施行(オーダー・フェイルオーバー)・推進機関(アクセル・エア)』それは、彼女の成し得る最大限の推進力、跳躍力をしてその身体を一気に押し出し背後から突っ込むためのもの『輝石(オムニア・ピンクサファイア)______再装填・一斉照写(オーバーリミット・アクセルオーダー)』『術式・完結(セット)____地に伏す夜鷹の千年王国(ダインスレイヴ・オーバーロード)』それは、ムサシの背後から彼を襲い、勢いよく背中を貫いて抉った。血を吐く、肉を突き刺す反動が手首に返ってくる。『後は______オマエが倒せ。』『今日はオマエが、主人公だぞ?』 (6/18 20:02:04)
レギオ>
(エレナ・ドラグノフ______まさしく勇者と呼ぶに相応しい彼女は、果敢にかけて行く。辺りの風はゆっくりと頬を撫で、不穏さをましていた。やや遠目からでも伝わるピリリと張り詰めた空気が肌に触れた。その良く冴え渡る視力を持ってして、彼女とカミサマとの交戦を見守っていた。)「……………………………………ッ」(投げられた黒の短刀はムサシによって弾かれ、宙へと舞う。それはどれ程の長さだっただろうか。ものの数秒だったか、又はそれにも満たないか。目にも止まらぬ速さによって、彼の手に握られてきた刀は股下から貴女を引き裂かんとしていた。豪胆に、そして俊敏に。振るわれた刃が月明かりに光っていた。)______________(オムニア・ピンクサファイアの長い髪が踊るようにして揺らめいた。ムサシのそれは彼女に牙を剥くことは叶わずして、ただ空を斬る。最大限の推進力、背後に突如として現れた彼女の速度に敵うはずも無く、そのまま花弁の様に抉られた肉片が飛び散る。)(このディスコードは虚像だ。能力を発動する際に体表や宿主の背後に映し出される魔法陣の様なものであり、触れる事も出来ない。そして、ディスコードを発現させた後は解除するまでその地点から移動させることはできない。______既に、賽は投げられている。)「【 マンダリンオーキッド 】」(その名を呼ぶ。円状の線がその姿を大きくしていくようにして描かれ、ひとつの模様となり、彼の背後に展開される。直接的な威力が効かぬと言うのならば。奇襲的に仕掛けろと言うのならば。やはり、馬鹿正直にぶつかるだけでは勝機は無い。然し、確実に生み出された一瞬の空白。狙いを定めるは、その先。蛇の様な紅玉は、そのタイミングを逃さなかった。)『後は______オマエが倒せ。』『今日はオマエが、主人公だぞ?』(託されたものを、繋ぐために。)「_______放て。」(時速200kmで脆い壁を貫き撃ち放されたそれは、今度はムサシの目前ですら無く。ムサシの立つ、地面下を狙って爆発を起こさせた。それは、凡そ半径1m。視認されたとて、背後を突かれたその身では、一瞬では満足に避ける事も叶わない筈だ。) (6/18 21:07:02)
エレナ・ドラグノフ>
『……どうやら、一件落着という次第らしい。死ぬかと思ったが、案外上手くいくものだな。』決着。片やそれは誰が見ても動かない勝利であり、片やそれは誰の目にも明らかな敗北だった。息をつく。一撃も体に傷はないが、反面それは、一度でも傷つくようなことがあれば死んでいたという証。それが強敵だったか否かの基準にするにはあまりに心もとない事項である。『……え、と』ぽす、と傍らにいる彼に、気が抜けてかぐらりともたれかかって___『こ、これは、断じて!断じて!変な意味では無い。無い、が……。コホン。走り通しで少し疲れた。それに、下り坂ならともかく、これから登山しろなんてまさか言うまいな。』そう、山を思いっきり駆け下りている。しかも、昔は使われたかもしれないが、今は登山道をかなり外れたルートだ。このまま馬鹿正直に下山していたら間違いなく遭難。つまり、元いた場所___今ははるか坂の上に戻る必要がある、が。そんな風にできる元気は心もとない『……交代、だ。私はあんな風に運んでばかりで、1回も運ぶ側に居なかったからな。必要な体験という奴だ。』つまり、疲れたから甘えているだけの話______ (6/18 21:22:00)
レギオ>
(______機能停止。一時的ではあろうが、ぴくりとも動かなくなったそれに視線を向ける。勝利の女神は我々に微笑んだ様である。そこでようやく張り詰めていた息を吐き、彼らを取り巻く空気は幾分か柔らかさを取り戻していた。)『……どうやら、一件落着という次第らしい。死ぬかと思ったが、案外上手くいくものだな。』「はァッ…………………………………流石に、久々に?……肝が冷えた、って言うのかな。こういうのを。……ホント。…………」(その時、片腕に少しの重みを感じる。それを見れば彼女が此方にもたれかかっていた。「ゆう________」〝勇者〟と喋りかける前に、慌てたようにして弁解する貴女に遮られた。)『こ、これは、断じて!断じて!変な意味では無い。無い、が……。コホン。走り通しで少し疲れた。それに、下り坂ならともかく、これから登山しろなんてまさか言うまいな。』(パチパチと数回その瞳を瞬かせた後に、ふ、と口角は笑みを称えた。)「うん、勿論だとも。………………エレナちゃん。…今日はどうも、ありがとう。」(彼はこの上ない程、満足した様子であった。なぜなら貴女の、その豪胆さや美しく輝くその光をこの目で直接見る事が出来たのだから。______ああ、〝輝ける者〟〝我が愛〟〝我が勇者〟よ。貴方は彼に今日の主役だと言ってくれたが、彼は貴女が主役だと信じて疑わないだろう。)(倒れているムサシに然るべき対応をした後、今度ばかりは正しい立ち位置で、その魔王は彼女を抱き上げる。お互いに砂や埃にまみれてとても綺麗とは言えない状況ではあるけれど、貴女が甘えているのならば、求められるままに甘やかそう。それが愛情を愛する、彼の務めなのだから。)(鬱蒼としていて閑静な森の中。彼女を抱き抱えながら歩く影は緩やかに伸びていた。坂のはるか上についたのは、それから1時間後の事だったとか。) (6/18 21:56:05)
レギオ>
