和枕 音子>
( いまが、何月で何日なのか。一週の何曜日なのか。何時何分、何秒であるのか。そんな些事はぼくにとってどうでもいいことだった。朝か、夜か。どちらだって、ぼくの眠りを妨げることは出来やしない。瞼を下ろせば世界は暗がりに包まれてしまうし、そこにあるのは静寂ばかり。) ( ねむりのなかには、なにもない。ただどこまでも、遠く遠く、暗い地平線があるだけ。生命なんてひとつもなくって、ずっと、ずっと静かなままで____ ) 「 ____あぁ、 」( ふるり。間近で見なきゃ分からないくらい、僅かに瞼を震わせた。すぅっ……と、長い睫毛の幕が上がれば、奥から覗くのはトパーズ____いや、ヘリオドールのように煌めくいろ。『 高尚な精神 』だとか『 活気 』なんて言葉とは正反対に位置する、無気力で眠気に濁った情で瞳を揺らしては、ゆぅらりと、まるで札を貼られたキョンシーみたいな動きで頭を起こした。 ) ( ぴぴぴぴと軽快な電子音を奏でるちいさな目覚まし時計を叩くようにして止め、辺りを見回す。) 「 …………おなかがすいた、なぁ。」( 放課後の食堂には人気がなかった。奥のキッチン側には人が動く気配があったけれど、生徒の姿は疎ら。今が昼休みだったら大喧騒、動物も虫もカミサマだってしっぽを巻いて逃げ出すくらいなのに。空腹を訴える薄いお腹を撫で、どうしたものかと首を傾ける。机に突っ伏していたせいで乱れた灰がかった桃色が、肩から滑り落ちて膝の上に着地した。 ) > 小室さん (5/11 22:31:32)
小室 耕助>
「……ん、こんにちは。珍しいねぇ、こんな時間に食堂に来る人がいるとは」(その珍しい人間は勿論自身も含まれている。というのも皆昼食はとっているだろうし、ここにいる人も大半は椅子に座って駄弁るだけといった所だろう。君は、そういうわけではなさそうに見える。友達を連れてやってきたわけではないし、待ち合わせという様子にも見えない。多分一人なのだろうか?私は手に持った小さいサンドイッチの乗った皿を適当なテーブルに置いて、君に声をかけて見ることにした。)「放課後だから対したものは置いてないと思うけど、こういったものなら作ってもらえるかもしれないね。君がもし一人なら、良ければ私と話しながら一緒に軽食でもどうかな?」(何故?と言われたら返答に困ってしまうが、何か食べるなら一人よりは二人の方を私は好む。人と何かしらの会話をするのが私の趣味だからだ。勿論断ってくれて構わないが、どうだろうか?) (5/11 22:48:55)
和枕 音子>
( 近くのテーブルに座った男子生徒は、見知らぬひとであった。そもそもクラスメイトの顔すらまともに覚えていないのだから、彼がどれだけ学園で有名な生徒であったとしても、名前や素性が浮かぶことはないのだけれど。) 「 ………………どうも、こんにちは? 」「 めずらしいと言うのなら、きみだってそうだろう。『 こんな時間に食堂に来る人 』は、きみも同じなんだから。」( 寝起き特有のぼんやりとした声音で言葉を返す。『 良ければ私と話しながら一緒に軽食でもどうかな? 』 青年は人懐っこい様子でそう言う。なぜ、彼にとっても知らぬ存在であるはずのぼくを誘うのだろうか。見知らぬからと言って、一も二もなく無碍に誘いを断ったりはしない。しないが、他人の吐いた台詞をまずは疑いと共に詮索してしまうのは、自身の悪癖だと理解している。何の得があって? 何が目的なのだろうか? ) 「 ____ふむ。」( 徐に席を立つ。すい、と歩いていく後ろ姿を見たであろう男子生徒は、振られてしまったと思ったかもしれない。しかし、 )「 あの、おにぎりとかってありますか。」「 そうです、ちいさいのでいいんですけど…………あ、どうもです。」 ( 向かった先はキッチン側。エプロンを着込んだおばさまに聞けば、すぐに目当てのものを皿に並べてくれた。そうして元いた席へ取って返せば、声をかけてきた白いパーカーのきみの、正面____ではなく、斜め前に腰を下ろす。 ) ( おにぎりはみっつ。右から梅干し、おかか、塩。じっとそれらを見つめ、どれから食べようかなんて指をさ迷わせつつ、ぼくは口を開いた。) 「 ぼくはだいたいひとりきりだよ。誰かといっしょにいるの、性に合わないんだ。」「 まぁでも、これを食べる間だったら。 」「 和枕音子。和む枕、音の子供……で、なまくらねいこ、だ。学年は二年。」( ぼそぼそと呟かれた言の葉に、きみがどんな顔を見せたのか。白いご飯しか視界に入っていないぼくには、到底分かりえないのである。 ) > 小室さん (5/11 23:18:44)
