小鳥遊 嘘鳥

ラブリー

ラブリー> 
(──ジャンジャカジャカジャカ…♪)(跳ねるのは赤いスニーカー。)(トタン、タン、タタン、トン。)(なびくのは癖のあるピンクの髪。)(ガラガラ、カラン。)(香るのは派手ながらうるさくない、日常をいろどる〝ハッピー〟。)(カチ、キュルルルルル……。ゴトン。)(覗く瞳は青空の広がる小麦畑を切り取ったような澄んだ瞳。)(ガタ、カラカラ、ガタ。)(顔は整い、ただ愛らしいだけではない。)(キューーーッウ、クルン。)(────愛嬌ある曲調の始まり。)(終わりのない繰り返し。)(装着されたヘッドホンからはその周囲に何が聞こえているのか簡単に伝わってしまうほどの音量で、繰り返し、繰り返し、音楽が続く。)「─────♪︎」(長いまつ毛に、綺麗な瞳を瞼で閉じて、ご機嫌に鼻歌を歌うさ。)(軽快なステップで廊下をのんびり歩くだろうさ。)(廊下の曲がり角で、君みたいな包帯ぐるぐる巻きの不審者に出会ったって。)「こんにちわっ!今日はいい天気だね。」(満面の笑顔で『はじめまして』。)(だって、僕は〝ラブリー〟だもの。)(─────ぴこん。)(対人関係も、単なる会話も、『ゲーム』として取り扱ってしまう彼の脳内にはひとつのメッセージウィンドウと、選択肢が与えられる。)

会話 を 続ける 話題 を ふる アイテム 逃げる

▶会話を続ける

(君との身長差は約13センチ。)(当然君を見上げる形で君の瞳を覗くラブリーの瞳はハートの煌めきが宿っている。)「はじめましてだよね?僕はラブリー!よろしくね!」(ぱ、っと開いた両手で君の両手を包んでは、警戒心すら感じない無垢な笑顔が君に向けられる。)「僕編入生だから、まだここの生徒とか学校内の設備とか大まかにしか分かってないからさ、教えてくれたら助かるかも!」(【心理学】、【トーク力】。)(+【聞き耳】)(君とは初対面だ。…だから、《小鳥遊嘘鳥》は可能な限り君を覗き込む。)「あ、そうだ!ねぇ君、甘いものって得意?丁度これからゲームしようと思ってて、お菓子たくさん買ってきてたんだっ!良かったら、一緒に食べない?というか、君も一緒にゲームする?何台も持ってるから君にも貸せるよ。あのね、新作の『タクトの冒険』ってやつ、一度やって見たんだけど、誰かに布教したいくらい良作だったんだよ!そういえば君の名前は?」(グイグイ続くのはやれお菓子だの、ゲームだの。しかし、彼の笑顔にはどうやら普通の男子では見られないような愛らしさが詰められていて、きらきらとしている。)   (7/13 17:54:18)


ジェントル> 
「(彼は。)ああァ。(狂っていた。)いけない。『紳士的でない』…ごめんなさい、ごめんなさい…(まるで何かに追い詰められたように、うわ言を吐くように、君の言葉の一切合切より先に。笑顔のままで、暗い瞳で、冷や汗をかきながら、何かを謝った。)ごめんなさい。(紳士的でない。人にぶつかってしまうなど、あまりにも無礼だ。しかも友達でも知り合いでもなく。紳士であることに追われ、傷つくことを恐れ、誰にもともなく謝った。君は彼の心根を読むことがその一瞬、できないだろう。ひどく激しい感情だ。『いたいのはもう嫌だ』と悲痛に叫ぶ声と、『紳士的でなければいけない』と歪んだ意思を抱く声だ。)…はじめまして、ごきげんようゥ…(だがその暗雲は、間を置かずすぐに晴れた。彼の顔も、先程までかいていた冷や汗はもう跡形もない。)ボクはジェントル。よろしくねえェ。(目も、多くを語る。饒舌に不安定に、今の表情を正直に伝えて、笑顔だけは変わらない。彼は不気味な男だった。)」「(けれど正直で、そしてどこか幼稚なように見えるのも間違いないだろう。君に話しかけられて、その変わりのない笑顔は、それでも少しばかり口角をあげる。それは仮面になりきれてはいないのだ。)ミス…ああァ、いや。『ミスターラブリー』。(彼は不気味な男である。だがあくまで、人間的である。)ああァ…いけない、ごめんなさい…(不安定で狂っている。だがそれ以上はなく、ただ子供のような人間だ。君の耳には、そう思えるだろう。)ボクも最近、ここに来たんだあァ…ああァでも、家庭科室のことはよおォく知ってるよゥ。『ママ』を思い出せるからねえェ…(そしてママという存在は、彼を支えるものであり、)でも、驚いたなあァ。初めてなんだあァ…ボク、『やっちゃいけない』から、ねえェ…嬉しいなあァ。(彼を『こう』した張本人の1人でも、ある。)でも、ボクは…(頭を少し、抱えて。)一緒にゲーム。してもいいかなあァ?(だが彼は、内緒で、『してはいけない』を破ろうとした。)ボクの『はじめての友達』が、難しく考えなくてもいィ…って、言ってたからねえェ。(やりたい。けれど、『紳士的でなければならない』。頭が割れそうになっていた。)」「…遊びたい。なあァ。(けれどその、『友達』が言ったから。割れる前に、難しくなってしまう前に彼は、『やりたい』と。そう結論を出した。)」   (7/13 18:48:01)


ラブリー> 
「?…よく分からないけど、謝らなくても大丈夫だよ。ほら、僕、派手に転んだりしてないでしょ?」(君の謝罪の意図なんて、彼に汲み取る意思はない。)(ぽん、と胸板を叩いて、片腕を大きく広げてみせるのは怪我も何も無いという、大きなアピールだろう。)(事実、僅かな技量だとしても彼は【格闘術】の才を持つ。ちょっとやそっと程度で体格を崩すような、そこまで女々しい体でもない。)(そうさ。君に差し伸べる角張った手も、首の隙間から覗く喉仏も、当たった時に感じた筋肉の硬さも、体格の良さも、鮮明に彼が男だと訴えている。)(ラブリーは、単純に、愛らしさの具現化である。)(君に例えその先の信頼がなくても、産まれなくても、関係なく、ただ君の声を聞き、君のそばに居る。)(だが、その心の内側には入り込みもしないし、自分の方へ引き寄せようともしない。)(彼は知っているから。)「《ラブリー》でいいよ、ジェン君。」(───────所詮、人の信頼も、好意も、その人の勝手な他人への期待だ。)「許可なんていらないよ。」(それでも確かに、ラブリーは君への『ハッピー』だとも。)(角張った手の感触と、袖口のハート。)「君がやりたいと思うべきものをやればいいよ。」(君へと贈る、最大限の『ラッキー』だとも。)(ハートの色合いに跳ねる髪と、声変わりの終わった男子の声。)「やっちゃいけない、なんてことはないさ。」(《ラブリー》は、貴方の。)「君の人生におけるハッピーを、僕も一緒に増やしていきたいな。」(──────────▇▇▇▇だから。)(にひ、っと屈託もなく笑う。)「じゃあ、ジェン君の初ゲーム、一緒に楽しもうね!」(おー!なんて言いたげにその腕をあげれば、彼はスキップのように軽い足取りで近くのベンチかなにかでも探して、なければ地面にでも座って鞄を開くだろう。)(存外鞄の中身は綺麗に整頓されていてはいたが、大量のカセットやらゲーム機種やらがこれでもかと詰められているのは、むしろまともに授業を受ける気があるのかと叱りを受けそうな程だろう。)(授業を受ける気はある。ただし、ゲーム愛と授業を受ける気力とはまた別の話である。)「ねぇ、ジェン君って何が好きそう?育成にRPGに、後対戦シューテング、他にはね〜………………って、言ってもわかんないかな。」(貴方は初めて『ゲーム』をするんだろう?なら、種別を言ったってきっとパッとはしないはずだ。)(彼はもっともっと鞄を探ると、ゲームカセットを並べて、携帯端末もいくつか取り出した。)「えっとね、俺的にオススメなのがこのゲーム。操作がシンプルだし、内容も初心者にわかりやすく作られてて楽しい。でも単調作業だから、飽きやすい。」「こっちは、演出とかストーリーの内容とかも派手で、フレンドとチームを組んで戦えたりするんだけど、操作がコマンド入りょ……んと、ボタンを順番通りに押したりとか、覚えることがいっぱいあって、慣れてないと難しい。」「これは操作も簡単で、グラフィックも凄いし、キャラクターも可愛いんだけど、マルチ非対称…あ、ゲームの中で一緒に遊べたりとかはしないタイプのやつね。」(君にもわかるよう噛み砕いて伝えようと必死になるラブリーの言い方には、やはり特有のゲーム愛が感じられる。)(正直もっと語りたい話はあるが、今は君が何で遊ぶかであり、ゲームの話ではない。)「そうだ、ジェン君。甘いものって平気?今日持ってきたお菓子甘いものしかなくて。」(そういって彼がポケットに手を突っ込めばあらら…ぼろぼろと無限湧きのように溢れ出るキャンディーやらクッキーやら、ドーナツまである。)(虹色キャンディーに、くまさんのクッキー、ふわふわなドーナツや、シンプルな包装に入った〝メレンゲクッキー〟。)   (7/13 19:37:42)


ジェントル> 
「(いろいろと思案して、伝えようとしてくれている。『ラブリー』と、そう呼ぶことを許してくれている。彼は時に恐れて踏み込めず、しかし時に勇気を出して早とちる、器用なのにそういう不器用な人間だ。だから君のように、)『ラブリー』。…ボクと君は…(早とちってでも踏み込まなければならない、と、今君にはそう強い意志を持っていない。彼は元来友達でいいのだろうかと問うてみなければそう主張することもままならない人間だ。恐れて、彼はうつむいた。)…『ラブリーくん』。(言い淀んで、淀んだまま、彼は言葉を沈める。うつむいた頭がまた上がるまではそう早くなく、彼の感情がどう渦巻くか。渦の中に埋もれた言葉が、新しく生まれる波が、それを表す。激しい、渦だ。)本当に、好きなんだねえェ。とっても楽しそう。(けれどその中で、君の語ってくれた愛を掴んだ。)…ボク。…その…一緒に、やりたい、なあァ。(君と仲良くしたいから、差し出された手には、掴んだものには、渦を止めてどうにか淀まないよう引っ張ってみよう。)」「…その、ボクが、友達でいいなら。(引っ張った先に、先程言えなかった言葉も見つけることが出来た。弱る前にもう言ってしまって、心臓は体中に激しく血を送る。…彼は君より背が高いが、君よりずっと、まだ子供のようだった。)フレンドと…(どうやら何か勘違いもしているようだけれど、まだどくどくとする心臓を感じながらも、抑えることはできない。むしろ先程の発言をはぐらかすかのように、)甘いのも好きだよゥ。(いつもよりはっきりと、目を見て、しかし笑顔は崩さずに。)頂こうかなあァ。(君がポケットから取り出した大量のお菓子から1つを選ぼう。クッキーが好きで、動物やキャラクターの形をしたものが食べられないので、その中から選ぶのならば…と、『メレンゲクッキー』を、口の中に放り込んだ。)…ァ…?(1枚目。30秒の昏睡。)」「(…実のところ、母親がもう戻ってこないことは、ほとんど悟っていた。あの母親は、望と名を呼ぶ母親は、心の底がもう死んだのだと、もう悟っていた。言うなればそれは、)『…ママ?』(彼女は記憶喪失だ。戻ってくる可能性ももうかなり低い。)『 ?』(望と、そう呼んだのだろうか。もう何も聞こえなかった。)ママ!母さん、僕は…(笑顔なんてもう無かった。…突然、眠る彼から笑顔が無くなるのを、見ることができるだろう。『ラブリー』、そう、君もだ。)『    。』(けれど彼女は、目を合わせようとしなかった。そこから、彼女の希望へと、歩みを進めることはなかった。)どうしてそんなこと、僕はこんなに母さんに会いたいって思っていたのに。(駆け寄れど駆け寄れど、白い花畑は、霧のように消えていって、ついには。)ずっといたいよ。ママと。(目が覚めた彼の、様子がおかしいことに君は…『ラブリー』は、気づくだろうか。)僕はいいこに、してたのに…(少しだけ、ただ涙ぐむ表情を見せていたけれど。)ああまだ、まだボクはジェントルでないといけないの?ママ。(笑顔に戻るまでは早く。)…」「ゲーム、しようよゥ。(彼は実に、紳士的であった。)」   (7/16 16:06:16)


ラブリー> 
「君とは友達だと思っているよ。」(『ボクが、友達でいいなら。』)(その言葉の真意をラブリーが理解していたのか、それとも、単に理解しないままなのか。)(無知なのか、悟っているのか。それすらその厚皮の下に覆い隠した男は笑顔で。)(〝ラブリー〟に、続くだろう。)「誰を友人にしたいとか、仲良くしたいとか、本人が決めることであって、それは、他人に許可を貰うべきものじゃないと思うんだ。」(キラキラ笑顔の男は続ける。)(ジャカジャカと、騒音のようになり続けるヘッドホンから溢れる音。)(座り込んで曲がったひざと、膝を抱えるよう組まれた両手。)(袖から僅かに覗く指先は実に、〝ラブリー〟だとも。)「君は、俺と友達になるの────嫌?」(首を傾げながら、君の瞳を覗き込む。)(僕がどうか、ではない。君がどうしたいか、ではないのか。)(君は友達が嫌いかどうか。)(ラブリーが聞きたいのはそれだけだとも。)(あまいもの、すきだよ。)(その言葉に安心した。)(君がメレンゲクッキーを口にすると同時あたりか、自分もお菓子の中から適当に選んだドーナツを口に頬張った。)(君と一緒に、できるゲームを選びながら。)『───────ァ…?』「……?」(一口目を飲み込み、二口目──────と、口を開きかけたところで、君が小さく声をあげた。)(【聞き耳】)(逃さなかった。)(君が気を失うようにして意識を夢の中へと向かわせたことに、多少の同様と焦りを覚えて君の方をゆさぶった。)「ジェン君…!?」(なんだ?何が起きた?何かの影響か?)(落ち着け、彼は直前まで何をしてた?)(甘いものが好きだからといって、〝メレンゲクッキー〟を口にしただけだろうに。)(───────それだ。)(多分、何かしらの『カミサマ』の影響なのだろう、軽く目を通した程度に過ぎないが、食べることで発動するカミサマはいくつか居た。)(学校側に報告するべきか、それとも無理に吐かせるか行動に躊躇っていれば、君は自然と目を覚ました。)「っ…よかった、ジェンく─────」『僕はいいこに、してたのに…。』(君の言葉に、笑顔が引き攣った。)(…君が、落ちた夢の中で何を見ていたのかは、理解できない。見れないし。)(それでも、君をこんな顔にする何かが、きっと、あったんだろう。)『ゲーム、しようよゥ。』「あッ…うん、そうだね!しよう、しよう…。」(君がそれを気にするなと言うのなら、彼はその表情をぱっと変えて、ゲームの方へと戻るだろう。)(君に合いそうなゲームを見つけて、君に端末を渡せば、電源を入れて『ゲーム開始』である。)(選んだものは、単純な脱出ゲームで、二人協力しながら外を目指すというものである。)(暫く、感度設定や明るさの調整を入れていたラブリーだが、やはり先程の件があり、それが気になるのか、チラチラと君を見ていた。)「…あのね、ジェン君。」(それを、流石に鬱陶しいと思われてもあれだと思ったか、彼はゲームを始めると同時に君に声をかけた。)「子供の人生は親のものではないと思うんだ。…その、」(続く言葉は口篭る。浮かない微妙な笑顔だけがその口元の端に浮かぶ。)(これを言って君が逆上したら?君を傷付けたら?)(最も嫌なのは、『君に近付かれたら?』)(そんなことばかりが浮かんで、喉に張り付く言葉が鉛のように思えてくる。)(打ち出す火薬もないような、重たい鉛の玉。打てば君は、どう出るか。)(…でも、ラブリーはいつだって。)[[ 君 の 味 方 だ よ ▽ ]](……だから。)「そうしないといけない、んじゃなくて。ほら、友達の時も言ったけど…〝君がどうしたいか〟なんだよ。」(ふにゃ、と笑ってみる。それで君の気分が優れるか、悪くなるかなんて、彼には分からない。)「いい子にしてたって、傷つけてくる奴は居るし、言いつけを守ってたって、怒ってくる親はいる。」(…俺の母さんはそうじゃなかったけど。)(─────幸せな家族だったけど、〝環境〟には、恵まれなくて。)「…だからさ、ジェン君。」(小麦畑の広がる青空。)(君を見つめる瞳の色あい。)(上目遣いはなんとも、〝ラブリー〟に。)「…君がそうしたいならそれでいいと、僕は思うよ。」   (7/16 16:55:16)