(それは何時もより少しだけ天気の悪い日だった。予報アプリではパッとしない曇りのマークが並び、太陽が顔を出さないことを示していた。案の定その日は一日中厚い雲が空を覆い、ほの暗い影を辺りに落としていた。下校する時刻になっても変わらずに今にも泣き出しそうな空に、傘を持っていないのであろう生徒達は足早に校門へと抜けて行く。彼も例に漏れずして、黒の無地のリュックを右肩に引っさげながら、その日はもう帰ろうとしていた所だった。)(さて、あれはつい先日の事だったか。そこだけまるで切り取られてしまったかのような、校舎の片隅にある埃っぽい空き教室での邂逅のこと。硝子の靴宜しく帰る間際、最後に『忘れて行って』しまった彼女の帽子を、彼はまだ渡せずに居たのだ。同学年という事もあって、何度か探したのだけれど、タイミングが悪かったのか、彼女には会えず終い。日を改めて渡そうかと思い、それはまだ彼の荷物の中で眠っている。)(A棟の昇降口から抜けてすぐのことだ。ぽつ、ぽつ、と天から降って来た数滴の雨水が地面に染みを作る。不規則に落ちてきていたそれは、直ぐに蛇口を捻ったかのようにして、ザアアアアア_______と激しく振り付け始めた。)「____________……………………」(ほんの少しぼうっと呆けた様にして、その場に立ち止まった。その間にも彼の肌は雨に振られて行く。天を見上げながら雨に降られているのだから、それは傍から見ればきっと間の抜けた様に見えた事だろう。然し何かを思い出したかのようにしてハッとすれば、雨を凌ぐ場所に駆け込もうと、飛沫を上げながら地面を蹴り上げた。一度出た昇降口にこれ幸いと入り、すっかり雨に濡られ暗い色に染まったジャージを脱ぐ。吸い込んで重たくなったそれは肌に張り付き、どうも気持ちが良いとは言えなかった。黒いマスクを顎にずらし、犬の様に頭を振れば、辺りには水滴が飛んでしまう。)「…………………………………ァ。」(横目でちら、と見て、声を上げる。その日、ずっと探していた相手。)「ほりしぃ。」(雨水が阿呆みたいに出てくるジャージを絞りながら、貴女の名前を呼んだ。) (6/20 21:11:40)
ほりしぃ>
『………………ァ。 』『 ほりしぃ。』「…………………………、…………………」( そう、貴方が名前を呼ぶ前から、彼女はあなたの存在に気づいていたんだと思う。でなければ貴方がこちらを見た時に、既にぶすくれたような顔をして、貴方を『わざと見ないフリ』するような態度は、見せていなかったでしょうから。)(それは遡ること数時間前。 羽毛布団のような分厚い雲が、 現に 『おやすみなさい』と 覆い被さった午後 ■時。 授業中ふ、と窓を見やった頃からそんな調子だったら、きっと雨が降るんだって思ってた。 そしたら案の定。)(………ポツリ、ぽつり。ぽつ、ぽつぽつ、ザァ──────────……………) ( 梅雨入りの空は、随分と泣き虫なのだ。 まるで春の別れを惜しむように、迎える夏の日差しが水無月を干して 乾かし、『文月』にするその時まで 溢れた涙を 雲でできた分厚い布団の中で、零し続ける。嫌になる明日と陰鬱。 彼女は『やっぱり泣いてる』と溜息をついて、昇降口にて佇んでいた気によっていつもよりもくるりと遊び、ふわりと広がる髪がうっとおしい。〝 帽子〟さえあれば 少しは前髪とか、隠せたりしたのかしら、なんて。 ) ( …ついこの間。しっかり者の彼女が『帽子』を初めて忘れた日。今日の今朝方、ひっそりと空き教室を見に行ったら帽子は無くなっていた。 きっとあいつがもっているんだわ、と想像するは安かったけれど、以降の帽子の行方は分からずじまい。結局今日は学年が同じだと言うのに、1度も会う事は無くかったのだ。 彼女はゆっくりと小さな腕でぬいぐるみのように本を抱き込む。傘なんて持ってきてない、だって朝は晴れてたから。天気予報なんて知らない。ウチにテレビはないから。朝ごはんを食べながら呑気にキャスターを眺める日常なんてあるはずがないでしょう。だから彼女はここに居る。 下駄箱から靴を取り出し、地面に置いて履いては、コンコン、と足を奥までしまい込んで1歩、2歩。 校舎からはすっかり、傘を持った生徒は勿論、持っていない生徒は尚のこと。急ぎ足で家に帰る彼等とは違って、彼女はゆっくりと歩き出したのならば、俯き本を抱え直して 、屋根のない外に足を踏み出すことも無く 立ち止まっては空を見上げていたその時に。)(そう、この時点で彼女は気づいていたのだ。何者かが走ってくる足音を。 『ほりしぃ』なんて随分と気の抜けた声でこちらを呼ぶ前から。貴方がジャージを絞っていたところも見ていた。その時は『なんでこいつがここにいる』と言った具合に目を見開いていたけれど、あなたと目が合ったらどうしよう、なんて考えたら 逸らす他なくて、気付けばほら。ポケットに手を入れたあと、何かを握りこんでまた手を出して、その〝何か 〟ごときゅぅ、とまた本を抱きしめる力を込めながら むす、と真っ直ぐ前を見ている。す、と通った鼻筋を持つ貴方とは違い、ふくふくとした兎のように、鼻は低く、水気を含んだまだあどけなさの残る横顔は、依然として貴方の方を見ない。) 「……………………、………」(が、しかし。雨の音がやけに目立つ沈黙の後、口を開いたのは紛れもなく、彼女である。) 「…………………………………」「………………………、…………………髪。」(…まだ、貴方の方を見ない。)「………………………髪、犬見たく振るののやめてくれませんか。水飛ぶんで。つうかいくら濡れてるとはいえ、外で服脱ぐとかヒトとしてどうなんです???? そもそも『ァ、』じゃねェですし。このほりしぃがいることにさえ気付かなかっただなんてオマエ、どこまで ちゃらんぽらんなんですか??それとそこまで濡れてんならそのまま走って帰りゃあ良かったじゃねェですか。馬鹿は風邪引かねェんですからね。」(随分と『御挨拶』なものだったろう。それもそのはず、彼女は貴方が嫌いだ。 捲し立てるようにスルスルと出てくる悪態は相変わらず。………そこまで貴方が嫌ならば、こっちからどこかに行けばいいのに。)(でも、行かない。)(〝 だって濡れるの嫌だもの 〟、なんてのは建前。雨のおかげで、まだ校舎の外じゃなくて『ここに居ていい』って、……口実が出来ている。)「…………………………、…………」「………………………………………、……………………」「……………………………………………」「……………………………………………… 、……」「……………………………………」( そわり、と身体が動く。