小室 耕助>
「恥ずかしながら昼食を食べそびれてしまって。誰か誘おうとは考えたんだけど、流石に私しか食事をしないのに誘うのもね。だから一人で食べようと思っていたところ、君が来たというわけだ」(これでも探偵を名乗る身、君がこちらに疑心を向けているのはなんとなく察する事ができた。私だって別に誘おうと思えば誘える相手はいるとも。これは強がりというわけではない、ただ時間も半端だ。無理に付き合わせるのも申し訳がない。そこにちょうど、一人で来て自分同様食事をとりにきたらしい君を見かけたので誘ってみようと考えた。その事を君に伝えるが、気づけば君は席を立っているじゃないか。流石に急すぎたか?私は今回のことを反省しながらサンドイッチを一つ手に取って、口に運ぶ。ゆっくりと咀嚼して、水を手に取ろうとした瞬間コトっという軽い音を聴いた。)「なんだ、断られたかと思ったよ。ふむ、なるほど君は一人の方が好きなのか。なら悪いことをしたかな?……そうかい、ではお互い食べ終わるまで話そう。私は小室耕助、小さい室、耕す助けと書く。学年は三年、私は一年先輩というわけだ」(音のした方には君がいた。どうやら、断られたわけではなかったらしい。彼女はどうやら、おにぎりを頼んだらしい。テーブルに置かれた皿、それから君の表情に視線を移す。こちらを見る事はなく、おにぎりを選んでいるようだ。あまりマジマジと見つめていると怒られるだろうか?と思いつつも君の様子から目線を外さない。手に取ろうとしていた水を持ち上げ、私は喉を潤してから君に自己紹介を返すとしよう) (5/11 23:39:45)
和枕 音子>
( 今時の若い男性にしては、驚くほどに綺麗な言葉使いをする。荒い音が含まれない、丁寧な____例えば、地位の高い家の生まれのような。例えば、ミステリー小説に出てくる探偵のような。) 「 わるいこと? そこに善悪なんて存在しないだろうけど、強いて言うなら悪ではないんじゃあないかな。不快ではないし、ぼくは。」「 ……ふぅん、きみ、せんぱいだったんだ。小室せんぱい。あぁ、敬語をつかったほうがいいのかな………………別にいいか、次に出会ったときに覚えていたら畏まるよ。それとも、せんぱいはそういうのを気にするたち? 」( だったら最初からやり直すけど、と半分くらい自己完結で結論を出した調子で、斜め前を一瞬だけ見遣る。) ( 敬語は苦手だ。思ってもいない尊敬を、無理くり身体中から絞り出して見せねばならないから。でも、このせんぱいが随分とスマートだから、こちらもそうしなければならないのではないかなんて。らしくもない発想を浮かばせて。)( 当のせんぱい本人は、何やらじっとりと視線の雨をぼくに降り注いでいるのだが。おにぎり、食べたいのかな。サンドイッチじゃあ足りない? 18歳とは言えまだ育ち盛り、いっぱい食べたいお年頃であってもおかしくはないだろう。警戒心レベルを勝手に上げる。とりあえず、取られる前に梅干しおにぎりを手に取った。眠気覚ましに酸っぱいものを、だ。ひとくち。血の気のあまりない唇で白いお米を食み、しっかりと咀嚼し、静かに嚥下する。ちょうどいい塩気だ、満足感を隠すことなく頬を緩ませた。) 「 ………………せんぱいも、見てないで食べたら? サンドイッチ。かぴかぴになっちゃう、よ。」> 小室さん (5/12 00:02:36)
小室 耕助>