ジェントル> 
「『キャンディタフト』…(彼は真面目だ。既存するカミサマの起こす現象と、その名称くらいは、それなりに覚えている。)ボクは…(ママの唯一の希望になるために。不条理の中の、ただ1つの英雄になるために。)あァ。(彼女の心はもう死んでしまったのだと、諦めなければ『ならない』。もう自分は、彼女の希望ではないことを、知らなければ『ならない』。)…『ラブリー』。(結局彼は許可を得てやっと君をラブリーと呼べるのだ。君の許可を足掛かりにしてやっと、けれどなんとも容易く君を呼んだのだ。)…ボクは君と友達になりたい。(縛りを、この鎖を断ち切ることはできない。彼は一途を愛している。その意志が、揺るぐことなど許されない。)でも…ダメだダメなんだ、やっぱり。(彼の笑顔が、不安定で、手元で隠されている。)ゲームは…やっぱり今はできない。ごめんねえェ…(そんなことが人前で許されていいはずがない。)『しちゃいけない』んだ。ママは『来ないで』って言った。ボクは、ジェントルじゃないといけない。ジェントルは孤独で、笑顔で、誰かに優しくあれる、そうじゃないと『いけない』んだ。(誰かが自分を傷つけることを、許してはならない。だから、笑顔だ。)」「ごめん。(ゆらりと、立ち上がって君の部屋から出ていこうとする。)ごめんねえェ…(あの母親は、望と名を呼ぶ母親は、心の底がもう死んだのだと、もう悟っていた。言うなればそれは『死別』である。彼は、亡霊に縛られていた。)」   (7/16 17:40:15)


ラブリー> 
(君はきっと、次の言葉を待っている。あるいはそれは永遠に来なければいいと、願ってもいるんだろう。)(君とは正直、〝性格が合わない〟ようで、彼の顔には薄情な微笑みだけが映る。)(薄ら寒い空気が流れて、彼の音漏れするヘッドホンだけが、それを振動させていた。)「僕は、『君がそうしたいならそれでいい』と言った。最初の方に、『謝らなくていい』ともね。」(メニュー画面を開いたまま止まった画面。[戻る]を押されない限り、再開されない世界。)(人生にコンティニューがあれば良かった。)(時間にリセットが効けばよかった。)(ゲームのように簡単では無いのが世界だとも。)「でもさぁ。」(でもね。)「…それって、〝ハッピー〟なのかなぁ…。」(1度いったことは、そう簡単には取り消せない。だからこそ『言葉の重み』というものが存在する世界だとも。)(失ったものは回帰しないからこそ、『命の重み』がある世界だから。)「それが君の[▽選択肢]だとして、君はそれで、[HAPPY END]を迎えられるのかな。」(何も、役目に縛られることが悪い話じゃないさ。『君が一途を愛する』のなら、きっと彼だってそうする。)(〝現にそうだ〟。)(彼はゆっくり立ち上がる。)(君を引き止める気がある訳でもないし、君の意識を、変える手立てがある訳じゃない。)(それでも。)(ただ一つ。)  「《俺》は、今の君とは、〝友達になれない〟よ。」   (7/16 18:25:43)

浸 ばぐる> 
「やっほ。」(君の後ろからひょっこり顔を出す。第一、ちょっとした挨拶を君に。)「君〜、もしかして迷子だったりするか。」(きょろきょろと周りを見渡しながら佇む一人の____性別は後ろから見ただけでは不明、でもその『ラブリー』で『キュート』な姿に引き寄せられて、君に話しかけたんだ。)「もしかして〜、最近編入で来た子、かな。いや〜、いきなり話しかけてごめんな、私は浸ばぐる、世にも珍し〜ゲーミングアンドロイド、だぞ。気軽〜に『ばぐる』って呼んでくれよな。君の名前は?」(彼の顔を見る。きらきらとした水色の瞳、鮮やかなピンクの髪。しかし近づいてみたら意外と身長も高いようで。……そんな『彼』に近づいてみれば、そのヘッドフォンからはちらちらと音楽が漏れていた。)「目的地を教えて。このウルトラスーパー記憶力でこの学校のどこにでも案内してあげるから。」(そう言い、とんとん、と自分の胸を自信満々に叩いてみた。)   (7/19 19:14:19)


ラブリー> 
(中性的。)(それはあくまでもふんわりと一目見た程度でわかる印象。顔だけ切り取れば女性に見えなくもない顔立ちの良さと、キュートさ。)(全身をピンクとほのかな紫で染めたそれは、一瞬写った青の君を見るなり、不安げな小麦畑の瞳をキラキラと輝かせ──────。)「っっっ助かったあ!!!」(なんて、大きな声をあげ、君のその手のひらを安心するように掴むだろう。こう、ぎゅってね。)(触れた手は存外角張り、ごつごつとしていて、いかにも男性という手のひら。その声も女性と言うにはやや低く、少しがなった声。)(体格は、よく見れば確かに男性の骨格だ。)「ありがとう〜っ!迷って困ってたんだ!僕は、《ラブリー》!!よろしく、ばぐるち!」(ライセンス【聞き耳】、【心理学】)(彼は他者を警戒するし、君がどんなものであったとしても、その瞳や耳を疑わないことは無い。)(向日葵のような笑顔で君に笑いかけ、自らの名前を名乗った。その顔に、君を疑う色なんて1ミリもない。)「えへへ〜、教室に戻りたかったんだけど、なんかどっかで迷っちゃったみたいで。助かるよ!」(ぽやぽやと花が飛ぶようなふわふわ加減と何処までもマイペースに見えるその立ち振る舞いは人によっちゃあ苛立ちすら感じてしまうかもしれない。)(事実迷ってるのによくそんなほのぼのとできるのか。)(そうやって、いつまでもぽやぽやな彼は、君の歩幅に合わせるようにもう一度歩き出そうとその赤いスニーカーを跳ねた時、)「────────。」(引き寄せられように《そちら側》を見た。)(彼は強靭な精神力なんてない。強い記憶力はない。だからこそ、その瞳は、魅入られる。)(息を飲み、扉に手をかけた。)(開けてはならないと、頭の中で警報がなっていたとしても。)(視界が黒く染った。)(がちゃり。)(頭の奥で、嫌な記憶が開かれた。)(─────────────────────開いた扉の先は、学校だ。)(ここではない、別の学校だろう。)(彼は何が起きたのか分からないと言いたげな表情で、君の方を見て苦く笑った。)「……僕の、前いた学校みたい。…これもカミサマのせい、なのかな?」   (7/19 19:37:43)


浸 ばぐる> 
(君に手を握られる。温かい人間の手。)「えへへー、ばぐるち、なんて初めて呼ばれちゃったな。(少女の表情は機械である故硬い。しかし。彼の朗らかで明るい表情を見て安心したような動きを見せる。)ラブリーくん!ね。(その容姿通りの彼の名前。本名か偽名かは置いといて、素敵な名前だ。)よろしく、な。」(そう言うと、君は目的地を話すだろう。)『えへへ〜、教室に戻りたかったんだけど、なんかどっかで迷っちゃったみたいで。助かるよ!』「教室〜なら、あっち側だな。ここは実技の授業用の教室がある場所だからね。私についてきて。」(そう君に話しかけるのだ。だけれど。)(とん、と彼の踏み出す音がした。彼の向かう先は教室じゃない。_____さっきまでそこに無かったはずの『扉』の向こう。)「!ラブリーくん、教室は向こうだよ、そっちに行っちゃ_____」(そのまま、彼に付いて行ってしまった。)(キーンコーンカーンコーン………そんなチャイムの音が聞こえる。何が起こったんだろう、頭をわしわし、と掻いては周りを見渡す。ここは____コード専門高等学校の校舎内……………………ではない。)「え。…此処って。」(君の方をちらり、と向く。)『……僕の、前いた学校みたい。』(苦笑いをする君。ここは_____たしか。)「…何処かで。……聞いたことがある、ぞ。」(彼女には【カミサマ知識】なんてライセンスは無い。噂程度にしか知らないあやふやな情報、それをなんとか君に伝えてみようとする。)「………いや、噂で聞いただけなんだけで、本当かわからないんだけど。…………『記憶』に連れ込むカミサマが居るって。」(背後に佇む扉は固く閉ざされ開かない。……これを開くための鍵はあるのだろうか。)「ラブリーくん。……何か思い出せそう、かな。」(彼に対してライセンス【心理学】を使って話しかけてみる。彼を少しでも安心させる為に。)   (7/19 20:20:34)


ラブリー> 
(『───して、こん───こと─』)(うるさい。)(『─俺た──何したっ──言─うん────っ!』)(うるさい。)(『─だ俺たち───普通──きて──暮らし──』)(仕方ないじゃんか。)(『ただ普通に──────────!!』)(──────────。)(『───────生きていただけじゃないかッッ!!』)(……〝そう生まれちゃった〟んだから。)「………………えっへへ!僕は大丈夫だよお〜ばぐるち!!むしろ記憶なら、〝家〟じゃなかっただけ良かった感じだし〜?」(数分の沈黙の末、彼はどん、と胸を叩いて、君に平気だと言いたげに言葉を続けるだろう。ばちこん、とウインクもしてみせる。余裕はばりばりあるとも!)(─────【心理学】。それは彼にも学のあること。君がそれで何かを読み解こうとするのなら、彼だってそれ相応の対処をとり、君にバレないよう自分の不調を誤魔化すことだろう。)(実際の所、冷静さはかなり欠いている。)(家なんて、学校なんて、個人情報の塊みたいなものじゃないか。そんなのは、自分の名前がバレることよりよっぽど嫌だ。)「大丈夫だよ〜!腐っても元通ってた学校だよ〜?わかってるって!」(ライセンス【建築】)(当然、少なくとも2年程かよっていた学校の構図を全て忘れるほど記憶力に障害は持っていないし、建物の構図を勉強していた時期もある。ある程度は、案内もできるだろう。)「とりあえず、しらみ潰しに探してみよっか!」(自分の記憶を再現するのなら、嫌なことまで見えてしまうんだろうか。そう思うと、ちょっとやだな。)(赤いスニーカーはぽたぽたと、少し足を引きずるようにして白くすべすべとした学校の廊下を歩いていく。)「ここの学校ってね〜、あんまりいい思い出ないんだぁ。寮通いだから、家族にも夏休みくらいしか会いに行けなくて。」(外は晴天で、青々としていて、白い学校の壁に青い空が反射して、まさしく青春の一ページとも言える綺麗な風景だ。)(黒緑の黒板に、規則正しく並ぶ机。そのうちの一つに。)(─────────花瓶に花。)(他の机と違って傷や落書きの多い机に、頻繁に移動したのか、床の擦り切れた傷が目立つ。)(君がそれを見るが早いか、)「ばぐるち。」(隣にいる彼が、君の手を引く。)「屋上に行かない?昔行ったことがあるんだけど、景色が綺麗なんだよ。」(彼は、何事もない。何事も無かった。)(─────ここには何も無かったのだと、言い聞かせるように笑った。)   (7/19 21:00:35)


浸 ばぐる> 
(……彼は笑顔を崩さない。いつだって太陽みたいに笑いかけてくれるのだ。でも、でも_____)(数分の沈黙、家、じゃなかっただけ。明るい君の心の内をすこしだけ覗いてしまったようで。)(______胸が、苦しくなるんだ。)「そ、そう、だな。(こんどは私が案内される番だ。……彼の様子を見るに、きっと此処は。)(苦しい記憶。)」(……………)「カミサマ内のハズなのに、一丁前に暑いんだな、此処。」(窓の外は青い。蒼い。______どこまでも碧い。それは私が、君が、今通っている学校でも見られるような空。)『ここの学校ってね〜、あんまりいい思い出ないんだぁ。』「…そうなの。(正直、私には悪い思い出は無い。初めて通った学校がコード専門学校だから、だけど。意外にも機械の私を嘲笑うような人は居なかった。……いや、偶々意地悪な子に出会ってないだけかもだけど。)」「でも、よかった。コード専門学校はねぇ、楽しい学校だよ。面白い人ばっかりで……眼鏡のかわいい女の子に、包帯の不思議な紳士さん、おっきい美人のお姉さんも居るし〜…(この中にはもしかすると編入してきて君が出会った人もいるかも知れない。)でも、寮なのは変わりないなぁ、私も夏休みにはパパに会いに行こうかな。元気にしてるかな。(機械である彼女の父親、所謂開発者である。)」(彼に付いていく内に一つの教室の中にたどり着く。しかし、人が居るわけでもなくそこは静寂。気味が悪いほどにがらん、とした部屋に踏み込んだ。)「ふ〜ん、やっぱり学校っていうものはどこも教室は同じ感じなんだなぁ、(ふむ、といった様子で部屋の中を観察する、と。)「……あれ、」(机の一つに花が、飾ってあった。)「これ______(君に『これ、なんだろう。』なんて声をかける間もなく。)あ、っとと、(手を引かれるのだ。)」『ばぐるち。』「は、はい、……えと、」(彼は。にこり、と微笑みかけて言うのだ。)『屋上に行かない?昔行ったことがあるんだけど、景色が綺麗なんだよ。』「う、うん。ま……って、」(彼の言うままに、付いていくことしか出来なかった。)   (7/19 21:45:06)


ラブリー> 
(いい思い出なんてなくても。)(いい経験がなくても。)(世界が灰色に見えたって。)(─────────♪)(彼の耳から溢れる音は変わらない。)(彼は笑顔で君の手を引くし、その足取りは軽やかでスキップのようだろう。)「ねぇ、ばぐるち!ばぐるちはコード専門学校の屋上って行ったことある?綺麗だった?」(屋上に向かう階段を上る時、君より数段上を歩く彼が、振り向いて行った。)(階段で、ジャンケンしながら登るゲームがあった気がする。パーがパイナップルで、チョキがチョコレート、グーがグミだったかな。)(帰り道には長い階段があって、▇と遊ぶ時は退屈にならないよう、いつも遊んでいたっけ。いつも自分が先に行ってしまって、泣いてしまう▇を背負って階段を上る羽目になっていたけれど。)(夕暮れが、少し懐かしくなって目を細めた。)「ばくるち。」(とん。)(一歩、階段を登った彼が言った。)「屋上って、綺麗〝だっけ〟。」(先程言った発言とは、矛盾を感じる言葉遣い。)(両の手を腰の後ろにまわして、きゅっと結んで、《ラブリー》は、にひっと笑った。)「やっぱりなんでもないっ!」(その言葉と共に、弾けるように跳ねた彼は、そのまま屋上の扉に突撃するように開けた。)(眩しい陽の光と、やはり、青々と清々しく拡がった空は、彼が一瞬に君に向けた曇天の瞳とは似ても似つかなくて。)(こんな清々しい日に、何が起きたのか。)(蒸し暑い夏の日に、彼を何が襲ったのか。)「気持ちがいいねぇ〜!!ここでお昼ご飯食べたら、最高だろうなぁ!!」(無邪気に笑ってみせる彼にはとても聞き出せそうにはなくて。)「でも、出口見つからないね。」「…ばぐるちは不安じゃない?」(広い屋上をかろやかに動き回っていたラブリーだったが、突然足を止めて、君にそんなことを聞くだろう。)(君は、自分の勝手な行動に巻き込まれた被害者側だ。おまけに、この学校のことは何も知らないんだから、不安じゃないわけがないんじゃないか。)「何か思い出せたらいいんだけどねぇ。……うーーーん。」(かしゃん。)(転落防止のネットに背を預けた彼が悩むように腕を組む。)(その揺れたネットの衝撃で、君は太陽に反射した光を見たんじゃないか?)(そうだとも。)(君が見た光は確かに、ネットの高所、登らなければたどり着けない危険な場所に括り付けられた、《鍵》だ。)   (7/19 22:16:27)