ツン、とした表情は変わらないが、あなたに気づかれないぐらい密やかに、彼女の目は一瞬泳いだ。 未だに握れているポケットから取り出した『何か』。それは正方形の、薄ピンクの装飾が白色の清潔そうな布。 …………〝 ハンカチ〟だ。あなたに見えないようにちょっと腕で隠したそれを、………彼女はどうすべきか悩んでいる。なんて言えば自分も貴方も納得いくだろう。髪をあんまり振られて、こっちまで濡れたら困るから?それとも、貴方があんまりにもみすぼらしくて目に毒だから多少なりともマシになるでしょう、とか。 彼女は伏せた目を、再び泳がせ思考する。)「…………」「………………」「…………………」「………………、ぁ、……………………の……………。」 (用意したのは随分前だった。 なのにまだ渡せない。 理由がなければ目的を遂行できない。ここから離れないのは、門限を守れなさそうなのは『雨のせい』だし、貴方に会うのが仕方がなく、そして必然だったのは『帽子』のせい。じゃあ、『ハンカチ』を渡すのは、なんのせいにすればいいかしら。)(ふわついた前髪に落とされた赤色は、顰に倣った 隣人を未だに見ることは出来なかった。) (6/20 22:23:19)
レギオ>
(絞っていたジャージから雨水が出なくなったのを確認して、パンと広げてみる。洗濯機に掛けて広げた時のような軽やかさは無く、幾分か水気がマシになっただけであるらしい。流石にもう一度腕を通す気にはなれず、片腕をハンガー代わりにして引っ掛けた。額に張り付く前髪は雨に濡れて束になり普段よりも視界の邪魔をする。鋭さを持ち目に入るそれが煩わしくて、手でかきあげた。量の多く、そして長い髪の毛の先端からはぽたぽたと雫が垂れ、彼の足元には小さな水溜まりが出来ていた。予想以上に雨に降られていた様だ。)「……………………………」(ほりしぃ、と挨拶代わりに彼女の名を呼んでから暫く。しかし、貴女は口を開かない。そして彼もまたそれ以上話しかけるでも無く、濡れた後の処理を片手間に進めている。そんな彼らの間には沈黙が居座り、未だ激しさを持つ雨音のみが少し遠くに聞こえていた。コンクリートや草木が雨に濡れた時の独特の匂いがほんのりと香ってくる。ちら、と下に見える貴女の方へと視線をやった。湿気のせいか以前話した時よりもふんわりと広がっている髪を持ち、本をぎゅっと抱えながら、何処かむすくれた様な横顔が印象的だった。)『…………………………………』『………………………、…………………髪。』(その言葉に反応して、緩やかに、その首を傾げる。)『………………………髪、犬見たく振るののやめてくれませんか。水飛ぶんで。つうかいくら濡れてるとはいえ、外で服脱ぐとかヒトとしてどうなんです???? そもそも『ァ、』じゃねェですし。このほりしぃがいることにさえ気付かなかっただなんてオマエ、どこまで ちゃらんぽらんなんですか??それとそこまで濡れてんならそのまま走って帰りゃあ良かったじゃねェですか。馬鹿は風邪引かねェんですからね。』(沈黙を先に破ったのは、小さな隣人だった。やはり不機嫌そうな色を乗せながら、細やかに棘の生え揃った言葉は何時ものこと。)「………髪。…………………………………ああ、そう。いや、……ゴメンゴメン。急に降って来たから、少し驚いちゃった。でもこういう時に、置き傘?……っていうのが必要なんだね。……………うん……………中々、身に染みたな。」(そして、そんな貴女に対して、この男が意に介した様子も無く返答するのもそろそろ見慣れ始めたことだろう。)(〝そんなにも悪態をつくくらいならば、何処かに行きゃあ良いだろう〟だなんて憤慨する様子も無い。不愉快に肌に張り付いて来るTシャツも脱いでしまえと手をかけて居た時に『ヒトとしてどうか?』なんて言われたものだから、少し固まってから思い留まった。けれど彼は貴女の少しだけそわついた様子にも、ましてやその手の内に握り締められているそれにも気付かない。代わりに何かを思い出したかのようにして、バックをまさぐった。)『…………………』『………………、ぁ、……………………の……。』「…ああ、濡れて無かった。」(か細く呼びかけられた声と同じ程のタイミングで、彼は安堵した様に呟く。その手には貴女の帽子。濡れそぼった身体とは対照的に、ひとつの雫もついては居なかった。)「ほら、ほりしぃ。……………前、コレ。忘れてったでしょ。…………渡そうと思ってたんだけど、なんか……タイミングが合わなかったみたい。…………………………ああ、でもちょうど良かった。」(〝そんなにも悪態をつくくらいならば、何処かに行きゃあ良いだろう〟だなんて憤慨する様子も無い。不愉快に肌に張り付いて来るTシャツも脱いでしまえと手をかけて居た時に『ヒトとしてどうか?』なんて言われたものだから、少し固まってから思い留まった。けれど彼は貴女の少しだけそわついた様子にも、ましてやその手の内に握り締められているそれにも気付かない。代わりに何かを思い出したかのようにして、バックをまさぐった。)『…………………』『………………、ぁ、……………………の……。』「…ああ、濡れて無かった。」(か細く呼びかけられた声と同じ程のタイミングで、彼は安堵した様に呟く。その手には貴女の帽子。濡れそぼった身体とは対照的に、ひとつの雫もついては居なかった。)「ほら、ほりしぃ。……………前、コレ。忘れてったでしょ。…………渡そうと思ってたんだけど、なんか……タイミングが合わなかったみたい。…………………………ああ、でもちょうど良かった。」(鍔を掴んで下に居る彼女の方へと差し出した。もう忘れないでね、なんてほんの少し柔く口角をあげる。黒マスクが無い分、表情は見て取れやすい。______貴女がハンカチを渡すのに必要な理由が欲しいと言うのなら、よく出来ましたと言うように、帽子の代わりに出したって良いのだろう。兎に角彼はスン、と一度鼻を鳴らして、薄く息を吐く。止まないなぁ、とぼんやりと外の方へと視線を投げながら、どうやって帰ろうかと思案し始める。) (6/20 23:16:06)
ほりしぃ>