「そうかい?君が悪いことではないと思うのなら、あまり気にしないでおくよ。いや?気にしないかな……普通はそうするから自分も同じことをしなきゃいけない、というのは疲れるだろう?好きにしてくれて構わないよ」(普通や常識を誰かに強要するのはあまり好みではない。また私自身こだわりというものをあまり持たない。別にタメ口だろうと敬語だろうとそこまで差はないと考えている。結局上っ面での接し方というだけで、内心どう感じているかは変わらないのだから。だから、君の好きなように接してくれて構わない。)「ああすまない。話すのに夢中になると、どうしても手が止まってしまうね。……ん、そういえば君はおにぎりが好きなのか?」(食べないのか、と聞かれて私自身手が止まっている事に気がついた。確かに時間が経つと美味しくなくなってしまう、こちらもそろそろ手をつけなければ。また一個手に取り、軽く口の中に運んでいく。少し硬くなったパンと、具材のレタスの食感を味わって喉を鳴らす。疎らにいる他生徒の話し声や笑い声をBGMに、食事は進んでいく。私がふと視線を戻せば、そちらもおにぎりを食べ進めているだろう。それを見て、所謂世間話を試みた) (5/12 00:26:01)
和枕 音子>
( ふたくち、さんくち。ゆっくりと食べ進めてようやく到達した梅干しは大変に、非常に酸っぱかった。思わずきゅっと眉を寄せ、目をきつくきつく瞑ってしまうくらいには。やっぱりはちみつ漬けのふんわり甘い梅干しも良いけれど、ご飯に合うのは酸味の効いたものだろう。未だ残る眠気に揺れていた思考もしゃっきりと背筋を伸ばすような、そんなものが好ましい。どうやら律儀にも種は取り除いて握ってくれたみたいだから、妨害者を気にすることなく齧りつける。半分ほど無言のままに同じ動作を繰り返し、) 「 ねこは、話すこと自体はきらいじゃあないから。気にされる方が面倒だと思う、かな。」「 『 普通 』は、たしかに窮屈だ。みんなみたいに普通にしなさいって、ぼくも何度叱られたことか。せんぱいがそう言う類じゃあなくて良かった。」( 『 普通になるためにがんばる 』とか、ぼくきらいだから。所詮は一歳差、一年ちょっぴりの人生差で、いったい何が変わるというのだろう? 年齢が上だから、お前より生きている時間が長いからって従順にすることを求める人間は、努力の次の次くらいにきらいだった。食べかけの断面に視線を落としながら、彼の意見に頷きと同意を。) 「 おにぎりがーって言うか、ぼくは『 たべること 』がすきなんだよね。何だっておいしく食べるし、アレルギーも特にない。今日の気分がおにぎりだったって、いうだけ。」「 ものを食べることは、頑張らなくてもいいから。誰かと努力を比べられたりしないから。ほら、だいたいのひとは、ご飯を咀嚼することをわざわざ努力して行ったりしないでしょう? 」( さて。今の話が、出会ったばかりのきみに理解出来たであろうか。いや。理解できなくとも、きっと紳士的なきみは頷いてくれるんじゃあないか。こんな壁だらけの女に、わざわざ世間話をしてくれるような青年だ。たぶん、きっと否定したりはしないだろう。ひとつめのおにぎりを跡形もなく食べ終えて、すぐさまおかかの混ぜこまれた方に手を伸ばす。)「 ……せんぱいは、サンドイッチがすきなの? 何サンドか……は分からないけど。」( 食欲を刺激する香ばしい匂いに口を開け、ひとくちめ____の前に、こちらも申し訳程度の質問を投げてみる。世間話ってこんな感じかな。 ) >小室さん (5/12 00:59:47)
小室 耕助>
「なら、偶に見かけたら話しかけさせてもらおうかな?……普通ってなんなんだろうねえ」(普通になる事を求めるということは、"お前は普通じゃない"と言っているようなものだ。自分の中ではどんなに正常に振る舞っているつもりでも、異常だと言われる事もある。そもそも求める側が普通ではないという事もある。結局のところ、普通というものはないのだろう。……まあそれは今はどうでもいい話だ。食事中に議論するものでもない、この考えは胸の内に秘めておこう) 「なるほどね、確かに食べるぞと意識する事はあまりない。目の前に出されたものを口に入れる、それを噛んで飲み込む。一連の動作は無意識に行うものだ。……私は全体で考えたらサンドイッチは普通だな、でもレタスサンドはよく食べるよ。多分食感が好きなんだ」(そうでもない人もいるだろうが、確かに自分は今から食事をするぞ!と気合を込めたりはしないしそこに努力というものもない。特に意識せずに、無意識に自分は目の前のものに手をつける。君の言い分も理解できるものだと納得した。私が最後の一つを手にかけた時、今度は君の方から話題を振られた。好き嫌い、というのはあまり考えた事はない。が、なんとなく食べるもので考えればレタスサンドなんかはよく食べる。