浸 ばぐる> 
「屋上、(そういえば行ったことが無いかも。屋上に行くのって、禁止されてたっけ。学校の上から見た景色って見たことがないな。)私は行ったこと無いな。きっと景色も______」『ばくるち。』「……ん、なに?ラブリーくん?」(太陽のような光の君は、物憂げな瞳を見せて言うのだ。)『屋上って、綺麗〝だっけ〟。』「……え、」(先程行った言葉との矛盾、トーンの落ちた喋り方。)(君の影に、触れてしまった。)「あ、えっと___」(バタン、屋上へ続く扉が開く。そこに広がるのは、青く広がる空だった。)『気持ちがいいねぇ〜!!ここでお昼ご飯食べたら、最高だろうなぁ!!』(数秒後には、君には元の笑顔が戻っていた。)「ここが、屋上_____」(高所だからであろうか。気持ちの良い風が吹き抜ける。感じるものは、夏。)(遠くから聞こえるセミの鳴き声、大きく、白く広がる入道雲。)(……さっきの君の表情は忘れよう。)「……ほんとだね。……元の学校に帰ったらさ、一緒に屋上でご飯食べる?もし、君が良ければ。」(なんて、声をかけて見るんだ。)『…ばぐるちは不安じゃない?』「え、私?……私、は。大丈夫だよ〜。寧ろ、初めて屋上に来れて良かったかな。」(なんたって彼女はアンドロイド。メンタルだって常人よりは____)(……………)(君こそ、不安なんじゃないかな。そんな気持ちは言えないまま。)『何か思い出せたらいいんだけどねぇ。……うーーーん。』「そうだね、…………あ、」(きらり、ネットの高い場所。)「ラブリーくん、みて、あれ。(そこにあったのは金色の鍵。)…きっと、此処に来たときの扉の鍵だよ。……ラブリーくん、待ってて。(ネットに手をかける。…余り柔らかくない素材じゃなくて助かったな。)「……く、う、」(風が吹いているお陰でネットがぐらり、揺れる。君を安心させるために上の方から声をかける。)「ッ、大丈夫、私機械だからっ、落ちてもだいじょ〜〜〜うぶ、だぞ…っとと、」(もう少し、もう少し、手をのばす。)(…カチャリ。)「____届いたっ、ぞ!」(鍵を掲げた後、君の方にほいっと投げ渡す。)「まって、今そっちに降りる、から。」(高所から飛び降りたおかげでガシャン!と音がする。)「う〜ん、帰ったら足を見てもらわないとな……ね、ラブリーくん、」(君の方を向いて言うのだ。)「……そろそろ帰ろ。」(君に、もう苦しい顔をさせないように。)   (7/19 23:40:22)


ラブリー> 
(過ぎ去る熱を帯びた風が。夏の匂いが。何処までも心地よくて。恐ろしい。)『……ほんとだね。』「うん。」『…元の学校に帰ったらさ、一緒に屋上でご飯食べる?』「……え、と…。」(『君が良ければ。』)(わかっているとも。拒絶してばかりじゃあ、何も変わらないし、幸せな明日を得ることも出来ない。)(────母さんのように軽かったらどれほど良かっただろうか。)(苦々しく笑った彼の顔は、細い指で握られた拳は、なんだか、寂しそうで。)「………うぅん、《俺》はいいや。」「ばぐるちが、一緒に食べたいと思った人を誘いなよ。」(なんだか、距離が近くなってしまいそうで。)(怖くて、下手くそに断った。)(その後で、誤魔化すように『食べるのが遅いから、多分待たせちゃうよ』なんて、苦しい言い訳をこぼすんだ。)『ラブリーくん、みて、あれ。』「なぁに?」(君が指さした先、きらりと太陽の光に反射したそれは、確かに鍵だ。)(あんな危ないところに括りつけているなんて、この記憶はなにか自分へよ当てつけでもあるんだろうか。)『ラブリーくん、待ってて。』「っ…え。」(かしゃん。)(君が突然、危険を承知でネットを登るものだから、どんな顔をしたらいいか、狼狽えて、その手元を空中で右往左往とさせる。)「え、ね、ねぇ、ばぐるち…や、やめよう?ほら、あぶないよ。な、なんか、なんか嫌な予感が……。」(ぐわんと揺れたネットに嫌な予感が揺さぶられる。)(これ、確か、何かが起きて、凄く嫌な思い出になったはずなんだ。)(確か。確かね。)(ぐわん、って揺れて、)(ばき、って嫌な音が────して。)「──馬ッッッ鹿!!ばぐるっ!!早く降りてこいッッ!!!」(冷や汗が吹きでて、思わず君を追いかけてネットに手をかけた。)(君が鍵を手にとったあたりで、彼が思いきり君の服を屋上の地面へ強く引っ張るもんだから、二人揃って落っこちちまうだろう。)(──ばきん、なんて嫌な音がして、ネットが大きく壊れたのは、君たちが落っこちたその後だ。)(ふたりで落っこちた時、君に酷い衝撃はなくて、その代わりカエルが引き潰されたみたいな悲鳴が下から聞こえた。)(君をキャッチしようとしたラブリーが、君の下敷きになって転がっていた。)(苦しそうな顔だが、すぐさま笑顔に切り替えて言葉を続ける。)「あ〜…あぶなかったぁ…。そういえばこのネット、近々修理が入るとかで、脆くなってたんだった…。」(記憶の中のネットはある事件の破損を機に新しくなっていたものだから、すぐには思い出せなかった。)(ぎりぎりで、思い出せてなきゃ、君が落ちてるところだった。)「ばぐるち、怪我は?どっか痛いとこない?」(絶賛君(機械)に潰されて骨が痛いのは確かだが、そんなのはどうでもいい話。)(彼は君の手を握って、安堵したように溜息を吐いて、続ける。)「〝機械だから落ちても大丈夫〟とか、言わないでよ。」「君が壊れたら俺は、悲しいし、こんな鍵の為に、痛い思いなんてしなくていいから。」「わかるよ、〝同じ〟だもん。」(【ROSE CHERIE】)(《セーブ&ロード》)(肉体の状態を巻き戻す能力である。当然それは、怪我や毒等の全てを含み、やりようによっては、〝命を軽率に扱うことができる〟能力でもある。)(やろうと思えばやり直しが効くものである。)(君の言い分はわかる。機械だから壊れても直せるって言いたいんだろ。)「そんなんで守ってもらっても、誰も嬉しくないよ…。」(僕らはヒーローなんだろ。ヒーローは、死んでまで市民を守るのか?)(そんな守り方をされて、〝もしそれが伝染して〟、助けた誰かまで、君と同じように自分を犠牲に誰かを守ったら、どうする。)(君の額に、彼の額をこん、と合わせて、彼は心配するように告げた。)「………………〝帰ろう〟。」(下校のチャイムがなる。)(耳に響く音が、待ち遠しい音が。)(今はただ、怒りを煽る残酷な音色にしか聴こえなかった。)   (7/20 00:21:15)

八重 イドラ> 
_____(.........)(ザ、)(ザザザ、ザザ..............)(記憶を追って、大切に大切に抱え込む。そんな行為を〝追憶〟と呼ぶのであれば。其れは掛け替え無い日々への愛であり、同時に自らを縛り付ける呪いになり得るのだろう。)(初夏過ぎた某日。照る日光。)(今日も、ラジオはノイズを吐き続ける。) _______「センパァーーーーイッ!!!!!そろそろっすよ!!!えェーーーーッッッどうしよめっちゃ緊張してきた!!!!!!!」(夏の暑さを吹き飛ばす快活な声を.......と書けば少し納得させられる力を持つ様にも見えるが実際にはただ喧しいだけだろう。任務中、なのだが“緊張してきた”なんて言葉と裏腹に空気感はやたら緩い。責任の所在は元気いっぱいの馬鹿に在る。可愛らしい容姿の貴方へ振り返っては声を放つ。側から見ればこんな愚か者と未知の解明に赴く事になったのは不運だろう、側から見なくても覆るかは怪しいのだが。然しまあ、いざと云う時に盾に出来るのは不幸中の幸いだ。こんな思考を貴方が持つかどうかは別として、少なくとも目の前の男は変わらないトーンで言葉を吐くだろう。)「いやオレマジで!!!!マ ジ でいざって時は身代わりなるんで全ッ然盾にしてください!!!!!!!いやマジで!!!!!!!」(そんなこんなで歩いて行けば、どこで緩んだ空気も少しだけ“まじめなむーど”に変わるだろう。少なくともその理由の一端は本格的にビビり始めた男の口数が減った事に違いない。)(見えたるは公衆電話、の様に見える“なにか”だ。其れは此の世界を構築する1ピースの狂いが為した異端であり、ともすれば簡単に誰かの日々を打ち砕く異常である。)(もう少しで10m圏内。小さな緑の鞄とドル札。誤植のまま売り出されたCDと同じ名前は、或いはコードとカミサマの関係を模す様な其れは、夢を呼ぶ何か。何処にも行き着かず、同時に何かへ繋がる線は屹度、貴方の記憶へコールする。)(ともあれ進め。踏み出さぬ者に救いを謳う権利等有る筈が無い。そうだろ、ヒーロー。)   (7/24 17:49:49)


ラブリー> 
(──────────ピピッ、カシャ。)(小さなモーター音をあげながら起動したのは彼の手元にあるビデオカメラだ。彼はそれをこなれた手つきで自分の胸元辺りへ取り付けた。)(幻覚が映像として残るかは不明である。もし、幻覚が映らないのなら、これは唯一現実を見る手段とはいえないか。)(独り、幻覚の対策にカメラを弄り、名前に似つかない表情で眉をひそめていた。)『センパァーーーーイッ!!!!!そろそろっすよ!!!』(君の声と共に、〝ようやく音楽が耳に届いた〟。)(音漏れするような勢いに溢れたヘッドホン。それを思わず抑えて君の方を見やる。)(────集中していて忘れていた。)(そんな申し訳なさが僅かに浮かび、忘れていた笑顔をふにゃふにゃに浮かべて、頬を掻く。)「《ラブリー》でいいよ。」(先輩なんてなかなか呼ばれなかったから、何だかくすぐったくて元気が詰まった君の声についつい押されてしまう。)(赤いスニーカーはぽたぽたと、歩き。暫くはカメラの動きや、固定がきちんとできているかを気にしていた。) (カミサマへ向かう途中のこと。君があまりに不穏なことを言うものだから、思わず君の頬を掴んで伸ばしてみせるだろう。)(ぷくーーーっと空気を含んだ頬を控えめに膨らませ、少しキツめに眉を上げる。)(小麦畑の瞳は君を捕らえて、首を振った。)「それは、ぜーーーーーーーっっったい、イヤ!!」(誰かを犠牲に生き延びるなんてのは、彼にとっては。)「逃げる時は一緒に逃げるし、置いていかない。」「君の声は、《聞き逃さない》から。絶対ダメだからね!」(そんな事を選ぶより、恥になるとしても手を繋いで逃げる方がよっぽどいい。)(───────────お喋りな君の口数が減る事に、その緑色の解像度は高くなる。)(近付く程に、その先に何があるのか、知り得ない何かに心拍数が上がる。)(情報では幻覚が見えると合った。それが、〝子供時代の幻覚〟であるとも。)(ここに来て、カミサマの現象に巻き込まれる度に鮮明に呼び起こされるのは昔の事ばかりだ。)(前は家族のこと。)(前は学校のこと。)(今回は───────。)(ミーンミンミンミンミーーーン…。)(蒸し暑い夏の空が清々しいまでに広がっている。)(公園。太陽光で暑くなった遊具。近くにある自動販売機に寄り添うと少し涼しい。立ち並ぶのは縦長のマンションばかり。)(熱を帯びた地面は暑く、短パンにTシャツとよくある夏服に、自分の頭には青い薔薇のあしらわれた麦わら帽子がある。)(髪は濡羽色。瞳の色は暑い日中にそぐわない真夜中の星空のような─────。)(小さくなった姿のまま、君を見上げた。)(生まれつき、目が悪いからとかけ続けていた丸くて大きいメガネが、顔に合わないのか大きくズレた。)(きっと、変わっていないのは〝彼の耳にあるヘッドホン〟だけ。)「……これ…は、」(ぺたぺたと自分の頬を触る。変わっているのは自分だけ。それなら、この幻覚は。)(────自分の過去をもとに。)「嘘鳥ーーーーっっ!!」 「(あ。)」(あぁ。)(心臓が握られているように痛い。)(幻覚だとわかっていても、それをどうしても望んでしまう。)(こちらに向かって手を振るのは同じく濡羽色の前髪に白髪の後ろ髪。)(オレンジのバラが飾られた麦わら帽子を被った少女がいる。)(自分と同じ、麦わら帽子の少女。)(できれば、ずっと、普通に笑っていて欲しかった人。)(飛びつきたい思いも、泣き出したい思いも、ぐっ、と胸の内に抑えて君の方をもう一度見た。)「…〝帰宅〟するのが、討伐方法だったよね。」(帰らなければ、ずっとここにはいられるが。)(それでは一緒にいる君まで巻き込んでしまうだろう。)(何よりも。)(幸福な過去ばかりに縋って生きられる程、温くて甘い人生を、送っていたつもりは無い。)「……帰ろうか。」(夕暮れになる前に。)   (7/24 18:46:05)


八重 イドラ> 
『《ラブリー》でいいよ。』(ふにゃついた笑みを浮かべながらそんなふうに返す貴方へ、少年はその通りに呼ぼうと口を開き掛けて。けれど、先輩呼びばかりして来たからかちょっぴり違和感みたいなものがあって。故に一度閉じて分かりやすい“考えてます”ポーズに入るのだ。)「ん゛んーーーー.........」(目を細めて考える様は大袈裟に見えるかも。然れど呼び方一つだって彼にとっては一大事。なんて言ったって友達が大好きなもんですから。)「...............“ラブ先”.......?」(疑問符付きながらに導き出した答えは矢鱈とポップな渾名っぽさ。舐めた後輩感が凄いが当人は至って真面目である。)『それは、ぜーーーーーーーっっったい、イヤ!!』(頰を膨らしてご立腹。冗談半分の何気ない言葉は、貴方の優しさには少し刺激的過ぎたみたいで。) 『逃げる時は一緒に逃げるし、置いていかない。』『君の声は、《聞き逃さない》から。絶対ダメだからね!』(眉を上げて放たれたるは真っ直ぐな言葉。其れを受ければちょっと驚いたみたいに目を丸くして少しの静寂。言葉に詰まってしまったから、目線をちょっぴりずらして。バツの悪そうに言うんです。)「........さーせん....」(ああ、やっぱり。貴方も〝ヒーロー〟。そのどうしようもなく心地良い優しさに、どう返せば良いかを知らないから。だから、困ったみたいな笑顔で“もー言いませんから!”とだけ、付け足すんです。)(そして、そして。)__________(変わらず、日は照っている。)(幻覚への参入。不知への侵入。)--⬛︎- ・・-- --⬛︎⬛︎・ ・・ ・-・・ ・-・-・ ・-・・ ・・ ・- ・・-・・ ・⬛︎⬛︎・・ ⬛︎-・-・ ⬛︎・⬛︎- ・-・ ・- ・・-- ・⬛︎⬛︎⬛︎(狂ったラジオは無機の音を吐く。)(何処かに在った夏の日。ビル群外れの公園。蝉の声は全盛。彼の横に“センパイ”は居なくて、“ラブリー”も居ない。無論、“ラブ先”だって居なかった。)(恐らく先刻迄話していた人間であろう一人の少年と。)(もう一人、誰かが。向こうに。)『嘘鳥ーーーーっっ!!』(あ、そんな名前だったんだ、とか。どんな漢字なのかな、とか。ありがちな考えが浮かんで、それから。)『…〝帰宅〟するのが、討伐方法だったよね。』(それから。)『……帰ろうか。』【ライセンス:共感×3】(心理学より、既視感より、経験より。もっと根拠足り得ない何かが、胸を衝いた。)(屹度、“了解ッす”と答えてしまうのが正しくて、利口で、効率的だ。屹度、それ以外の選択は愚かだ。)「.............。」(愚かだ、けれど。)(知っての通り、大馬鹿だから。)「センパイ。」(見過ごしたら駄目なんじゃないかって、そう思っちまったんだ。)「.....いいんすか?ほんとに」(悲しさか、後悔か、苦しさか、うしろめたさか、或いは他の何かか。陽炎の這う瀝青(アスファルト)みたいに、感情の輪郭はぼやけているけれど。其れ等を詳細に言語化出来る程彼は賢くないけれど、どうにも。)(放っておけない様な色が、滲んでいる気がしたんだ。)   (7/24 19:36:13)