『…──────────ああ、濡れて無かった。』 「…………、………………」(言葉が被った。 僅かに目を見開いたあと、そのぶすくれた表情はさらに色を濃くするだろう。 嗚呼、この男。出会った時からいつもそう。【タイミング】が悪いのだ。 ) 『ほら、ほりしぃ。……………前、コレ。忘れてったでしょ。…………渡そうと思ってたんだけど、なんか……タイミングが合わなかったみたい。…………………………ああ、でも〝 ちょうど良かった 〟。』 「………………………………」(しかし、そんなことは露知らず、貴方は相も変わらずな悠然とした様子で言葉を紡ぎ、それを差し出すんだろう。彼女は貴方の方をチラリと見やる。そこにあるのはまるで軍帽のような、確かに彼女の帽子だった。そう、彼女は『忘れていった』のだ。漸く貴方の瞳を見やった瞬間、彼女は小さく口を開き、何かを話そうとしながら手を伸ばしたところで──────────……)『もう忘れないでね』(…ピタ、と。小さな手が止まる。 その言葉は日常生活では至って普遍的な言葉だ。忘れ物には気をつける、次からはしないようにする。何ら不思議なことではない。 )( しかし、彼女は人間と呼ぶにはあまりにもひねくれているのだ。) (きっと貴方は何かを思って口にしたでもなく、純粋な厚意でそういう言葉を投げかけてくれていた。 だが、『わざと忘れていた』彼女の立場からすれば、それは彼女の意向によって『 貴方に手を煩わせた 』に過ぎず、もうそんな面倒なことは御免だと、言われている気がして、なんとなしに 目を逸らす。 悪いことを自覚したことを、敢えて自覚したくない時の子供のようだ。柔く微笑む貴方、黒マスクが無い分表情は。…よく見えるからこそ、あんまり見たくない。)「…………」「…………………………ぁ、り、………ッ゛………………──────────あたりまえ、そう。〝 当たり前 〟です。ほりしぃは普段は忘れ物なんてしない。この間のあれは、たまたまです。〝 クソくだらねェ会話〟で馬鹿が移ったんでしょうよ。大体、教室に置いときゃ良かったじゃねェですか。あんなとこ、誰も来ないンですから 」(少々雑に、帽子を受け取り彼女はきゅ、と顔を隠すようそれを被る。この身長差であれば、彼女が貴方を見あげない限り、顔は見えないはずだ。彼女が〝 本来言うべき〟……言おうとしていた言葉を濁し、代わりに出るのはやっぱり最低最悪な悪態ばかり。チクチクと刺さる茨。 こんなことなら渡さない方が良かったかも、と思わせるには充分すぎる。) 「…………………… それとも〝ヒトとして 〟当たり前のことをしたまでですか?相変わらず〝 擬態 〟がお上手だこと。 なんにせよ帽子より濡れてちゃ世話ねェですけどね。」 ( 悪態は続いていた。擬態だなんて嫌な言い方。彼女は貴方の正体を知っている。 服を脱ぐとき、彼女の言葉に合わせるように手を止めたのを気づいているのか居ないのか、やたらとニンゲンに固執しているように映ってならないからこそ、貴方と自分を隔てるような皮肉ばかりである。 ……………しかし彼女はそんな中で、ようやくハンカチを握りこんでいた手を緩めていたことだろう。『全く仕方がない』と言った具合に、随分前から用意していたそれを、貴方の方を見ずに差し出す。)「………………………………要らねェなら要らねェでいいです、あんまりみすぼらしくって見るに耐えなかっただけですもの。」 (…………………そしてそんな彼女は、きっと貴方が数秒の間を置いただけでも、彼女はその言葉を投げかけ、早々にハンカチをしまおうとしてしまうだろう。 理由としては及第点、「ありがとう」のひとつも言えない。別に要らないって言われたって良い、本当に気にしないわ、なんて。………………そのいらないの言葉を聞く前に切り出したのはこっちの癖に。) 「…………………………………………傘ぐらい、………今から借りに行ったらどうですか。ガッコーには常備された傘、何本かあるんじゃなかったでしたっけ。」「………………………………、……………しらねェですけど。」 ( 持ち出したのは1つの提案、貴方が帰るための方法。 丁度貴方が『どうやって帰ろうか』を思案していた途中だったと思う。 彼女はまた、あなたの方を見るのを辞めてしまった。) (6/21 00:19:57)
レギオ>
(…ほんの少しだけ、貴女の動きが止まった。すんなりと受け取らない貴女にどうかしたのかと頭に疑問符を浮かべながら、差し出したままの動作で彼女の顔を伺う。そう、彼は知ら無かった。貴女がたまたまではなく、故意的にその帽子を〝忘れていった〟事だなんて。それが次会う時の口実になっていただなんて。だからこそ、きっと大切な物だろうから、『忘れないでね』と口に出したんだ。)『…………』『…………………………ぁ、り、………ッ゛………………──────────あたりまえ、そう。〝 当たり前 〟です。ほりしぃは普段は忘れ物なんてしない。この間のあれは、たまたまです。〝 クソくだらねェ会話〟で馬鹿が移ったんでしょうよ。大体、教室に置いときゃ良かったじゃねェですか。あんなとこ、誰も来ないンですから 』(それから少しの間を開けて、彼の手からややひったくる様にして、それは受け取られた。別に感謝の言葉を期待していた訳ではないが、その代わりに吐かれた悪態は、多少彼の不意をついたようだった。彼女は言葉を続ける。)『…………………… それとも〝ヒトとして 〟当たり前のことをしたまでですか?相変わらず〝 擬態 〟がお上手だこと。 なんにせよ帽子より濡れてちゃ世話ねェですけどね。』(節だった長い指で頬をかく。彼女の表情は帽子の下に隠されてしまって見ることは叶わない。顔を貴女から少し背けて、顎にかけていたマスクを取り、ぐし、と顎に伝ってきた雨水を甲で拭う動作をした。)「…………そ、_________……」(口を開き、『そうだね、ほりしぃはしっかりしてるから』と言いかけて、喉まで出かけたその言葉を飲み込むようにして、ゆっくりと閉じる。似たようなことを言って彼女の機嫌を損ねた事を覚えていたのだろう。)「……………………………………………………」「…………そう……そうだね。……ほりしぃは〝くだらねェ〟って、そう思うんだろうけど。でも、ワガハイは、キミと話せて良かったって。……うん。そう思ったよ。」「それに_______……」「…………………………………………」「…………そう、あの部屋。……………………なんてったって、埃っぽかったからね。」