パンはもちもちしていてレタスはシャキっとしてる方が好みだ、多分食感を楽しんでいるのだと思う)「……ごちそうさま。今日は楽しかったよ、良ければまた食事をしよう。ああ困ったことがあったら呼んでくれ。こう見えて学園の何でも屋だからね」(君より先に食べていた分、先に食べ終わるのは私の方だろう。私は空になった皿を持ち上げて、軽く頭を下げた。君にとってはわからないが、思ったより楽しい時間だった。良ければまた会おうと一方的に告げる。勿論何かやって欲しいことがあった場合でも構わないと言っておこう。そのまま返事を待たずに、食器返却口の方に私は足を向けた) (5/12 01:30:40)
サクラダ キョウ>
(カチャカチャカチャ、カコン、カコン、ジュゥゥゥゥ...............)(カン、カン、カン..........)「................ふむ。牛乳が0.325ml足りん....」(斜陽が橙色の暖かな焔で校舎を包み込む頃合い。野球部の生徒達がグラウンドで叫ぶ声が、微かに聞こえる。家庭科室では、一人の男........否、一匹のカミサマが、計量カップ......ではなく、ビーカーに、スポイトで牛乳をほんの一滴注ぐ姿があった。)「ふむ。こんなものか。」(彼は先程まで熱していた鍋に計量カップの牛乳を注ぎ、改めてコンロを点火した。)(ふんわりと香り始める、ミルクと砂糖の柔らかな甘い香り。そこに、彼は片栗粉を投入し始めた。ふわわ、ふわわん。淡い粉雪のような白い粉末が、少しずつ鍋に降り注ぐ。そしえ彼は、目を少し細めた。)「0.4gほど入れすぎた。」(そう呟けば、彼は予め用意してあったスプーンを持ち、未だに溶け切っていない、ミルクに浮いた片栗粉をそっとスプーンでほんの少し掬い上げる。)「うむ..............完璧だな..............」(彼は真顔でなんどか頷きながら、火加減を絶妙に調節しながらおたまでかき混ぜていた。) (5/13 19:10:51)
和枕 音子>
「 おーーーーなかが…………空いたぁ…………。」( ぴかぴかに磨かれたコード専門高等学校の廊下を、墓穴から這い出てきたリビングデッドのような動きで彷徨っている女子生徒がいる______と、すれ違った人間は、そう想って肩を強ばらせたかもしれない。右にふらふら、左にふらり。いつも通りの眠気に抗えず、四限目から昼休み終わりのチャイムまでを寝通したせいで昼食を食べ忘れた失態は、たった今ぼくのお腹と背中を接着しようと音を鳴らしていた。ひどい苦痛である。かなしくてかなしくて、結局五限の体育も六限の数学も泣き寝入りしてしまったから、眠気はそこまで身を苛んではいなかったけれど。)「 __________んんん、 」 「 あまぁい、かおり? 」( くんくん、すぅぅと、自分の周りにある空気を肺いっぱいに吸い込む。途端、なんだか幸せを具現化したみたいな甘ったるい香りが広がった。生憎と料理の知識はさらさらないのでこの幸福臭が何から舞い上がった香りであるのかはさっぱりだが、ついつい、足取りはそちらの方へ向かってしまうものである。)
( オレンジ色の光は、まるで道標のように窓から差し込まれて。暮れ始める夕焼けを視界にいれながら、だんだん強くなるいい香りの跡を付けていけば、締め切られた扉の前に着いた。) ( ____家庭科室。本来であれば、中に誰がいるのかを先に確認する、はず。)「 失礼しまぁす。」( がらがらがら。しかして、呆気なく扉は開放された。中にいるのが誰かなんてことに一切の興味はなく、迷いなくその方向へ足を向けて、二、三歩近付き、ようやく人の姿を目に止める。あぁ、人がいる。そりゃそうか、何もいないのに美味しいものが存在するわけはない。数度の瞬きで見知らぬ男子生徒を見上げ、)「 あの、 」( ぐぅぅぅ。) 「 …………なに、つくってるの? 」( 言葉を遮ったお腹の音は、きみの耳に入っただろうか。) > サクラダくん (5/13 19:42:03)
サクラダ キョウ>