小鳥遊嘘鳥> 
(《ラブリー》は君を、〝やえちー〟なんて、最初に呼んだんじゃないだろうか。)(君の名前を元に、ラブリーたる彼が考えた君へのあだ名である。)(そして何より、それをそう呼ぶことこそが、『ラブリー』である証なのだ。)(だが、君の前にいる。君よりもずっと小さく、そして君よりもずっと『重たい』少年は君の瞳を夜で覆う。)「八重。」(あだ名では呼ばない。)(君に愛らしい微笑みは向かない。)(けれど、その掌は確かに、君と繋いだ手を撫でた。)「……君は、〝良い奴〟だな。」(濡羽色。)(──────鴉の羽の色とも呼ばれる、緑がかった黒い髪。)(誇りにも近い、髪の色。)(愛するべき家族との『オレンジのバラにも等しい』繋がり。)(でも、だからこそ。)「君なら、きっと、この世界は幸せに見えるんだろう。」(『嘘鳥』は、そのヘッドホンに手をかける。)(常に繰り返されるあの曲は止まっていて、狂ってしまいそうな大音量は流れていなくて。)(蒸し暑い現実だけが鮮明に『聞こえる』。)「俺は。」(震える手は、〝ヘッドホンを外せない〟。)(これだけは、今も昔も関係ない。)(彼はただ萎れた向日葵のように頭を垂れたまま。)(地面に歩く、アリを見ながら。)(夏の暑さに、アスファルトから感じる熱に、子供の背の小ささを実感しながら。)(オレンジのバラの花言葉は、絆。幸多かれ。信頼。熱望。健やか。)(断とうにも断ち切れない人の結び付きを意味する。)(けれど、)(青い薔薇には。)「全部『嘘』と知っていながら、幸せだとは、思えない。」(─────────『不可能』。)(母のように奇跡などはなく、神の祝福もない。)(物事を軽くは捉えられないし、母のように『負荷』を感じずに生きてはいけない。)(なぁ、幻覚じゃなかったらどれほど良かっただろうな。)(これが嘘でなければ、抱き締めて、一緒に帰って、階段を上るのが暇だからってゲームをして、玄関で迎えてくれる母親に抱きついて、涼しい部屋で二人でゲームでもして、仕事に行った母の帰りを待って。…そうやって、いつも通りだったはずなんだ。)(あの日まで。)(……彼は、考えすぎてしまうから。)(彼は、疑いをかけてしまうから。)(彼は、)「どうせ、全部ニセモノだから、早く帰ろう?」(─────臆病だ。)(嘘吐きだ。)(仲良くなるような振りをして、人から逃げようとしている。)(面の皮が厚い、呪いたくなるような『二面性』だ。)(幻覚は消えていない。)(早めに帰らなければ君はこの中で死ぬ可能性だってある。)(それをわかっているから、声の主を押し退けて、『家』に帰らなきゃいけない。)(幻覚が手を振っている。)(ふたりいる。)(ふたりともいる。)(髪色のよく似た羽飾りをつけた、特長的なほくろのある『軽い』母と、正義感が強くて、少しだけ体の弱かった、『耳の長い』双子の妹が。)(守りたくて、)(守れなかった人がいる。)「それに…その、君が心配する程のものでもないんだ。」「妹の方は、まだ現実にいるから。…俺は、帰らないと、いけないんだよ。」(──────そうまでして帰りたがるのは、愛する家族の為か。)(ほんの僅かな幸せと、残酷な現実をその身で味わった『過去』の記憶だからなのか。)(どちらにせよ、いつまでも、幸せな夢を見続けるのは苦しいだろう?)(失った、【いつも通り】に焦がれても、それは帰ってきてはくれないんだから。)(《ラブリー》では無いぎこちない言葉の使い方。下手くそな笑い方。)(どうにも彼は、『なんでもない小鳥遊嘘鳥』を演じるのが、下手らしい。)   (7/24 20:47:53)


八重 イドラ> 
『八重。』「........はい。」『……君は、〝良い奴〟だな。』(そんなでもないとか、先輩の方こそとか、普段の彼なら答えるけれど。今は、口を噤んだ。)『君なら、きっと、この世界は幸せに見えるんだろう。』(初夏のせせらぎみたいな。)『俺は。』(晩夏のさざ波みたいな。)『全部『嘘』と知っていながら、幸せだとは、思えない。』(静かで、静かで。途方の無い音だった。) 『どうせ、全部ニセモノだから、早く帰ろう?』(愛おしい日々が在ったなら。失った過去が在ったなら。痛みが貴方を苛むなら。)「..........。」(この男は。先刻、貴方が呼んだ八重 イドラは。)(其の愛おしさも過去も。痛みも、現実も後悔も虚像も幻覚も全て。)(全て、愛そう。)「 【 ベ チ バ ー 】 。 」5→2__________(過去の記憶、とは言えモノクロ写真は似合わないであろうそんな時代の空間に、白黒の紋様が介入する。蛍光色の其の双眸に宿るのは。貴方を、貴方の歩んだ全てを見据える追憶のディスコード。緑の受話器、其の回線乗っ取るネオングリーンのハイジャッカー。恐れも臆病も嘘も罪じゃあない。そもそも彼は貴方の抱える其れ等を知り得ない。否、知り得な〝かった〟。)(幻覚に包まれた今の貴方の姿を見れば大体の年代は分かる。時間指定は其の周辺。使用回数は3。【いつも通りの日々】を歩んだ貴方の記憶を、追う為に。)「帰らなきゃいけねーなら。」「忘れ物しねー方がいいっすよ」「ね、センパイ。」   (7/24 21:27:42)


小鳥遊嘘鳥> 
(君の手をひいて帰ればいい。)(このカミサマは『帰宅』こそが討伐となるのだから。)(余計なことは、一切せず、)(触らぬ神に祟りなく。)(君との距離は常に開けたまま、見慣れた帰路をただ歩めばそれだけで。)(何食わぬ顔で、何気ない帰路を、『小鳥遊嘘鳥』としてではなく、『ラブリー』として。)(思い出を、潰してしまえば。)『ベチバー。』 (──────拝啓、追憶を愛する君へ。)(自分が止めに入るよりも、君の決断の方が早かった。要はそれだけだ。)(彼が封じたかった。彼が呪った二面性にすがってまで、閉じたかった記憶。)(運命を呪った、過去の話。)『────私、この子達を産みたいです。』 (母の一言から始まった俺の、俺達双子の人生は、歌われるほど素敵な人生じゃなかった。)(『平和の証』であった、ヒーロー。そのうちの一人、小鳥遊慈鳥。)(カミサマに呪われた人。)(かつては奴隷として扱われていた人。)(〝カミサマ(過負荷)〟に救われて、ヒーローという、市民の光へ転じた人。)(…その人を襲ったのは、ヒーローであるということを妬んだ人間からの暴力。)(目が覚めた時には病院にいて、その審査の結果に。)(────────腹に子がいると、言われた。)(…父親の顔は分からない。一体、誰に、何をされたのかも。ただ、母を襲った乱暴の末に俺達は着床したのだと。)(それを知った時。妹を襲った悲劇を境に。明確に。)(憎むべきは父であると、俺はわかった。)(───────記憶の中の『小鳥遊嘘鳥』の耳は、『長耳』であった。)(整った容姿に長く伸びた耳。)(それは所謂、「ルクレルク人」の象徴。)(父方がそうだったのだろう。そしてそれこそが、全ての引き金となった。)(──────────。)(迫害は弱まり、差別は薄まったにせよ、その耳に向けられる視線は僅かに冷めたもので、その顔によせられるのはほんの少しの期待だ。)(1回目。)「明日から、新しい高専の学校行くんでしょ。進学先違うから、心配だなぁ。」(母によく似た容姿の妹が言った。)(眼鏡をかけ、先程の子供時代より少し大人びた嘘鳥は、バスを待つバス停の前で何か面倒くさそうにピコピコと手元のゲーツで遊んでいた。)「ねぇ、聞いてる?心配してるんだよ。」「わかった、わかった。俺が引きこもりだったから心配してるのはわかったから。何のために近くの奴が行きそうにない高校選んだと思ってんの。ヘッドホン外さなきゃバレないし、大丈夫。」(妹も、彼自身も、似たようなお揃いのヘッドホンを付けているのは、きっと、『ルクレルク人』であることを隠すためだ。)(これさえ隠していれば、人は普通の人としてみてくれる。)(これは臆病であり、盾でもあった。)「俺が心配なのはお前と母さんの方だよ。本当にふたりで大丈夫なの。」「大丈夫。少なくとも私、嘘鳥より強いから。」「は?」(母の腹から生まれたのは双子だった。)(双子の癖に、性格は真反対で、全く似ていなかった。)(冬。)(もうすぐで春が来る。ほんの僅かに肌寒い季節。)(赤くなった鼻と、寒さに耐えるために赤いマフラーに顔を埋めたのが【いつも通りの日々】。)(2回目。)(嘘鳥が高校に進学してから、一回目の夏だ。)(長い休みを利用して、寮暮らしの学校の窮屈さから抜け出して、愛する家族に会いに行った。)「嘘鳥は学校楽しい?」「別に。」「えーーーーー!!何のために遠い学校行ったのさ!楽しいの報告待ってたのに!」「なんで俺より頭悪いやつと仲良ししなきゃ行けないの?意味わからないんだけど。」「それは嫌われる人の発言だぞ!いいのかね君は!!」(憎まれ口は変わらない。)(夏服らしく、涼し気な服装に身を包んだ可愛らしい妹と、兄が、アイスを片手に帰路を歩いている。)(遠くから母の声が聞こえ、お使いで金額をちょろまかしてアイスを買い食いしたことがバレないよう、二人で急いで口の中にしまった。)(笑う母を囲って、世界でたった一人だけ、世界で一番愛おしい母を双子は愛しながら。世界で一番愛しい双子を、母は愛しながら。)(差別の事さえ、ようやく忘れて、【普通】に暮らせると思った夏の日。)(3回目。)「嫌…ッ!!はなし、てッ!!や、…やめて!!お兄ちゃん…!!お兄ちゃん…!!!たすけてっっ!!!」(暗闇の中、夜の帰り道。)(薄れゆく視界の中で自分に助けを乞うのは妹だ。)(頭から血が流れていることだけがわかった。)(殴ったのは?)「前々から、気に入らねぇんだよお前は。いつも達観したみてぇな顔しててさぁ…。」(見かけだけの〝トモダチ〟だった連中だ。)(信頼していた。友人だと思っていた。それなのに。)(──────裏切られた。)(彼らの『二面性』に、騙された。)「ルクレルク人が偉そうに…!!」(〝馬鹿は教科書何ぞ見ない〟。)(迫害は薄れたとしても。差別は弱まっていたとしても。)(それを引っ張り出して、自らに貼り付け、責め立ててくる奴らはいる。)(分かってはいた。)(それでも、吐き捨てられる言葉や、押し付けられた煙草の吸殻に、涙を流す程度には、信頼していた。)(結局はなんでもいい。俺が例え、『ルクレルク人』の血が無かったとしても、どうせ、ヒーローの子だからなんて理由でもケチつけられて殴られた。きっとそうだ。)(いじめる理由なんてそんな些細な火種でよかった。)(妹が。勇気があって、ヒーローのようだった妹の笑顔が、あの夜、潰えた。)(──────妹はあれ以来、精神の状態がおかしくなった。)(俺はあれから、学校で当たり前のようにいじめの対象になった。)(二度目の夏が訪れ、母と妹に会いに行った時に、)(脆いガラスの上にあった幸せは砕けた。)(もはやそれは、神経にまで擦り込まれた恐怖でしかなく、俺の姿を見た妹は半狂乱になり、俺は二度と、『小鳥遊嘘鳥』として、妹の前に現れることは出来なくなった。)(壊れてしまった妹が、)(浴槽の)(赤。)(赤。)(赤。)(赤。)(赤。)(赤。)(赤。)(赤。)(赤。)(赤。)(赤。)(赤。)(赤。)(赤。)(赤。)(赤。)(赤。)(─────────赤に染まった時、世界は止まってしまったんじゃないかと思った。)(パニックになりながら、妹の傷口に処置をして、病院まで急いだ。双子だから、妹の為に血液だって提供した。)(どうか生きていてくれと、冷たい手を握って【祈り】続けた。)(……………妹は一命を取り留めたが、その心は修復が不可能な程に壊れてしまった。)(与えられる食事をぼたぼたと落としながら、時折呻き声をあげるそれを、妹と思う度に辛くなった。)(それでも、母と共にそれを支えていこうと誓った。)(数日後、母が死んだと連絡が入った。)(………何故?)(どうして?)(昨日、仕事に出るまで母はいつも通り笑っていた。)(妹がいなくなって、寂しがる俺に、『今日は寝るまでそばにいてあげるからね』って、約束してくれた。)(その約束は守られることはなく、代わりに来た電話には、母の訃報しか。)(なんで。)「どうして、こんなことばっかり。」(何もしてない。)(この世界を憎むこともしなかったし、誰かに害を与えたこともなかった。)「俺達が何したって言うんだよっ!」(家族3人で、普通に、幸せに、寄り添って。)「ただ俺達は普通生きて普通に暮らして…!!」(それだけでよかった。)(それ以外何も望まなかったじゃないか。)「ただ普通に──────────!!」(それなのに。) 「〝生きていただけじゃないかッッ!!〟」(〝そう〟産まれたことが、いけなかったのか?)(───────記憶はそこで途絶えた。)(君の前には再び、小さな嘘鳥がいる事だろう。)(幻影は遠くで、今も尚、彼を呼んでいる。)「…幸せに生きていたくても、『これ』だけで咎められる。」(記憶の中の家族は幸せそうだった。)(子供が長耳である以外、本当に普通の、幸せそうな家庭だった。)(父親がいなくても。その顔を知らなくても。)(母がヒーローであっても。)(何も他と変わりなかった。)「………なぁ。」「こんな記憶はさ。」「いっその事何もかも忘れた方が幸せじゃないか。」(前を向く度に幸せを刈り取られた彼に、もう前を向いて進みたいなんて気持ちは微塵もない。)(望んでいた家族は崩壊した。)(誰よりも幸せであって欲しかった人は壊れてしまった。)(もはや、『父親がルクレルク人であったのが悪いのだ』と、そう恨むことでしか。)(それしか、憎むことができない。)(何も悪くなかった。)(悪いのは。)(悪かったのは。)「────────その、〝目〟が、大嫌いだ。」(自分を見る、君のその目だ。)   (7/24 22:55:24)