(だから、持ち帰ったのだと。…けれど本当は、彼はあの物寂しい空き教室にポツンと一つだけ貴女の私物が取り残されてしまうのが、なんだか見ていられなくて。そのままにしていれば、忘れ物に気付いた彼女が後日取りに来るだろうとは思ったけれど。姿を重ねたわけではないが、机の上に置いて帰ることは、何となく出来なかったのだ。)『………………………………要らねェなら要らねェでいいです、あんまりみすぼらしくって見るに耐えなかっただけですもの。』「…………………へ。」(差し出された手に握られている物を見た。ほんの数秒間だけ、空白が生まれる。……まさか意外な行動だと彼の目には映ったから。けれど彼女は言うだけ言ってさっさとしまってしまおうとするものだから、慌ててそれを制した。)「あ、待って。いるいる。要るよ。」「……ワガハイの持ち物で拭けるやつに生き残りは居ないみたいだし。ほりしぃの帽子が濡れてなかったのが運が良かったくらい………………やっぱり、すぐ引き返して正解だった。」「助かっちゃった。ほりしぃ、…………」「 〝ありがとう〟 」「…………………………あ。洗って返す…でも、良いかな。」 (白色の、薄桃色の装飾が施された可愛らしいハンカチを受け取る。彼女が言わなかった_____否、言えなかった言葉を何の障害無しにさらっと述べながら。)『………………………………………傘ぐらい、………今から借りに行ったらどうですか。ガッコーには常備された傘、何本かあるんじゃなかったでしたっけ。』「……………………ん。……ああー…………そういえばそんなの、あったっけね。……すっかり忘れてた。」(言われてから思い出したかのように、ああ、と小さく声を漏らした。外の雨は先程の蛇口をひねったかのようにして振りつける激しさから幾分衰えはしていたが、未だに晴れそうな見込みは無いようだ。)「じゃあ、借りに行こっか。……職員室の近くとかにあるよ。…………きっと。」(貴女から受け取ったハンカチで体の表面を軽く拭いた。漸くぽたぽたとひっきりなしに垂れてきていた雫がマシになったらしい。少しずつ広がっていた足元の水溜まりは、それ以上大きくはならない様だ。)「…………………………………………」「…………………………ほりしぃも、傘無いでしょ?………あと数本くらいなら、きっとあるよ。」(くるりと校舎の教室に伸びる廊下へと身体を向けた。そこで貴女の方へと顔を向けて、『行かない?』と誘い出す。これで持っているのならば別に良いのだろうけれど。……見たところ、そうでも無さそうじゃないか。) (6/21 01:49:24)
ほりしぃ>
(…彼女もまた、貴方の真意を知らなかった。そうやって帽子を届けたのは『人として当然』で 、貴方の性格からして、何か義務的な感情が働いたにすぎないと思っている。事実、彼女は卑しいからこそ、『それに漬け込んで』…帽子を置いていったと言ってもいい。だから彼女は何も言わない。〝 あの部屋は埃っぽかった〟。それを言葉通りに受け止めるのみだ。 差し出したハンカチもそう。別に受け取らないならそれで構わない。…構わないとは言うくせに、『いらないよ』その言葉が来る前に、ハンカチを隠してしまおうとするのは言わずもがな。)『あ、待って。いるいる。要るよ。』「……………………………、………」(止められた彼女は、貴方をジトリと無言で睨むだろう。〝受け取らないんじゃないのかよ 〟と言わんばかりだ。誰もそんなこと言ってなかったのに。)『……ワガハイの持ち物で拭けるやつに生き残りは居ないみたいだし。ほりしぃの帽子が濡れてなかったのが運が良かったくらい………………やっぱり、すぐ引き返して正解だった。』『助かっちゃった。ほりしぃ、………』『 〝ありがとう〟 』『……あ。洗って返す…でも、良いかな。』「…………、…」(…〝洗って返してもいいかな 〟。)(その返答に、彼女は間を開けるだろう。ひとつの口実、一つの理由。決してそんなつもりじゃなかった。そうじゃないけど、でも。思わぬタイミングでまた『次に逢うかもしれない』の口実が出来てしまったこと。それに関して、彼女は何を思うだろう。〝 ありがとう〟、その言葉だって、彼女が本来貴方に言うべき言葉だったはずなのに 気づけばまた、あなたの方から先に言っている。彼女はそれらを素直に言えないどころか、その言葉を貰ったってどこにしまえばいいかも分からない。受け止め方を知らないのだ。だって普段、言われないから。何となくむず痒い、何となくやり場に困る。 これが学生同士の〝 普通〟なのだとしたら、彼女にとってその普通は、こなして流して呑み込むには、あまりに難しいことなんだ。事柄一つ一つ咀嚼するのに時間がかかっているのか、どう返すのが正解なのか迷っているのか。) 何故だか僅かに戸惑いや驚き等の感情で緩みそうになった表情を、一段と不貞腐れたような顔をして俯いていた彼女が絞り出した言葉は、結局。)「……………………、……」「………………、………別に洗わなくても、そのまま捨てたっていいんですケド……………………勝手にしたらどうですか。」」(…やっぱり、茨がついたようにチクチクとあなたを刺すだろう。 劣等、劣等、また劣等。貴方はママに言われたかったことも、自分がサラリと言えたら良かったことを、人間でも無いくせに、…いや、人間じゃないからこそ吐いているのか。それが無意識であることを、彼女は知っているからこそまた厄介なのだ。 帽子は返して貰った。ハンカチは、貸せた。…あと一緒にいる理由はもう無い。提示したのは 『貸し出している傘の件』。) 『……………………ん。……ああー…………そういえばそん(…ぼんやりと、貴方は呟く。)『そんなの、あったっけね。……すっかり忘れてた。』「…………ハッ。ホント、いつもぼんやりしてるからそういう肝心なことも忘れるんですよ、オマエ。とっとと借りてればさっさと帰れたでしょうに。」『……………………ほりしぃも、傘無いでしょ?』「…………、ねェですけど。」『……あと数本くらいなら、きっとあるよ。』「…………………………………、……、」(…黙り込んだ。そう、彼女は傘を持っていない。しかし、『職員室に貸し出し用の傘があることを知っていた』のだ。それをとっとと借りて、さっさと帰ればよかったのは彼女の方。