(扉をガラガラと開けて入ってきた、ペタペタしたサンダルの音。『失礼しまぁす』、なんて間延びした貴方の声が家庭科室に響いたりしてさ。)「む。こんにちは!」(彼は音がした方を振り向けば、お玉をつけたままお辞儀する。あまりにも勢いよく頭を下げたものだから、ほんの少しエプロンのリボンが風に靡いた。やがてペタペタとこちらに近づいてきた貴方の姿をじっと見つめる。2秒、3秒、停滞した時間がゆっくりと沈んで。)『あの、』(ぐぅぅぅ。)『…………なに、つくってるの?』(ええ、ええ、しっかりと聞き届けましたとも。貴方のその小さな可愛らしい悲痛なお腹の叫びも、貴方のけだるげで、それでいてどこか貪欲なその声も。)「................君は。お腹が背中とくっつきそうなのだな?」(彼は眼鏡の奥の目を、くいいいいぃ、と細めて。)(その、直後。)「なんということだ、君のようなうら若き少女がお腹を空かせているなんて!!!!緊急事態だッッッッッ!!!!!」(彼はそう叫べば、勢いよく左腕を振り上げ、パチンッ!と指を弾いた。)(そして、一言。)「ベル!」(左手にはめられた腕時計の文字盤が輝きだし、そこから薄紫色の光がリボンのようにのび、螺旋状に廻り始める。くるり、くるり、薄紫の光の中から、姿を表したのは。小さな小さな、本当にぬいぐるみのような魔法使いでした。)「ベル、この方に椅子を運んで差し上げてください。俺はこの方に昼下りのスイーツを用意します!」(そう、彼が彼自身のディスコードに頼めば。ベル、本名ティンカーベルは、トテトテと貴方の前を歩いて家庭科室の椅子を取りに行き、よいしょ、よいしょ、なんて声が聞こえてきそうな動作で椅子を持ち上げて、貴方のところにまたトテトテと戻ってきては、トン!と貴方の後ろに椅子を置いた。そしてシャラン!という音ともに手元に長杖を出現させては、少し誇らしげに、『座りなよ!』とばかりに椅子の足をカツン!と叩いちゃったりして。)「座っていてください、俺は今から貴方にふさわしい、とびきりのスイーツを用意しましょう。」(彼は、グツグツと鍋を煮込みながら、貴方にそう勧めた。) (5/13 21:07:38)
和枕 音子>
( くぅくぅお腹が自己主張したとしても、変な声をあげて誤魔化したり、慌てて腹部を抱えて音を抑えようとしたり、頬をかいて照れ笑いをしたりはしなかった。そこに羞恥は存在しなかったからである。眠気も空腹感もないオールグリーン、完全完璧な状態であれば、誤魔化すふりをするくらいの余裕はあったかもしれないけれど………………今は、言うまでもなく。) ( 上背が170くらいあるだろう男子生徒と、成長期もぴったり終わって153センチのぼくとじゃあ、頭一つ分の違いがある。部屋中に充満する、香りだけで空腹を満たせそうな空気をいっぱいいっぱい吸い込みたいのを我慢しつつ、きみの元気な挨拶を小さな頷きで聞き流した。) 「 ……くっつきそうと言うか、くっついた末に溶接されそうなんだけど。」 (くるんと丸まった眼鏡の向こう、きゅっっと瞳が眇られるのをぼんやりと見つめ、この香りの正体をきみが口にするまで黙りこくるつもりだった____の、だけれど。)『 なんということだ、君のようなうら若き少女がお腹を空かせているなんて!!!!緊急事態だッッッッッ!!!!! 』( ___________うるさい!!!!! )( きぃんと鼓膜に響く声音が、目の前の男から発された。無意識に耳を塞いでしまったのも、防御反応として間違っちゃいない。ぎゅっと視覚と聴覚を遮断して、それでも大音声は耳を劈くのだから溜まったものじゃなかった。彼がなにかに一声かけたかと思えば、きらきらしゃらんとエフェクトが空中を舞って、ころころころんと、ちいさなちいさなぬいぐるみが姿を見せる。ぬいぐるみ、ではなく、きっと。) ( …………この生徒の持つディスコード、か。)( 薄ら開けた右目だけで、彼女 ( 彼女? ) の動きをちらちら追う。小さな生き物が自らのためにせっせこと椅子を運んでくる様は、こんなぼくにでも胸の奥がきゅぅんとくる光景だ。カツン!なんてすました調子で椅子を叩かれては座らずにいられない。)「 ……………………ありがとう、ちいさな魔法使い、さん。」( かわいらしい少女に、ぺこりと会釈をして。改めて、未だ名も分からぬ元気な生徒へ視線を向ける。)「 えっと。食べ物をつくってくれるのはありがたいんだけど、きみ。ぼくはいま、何にも支払えるものを持っていないんだ。」「 だから、材料費とかは後払いになっちゃうんだけど…………それでもいい? 」> サクラダくん (5/13 21:32:39)