八重 イドラ> 
『────────その、〝目〟が、大嫌いだ。』(始まりは一つの悲劇だったのかもしれない。けれど其処には3人の人間が居て、其処には慥かな幸せが在った。打ち壊されたものはあまりにも。あまりにも、掛け替え無くて。だから、男は優しく微笑んだ。拒絶にも、孤独にも。ただ、手を伸ばすんだ。)_________「センパイ。」「やっぱ〝忘れ物〟、してるじゃーないっすか。」 (不幸を打ち消す事と幸せは同義だろうか。)『ねぇ、聞いてる?心配してるんだよ。』(数歩だけあった距離を、ゆっくりと埋めて行った。のんびり屋のアンダンテ。足音は確かに、ビル群外れに木霊した。)(忘却が救いならば、男は救世主である事を望むだろうか。)『それは嫌われる人の発言だぞ!いいのかね君は!!』(あと2,3歩の所で足を止めた。ネオングリーンは、未だ貴方を見る。)(垣間見た貴方の、貴方達のいつも通りを思い返す。彼は、壊されてしまった何かを拾い集めて繋ぎ直せる様なヒーローじゃあ無かった。失った何か以上のものを与えて救えるヒーローじゃあ無かった。前を向かせて背中を押せるヒーローじゃあ無かった。)(無かった、けれど。)(彼は。)「オレは。」 「 ア ン タ が 忘 れ ち ま う の を 良 い と 思 う 程 バ カ じ ゃ ね ェ ぞ 、 〝 ヲ ソ ド リ 〟 。 」 「.........来い、」 ______________「【月下香】。」(【2→1】。)(其れがどれ程幸せそうでも、その幻覚-ユメ-の中に籠って居て欲しくて“.....いいんすか?ほんとに”等と問うだろうか。)(抜刀。其れは痛みを知る者の、傷を愛する者の、貴方へ叫ぶ者の、ディスコード。)(漢字を知らない名前を呼んだ。もう一歩だけ踏み込んだ。赤く、紅く。そして何も傷付けれやしない刃を振るった。)【能力】このディスコードは誰よりヒーローに近い君にしか適合しない。どんなハンドアウトでもどんな能力でも君と云う宿主が居る以上、誰もこのディスコードを使う事は出来ない。ヒーローに必要なのは当然ながら強さだろう、しかし、それよりももっと大事な事は他人の痛みを、他人の傷を、深く愛せる事だ。無傷のままでその傷跡の意味を、その痛みと苦しみを理解し寄り添う事なんて出来る筈が無いのだ。強さや正しさだけでは取り零してしまう何かを、君だけが掬い上げる事が出来る。能力は、斬り付けた対象に傷も痛みも与えずに宿主の感情を直接流し込む事である。【宿主】君は傷を愛している。「目背けんなたァ言わねーっす。ずっと見続けろたァ言わねーっす。」「でも。」「でもアンタだけは.......ッ!!!」 (小鳥遊 嘘鳥。貴方だけは。) 「アンタだけは、“あの2人”を忘れちゃダメだ...........そんなのあんまりだろ、ヒーロー...................。」(ベチバー、追憶、及び【共感×3】。屹度、大嫌いな蛍光色の双眸が雫を零すのを、貴方は見る事が出来るだろう。)【戦闘ライセンス:居合/脚力】(殺意と害意の一切を孕まない刃が貴方へ届いたのなら、男の感情が流れ込むだろう。)(其れはいつか在った日々を想った誰かの悲しみだ。)「.....忘れて辛さを消したって幸せなんかじゃない」(其れはどうしようもない世界を恨んだ男の怒りだ。)「忘れるのが救いならオレは救世主なんか望まない」(其れは、一人ぼっちの背中に手を伸ばす八重 イドラの叫びだ。)「ココがどんだけ幸せそうでもアンタにずっと閉じこもって欲しい訳じゃない.........!」(恐れも臆病も嘘も、罪じゃあない。産まれた事も罪じゃあない。)(罪は、〝ラブリー〟の〝いつも通り〟へ刃を突き立てた愚者だけで十分だ。)(貴方達の悲劇を見た感情の濁流。或いは、【二面性】が存在する余地の無い、ただ純粋な清流だ。)(どうしたって友達が大好きだから。涙を流して、でも精一杯強がって笑うんだ。)(悲劇を見据えろなんて言わない。悲しさを背負って行けなんて願わない。其れすら愛せとは謳わない。)(ただ、ただ。) 「何も。」「......ッなンも悪くねェよ センパイ達は.....っ」(ただ、間違ってないって。それだけ、伝えたかったんだ。)(幸せだった日々だけは、愛して居て欲しいって。)(此れはそんな我儘な、我儘な後輩の叫びさ。)(君達が何をしたってんだ。ただ普通に生きて普通に暮らして。ただ普通に。)(生きていた、だけなのに。)(救世主-メシア-なんかにゃなれやしない、非力で御人好しな英雄-ヒーロー-は、貴方に手を伸ばす。彼らの距離は、あと一歩分。)「........あの2人に伝えたいコトあンなら、......言って来てください」「オレはココで待ってるっすから。」(少し向こうでは笑顔の2人が居る。貴方の頭が生み出した都合の良い幻覚じゃあない、存在した現実の分岐線上。飲み込んだ言葉があるのなら屹度言うべきで。NOEZは、伝えてから最後の一歩分が埋められる事を唯望む。)   (7/25 00:25:12)


小鳥遊嘘鳥> 
(足掻く度に纒わり付くように苦痛の糸が絡まった。)(《ラブリー》でいる度に、その糸は自分の首を絞め上げて、『嘘鳥』である自分の声を外側へと通さなかった。)(妹に強く拒絶されたのは、俺があの惨劇を引き起こす引き金を作ったから。)(あの日から、ずっと。)(《小鳥遊嘘鳥》は『自分自身』を呪って、生きてきた。)(それは自らの救済を望んだわけではない。)(それは自らの罪の許しを、贖罪を続けているわけではない。)(欲しかったのは、)(罪を緩める、言葉ではなく。)「〜〜〜〜ッ゛ッ゛ッ゛、【ROSE CHERIE】ッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 (─────────がきぃんっっっっ!!!!!!!!!!)(君と嘘鳥の間を、その刃の隙間を縫うようにして召還されたのは不破壊のメッセージウィンドウ。)(苦し紛れと、僅かな抵抗。)(そのウィンドウは確かに君を『拒絶』した。)(君の感情を拒絶した。)(君の許しを、拒んだ。)「…………何言ったって…何を伝えたって…ッッッ!!!!!」「〝俺は何にも変われねぇんだよ〟ッッッッ!!!!!!!!!!!」(思い出すだけでも苦しい記憶。)(記憶の中の彼女達は笑っている。)(都合良く、綺麗な思い出だけを切り取った自分自身の『夢』の中で。)「でも、仕方ねぇだろ…っ!!!」「俺は、…よりにもよって……ッッ、俺、〝だけ〟が…っっっっ!!!!!!」「────────生き残っちまったんだから…!!!!!!!!」(置いていかれた側の苦痛は、計り知れない。)(彼が望んでいたのは、愛する人との再会ではなかったのだろう。)(ラブリーは、ヒーローであっても。)(小鳥遊嘘鳥は、ヒーローではない。)「違う…ッッッッッ!!!!!おれは、…っ、……俺はあッッッ!!!!!」(幻覚に慰みを求めたのではない。)(亡き亡霊に懺悔を伝えたいのではない。)(彼女達のことを忘れないわけではない。)「俺は、ただッッッッッ…!!!!!」(『小鳥遊嘘鳥』は、ただ。)「───────『幸せ』になっていいんだって、思いたいだけなのに…っ。」(『自由』になりたかった。)(失った屍に縛られたくないだけなのに。)(妹の悲劇を、悲劇と呼びたくないだけなのに。)(過去に囚われたくないだけなのに。)(重々しくふり積もった苦しみの雪は、自らの足に重みをかけ、『物語の第三者』から、同情を誘う。)(自分の過去が悲劇である限り、まるで、『可哀想なものを見る』ような瞳が自分を襲う。)(それが。)(それだけが。)(自分を作り上げた過去そのものが、まるで、『呪い』のように。)(──────《ラブリー》は、愛らしさの具現化であり、同時に拒絶の象徴でもある。)(故にあの愛らしさは距離感こそ近いものの、その距離がそれ以上に縮まることは無い。)(そうすれば過去を覗かれることは無い。)(彼の過去は紛れもなく、どうしようもなかった悲劇だった。)(それを見る、君の悲しげな瞳が、大嫌いだった。)「俺は、…ッ俺はただ、!!…もう、これ以上…ッッッッッ!!!」(誰かがそれを『無責任』だと言った。)(誰かがそれを『家族失格』だと言った。)(それでも、もう。もう。)「〝役目〟なんか、果たしたくない、だけッ…なのに……っっっ。」(──────耐えかねて、しまったのだ。)(母の為。ヒーローになりたかった妹の為。せめて彼女達の幸福のために自らが少しでも動かねばならないと、重い重い責任感と、罪悪感だけを鞄に詰めてこの学校へと足を踏み入れた。)(子供が背負うべきではない、抱えきれない罪状を、壊れてしまった妹の全てを、死んでしまった母の分まで、自分が果たさなければいけないと。)(【ROSE CHERIE】。その能力とはゲームと同じく《セーブ&ロード》である。)(『やり直したい』と願った思いから選ばれた彼が使える〝ディスコード〟。) (強いピンク色のメッセージウィンドウには、共鳴するかのような文字が、よくあるゲームのように『ピッ』と一音なって表示された。)俺 は この世界 から 逃げ だしたい 。▽(それは、ヒーローに、ならなければいけなかった。)(ヒーローに向いていなかった男が吐いた。)(嘘偽りのない、『弱音』だった。)(全てを投げ出して、[▶逃げる]を選択したかった。)[▶逃げたかった] [▶やめたかった] [▶たすけてほしかった] [そのコマンドは〝ヒーロー(貴方)〟実行できません. ▽]   (7/25 01:42:58)


NOEZ> 
【能力】このディスコードは誰よりヒーローに近い君にしか適合しない。『…………何言ったって…何を伝えたって…ッッッ!!!!!』(其れは、悲痛な。)『〝俺は何にも変われねぇんだよ〟ッッッッ!!!!!!!!!!!』(何処迄も悲痛な、叫びだった。)『でも、仕方ねぇだろ…っ!!!』(現実には傷が付いて。)『俺は、…よりにもよって……ッッ、俺、〝だけ〟が…っっっっ!!!!!!』(其れはどうしようも無く痛み続けて。)『────────生き残っちまったんだから…!!!!!!!!』(だから、何処かを歪ませなきゃやってられなかったんだろう。)『違う…ッッッッッ!!!!!おれは、…っ、……俺はあッッッ!!!!!』(治らない傷ならどんな薬も。どんな手当てもただ痛みを増すだけだろう。)(だから。)『───────『幸せ』になっていいんだって、思いたいだけなのに…っ。』(熱持つ瀝青に雨が落ちる様な。淡くて弱くて小さな願いの、溢れる音がした。)『俺は、…ッ俺はただ、!!…もう、これ以上…ッッッッッ!!!』(ただ、淡くて。弱くて。小さな。)『〝役目〟なんか、果たしたくない、だけッ…なのに……っっっ。』 [そのコマンドは〝ヒーロー(貴方)〟には実行できません. ▽] ____(ねえ、ヒーロー。)_______(ねェ、ヒヰロー。)___________(ねえ、火一rO⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎(ラジオノイズは、英雄を呼ぶ音声を呑み込んだ。)共感(きょうかん)、エンパシー(empathy)は、他者と喜怒哀楽の感情を共有することを指す。もしくはその感情のこと。例えば友人がつらい表情をしている時、相手が「つらい思いをしているのだ」ということが分かるだけでなく、自分もつらい感情を持つのがこれである。通常は、人間に本能的に備わっているものである。しかし、例えば反社会性パーソナリティ障害やサイコパスの人物では、“共感の欠如”が、見られる[1]。近藤章久は深い共感と直観を精神治療の根幹とした。(wikipedia参照)八重 イドラ> 
「...........。」(安い感動なんか要らないんだ。)「................センパイ。」(あてられただけの、其の場限りの情動じゃあないんだ。)「........................オレ、なりてェんすよ。ヒーロー。」(同情、じゃあ無いんだよ。)(ライセンス、其の全ては正へと働くだろうか。或いは。或いは其の【共感】は、感情と云う鎖に引き摺られ続ける呪いだ。他人を見て悲しくなる度に恨んで、憎んで、呪って。他人を見て嬉しくなる度に抱き締めて愛した戒めだ。)(ねえ、小鳥遊。)「.............絶対ェに。」(だから、今は愛すよ。此の悲しさも、苦しさも。)「.............センパイ。」(弾かれた感情の刃。届かないなら届かないで、其れでももがくから赤の刀は現れた。)「【月下香】。」(ゆっくりと振るわれた刃は、必ず。必ず突き刺さるだろう。)(“彼自身の、左手へと。”)(果たして変化があるかどうか。最早それすら怪しく、愚行と云っても過言では無い行いだった。)(愚行と云っても過言では無い、が。そもそも彼は愚か者だ。貴方も、知るように。) (だから、其れはお呪(まじな)い。ただ、巡った感情の分だけ叫ぶんだ。)(目の前の誰かに全力で手を伸ばさないでヒーロー足り得るだろうか。後先を考えた末諦めてヒーロー足り得るだろうか。)(否。断じて否。繰り返す事にはなるが。)( 八 重  イ ド ラ は 、 月 下 香 に 選 ば れ た 愚 者 - ヒ ー ロ ー - だ 。 )「〝ヲソドリ〟ぃぃぃぃッッッッ!!!!!!」(ダンッッ!!!!と、宙に浮かんだ文字列を叩くのは左の拳だ。其の衝突がどれだけ痛くても。屹度、愛すべき痛みだから。)「オレは!!!!!!アンタを見捨てやしない!!!!!!!!殺すのは論外、だからッて“じゃあ頑張ってねバイバイ”なんてクソッタレも絶対ェ認めねェ!!!!!!!!!!」(熱持った瀝青への一雫。どれだけ淡くて弱くて小さかろうが、〝零れ落ちた〟事象は動かない。現実と云う連続体の中に〝刻まれた〟事実は動かない。其の傷を、小さな解れを、此の大馬鹿は忘れない。)「だから!!!!!」(感情の戒めを、八重イドラは離さない。)「だからッッ..........!!!」(だから。貴方の紡いだ言葉の数だけ、此の英雄は叫ぶんだ。)(.......いや、零すんだ。君と同じさ、小鳥遊 嘘鳥。)「一緒にガッコ、やめちまいますか........?」(貴方を戒める呪いを、貴方を痛ませる過去を。砕いて壊して消し去るなんて、そんな力は無いけれど。)(でも、一緒に迯げるくらいは、出来るから。)ラジオノイズは、使命を呪っている。ラジオノイズは、縛りを呪っている。ラジオノイズは、戒めを呪っている。[そのコマンドは〝火一rO⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ 「ヒーローなんて辞めちまって、どっかでのんびりしちまいましょーよ。」(目の前へ手を伸ばさないでヒーローになれるか。ならば彼は職業や地位の一切を捨てよう。)「オレ、〝アンタ〟が苦しんでるままなのにさぁ.....っ、仲間面して戦えねえよ.........ッ」(弱音を零した誰かへ。何処かの海でメガホンへ叫ぶ誰かへ。ただ、幸せを望む貴方へ。)「ねえ。」(此れが、彼の全部。此れが、彼の精一杯。どうか、少しでも届けと。後先考えぬ愚か者が。貴方を思う人間が。或いはエゴと呼べる様な言葉を紡ぐ。)(綺麗に救える程強くないから。そんなに器用じゃないから。だからって、何もしないで居られる程利口でも無いですから。戒めを捨て去って欲しいと、幸せになって欲しいと。)(願っちまった、もんですから。)「オレ、アンタが辛いままなのいやだよ。センパイ。」(だからどうか、零させて。)(或いは此れも、繰り返し。)八重 イドラは、君を愛している。   (7/27 21:05:34)