しかし彼女は、それをしていない。 雨音がやたらと詠う午後■時 。緩んでいた手元に、またきゅう、と力が篭もる。むすくれた表情の中に、僅かに彷徨う伏せた瞳。)「……………………、………………………………」(………………彼女は。)(……帰りたく、なかった。理由がなくちゃ自分のやりたいことが出来ない彼女は、今、その帰りたくない理由を『雨のせい』にしていた。傘が無いから、濡れるのが嫌だから、だから〝 まだ〟あんな所(おうち)に帰らなくていいでしょう、って。雨に乗って、小さな我儘に縋っていた。でも今、傘を借りちゃったら。『雨が降っているから帰れなかった』理由は、もう使えないじゃない。)(でも。)(……それを言って、もしも貴方に『門限は守らなきゃダメだよ』とか、『帰れる手段があるなら早く帰った方がいいよ』とか言われたら、彼女はきっと、なんの反論も出来ないんだろう。だって自分でも、悪いことをしているって心のどこかで分かっているから。分かってる、分かってる。 分かってるからこそ、中々言葉が出てこない。……もう遅いかもしれないけど、『悪い子だね』 とか、貴方にさえも言われる事を避けている。用意出来る言い訳がない分、今の状況は彼女には分が悪い。)「……、………………………………、……別に、帰りたきゃ帰ったらいいでしょう。あんま遅いと、オマエの〝 家族 〟が心配してるかもしんねェですもんね。 」(素直について行くのは良い子。それが出来ない彼女は悪い子。動かない。……動けなかった。 もしかしたら、貴方は帰らなくちゃいけないかもしれないから、引き留めるのもおかしな話だからって、つっけんどんに言葉を紡いで。彼女の世界では、家族がいるのが当たり前。 故に。)(〝 貴方にも家族がいる前提で、投げかけて〟、突き放しては 帽子の鍔を抑えて俯く。魔王とは言え、生きているのなら。ここに存在するのなら。…誰か貴方の周りには居ないのか、と。) (6/23 19:31:57)
レギオ>
『………………、………別に洗わなくても、そのまま捨てたっていいんですケド……………………勝手にしたらどうですか。』「……捨てないよ。」「………………捨てない。」(ちくちくと肌を刺してくる棘は衰えることはなく。彼は首を横に振りながら、それを緩やかに否定する。『人から借りた物はきちんと返すこと』……人が物心着く前の幼い頃から教えられていた言葉だろう。郷に入っては何とやら。だから彼も、それに倣う。彼が王より与えられたのは好奇心である。それには『素直さ』も付与していた。自身の心に素直になり、新たな学びを享受し、広がる景色を見渡す。……ありのままを受け止めて、それを嚥下する。言い換えるならばそれは『奔放さ』か。……そしてほんの少しだけ懐古するような、遠くを見つめる様な顔をしていたのは、絵に描いたようなむすくれたその顔に、彼は何時か見せられた不機嫌な小動物の動画を重ねてしまったからなのだろう。)「…………………………………………………」「………………………………?」「……………………………………………ほりしぃ……?」(さて、傘を借りに行かないかと誘い出したは良いものの。当の彼女はそれに応じるでもなく、むすくれた表情の色を濃くしていた。彼女の名前を呼びながら、不思議そうにそれを見つめている。…彼女は傘を持ってないと言った。だからこそ同じ様に突然の雨に足止めを食らっているのだろう。ならば借りに行けば良いのに______何が気に食わないと言うのだろう。〝彼の中には、まだパズルのピースが足りていない。〟貴女の心中なんて知らないまま、貴女の方に体を向けて、貴女を見るその目はやはりきょとんとした様子だった。)『……、………………………………、……別に、帰りたきゃ帰ったらいいでしょう。あんま遅いと、オマエの〝 家族 〟が心配してるかもしんねェですもんね。 』「_____________…………………」(ぱち、ぱち、とその瞳を数回瞬かせる。まるで意味を理解していないような、そんな間の抜けた表情を浮かべていた。ほんの少しだけ考えたあと、彼は唇を開いた。)「…………………………さぁ?」「……ワガハイは別に、そういう……家族とか、時間を気にする人とか______居ないから。…心配しなくたって、大丈夫だよ。」「ほら、ね。だって、ほりしぃ。………………ワガハイ、〝シキガミ〟だよ。」(彼にも家族が居る、そんな前提で紡がれた突き放す様な言葉。けれどそれは、その前提は、普通ならば当たり前の事なんだろう。家族という存在は、血の繋がりのある一族という存在は、彼にはある種の御伽噺の様に遠いものとして響いていた。あっけらかんとして、それは言う。)(彼が傘を取りに行こうと言ったのは、貴女には〝門限〟がある為に、こんな所で待っていては遅れてしまうと思ったからなのだ。この前帽子を忘れたのは、門限が近付いて急いでいたから。彼女は『家族想い』の『良い子』だから________きっとそうなのだと、思っていたから。)「……………ほりしぃは、良いの?」(だから、問う。)「帰らなくっても。……だって、キミには。…………家族が、居るんでしょ。」(肌の表面に纏っていた水はいつの間にか乾いたようだ。体温は奪われず、無機物的な冷たさがそこにはあるだけ。)「……………………それともまだ、…………」「あまり、帰りたくない?」(帽子の鍔で隠れてしまって見えないその顔に、彼は静かに尋ねた。) (6/23 20:39:44)
ほりしぃ>