サクラダ キョウ>
(緊急事態だッッッッッ!なんて叫んでから、ああこれはやってしまったと勘付いた。貴方が煩そうに、自らの耳をぎゅっと塞いでしまうのが見えたからだ。だから、彼はベルに椅子を運んでもらったあとに、貴方に届いても耳に差し支えのないくらいの大きさの囁き声でそぉっと喋りかけた。)「先程は大きな声を出してしまい本当に申し訳ない........貴方のような少女がお腹を空かせているなんて、成長期の妨げになるようなことがあってはいけないと考えてしまった.......本当に申し訳ない.........」(彼がしょんもりしながら貴方に囁いて貴方に頭を下げれば、貴方の足元のベルも少しだけ物悲しそうに、腰の前で両手の指先をいじいじとしながら俯いてしまう。)「だが、安心してくれ....!俺は必ずや君のお腹を美味しいスイーツで満たしてみせよう......!なにせ俺はヒーロー、もぎたてピーチだからな........!」(相変わらず囁き声ではあるが、今度は少し元気だ。表情を見ればキラキラと輝いて見えるだろう。)『えっと。食べ物をつくってくれるのはありがたいんだけど、きみ。ぼくはいま、何にも支払えるものを持っていないんだ。』『 だから、材料費とかは後払いになっちゃうんだけど…………それでもいい?』(まさかのお代を払おうとしている貴方に、彼は目を何度かパチパチと瞬きしてから。)「お題など......!俺は君に.....!」(なんて呟きかけて、それから少し右手を顎に当てて考えて。)「ふむ、ならお題はあとでいい。少し待っていてくれ、早急に作り上げる。」(相変わらず囁き声でそう言った彼は、早速続きを作るべく鍋に向かう。その様子をじぃっと眺めていたティンカーベルは、彼が向こうを向くのをずっと待っていたかと思えば、今だ!とばかりに貴方の太ももまで伸びたロングパーカーをちょこ、ちょこと、引っ張り始める。あーそーぼ、あーそーぼ!なんて言わん具合に。)「ところで君は、なんでそんなにお腹を空かせて校舎を歩いていたんだ?」(小さな魔法使いのイタズラに気づかぬ少年は、貴方に囁き声で問いかけた。) (5/13 22:25:22)
和枕 音子>
( 随分と可愛い名前だ、とおもった。漂わせた甘味の空気然り、しょんぼりとしたまほうつかい然り、ギャップには事欠かないよう。下がっていた眉が上がって、ちょっと表情が明るくなっていたから、その名前がヒーローと言うよりかは日曜朝の女児向けアニメのようだ……とは言わないでおく、空気が読めるぼくであった。 )( 少し待っていてくれ。言うが早いか、広い背中がこっちを向いた。リボンがひらりとたなびいた。何を作っているのかと、まじまじその後ろ姿を見つめていても良かったのだけれど。僅かに感じる引力。きゅうきゅうとパーカーを引っ張る少女に気付いて、揺らしていた足を止めた。)「 …………ちょっとだけ、ね。」( しぃぃ、と。指先をそぅっと口元に寄せる。ほんの少しの囁き声は、きっときみには聞こえない。)「 ________『 みんと 』。」( 青年の腕時計からリボンが現れたように。パーカーのポッケに忍ばせた目覚まし時計の文字盤はくるんと一回転したことだろう。すぐ、ぼくの足元に鮮やかな草の幻がちらちらと映る。)( それは、最初からそこにいたかのように。( ______ふくよかな子牛が、ぼくに寄り添っていたのだ。)( 指先で撫でても何の反応もかえしてこないその子は、いつだって微睡んでいる。かわいいかわいい、ぼくのペット。こちらを見上げるベルには反対の指先を伸ばしつつ、) 「 ねこのおともだちだから、仲良くしてあげて……ね。」( と、少女に囁くのであった。 )『 ところで君は、なんでそんなにお腹を空かせて校舎を歩いていたんだ? 』( 青年の疑問は、至極当然のものだ。倒れる寸前までお腹を空かせるなんて、頭上にはてなマークを浮かべる行為だったろう。)「 昼休み中眠ってしまって、ひるごはん食べるのを忘れたんだ。食堂にも誰もいなくて、ぼくはご飯を作れないし…………まぁ、それだけなんだけど。」「 あぁ、」「 『 成長期の妨げ 』なんてきみは言ったけれど、たぶんぼくの成長期は終わってしまっているよ。最大値でこれなんだとおもう。決して校内見学に来た中学生とかじゃあないから、そこだけは訂正してくれる? 」> サクラダくん (5/13 23:03:33)
