Hans・Schmidt

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Hans・Schmidt> 
(がり、がり。がりがり。がりがりがりがり。がりがりがりがりがりがりがりがりがりがり。齧る、齧る、ひたすらに爪を齧る。瞳に映るのは、目の前を行き交う能天気そうな生徒たち。どいつもこいつもヒーローなんて我の強い連中の代役に明け暮れてるせいか、今目の前のことで忙しいですみたいな面してやがる。悩みなんかなくてやるべきこと、やりたいことをやるだけ。あってもそのうちなんとかなるし誰かがなんとかしてくれる。そんな【自分】というもの自体には何一つ疑問を抱くことのない幸せそうな別人種ども。見るだけで、聞くだけで、感じるだけで、そこにいると思うだけで寝不足の頭はどんどんと苛立ちを募らせていって、爪の荒れと目の下の隈の深さをより一層加速させていく。腹立たしい。妬ましい。負の感情が渦の様に立ち上り、道行く者は皆一様に壁にもたれる彼から悪鬼から距離をとり、それが自分と他の人間を隔てる壁のようでまた更に苛立ちが吹き上がっていく) (ああ、腹立たしい。妬ましい。恨めしい。羨ましい。限界だ、これ以上鬱憤を溜めこんでも誰も得をしない。現状自分の一人損だが、これ以上負債を増やさないためにそっとその場を離れようとして)「ああ……ごめん。今ど…………」(ちょうど、そこを通りかかった少女の前に、立ちふさがる形になった。ついさっきも何度か見かけたような、一度も見ていないような、どこにでもいそうな印象の人物に、横に逸れようとしたHans・Schmidt『どこにでもある名前』の足は止まった。)   (7/6 22:45:23)


蕪木 千歳> 
( 日常は何も変わらずに。カミサマを倒したからって出し抜いたからって、ヒーローとしての精神が強くなったわけでもなく。ただ当たり前のスタート地点が見えただけ、それだけの、変わらない日常。人気の減り出す教室で、読みきることの無い文庫本をぱらりと捲っては少しも読む気が起きずに鞄の中へ。忘れる前に書かなきゃいけない報告書は、…机の中で端がちょっぴり折れていた。バス停に着かなきゃ行けない時刻まではまだ何十分か余裕があって、その間に本を読むなり、報告書を書くなりするべきなのだろうけれど。立ち上がるために後ろに引かれた椅子はやけに重かった。とぼ、と歩く足取りはゆったりと。視線は少し先の廊下を見据えて。歩き慣れた昇降口までの道なりを唐突に塞いだのは白い布。反射的に止めた足取りはくらりと重心が後ろに傾げて、ほんのりよろける。と、と後ろに1歩下がって、なんとかバランスを取り持った。『 ひゃ…………っ!え、と、…す、すみません………? 』ばくばくと心臓が鳴る胸元に拳を添えて、驚きに見開いた瞳が何度か瞬く。白い、パーカーに髪に肌に、惹き付けられる真っ赤な瞳。それだけに隈が痛ましく目立っていた。そんな貴方は明らかに言葉を途中で止めて。頭の中に浮かぶクエスチョン。……取り敢えずぶつかりそうになったんだし、怒ってるのかな。簡単に導けるのはそんな答え。けれど、本当に?の半信半疑。ひどい隈に心配になりながらの謝罪は、自分でも正直適したものか分からなかった。)   (7/6 23:06:34)


Hans・Schmidt> 
「……っ、いや、その、なんていうか」(バランスを崩しそうになった少女に咄嗟に手を伸ばしかけ、躊躇するように引っ込んでいく。そうこうするうちに勝手に平衡を保ちおずおずと謝る少女が自分の顔を覗いていた。ああ、突然言葉を止めたこと、足を止めたことを訝しまれているな。相手の表情から読み取れた感情は妥当なもので、自分でも不審だったとは思うが今更取り繕うこともできない。しかし、なんと言えばいいのだろう?『君、よくいてもいなくても同じとか言われない?』…喧嘩を売っていると受け取られても仕方がないな。むしろそれで怒るならまだマシで、最悪泣かれたらどうしようもない。かといってお互い気を付けましょうはいさようならも釈然としないし、何よりもったいないと直感が訴えかけている。ゆえに必死に言葉を絞り出さんと喉を震わせ──)「えっと……君は、自分が存在する意味について、どう考えてる?」(なんか、大分胡散臭い哲学的な問いが出力された。聞きたいこととしては間違っていないが、ファーストコンタクトで持ち出す話題でもない。ただ、いるかどうかもわからない非実在性の自分と、どこにでもいそうな普遍性のこの人とでは、完全に同じではなくとも近しいものがあるように感じたのだ。なにか、得られるものがあるのではないかと)   (7/6 23:48:32)


蕪木 千歳> 
…………………、………?????? ( ───?????? もしかして、罵倒されている? 咄嗟に頭に血が昇って激昂するでも、ショックで泣き出すでもなく。よく、いてもいなくても、同じとか、言われない。──????心の内で反復したところでそれは変わらず、まるで空気でも飲み込んだよう。何と言っているのかは理解しているのに、その意味はまるで理解が出来ない。困惑、という感情が何より当てはまるような気がした。『 は、はい、………………、………、…?? 』どうやらまだ言葉は終わりではなかったらしく、続く言葉に耳を傾けようとして。まるで宗教勧誘。この後に幸せの意味も問い掛けられるのだろうか。困惑の感情は補足された言葉で理解に変わることはなく、吃驚するほどにそのままだった。『 え、と、…………ぇぇ、…す、みません、そういうのはあまり、考えたことがない、ので……それに、その、 』……嘘は付いていない。もしかしたら、覚えていないだけで考えたことはあったのかも知れないけれど。少なくとも、直ぐに答えられるほどの上級者ではなかったのだ。胸元の布地をきゅっと摘まみ、俯きがちに目線をさ迷わせる。その仕草は貴方の問いにただ戸惑っているようにも見えた。『 …此所で答えるのは、恥ずかしいといいますか……ね、? 』傍らで思考するのは、寝不足で訳の分からない行動を取っているのではないか、なんて、失礼な仮説。まだ時折人通りのある廊下だ、だから答えがたい……というのもまた、嘘ではないけれど、上手い具合に保健室に連れ込んで、寝て正気を取り戻してほしいというのも本音だった。)   (7/7 00:10:04)