『…………………………さぁ?』『……ワガハイは別に、そういう……家族とか、時間を気にする人とか______居ないから。…心配しなくたって、大丈夫だよ。』「……、…………………………」 (彼女は、驚いたように帽子の中で目を瞬かせ、密やかに貴方に目を向けた。ほら、また貴方と彼女の相違点。彼女には沢山の『家族』がいる。それは血縁があるかどうかじゃない。孤児院特有、宗教特有、『その施設に居る者は皆家族』。姉様達に囲まれる末に近い幼い少女がロネリーだ。対する貴方は孤高の魔王。そこに縛りは存在せず、正しく唯我独尊。) 「……、じゃあオマエ、どうやって産まれたんですか?……まあいいですけど。家族が居ないなんて寂しいんじゃありません? お家に帰ったら独りぼっちなんて。 」(……まるで『ニンゲン』の尺度を宛てがうような質問は、貴方に通用しないことは分かってた。お腹から生まれるだとか、母親だとか、そういう土俵に居ないんじゃないかと、薄々感づいていた。でも言わなくちゃ自分が立っていられない。 そんな自由な貴方が羨ましいだなんて思っていない。思ったいないったら、と。心の中にほつりと出てきた小さな少女を潰して、『家族が居ないなんて可哀想ね』と見下すような言い方をしなくちゃ、自分の砦がまた崩れるから。 ……それにアナタ、寂しがり屋じゃない。) 『……………ほりしぃは、良いの?』 「……、……何がですか?」(彼女は、 ツン、としながら小さく返した。何を問われているのかは分かっていた。)『帰らなくっても。……だって、キミには。…………家族が、居るんでしょ。』「ええ、居ますよ。そりゃもう、〝沢山 〟。…オマエと違ってね。』(それ以上質問しないで欲しかった。)『…………………それともまだ、…………』(…嗚呼、言われちゃうな、って思っていた。)『あまり、帰りたくない?』(………こうやって、言われてから。彼女は。何度も何度も心の中で練習した通りの。)「……………、……馬鹿、言わないで下さいよ。……そんなわけ、ねェじゃねェですかッ……そんなの、そんなの、……………」(〝早く帰りたいに決まってる 〟と、言わなくちゃいけなかった。)(彼女はあなたの方へ顔を向け、睨みあげるだろう。)「ッ……、でも今日は雨、降ってますし。図書室に本、借りなきゃ行けなかったですし……ッぬ、…濡れるのが嫌で、だからやむまでここにいないといけないしッ………別に雨は、ずっと降ってるわけじゃねえですし、傘って行ったのも、オマエが早く帰ればいいって思っただけでッ……、『ママ』達が家で待ってるから〝ホントは早く帰らなきゃ行けないけど、帰れない 〟んですッ…………〝 仕方がない〟じゃないですかッ………そうですよね?」( きっと貴方の目には、やたらと必死に否定しているようにしか見えなかったかもしれない。だってだって、『責められる』と思ったんだもん。『ダメだよ』って言われると思ったんだもん。貴方に否定されるの、凄く嫌なんだもん。 )( 焦燥。)( 息が上がる。ツン、と鼻の奥が痛くて、僅かに涙が溜まる。帰りたくないって言ったら 『帰らなきゃダメなんだよ』って言われちゃうって思うと、ほんの少し怖いじゃないか。だから 必死に『分かってるよそんなこと』『帰るよ、直ぐに』って自分から言って、これ以上何も言われないように 。) 「………………………ッここに居ちゃ、悪いですか。」「…っ………ダメなら図書室戻って、お勉強しますし、…空き教室で、課題だってやりますし……………だから、」 「……………………………………………っ……………」「………帰れないのは、〝 悪い子 〟じゃないはずです………………」 「……………………カミサマになったら、そんなの関係なくなるでしょうが。」 (彼女はぽつりと呟く。 〝ずっと降ってるわけじゃない 〟そう言ったのは彼女の方。 心做しか弱まった雨にさえ、彼女は気を取られてしまう。)(貴方の『それはダメだよ』が来る前に、早く言い訳を考えなくちゃいけないのに、上手く思いつかない。 捨てないって言ってくれたハンカチも、捨てられちゃうかもしれない。 ) (6/23 21:30:48)
レギオ>
(彼は、曖昧だった。王から生み出された他の個体との明確な違いとは一体何かと問われれば、思わず首を傾げてしまうほどに。例えば【人を殺したこと】があるのかと問われれば、その手を汚していないとしても、はっきりと『無い』と否定出来ない程に。彼は個で、多数だ。どうにもぼんやりとした境界線で、じんわりと溶けだしてしまえば、自分が自分で無くなってしまいそうな。けれどそこには微塵の恐怖も無く、何故なら元々はひとつだったのだから、当然のことだ。芽生えた個の特有の意識や性質も……きっと、おまけ程度にしかならないのだろう。)『……、じゃあオマエ、どうやって産まれたんですか?……まあいいですけど。家族が居ないなんて寂しいんじゃありません? お家に帰ったら独りぼっちなんて。 』(だからこそ、貴女のその言葉には、若干眉尻を下げ困った様な笑みを浮かべるんだろう。知らない事は、経験したことの無い事は、感じたことの無い事は、想像でも補完されないのだ。〝普通のニンゲンだったのならば感じるのだろうか〟だなんて、そんな風にすら思ってしまう。世界に貼られた硝子の、その向こう側には決して立ち入ることは出来ないのだと。何故だか今はそれが酷くもどかしく、むず痒く感じられて。……彼を、何かが追い立てる。そんな感覚が、しとしとと降り注いでいた。)『……………、……馬鹿、言わないで下さいよ。……そんなわけ、ねェじゃねェですかッ……そんなの、そんなの、……………』(ぎ、と顔を上げて、彼女は眉に稲妻を走らせながら、鋭く睨み上げてくる。両者の視線は、そこでかち合った。)『ッ……、でも今日は雨、降ってますし。図書室に本、借りなきゃ行けなかったですし……ッぬ、…濡れるのが嫌で、だからやむまでここにいないといけないしッ………別に雨は、ずっと降ってるわけじゃねえですし、傘って行ったのも、オマエが早く帰ればいいって思っただけでッ……、『ママ』達が家で待ってるから〝ホントは早く帰らなきゃ行けないけど、帰れない 〟んですッ…………〝 仕方がない〟じゃないですかッ………そうですよね?』 (【雨が降っている】【本を借りに行く】【やむを得ず】____やはり貴女は、本当は家に帰らなくちゃ行けない。けれど、理由があって。タイミングが悪くて。都合が重なって、〝帰れない〟んだと。……決して、〝帰りたくない〟訳じゃ無いんだと。)(でも、どうしてだろう。彼の目には、貴女が酷く幼く見えて仕方が無い。元々の体の華奢さ故の幼さが、今はずっともっと小さな少女の様で。必死に繋げるその言葉も、何処か言い訳じみていて。また、あの時みたいに。今にも小さく音を立てて手折れてしまいそうだった。)『………………………ッここに居ちゃ、悪いですか。』『…っ………ダメなら図書室戻って、お勉強しますし、…空き教室で、課題だってやりますし……………だから、』『……………………………………………っ……………』(小休止。けれど彼は口を挟まない。静かに、黙って、それを聞いている。)