サクラダ キョウ>
(彼は片栗粉と砂糖、牛乳を寸分違わぬ量入れた鍋を、コンロで熱してかき混ぜながら貴方の話を聞いていた。)("日曜朝の女児向けアニメ"、その表現は言い得て妙だった。『カレ』は根っからの女児向けアニメのファンである。毎週日曜日、テレビの前でティンカーベルと二人で正座しながら、某アイドルヒーローを手に汗握って応援しているのだ。ヒーローネーミングが影響を受けているのは言うまでもない。)(そんなファンシーなものが大好きなティンカーベルは、貴方の仕草をじぃーーーーっ!っと眺めては、貴方がどんな遊びをしてくれるのかを期待してるみたい。)「なるほど、授業中寝ていたら、そのまま起きるのに寝坊してしまったというわけだな。それはお腹が空いただろう、俺の特製スイーツでお腹を満たしてくれれば幸いだ........」(少し囁き声気味に、それでいて彼は真剣に額に汗を垂らしていた。)(─────一方。ティンカーベルはといえば、突如貴方の足元によりかかるように現れた緑色の子牛さんに、驚きのあまり目を見開きながらピィィィン!っと背筋を伸ばす。だけど、貴方が友達だよ、仲良くしてね、なんて言ってくれたから。彼女は恐る恐る、そぉぉぉ〜っと子牛さんの背中に指先を触れさせようと伸ばしてみたりしていた。)「...........ッッッ......................ふぅ、よし。............................これで完璧だな。」(彼はようやく鍋で煮詰めていた甘いとろみのある液体を完成させた。)(..................................ただ。)「これを一時間冷蔵庫でしっかりと冷やしたら、完成だ........!」(彼はお鍋を両手で抱えて、嬉しそうに微笑みながら貴方の方へ振り向き、囁く。)「だが安心してくれ、予め作って冷やしてあるのがこちらだッッッ..........!」(お鍋を冷蔵庫に持っていけば、その中によいしょ、と一番下の段にしまって。そして、全く同じデザインの、銀に少し白がかった、そう。まるで。)(一時間ほど冷やされていたような。そんな鍋を、たった今置いた鍋の隣りから取り出し、貴方の方へと歩んできた。そう、彼はクッキング番組の如く、予め一時間前から冷やしていたものも用意していたのでたる。)(そして彼が来た瞬間、ティンカーベルはといえば。すっかり『みんとさん』に慣れてしまい、一緒に寝そべって、それどころか子牛さんの上でポカポカと微睡んでいた。が、彼が鍋を持って近づいてくる足音に気づけば、勢いよく飛び起き、家庭科室の隅へと走っていった。彼は鍋をとん、と調理台の上に置けば、鍋の前で中腰になって貴方と目線を合わせるように、囁き声で話し始める。)「すまない、成長期云々はデリケートな話題だったな。だが俺は、君のようにお腹が空いている人がいれば、俺自身の力で助けることができる。」(カチャ、カチャ。)「美味しい物を食べたら、元気になれる。」(カン、カン、コン。)「だから、俺は君にこのスイーツ.............ミルクプリンを食べてほしい。」(そう、言い終われば。彼はエプロンを外し、貴方の視界から勢いよく消えた。否、一歩横に移動しただけではあるが。そして、貴方の開けた視界に現れたのは。)(─────たった今プリンの盛り付けを終えたティンカーベルが、誇らしげにお皿の横で、シャラン!と杖を鳴らす所だった。『召し上がれ!』だってさ。)「おかわりはたんまりあるからな。」 (5/14 16:39:43)
和枕 音子>