小鳥遊嘘鳥> 
(小鳥遊嘘鳥は、家族を、愛して、)(〝いた〟───────。)(君にはわかるはずだ。)(君には理解ができるはずだ。)(────それは、『過去形』であることが。)(上半身だけを残して地に還った母。)(今や抜け殻のように呻き声だけをあげる妹。)(それを。)(かつての笑い声を。)(幸せを前に。)(──────果たして家族と、呼べるのだろうか。)(手元に残る虚しさと、『やり直し』を選んだその運命こそが、彼の全てを物語る。)(ラブリーは偶像だ。)(英雄になれない男が、母のようなヒーローに、妹のような勇気に、世間一般様が夢見る、『愛される』ヒーローにならんとした。その末路。)(嘘の皮でできた仮面で、顔を覆った傀儡。)(そうだ。)(小鳥遊嘘鳥という男には。)(ラブリーというヒーローには。)(もう。)(───────〝守るべき誰か(愛する人)〟なんか、いなかった。)(日々を浪費し、息を吸い、まるでステージの上で踊る見世物のキャストのように。)(英雄に〝成りきった〟だけの、紛い物。)(太陽に宿るは鴉である。)(その眩しさに目を焼かれながら、その温かさに身を焦がされながら、届くはずもない〝慈鳥(からす)〟へ。耐えられるはずもない〝鶵咫(ひなた)〟へ。)(鳥籠の中、不吉と歌われた鴉は白へと、願う。)(白鴉。)(転じて、《ありえないこと》の喩え。)(〝不可能〟の象徴。)(彼は鳥籠の中で耳を塞ぐ。)(目を閉じる。)(強く。強く。)(その耳は罪の形をしているから。)(その瞳は〝現実〟を見てしまうから。)(悲しきかな。)(君の懇親の思いは、[▶セーブデータ]に響かない。)(【ROSE CHERIE】に宿る思いが、《不破壊》であるが故に。)(所詮。セーブデータの一つであるが故に。)(彼は、ゲームのNPCが絶望する手段をその手に持っているが故に。)(決して、ヒーローには──────。)『〝ヲソドリ〟ぃぃぃぃッッッッ!!!!!!』(────────ダンッッッッッッ!!!!!!!!!!!!)[[[ !!!??? ▽]]](ある程度、弾力のある何かが、不破壊と歌われたそのウィンドウを殴った。)(君と自分を両断したそれを、君が殴った。)(ヒーローには実行できないコマンドを。)(君は。)『オレは!!!!!!アンタを見捨てやしない!!!!!!!!殺すのは論外、だからッて“じゃあ頑張ってねバイバイ”なんてクソッタレも絶対ェ認めねェ!!!!!!!!!!』(君の叫ぶ声は、全力だ。ずっとそうだった。)(張り裂けそうなほど、『傷』だらけで。)(可哀想なほど、痛々しくて。)(それでも、真っ直ぐで。)『だから!!!!!』(──────バチバチッッ…。)(メッセージウィンドウに、〝ノイズ〟が走る。)『だからッッ..........!!!』(───────バチバチバチッッッッ!!!!)「(あ。)」(ようやく開いた夜の星空のような瞳が。)(君の声を《聞き届けた》罪の証が。)(──────かしゃん。)(ヘッドホンが落ちる。)(────────バヂュンッッッッッ!!!!!!)『一緒にガッコ、やめちまいますか........?』(──────────ぎゅう。)(君の視界の端に、濡羽色の髪が映る。)(君の背に、冷たい手のひらが回る。)(君の耳元に、啜り泣く誰かの声が聞こえる。)(………君が視線を、ほんの僅かに横にさえ向ければきっと、)(──────長くとがった耳が見える。)(https://youtu.be/aBZqxfnvaVA?t=143)「な…っんで……。」(『オレ、なりてェんすよ。ヒーロー。』)「なんッ、で……っ!!」(『ヒーローなんて辞めちまって、どっかでのんびりしちまいましょーよ。』)「なんでっ…だよ…ッッ!!!」(『オレ、〝アンタ〟が苦しんでるままなのにさぁ.....っ、仲間面して戦えねえよ.........ッ』)「俺に…っ、そんな、思いをかける、意味なんてっっ…ない、ッのに…!!!!!!」(夜空から、ぽつり。またぽつりと、暖かい雫が滴る。)(首を絞めたまま、言葉を噛み殺すような、吐く息すら足りないような肺の痛い声が零れる度に、君を抱き締めるその手は力が篭もる。)(君を抱き締めた彼のその腕にどんな意味があったかなんて、知らない。)(それでも。)(上手な泣き方すら知らない嘘吐きの鴉は、傷だらけの君を力いっぱい抱き締める。)(君はヒーローになりたいんだろ。)(俺が本当は世界で一番なりたくなかった存在に。)(母のような、手の届かない、間近な存在に。)(なりたかったんだろう。)(君は、感受性の高い人だ。誰かのために涙することが出来、誰かのために怒ることができる。)([▶逃げたい]と選択したかった自分何かのために、[ヒーロー]という選択肢を捨てるような、愚か者だ。)(そんなに心をちぎっても、君が手を伸ばすこの男にはなんの価値もないだろう。)「おれは、」(君の優しさに漬け込む、クズだよ。)「おれは…ッ」(家族を家族と見れなくなったから、目を逸らして逃げるような馬鹿だよ。)「…おれは…、さぁ…っ!」(《嘘鳥》。)(名前に恥じない、嘘吐き者。)(救う価値もない、自業自得の人生を生きる、無意味な。)『オレ、アンタが辛いままなのいやだよ。センパイ。』(─────────本当はさ。)(怖かったんだ。)(守るべきだったのに守れなかったこととか。)(立ち向かうべきだったのに逃げたこととか。)(《嘘鳥》という存在が、《ラブリー》に塗り潰されていくのだって。)(誰もそれを、責めてくれなかったから、怒ってくれなかったから。)(─────優しかったから、痛かった。)(《小鳥遊嘘鳥》という存在を、どうか、見ていてほしかった。)(それなのに、悪いものは全部、小鳥遊嘘鳥に押し付けて。責任を負わせて。厚い皮で隠して、偽って、自分自身を苦しめた。)(そうすれば、〝ラブリー(ヒーローの偶像)〟はいつまでも清廉潔白で。いつまでも《軽く》て。)(──────いつ居なくなったって、大丈夫だったのに。)「俺は、〝英雄(ヒーロー)〟なんて、気持ち悪くて成りたくない。」(君が、小鳥遊嘘鳥に意味を与えてしまった。)(愛する人も、守るべき人も、失った彼に、〝愛する意味〟を与えてしまった。)(空っぽの、責任だらけの、ただ重たい罪だけを引きずる男に。)(その鴉の鳥籠を、あろう事か、君は。)「──────ほんッとう、ヒーローってのは皆、お気楽で、お人好しで、…ッッ反吐が出るンだわ…。」(潤む夜空が君を見る。)(ヒーローに似つかわしくない悪どい笑みを浮かべるのは間違いなく君が名を呼んだ─────。)「嘘に鳥と書いて、〝嘘鳥(をそどり)〟。ひらがなで書く時、頭の文字は《お》じゃなくて、わをん、の《を》、な。」「苗字は小鳥遊。知ってるだろうけど、やけに軽い羽みてぇな、青薔薇で飾ったヒーロー。…小鳥遊慈鳥の息子で、双子の兄。」「妹の名前は、〝鶵咫〟。鳥の鶵の鶵に、八咫烏の咫と書いて、〝鶵咫(ひなた)〟。」「趣味はゲーム。正直みんなでワイワイやるより一人で黙々とやってる方が好み。」「好きな物は辛いもの。深夜に食べる辛いラーメンとか。」「後…、昔は電子工学の学校に通ってゲームのプログラミングの勉強してた。将来の夢は、…本当は、《ゲームクリエイター》だった。」(君が欠如している情報を補うみたいに。)(まるで、《ラブリー》には全く似つかわしくない《ひとりの男》の話が綴られる。)「見ての通り、ルクレルク人の血が入ってる。ほら、〝顔がいい〟だろ?」(微笑む色合いはアイロニー。)(髪をかきあげて見せるその顔は、幼さこそまだ残るものの、整った顔であることは間違いない。)「─────初めまして、八重イドラ。」「《俺》が、小鳥遊嘘鳥だ。」(目が悪いのか、元から目つきが悪いのか、釣り上がり、人を小馬鹿にしたようなその表情は、どこをどう切りとったってラブリーなんかじゃあない。)(君が鳥籠から出した鳥は、美しい小鳥なんかじゃあなかったさ。)「ルクレルク人と一緒に逃げようなんざ、随分と派手に出たなぁ。あっはは!〝俺〟に惚れでもしたか?わかるぜ、血筋に恵まれた顔だ。見惚れちまうのも無理はねぇ。」(その言葉も全てが、きっと、全部残念なほどの皮肉なんだろう。)(君が彼を愛する理由すら、素直に受け取りゃいいものを『顔がいいから』で片付けてしまう。)(それすらも、優しすぎる君の言葉に疑いをかけている証拠なのかもしれない。)「……ま、でも。……存外──────。」(離れた腕。)(夏の帰路に一歩進んで、君に背を向ける。)(青い薔薇の飾られた麦わら帽子を被った、小さな背中。)(君に振り返った横顔は、瞳を細めて、くすぐるように笑う。)「君と逃げるのは悪くないかもな。」「───────なぁんて、言わんよ。そんなこと。」(君の額に手が届くならデコピンでもしてみせるさ。)(落としたヘッドホンを拾い上げて、彼は転がすように言った。)「君の夢なんだろ。なら尚のこと。[選択肢]は間違えちゃいけないだろ。」(君の人生にはやり直しなんて効かないんだから。)(君が自分を思うのなら、自分だって君を想う。)(君がちぎった心を少しでも返す為に。)「いーんだよ。どうせ嘘吐きだ。道化なんだから。…みんなの前では、ハッピーでラッキーな、《ラブリー》でいなきゃいけないし。」(生憎、君との逃避行は、情熱的で楽しいものかもしれないが、何せこの男には〝責任〟が付きまとうものだから。)(きっと君を後悔させてしまう選択肢だから。)(……嘘。)(ほんとはね。)「…………君が大事だから、笑顔でいられる選択肢にしてほしい。」(ヒーローになりたくないから苦しむのは自分だ。)(だけど、君だって逃げ出したら夢を捨てることになってしまうだろ。)(そんなのは、どっちも、ハッピーじゃないだろ。)(だからさ。)「……君の隣では、小鳥遊嘘鳥でいていいだろうか。」(ラブリーとして、精一杯羽ばたくから。)(だから、時折でいいから、君を止まり木として、ほんの少しでいいから休みたい。)(ヒーローではなく。)(ルクレルク人としてではなく。)(ラブリーとしてでもなく。)(──────小鳥遊嘘鳥として。)「許されるのなら、〝英雄(君)〟の側に居たい。」   (7/27 23:15:41)


八重 イドラ> 
(叫んだ。叫んだ。叫んだ。)(それから少し、零した。)(謳えるだけを謳った。)(ただ貴方を想った。)(聖者の行進なんて綺麗なものじゃなくて。其れは救済も完全も持ち得ぬ愚者の邁進。どうか逃避行に誘うのを許してくれ。どうか不完全を愛していてくれ。)(容量も、地位も、夢も何もかも全部打ち捨てて。それで空いた手を貴方が握れるようになるなら其れで良いって思えちまったもんですから。)『俺は、〝英雄(ヒーロー)〟なんて、気持ち悪くて成りたくない。』(だから、だから。)『──────ほんッとう、ヒーローってのは皆、お気楽で、お人好しで、…ッッ反吐が出るンだわ…。』(其の言葉に絶望や哀しさを覚えなかったのは。寧ろ、泣きたくなる様な心地良さで胸が満たされるのは。身体を包む、誰かの温かみが分かったから。)(だから、彼も。貴方の身体を、優しく抱き締めるでしょう。其れは鳥籠の様な〝護る〟意志の表れで、同時に晴天みたいな、貴方の意志を受け止める広い空に似た温かさ。)(潤んだ夜空、優しく見据えるネオングリーン。きっと、彼だって泣きそうだ。)(それから、それから。)『嘘に鳥と書いて、〝嘘鳥(をそどり)〟。ひらがなで書く時、頭の文字は《お》じゃなくて、わをん、の《を》、な。』『苗字は小鳥遊。知ってるだろうけど、やけに軽い羽みてぇな、青薔薇で飾ったヒーロー。…小鳥遊慈鳥の息子で、双子の兄。」「妹の名前は、〝鶵咫〟。鳥の鶵の鶵に、八咫烏の咫と書いて、〝鶵咫(ひなた)〟。』『趣味はゲーム。正直みんなでワイワイやるより一人で黙々とやってる方が好み。』『好きな物は辛いもの。深夜に食べる辛いラーメンとか。』『後…、昔は電子工学の学校に通ってゲームのプログラミングの勉強してた。将来の夢は、…本当は、《ゲームクリエイター》だった。』(たくさんたくさん、貴方の話を聞いた。たまに相槌を零して、全然知らなかった〝小鳥遊 嘘鳥〟を知っていった。)「......オレもぉー、辛いのめっちゃ好きっす」(よくニカリと笑う男の、其のへにゃついた笑みを知る人間は少なくて。もしかすると貴方も、そんな彼を見るのは初めてかもね。)『見ての通り、ルクレルク人の血が入ってる。ほら、〝顔がいい〟だろ?』「..........めちゃめちゃ良いっす....」(ちょっぴり照れるのは、その手の言葉を言い慣れていないからだろう。)(少しの談笑。小鳥遊 嘘鳥と八重 イドラの時間は。弱くて、小さくて、けれど慥かに〝起きた〟事象だ。淡くなんて無くて、ずっと抱えて行くであろう大切な時間である事が、貴方とお揃いだったらいいな、なんて思ってしまうんだ。)『─────初めまして、八重イドラ。』『《俺》が、小鳥遊嘘鳥だ。』(接しているのが本当の貴方だと意識し直す切っ掛けとなったその言葉。少年はちょっぴり驚いて、其れから嬉しそうに笑うんです。) 「_______八重、イドラっす。」「..........これからもお願いしますね、小鳥遊センパイ。」(〝これからも〟、なんて言葉に、消えてしまわないでくれと願いを込めてしまう。)(その言葉を紡ぐ時、少しだけ抱き締める腕に力が込もってしまう。)『ルクレルク人と一緒に逃げようなんざ、随分と派手に出たなぁ。あっはは!〝俺〟に惚れでもしたか?わかるぜ、血筋に恵まれた顔だ。見惚れちまうのも無理はねぇ。』(貴方はにやりと笑った。皮肉交じりで、其れこそ彼の言葉をひらりと躱して逃れるように。)「.......へへ。」「センパイ、ワルっすね」(なんだが擽ったくなっちまったから、彼なりに精一杯の反撃をして。ちょっとだけ目を逸らして、それからまた見据えるんです。)『……ま、でも。……存外──────。』『君と逃げるのは悪くないかもな。』(悪戯っぽい笑みの横顔。)『───────なぁんて、言わんよ。そんなこと。』(離れた貴方は。〝小鳥遊 嘘鳥〟は、変わらず翻弄する様な言葉を。)『君の夢なんだろ。なら尚のこと。[選択肢]は間違えちゃいけないだろ。』(“でも”って言葉が出る前に、なんだか悪党っぽくてけれど何処か心地良い声音はもう少し先を紡いだ。) 『いーんだよ。どうせ嘘吐きだ。道化なんだから。…みんなの前では、ハッピーでラッキーな、《ラブリー》でいなきゃいけないし。』(嗚呼、違うんだ。それじゃあ貴方が。思考がぐるぐる回って。だからちょっぴり静寂が在って。けれど意外にも、遼遠の蝉の声だけが聞こえる少しの静けさを裂いたのは貴方だった。)『…………君が大事だから、笑顔でいられる選択肢にしてほしい。』『……君の隣では、小鳥遊嘘鳥でいていいだろうか。』『許されるのなら、〝英雄(君)〟の側に居たい。』(今此の時。ラジオノイズは何も呪わない。周波数合って以前無音。蝉のノイズは気にならないくらいに、鼓動音が全身を埋めた。)(貴方の前の男の顔が赤いのは、屹度暑さじゃあ無いのでしょう。)(ねえ、小鳥遊。)「.....当たり、前っすよ.........」「オレ絶対ェかっけーヒーローになりますから!!!」(出来るなら、これから先。〝雛〟と云う時を教えてやってくれ。彼はバカで、そんでもってかっこつけしいだから“八咫烏”は知ってるんだ。)(出来るなら、これから先。一人で楽しめるゲームを教えてやってくれ。彼は友達好きで、一人ぼっちの暇な時間が苦手なんだり)(出来るなら、これから先。たまにはゲームの相手をしてやってくれ。彼は下手っぴだから、貴方には敵わないのでしょうけど。)(何時か、貴方は彼を嗤うかも。“めっちゃ好き”だなんて大見得切っておきながら、カップヌードルのチリトマトをひーひー言いながら食べる程度ですから。)(何時か、出来るなら。これから先。世界が平和になって。命を賭すヒーローなんてあんまり居なくて良くなったなら。貴方のゲームを彼に遊ばせてやってくれ。)(叶うならば、もう一度。貴方を抱き締めるのを許してくれ。)泣きそうなのを、許してくれ。不完全を、愛してくれ。 ___________「一番近いトコで見ててくださいね、小鳥遊センパイ。」(夏、某日。陽炎は瀝青を薙ぐ。)(ラジオノイズは、NOEZは、八重 イドラは。)(屹度此の日を、愛し続けるだろう。)(それがお揃いだと良いなって、思っちまうんだ。)   (7/28 00:20:22)