『 ………帰れないのは、〝 悪い子 〟じゃないはずです………………』(小さく小刻みに震えているように聞こえる声も、雨に掻き消されてしまいそうだった。) 「………………………………………………」(彼は、息を浅く吐いた。それは呆れた様なため息では無く、ただ若干詰まっていた空気を吐き出すための、無為な活動。)「…………………………帰れなかったら…帰らなかったら。………………〝悪い子〟なのかな。」「ううん……ワガハイは、待つ事も、待たれた事もないから。………少し分かんないけど。」「……………………………………………」「……………………………………まだ雨は降ってるし。…学校はまだ閉まってないし。ワガハイ、キミともっと話がしたいし。……課題だって、なんだって。やる事はあるんだから、……………此処に居たってさ、……………〝大丈夫〟だよ。」「……………………………それでもしも、家族から叱られたらさ。………真っ直ぐ家に帰らない〝悪い奴〟に捕まってたって、そう言ったって良いんだから。」「…………………………………………だからキミは、〝悪い子〟じゃない。」(彼は、貴女を否定しなかった。何時もの緩やかな口調で、緩慢とした様子で、貴女の焦燥を解くかのように。)「………………………だからさ、まだ、〝ワガハイとお話していてよ〟」 (6/23 22:45:39)
ほりしぃ>
…………ッ、…………」(ほう、と溜息をつく音がした。貴方はそんなつもりが無いかもしれないけど、彼女にとってはそれが『呆れて思わず漏れ出たものなんじゃないか』と気が気でなかった。びく、と僅かに肩を跳ねさせたのがその証拠だ。なんでずっと黙ってるの、なんで何も返さないの。否定しないの。様々な不安要素が心中をじわりと埋め尽くす。貴方にはバレてるんじゃないだろうか。これがチンケな言い訳だって。色んなことを言っておいて、結局は『帰りたくないだけ』なんじゃないかって。)(たまらず彼女は口を開こうとするだろう。そして言葉を──────────…)『………………………帰れなかったら…帰らなかったら。………………〝悪い子〟なのかな。』「……………………………だって、……………それは、…………………………」『ううん……ワガハイは、待つ事も、待たれた事もないから。………少し分かんないけど。』 『……………………………………まだ雨は降ってるし。…学校はまだ閉まってないし。ワガハイ、キミともっと話がしたいし。……課題だって、なんだって。やる事はあるんだから、……………此処に居たってさ。』『……………〝大丈夫〟だよ。』 ( 彼女は、眉間の皺を解いて、 呆気に取られたような顔をするだろう。てっきり『悪い事だと思うよ』とかえってくると思っていたんだ。そしたら自分は絶対に『 ちゃんと帰る』と明言するつもりだったんだ。他にも沢山の言い訳を考えたいたさ。しかしそれらは全部『必要がなくなってしまった』。) 『…………………………それでもしも、家族から叱られたらさ。………真っ直ぐ家に帰らない〝悪い奴〟に捕まってたって、そう言ったって良いんだから。』『…………………………………………だからキミは、〝悪い子〟じゃない。』 (こういう時は、なんて答えるのが正解なのだろうか。 『普通の人間ならば』なんて返して居たのだろうか。 貴方がどうやって生まれたのか答えられなかったように、彼女だってこんな些細な日常への『最適解』は思い浮かばない。クルクルと湿気によって癖のついた前髪の下、丸い瞳はただただ貴方を見つめるのみだ。)『……………………だからさ、まだ、〝ワガハイとお話していてよ〟』「……………………、…………なん、で。」(安堵の中の、僅かな不安。何故『責められないのか』と、空を切った予測が外れたことによる浮遊感。責められたかったわけじゃない。しかしきっとママ達ならそれはいけないことだと言うんだもの。 王は1人で王になることは無い。貴方にはきっと国民がいた。…そしてもし、本当に国民がいたのならば、その国民は貴方の下で『自由』を得ていたのだろうか。)(赤の女王達は白い薔薇を赤く塗れと命じるが、貴方はどんな色の薔薇が咲いていたとて、それを塗り替えることは、しないんだろうか。)(投げかけようとしていた質問を、彼女は飲み込む。目を伏せ、俯き、逸らしたのは彼女の方。)「……、…………………………………今日は、…数学の、課題が出されていたはずです。」「………………雨が止むまでの間なら。………お喋りより、よっぽど有意義なことをだと思いますケド。」「………………………………、テストも近いですし。」「……、課題は明日の3時限目までに提出です。……………………………ですから。」 (もそもそと、小さい声で言いにくそうにつぶやく言葉の数々は、やたらと言い訳が多いけれど。きっと貴方の提案には賛同しているんだろう。 大丈夫、大丈夫。貴方は『ニンゲン』じゃないから。一緒に過ごして、ちょっとお話して、宿題一緒にやっても怒られない。ニンゲンよりきっと『マシ』。大丈夫、悪い子じゃないわって。ママ達を愛してやまない、小さな女の子『ロネリー』に、『ホーリーシット』は言い聞かせていた。)「……………本当に、雨が止むまでです。雨がやんだら、すぐ帰りますから」「つか、……ほりしぃが誘ってるわけじゃねェので帰ってもらったっていいんですけど。なんか一緒にやる、みてえな前提で話してますけど………………嫌とか、無理に合わせてるとか、そういうのマジで必要ないんで。」( 人にこうして何かを提案して、一緒にやろうとするのは彼女自身は初めてだ。ニンゲンに対しては出来なかった。サクラダってやつはカミサマとか言うけど、クッキーなんて貰って食べたらママに怒られるかもしれない。科学者にも誘われてばかり、それを毎回断ってるのは紛れもない自分。だって『それらをやってもいい、都合のいい言い訳』が思いつかないから、怖いんだもの。きっとあなたは何も思いやしないだろうけど、彼女にとって今、この瞬間はそれなりに緊張する。だから沢山の逃げ道を作ってしまうんだ。雨が止む頃、帰ったら。きっとほんの少し、門限を過ぎちゃうんだろうけど。それだって『仕方がないこと』なんだ。彼女は様子を伺うように、貴方をそろりと見上げるかもしれない。) (6/23 23:43:15)