シオン> 
「(時刻は昼下がり、偶然居合わせたラブリーさんと街の中で会話を___………さっきまでしていた、はずなのですが。)___ラブリーさん、動かないでください…!!!(突如現れた白い霧。今日の天気は晴れ、湿度もさほど高いわけじゃなくて、気温も暖かいし寧ろ暑いくらいだったのです。ラブリーさんの手を強く握り、〝それ〟と目を合わせないように下を向きます。……こんな状況は、カミサマ以外あり得ないのです。SIR_3299_JPN、白蛇。別名、三途之川。大切な人の背中を見せて、連れ去ってしまうカミサマ。先程まで賑やかだった街中、今では濃く白い霧が立ち込めて、その中にいるのは〝何故か私達だけ〟。お願い、行かないで、ラブリーくん。貴方が以前私にしてくれた様に、必死に願います。大切な人が見えない様にと俯く瞳は貴方の顔を見ることができなくて。自分の持ちうる最大の力を手に込めて、最後に小さく「おねがい、」と。)」   (7/26 18:56:28)


ラブリー> 
「あ、ねぇねぇシオリン!この道の先に肌にいい石鹸売ってる専門のお店があってね───────。」『ラブリーさん、動かないでください…!!!』(何気ない、《ラブリー》の日常生活。)(当たり前のように続いていた話には、白い靄がかかり、町は一瞬にして白に飲み込まれてしまった。)(君が忠告するのは、ほんの僅かに遅かったのだろう。)(青空の小麦畑を切り取り、貼り付けたような綺麗な瞳は、)(──────霧の先で、)「………………かあ、さ…。」(────母の後ろ背を、見た。)(たった一人、先を行き、たった一人、先を逝った人。)(霞の先に消えていく後ろ背は熱を持っていない。)(寂しくて、静かで、それを最後まで『母』とは呼べなかった。)(───────ぎゅうっ。)(君が握った手のひらを君の声に答えるように握り直した。)(ライセンス【聞き耳】。)(大丈夫。君の声、ちゃあんと聞こえてるから。)(ほんの少し、君に聞こえるような、囁くような笑い声を零して、その先にある。その先に確かに居る母の後ろ背を眺めた。)「……多分、〝《俺》じゃ追いかけられない〟から。」(憧れ。)(尊敬。)(愛情と、哀愁。)(届かない背。)(母のようにはなれない。妹のように勇気はない。)(臆病な男がとっくの昔に捨て去った過去の残響。)(………音楽がヘッドホンから零れ落ちて、ただ流れていく。)(その耳は罪の形をしている。だからずっと塞いでいる。)(───────母のようになれたらどれだけ良かったか。)(今はただ、君と共に。溢れる音と、誰もいない静寂と。)(君と繋いだ温もりを《聞き届け》ながら。)(霧が晴れるのを待った。)   (7/26 19:34:52)


シオン> 
「(きっと、貴方は進んでしまう。そう思っていました、貴方は優しいから。貴方が臆病という二文字の下に隠してしまった優しさを、私はほんの一握りだけ知っているのですから。)……っ、(貴方の手を両手で握ります。怖くて堪らないのです、貴方が向こう側に逝ってしまう事が。 ___静寂の海、この間のメイリンさんの時…もしも貴方が、私より先に行ってしまっていたら。取り返しがつかなかったかも知れないと今気づいて、安堵とともに焦燥感も覚えました。)___ラブリーくんが追いかけたいのは、確かに…今ラブリーくんが見ている人なのかも知れません、でも…」
「(憧れて、尊敬して、愛して、哀して、自分には出来ないと貴方が否定したって。___貴方は、確かに此処にいるじゃないですか。)…ごめんなさい、…………………ラブリーくんは、本当は追いかけなくたって良いのかも知れないって…(私は否定しません。これはただのワガママで、私の願いで。)ラブリーくんは、ラブリーくんには…ラブリーくんらしいヒーローに、なってほしいんです…(否定でも無いその言葉は、ほんの少しの説得力を持っていました。私は貴方の〝名前〟を知りません。でも、同じなのです。…戦えないところも、ヒーローに向いてないところも。細かなところまで言うのなら、髪の色だって。…母を、喪ってしまった事だって。)」   (7/26 19:52:57)


ラブリー> 
(ラブリーは偶像である。)(ヒーローに向いていない男が、ヒーローを目指す。その為に作られた。)(─────────『小鳥遊嘘鳥』という要素を全て捨て去った男の、末路なのである。)(愛想の無い口調も、冷たい瞳も、大好きな辛いものも、全部我慢して、全部黙って、)(愛想を振りまき、愛らしい瞳で貴方を見て、甘いものを口いっぱいに頬張る、《愛の具現化》。)(愛の宣言。)(それ故の、【ROSE CHERIE】であるが故に。)(そして何よりも。)(『小鳥遊嘘鳥』という男が、これ以上、罪を、責任を、重みを、全てを背負わないために作られた空っぽの盾こそが─────。)「────シオリン。」(霧の中。)(消えることの無い後ろ背に、いつまでも、首を絞められながら。)(愛らしさの具現化は。)「……悪い夢でも、見てるみたいだね。」(《ラブリー》は。)「でも大丈夫だよ。」(〝空白(ヒーロー)〟の傀儡は。)「ラブリーはいつでも、ハッピーで、ラッキーだからっ!」(────────『小鳥遊嘘鳥』であることを夢に見る。)(君が安心できるよう、彼は声を踊らせて言うだろう。君に顔が見えていたのならウインクでもしたくらいには明るくて、眩しい声でさ。)(だって、ラブリーはね。)「君といると、毎日がハッピーだからね。」(───みんなと生きてるこの時が幸せ!!)(例えそれを、〝過去(小鳥遊嘘鳥)〟は恨んで、拒んでいたとしても。)(〝小鳥遊嘘鳥(過去)〟さえ覗かれなければ、ラブリーは。)(──────ラブリーでいられる。)(ヒーローの偶像。)(理想の愛らしさ。)(愛の宣言。)(調香師の間で最も愛された花に敬意を表す香り。)(それこそが、)[ROSE CHERIE](霧が晴れていくと同時に、母の後ろ背も消えていく。)(ふぅ、と大きく息を吐けば、力を込めてましたよ〜なんて言うかのように肩を下へと下げた。)「えへ、何の話してたんだっけ?突然のカミサマ現象で、忘れちゃった!」(明るい笑顔が貴方に振り返った。)(その顔に君を疑う色なんてない。)(君を蔑む色なんてない。)(例えその心の奥底の鴉が、貴方を大嫌いだと歌っていても。)(君がその言葉を伝えるべきなのは、《ラブリー》ではなかった。けれど、君のその声が君の本当に届けたかった誰かに届くかは、分からない。)(──────あの子の好きな、ラスサビは、永遠に流れない。)(〝彼〟が耳を、閉ざす限り。)  (7/26 21:09:18)


シオン> 
「(気づいた時には涙が溢れそうになっていました。気づいた時には、きっと私の方が霧の中で迷っていたのでしょう。ラブリーと言う偶像に塗りつぶされてしまった誰かより、自分を偽る事も出来ない葬儀屋は迷っていただなんて皮肉。『___シオリン。』『……悪い夢でも、見てるみたいだね。』そうです、わたしはきっと、すごく悪い夢を見てしまっているのです。だから、だから…貴方が『ラブリー』であることさえ、夢だったらと。罪悪感、焦燥感、エトセトラ。先の見えない霧の中で迷った葬儀屋は、自分の精神がすり減らない様に貴方の手を握っているようでした。)」「(貴方がラブリーさんとして明るく話す声に、どうしようも無く己の不甲斐無さを感じました。見届けなければならない、聞いていなければならない。ラブリーはみんなのヒーローだから。輝ける存在だから。___それなのに。どうして、どうしてこんなにも目を背けたくなってしまうのでしょうか。『___えへ、何の話してたんだっけ?突然のカミサマ現象で、忘れちゃった!』)……あ、(パッと開ける視界に、手の力が緩みます。きっと安心したのでしょう。…けれど、離しませんでした。むしろ先ほどと同じように強く握って、涙をほんの少し溢して。それから、)……行きましょ、石鹸、屋さん…(喧騒の中、ほんの少し震えた声でそう言った。霧の悪夢はきっと終わったから。蝶は不甲斐なく慰めるように薔薇に留まり、こう言うのです。)」「薔薇の香りのが、欲しいです…」   (7/26 21:29:40)


ラブリー> 
(画面の先の存在に『現実』を求めてはならない。)(ラブリーとは今で言うようなvirtualと変わらない。現実を覆い隠し、偽りの設定で動く傀儡。)(だからこそ、その中身を。〝中の人〟を、探ってはならない。)(それが誰しも素敵なこととは、限らないから。)『……行きましょ、石鹸、屋さん…』「そうだ石鹸屋だ!ありがとシオリン!行こう?」(消え入りそうな君の声を、少しでも上げてあげたくて、自分だけは、明るくあろうと声を弾ませた。)『薔薇の香りのが、ほしいです…』「─────────っ、……薔薇ね!…あったかなぁ。あ、でもね!ソープフラワーってのはあるよ!石鹸がお花の形してるやつ!飾りとしてしか使えないんだけど。」(君との表情はきっと雲泥の差。)(それでもキラキラな笑顔で続ける彼にはほんの少し違和感も覚えてしまうほど。)(まるで使命感のように続けてるんですもの。)(君よりも多く喋るお喋りな彼。だけれど、流石に貴方の顔色が暗いのはわかっている。)(わかっている。)(わかってるから。)「ねぇ、シオリン。ちょっと前を向いてくれる?」(少し足を止めて、繋いでいない方の手のひらを貴方の前で、)(──────────パチンッ!)(それと共に、彼の手元にぽんと咲いたのは黄色の薔薇だ。)(それと一緒に、彼の手元には紺色のカードが挟まっている。)「…上手くできるか、不安だったけど、成功してよかった。」(母のちょっとした特技だった手品。自分じゃあんまり練習したことなかったけど。)「あのね。それ、《俺》のアカウント。」(───────ゲーム実況者《ヲリ》。)(君に名前は教えられない。)(だけれど、君は、ほんの僅かに『小鳥遊嘘鳥』に近付いた。)「普段と違うから、多分びっくりすると思う。みんなにも、教えてないから。」(見るも見ないも、君の自由。)(ふにゃふにゃに笑って彼は君にそう告げた。)「あんまり、知って欲しくないから。」(でもそれは。)(────小鳥遊嘘鳥が確かにそこにいる証拠だ。)(彼の記録だ。)「………………俺が、君をどう言うかとか、君をどう思ってるとか、本当はそういうの、探ってほしくないし、知ってほしくない。」(落ちた瞳は夜のよう。)(先程と違う消えてしまいそうな声。)(愛らしい見た目に反する暗い色。)「けど。」(小鳥遊嘘鳥は貴方を罵倒するかもしれないよ。)(小鳥遊嘘鳥は貴方を拒むよ。)(だけどね。)「……《ラブリー》で笑ってもらえなきゃ、《ラブリー》の意味が無い。」(君が目を逸らしたら、《ラブリー》は君に、笑いかけられない。)(だから君は、どうか。)(嫌うなら、目を逸らすなら、『小鳥遊嘘鳥』にしてほしい。)   (7/26 22:09:04)


シオン> 
「(貴方が私をセーブした時に花をくすぐった香り、それと同じものはあるのでしょうか。もう霧ははれたのに、相変わらず俯いていた私。『ねぇ、シオリン。ちょっと前を向いてくれる?』その言葉を聞いて、ようやく貴方の顔を見たのです。(──────────パチンッ!))……へ、(まるで魔法みたいに、目の前に現れた一輪の薔薇。『あのね。それ、《俺》のアカウント。』薔薇を恐る恐る受け取りながら、紺色のカードも手にする。…貴方が探って欲しくないだとか、知って欲しく無いだとか…言っている間にも、少しずつ笑顔が戻ってきて。それは、ラブリーの存在を肯定するものにもなり得るのでしょ。)」「……ん、へへ…(ほんの少し赤くなった左目を擦りながら、不恰好な笑みを浮かべます。『みんなにも、教えてないから。』その言葉に、浅ましくも特別感を感じてしまいました。嫌うなら、目を逸らすなら?___いやです。私は目に映ったもの全てを見届けたいのです。だから、だから。私は、本当のアナタもラブリーも、ヲリくんも。全部全部大事にしたいのです。疎ましいとか、鬱陶しいとか、そう言う都合の悪いことは全部聞かなかったことにするので。ラブリーだから意味があるとかそういうのも知りません。…私の中だけでは、〝アナタ全て〟に意味があるのです。)…せっけん、ちゃんと、付き合ってください。」「(そのあと、私はラブリーさんとずっと手を繋いだまま石鹸屋でショッピングをしたでしょう。帰ってからはいそいそと着替えてシャワーを浴びて、もらった薔薇を飾って、とあるゲーム実況者のライブを見ようと慣れないパソコンで準備をするのです。…そして、シオン・フォーサイスは___)」「(黄色い薔薇の花言葉を、まだ知りません。)」〆   (7/26 22:33:52)

蕪木 千歳> 
( 読みかけの本から目線を離せば、黒板の上の時計は17時を少し過ぎた位を指していた。その頃にもなると大半の生徒は教室から抜け出していて、残るは彼女1人きり。それに気が付くと、人の熱が失せたことで冷えた空気がつきつきと身を刺すようで、ひっそりと息を吐き出せば、背凭れに微かに体重を預けた。本から飛び出る栞の角にツンと指先で触れて、少し迷ってから栞を読み終えたところに挟み直す。まだ、学校を出るにはほんの少しだけ早い時間だった。けれど、また本の中に意識を移すような気分ではなくなってしまった。また気分が来たときの為に、机の上に本を残したままにはするけれど。兎に角として、なにか別の待ち時間の潰し方が必要だった。本から目線をそのまま下に、それから正面に向けて。『 ………………よぉし、 』誰かに声をかけた訳ではない。強いて言うなら自分自身への、気合い入れのようなものだろうか。しん………と静まり返る空気は誰もそれを聞いていない証で、その方が都合も良くて、少しだけこの空気を好きになれたような、そんな気がする。結局なんだって、気分の問題だ。まだマシになった空気を纏って立ち上がると、向かったのは掃除ロッカーだった。姑みたいに、床の埃とか、黒板の粉の残りとかを気にして、……その実、ただの時間潰しの言い訳にして。やる気はそこそこに。それは、そこそこでも事足りてしまう程度のことであったし。スローペースで机はそのまま、床の掃き掃除の延長戦を始めてしまうことにした。)   (8/3 21:49:37)


ラブリー> 
(音の流れなくなったヘッドホンからいつも以上に〝現実〟が聞こえてくる。)(それは一抹の不安。ティースプーン1さじにも満たない現実への拒絶感。)(夕暮れに染る。暖かな色が部屋中を染めて、下校のチャイムがなる。物悲しい時間帯。)(当然〝ラブリー〟な彼だって、可愛い鞄を背負って、赤いスニーカーを弾ませながら寮の方へ帰宅する途中だったろう。)(─────────ふと。)(教室の扉から覗いた貴方の姿が目に入る。)(名前。そう、名前。何だったかしら。貴方の為に考えた『呼び名』があるんです。)(そう。)「────────らぎらぎ!!」(彼はひょこっと、教室の方へ顔を覗かせれば、貴方の名前──────もといあだ名で貴方のことを呼ぶだろう。)(にへにへと、いつもの笑顔は崩さずに。)「残って教室の掃除?偉いね〜っ!!僕も手伝っていい?」(貴方がそれを許してくれるなら、彼も黒板消しを手に取り、ほんの少しあるチョークの汚れを綺麗に落としていくことだろう。)(貴方にとってはほぼ初対面である。勿論それは彼も同じ。)(しかし。)「らぎらぎはあんまり、話したことないけど、どんなものが好きとかある?僕が話ついてけるかはわかんないんだけど。」「詮索するみたいで悪いんだけど、もしかして本とか好き?机の上に本があったからてっきりこの時間まで読んでたのかな〜って。」「でも、本読んでると集中しちゃって、目が疲れちゃうよね。」「あ、目と言えば!らぎらぎの眼鏡いいよね〜、その赤ふちの!俺も買い換えて新しいのにしよっかな。」「あ、ねぇねぇ!本って言えばらぎらぎ最近流行ってるやつ知ってる?ほら、あの推理ホラーの───────。」(───────これである。)(流石、ライセンスに【トーク力】とあるだけはあり、彼の口は止まることを知らず、君が返すよりも先に話題がぽんぽん溢れていく。まるでポップコーンみたいにね。)(ひとつ話せば話題には困らない。そんな彼の特技なのだが。)(───────ライセンス【心理学】、【聞き耳】。)(当然彼だって節度は守る側だ。君の顔が話についていけていないようなら、麦畑の広がる空色の瞳を少し困らせるように揺らして、笑い直すだろう。)「ごめんねらぎらぎっ!話ついてきにくかったよね!ついつい喋りすぎちゃうの、僕の悪い癖でさぁ。」(にへ、って。)(反省するように掃除の手を一旦止めてさ。)「〝ちゃんと聞くから〟、らぎらぎもたくさんおしゃべり…しよ?」(って、首を傾げて聞くだろう。)   (8/3 22:35:24)


蕪木 千歳> 
へ、……………え、あ、ぇ、い、いです、けど、( や………………だれ?聞きなれない形の渾名を口にして。全身桃色の貴方はまるで親しい間柄のように接してくる。記憶の中に貴方と話した覚えなんてなく、記録の中で貴方を見た覚えもない。恐らく、初対面。それから学年も違うはず。けれど記憶違いであったら?これだけ親しく接されておいて覚えてませんでした、なんて、失礼にも程があるだろう。困惑が瞳に滲んで、驚いて肩を揺らした拍子に、集まりだしていた埃は少しだけ散ってしまった。勿体無いとか、また集めなきゃとか思う間も無く、ぽこぽこと貴方から涌き出る言葉。それでも押し流しきれない程に?は溢れる。たぶん、初対面。本当に?丁寧に記憶の糸口を手繰って、貴方の言葉の雰囲気を探って、仮定を確信に変えていく。…………ただ、本当に初対面であったとしたら、…凄く馴れ馴れしいのとか、名字から取ったのだろう渾名とか、………ちょっと、怖い。ヒーローらしい活躍をした有名人とかでもないのに、貴方はどうして、私のことを知っているのか。聞かなきゃ分かんないけど、聞くのだって大仕事なんだ。箒を少しだけ強く握り締めて、散った埃を集め直す。案外それは早くに終わって、此方を頻りに見詰める水色の瞳ときちんと向き合わなくてはならなかった。貴方の言葉に流されることがない?は、溢れっぱなしで行き場もない。首を傾ければ少し出ていったりするんだろうか。『 ……………あの、…私が覚えていないだけだったら、ほんとに、ほんっとに、申し訳ないんです……けど、あの、ええと、…………………だれ、ですか……? 』   (8/3 23:02:14)


ラブリー> 
(彼は、距離を詰めるということもない。その上、距離をとるということもない。)(つまり、最初から最後まで、彼は貴方との接触の距離が変わらない。)(それはつまり。)『……………あの、』「うん。」『…私が覚えていないだけだったら、ほんとに、ほんっとに、申し訳ないんです……けど、』「気にしないから大丈夫だよ。」『あの、ええと、…………………』『────だれ、ですか……? 』「……………え゛ッ。」(愛らしい見た目に反する、鈍い声が跳ねた。)(しばらくの間、思考放棄か熟慮の末か、彼はかろうじて瞳を泳がせる。)(考えるように笑みを歪めれば、愛らしさは教卓の隅に少し隠れて、目元だけ机から出すようにして貴方を覗いた。)(その顔は、髪色と負けず劣らずの赤色だ。)「……そうだね…自己紹介、とか……して、なかったーーーー………な……。………あーー…くそ、しくった……馬鹿…。」(彼は愛らしいピンク色を乱暴に引っ掻きながら、へにゃりと気の抜けた笑顔で、言葉を続ける。)「ごめん、普段からこういうテンションだから…近かった、…かも。」「僕は、《ラブリー》。初めましてだよね。…好きに呼んで。」「……ちょっと、〝耳が良くて〟さ。君のこと、というか。…まぁ多少は、人の話とか聞く機会多くて……たまたま…。 」「あ、あだ名嫌だった!?…ダサかった、かなぁ……?」(彼にとって。《ヒーローの偶像》であるラブリーそのものは、人々から愛される必要があって。)(だから性質上、距離は近くて、掴みにくくて。)(当然、貴方が不審に思うのだって貴方の防衛本能がきちんと働いてるから何も悪くはなくって。)(でも、あだ名だってぽんぽん浮かぶもんでもなくって彼なりに考えたことだったりした。)(本を話題に入れたのも、君が少しでも話に入り込みやすくするためのきっかけ、だったり。)(目に見える情報を取り入れて、君に聞いたのだって、別に彼は何も考えてた訳ではなくて。)「俺、編入生だし、知らなくてとーぜんだよっ!!……その、だから、あんまり気にしないで?」(彼は結構、考えちゃう質で。)(元々は、貴方のように教室の隅で一人時間が流れるままに居るだけのような、そんな色のない人間ではあったから、気持ちはほんの少しわかるから。)(無理強いするつもりも、強要する気もなくて。)「……えへへ、ごめん。びっくりさせちゃった、ね。」(ハート色は申し訳なさそうに、ふんわり色付いた頬を恥ずかしそうにひっかきながら、湿気ってふにゃふにゃになった紙みたいにやわっこい顔で笑うんだ。)   (8/3 23:33:58)


蕪木 千歳> 
( あ"っもしかして知り合いだった…? 暫くそんな不安に駆られて、瞳を泳がせる貴方と向かい合う。解答が得られるまで不安でいっぱいで、余計な声は出せずに。互いに困惑して、互いに無言で向かい合う様は端から見ればきっと異質だ。漸く動き出した貴方は教卓の影に隠れてしまって、ちょっぴりの背伸びでそれを覗き込む。ひょっこりと覗く目の色は、肌まで真っ赤なものだから、いっそう赤い色に見えた。『 ……………………………そ、ですー……よ、ね、……すみません 』記憶違いでないことに、一先ず安堵を覚える。しかしながら、そうも羞恥心を煽ってしまうとは思っていなくて、少しだけ申し訳なさが。思わず苦笑してしまいながら、小さく頭を下げた。『 らぶりー……くん、えと、なるほど、言われ慣れない渾名なので、びっくりしました、けど、大丈夫です、 』呼び捨ては近くて、さん付けは遠くて、かといって先輩と呼ぶにはなんとなく不自然。それは貴方が子犬のように人懐っこいからだろうか。勿論、遠慮のない後輩という可能性だってあったが、なんにせよ比較的しっくり来るもので呼ぶことにした。ぱたぱたと手と首を一緒に振って、そんな慌ただしさを引き連れて足取りは掃除ロッカーへ。それは箒を塵取りを取るために。それから、ちょっとだけ呼吸をするために。貴方だって真っ赤だし、向き合い続けるのはなんだか不自然を引き摺りそうで。………この場合の自然とは、そんな疑問は見て見ぬふり。『 まあ…………でもその、大丈夫、なので……!……………? ……あ、と、…蕪木 千歳、です、……知られてるみたいですけど、一応。…宜しくお願い、します…? 』我ながらなんだか変なことを言っている気がして、不自然に口角がひきつった自信がある。ぱっぱと塵取りに収まった埃の影に、私だって隠れてしまいたかった。)   (8/4 00:05:01)


ラブリ-> 
(ぴょこ、っと。教卓から覗くのは麦畑の空色と、彼の特徴的なハートのアホ毛だ。)(ぱちぱちりと貴方を不安げに覗き込む瞳はどこか迷いを感じるし、ほんのちょっとだけ、距離も感じるかも。)(でも、貴方が大丈夫と口にしたのなら、彼は嬉しそうに顔を出して、満点の顔で笑う。)「本当っ!!!??」(突然、彼は君の手をぎゅっと握った。余程嬉しかったのか、君の手ごとぶんぶんと振り回すように手を振るだろう。)「あっ…………こ、こーいうのが苦手、なんだよね!!ごめんね……。」(貴方の困り顔を見たのなら、ハッとしたように手を離し、その手は腰の後ろで結んで隠した。)(話したいことはいっぱいあって。けれど踏み出し方を少し間違えちゃって、なかなかうまく言い出せない。もご、と少しだけ口籠もる口元に貴方が気付くか否か。彼はパッと顔を明るくさせて笑ってみせる。)「そう、僕は《ラブリー》!えーーと、身長170センチで18歳!!好きなものはゲーム!!!将来は──────────、」(はく……。)(そこから先の言葉をわずかに言い籠った。)(君の目をもう一度見直して、言い直すように言葉を続ける。)「友達を、いっぱい作ることが、〝夢〟。」(ラブリーはいつだって、貴方の味方で、貴方のヒーローでなくっちゃ。)(それを言い終えたのなら、彼は黒板の僅かな汚れを拭いながら、君に聞くだろう。)「えっと、もし嫌だったらちゃんと言ってくれたらいいよ。…俺も、人との距離近付けてるの、自覚あるし。」(言ってしまえば真反対。ずいずいと他人の領域に踏み込んでいく彼と、貴方では相性も悪いかもしれない。掴み出しから失敗しているしね。)(それでも可能な限り、貴方が怯えたりしないように、恐る恐る貴方という存在に〝触れて〟見たいんだ。)「ね、今度は君のこと〝聞かせて〟くれる?」(嫌だったら言わなくてもいいし、離れて欲しかったらそうするよ。)   (8/8 22:10:33)

蕪木 千歳> 
ひゃ…………っ!?わ、わ、わ………っ!( 突然の事に倒れこむ箒を体で受け止めて、元々支えていた手はといえば貴方の意のままなすがまま。ぶんぶんと揺れる腕に見開かれた瞳は白黒と戸惑って、漸く自由に動かせるようになった腕に、密かにほっと息を吐いた。心なしか体温の残る気のする掌は、その温度がくっついてしまったみたいに曲がったままで動かせず、腰もちょっぴりへっぴり腰。『 え、ぇと、苦手というか………急には、驚いちゃうので、 』それに加えて、耐性が無いので。驚くのまではきっと皆共通の事。ばくばくと心臓が鳴って、苦笑いしか浮かべられないのは、共通でなくともおそらく、仕方のないこと。あんまり良くは、ないのだろうけど。ちらりと貴方の様子を窺いながら握り直した箒は、固くひんやりしていた。貴方の自己紹介を耳で聞いて、そうですか、で済ませるのはあまりに淡白。何も、コミュニケーションを拒絶したい人間という訳じゃない。……けど、自己紹介の正しい相槌って、なんなんだろう。共通項を見付けること、とか?お名前はもう知っていて、身長と年齢はちょっぴり上。ゲームは、暫く触れていない。…………将来、…将来、かぁ。見詰め返された瞳孔が揺れている気がして、けれど瞬きの後には、それは気のせいだったのかもしれないと思い直す。通い慣れた自分だけの部屋が、嫌に恋しく思えた。一通りの事項を頭に浮かべて、まるで新学年の始まりみたい。『 …名前は、さっき口にした通りです。身長は…160cmくらい、今年で17歳です。好きって程じゃないですけど、スマホの、農場系のゲームは少ししてました。夢は…………、 』『 ……………、 』ああでも流石に、新学期でだって夢の宣言まではしなかった気がする。『 …………っ、…確かに、初対面なのに夢を語り合うのってなんか、っふふ、すごく、距離近いですね、 』そう思うとなんだか可笑しく思えて。箒を支えにするりとしゃがみこんだ少女は、お腹を曲げてけらけらと笑った。そもそも、スタート地点が渾名だし、そこから近い。筋力がなくって、足が痛くなってしまうから長くはしゃがめずに。けれどしゃがんでいる間は、教室の中、停滞する空気を細かに震わせて。変なの。変な人。)   (8/8 22:57:19)


ラブリ-> 
(突然しゃがみ込んでしまった貴方に、彼はあわあわとその腕を彷徨わせ、背に手を添えるか、声を掛けるか、慌てて悩んだ。)(やはり何か、貴方の気を影らすような発言を自分はしてしまったのかもしれない。そう思って、ご自慢の【トーク力】を歌おうにも、人の心の内を軽い言葉で流してはいけない気がして、無言を貫いていた。)(『夢は…………、』)(それから止まってしまった貴方の言葉をハラハラしながら待っている。)(友達を作ることが上手ではない上、どうやって距離を詰めていくのかさえ知らない彼には、〝友達作り〟ほどハードルの高いものがないんだ。)(煮え切らない自分の感情に、どうすればと思い、貴方に少しだけ手を差し伸べたその時───────。)『…………っ、…確かに、初対面なのに夢を語り合うのってなんか、っふふ、すごく、距離近いですね、』「(あ。)」(本当に、ひっそりと。柔らかで、小さな笑い声が、ちゃんと彼の耳に届いた。)(それだけで、景色が少し変わったみたいで。重い不安が少しだけ軽くなった気がして。)(彼は、貴方の顔に合わせるように、その顔を小さく緩ませた。) 「……ふへ、へへっ。…そーだね。あんまり、言わないかも。」(──────────君が笑ってくれてよかった。)(彼の心を掠めた想いはそれだけだ。)(夕暮れに染まる教室で、ズレた歩幅と初対面の小さな夢。)(少しだけ、足並みを揃えて、彼は君に言ってみせる。)「……友達とか、あんまり作ったことなくて。…距離とか、どうしたらいいかって、何したら正しいのか、…難しいね。」(現にそれで、一人。友達作りに失敗しちゃって。君とも少し、不器用な距離で。)「…………………〝友達〟って、どこからどこまでがそうで、そうやったら〝友達〟って判定になるんだろうね?」(相手が友達だと思えば?)(自分が相手を友達だと信じれば?)(結局その境目って結構曖昧で。)(わかりにくくて。難しくて。)「……………俺は、君とも、友達になりたいと思ってるから…、」(思っているから?)「えっと……。」(泳ぐのは腕か、瞳か。)(彼は自信なさげに頬を掻き、その視線をどこに向けるでもなく不安定に動かした。)「…………〝お友達になりませんか〟…?」(それは許可を得るものではないのだろう。)(契約や約束事でもないのだろう。)(それでもそれを、明確に形にしたいと思ってしまうのは、きっと──────────。)   (8/8 23:32:24)


蕪木 千歳> 
( 無理矢理距離を詰めるよりも、今くらいが心地好かった。それは、同じところまで墜ちてくれていたからという良くない思いからであったのかもしれないし、不自然な詰め方が気味が悪かったからかもしれないし、どちらにしろ、この好ましさはあまり良いものではないのだろう。でも、『 ………そう、ですね、…私でよければ、 』まるで、告白にでも答えるような台詞回しで『 お友達、宜しくお願いします 』ほっとして頬が緩んで浮かんだ笑みも、恐る恐る握手でもと伸ばした手も、そして、きっと掴んでくれただろう貴方の体温も、表情も。全部、私はどうして捨ててしまったのかも分からないまま、記憶から消してしまうけれど。『 お互い友達って、思ったので……ので…こ、これで、お友達、です!ね………っ?よしっ、じゃあ、えと、えーーーーっと、お互い一緒の所まで、後片付けして帰りませんか? 』もし手を握ってくれていたのなら、ばんざーいっ!と高々掲げて。まだまだ不自然でぎこちない距離、けど、お互い正解が分からないのなら、これだってきっと正解の1つ。………かも、しれない?もしかするとそうかもしれない!きっとそうだ!よし!なんだか今度は、此方が初めましての貴方になってしまった気がする。ああ、頑張るとお互いこうなってしまうんだな、なんて勝手な同情を抱いて。…初めまして、私のお友達。)   (8/15 00:25:04)