( 『 みんと 』こと、ミントヴァーベナ。体高はだいたい75センチ程度のまんまる子牛。体重は40キロくらいなので、抱えて運ぶにはちょっと重い。軽くなれないの?などと聞いてみても、彼女__恐らくきっとたぶん雌である__は、ねむたげに目を瞑るばかりだった。黒斑になるべき場所は、それこそミントみたいな緑色。苔が生えてるみたいだなぁなんて思って触れてみれば、何とも不思議なふかふか具合なのである。枕に最適な以外、何にもできないぼくのディスコード。少女は大変驚いた様子で、きらきら煌めく羽なんかぴぃんと伸ばして張っちゃって。びっくりして毛を逆立てる猫みたい。恐る恐る手を伸ばしたり、引っ込めたりする女の子を、子牛の頭あたりを擽りながらこっそり観察する。) 「 そう。酷いんだ、みんな。だぁれも起こしてくれないんだもの。いくらぼくの席が窓際最後尾だからって。ぼくを眠りから覚ましてくれたのは、大音量で響いた昼休み終わりのチャイムだったよ。」( この発言をクラスメイトたちが聞いたのなら、目を剥いて語弊がある!と立ち上がっただろう。和枕音子は目覚まし時計を持参していて、1時間おきに軽快な電子音を鳴り響かせているわけだし。それに、お前が気付かなかっただけで散々肩を揺らしてやったぞと。) ( 生憎とその事実を知るものはこの場にはおらず。知る可能性のある牛さんは、自らの上でくつろぐ小さき生き物を何とも言えない顔で気にしているのだった。) ( と、ようやく青年は料理の完成を告げる。甘い匂いは最高潮を迎え、家庭科室というフロアいっぱいを沸かせていて。ぼくの薄っぺらなお腹はくるんくるんと形容しがたい音をひっきりなしに立てている。ようやく、ようやく何かしらが胃の中に放り込まれる時がきたのだ________と、思ったのだが。 ) ( 1時間。 )( 無情にも、あぁ何とも悲劇的なことに、ぼくの空腹はあと1時間は続くらしかった。絶望を宣言する青年の歓喜に似た表情が憎らしい。正反対に死を覚悟したような色をしたぼくだ。)( いっそ足元で無防備にすやすやし始めた牛をかっさばいた方が速いのでは? ディスコードは食べられるのであろうか。今ならカミサマすら捕食しそうな、空腹で人間性すら失いかけた目を自らのペットに向けようとし________ )『 だが安心してくれ、予め作って冷やしてあるのがこちらだッッッ..........!』「 ________料理番組で見るやつだぁッッッ!!!!! 」( ガタガタガタン!! )( 優等生みたいに起立して、行儀の悪いことに『 一時間ほど冷やされていたようなそんな鍋 』へ指を突きつけて、ぼくはそう叫んだ。瞬間。それまで微睡み中だったベルが、弾かれたようにどこかへ吹っ飛んでいってしまったのは…………ぼくのせいだろうか、反省だ。 )( 青年は鍋をそっと起き、何故か鍋とぼくとを遮る位置に立つ。わざわざ中腰になってくれるあたり、やっぱり優しさあふれる男なのだった。)『 君のようにお腹が空いている人がいれば、俺自身の力で助けることができる。』「 確かに、料理が出来るのは凄いことだね。ぼくはその才能は皆無だったから。」『 美味しい物を食べたら、元気になれる。』「 それも確かに。ぼくは食べることが眠ることの次にすきだ。」( 相槌を打つ隙間に聞こえるカチャカチャカタンには敢えて触れずに、ぼくはきみと目を合わせた。鍋の姿も、ベルの姿も見えず、ぼくに見えるのは可愛いエプロンのきみ。きみのきりりとした面立ちばかり。 )『 だから、俺は君にこのスイーツ.............ミルクプリンを食べてほしい。』( 言って。きみはすい、と視界から消えた。)( 代わりに現れたのは______ちいさなまほうつかいと、可愛らしくお皿に盛られたまほうのプリン。得意げな少女が鳴らした杖の音は、美味しい料理に幸せの魔法をかけたみたい。)「 ____________す 」( すぅっと、息を吸って。 )「 ッッッッッごい、ね。きみ。もしかして、本当に魔法使いだったりするの? 」( 『 おかわり 』って言葉にも目を輝かせて、小さな手をぱちぱち打ち鳴らしてはきみに尊敬の眼差しをおくった。 ) (5/14 17:23:59)
サクラダ キョウ>
(料理番組で見るやつ!を立ち上がって叫んだ貴方を見れば。)「そう、他の分野に関しては俺はほんの少し不器用ではあるが、お菓子作りに関しては誰よりも準備がいいんだ。料理番組とは君、君、俺の褒め方がよく分かっているな..............!」(ふふん、ふふふん!っとちょっとばかり自慢げになって。)(彼はベルが盛り付けお皿を貴方に差し出しながら、貴方のちょっぴり悲しげな文句を聞いていた。)『そう。酷いんだ、みんな。だぁれも起こしてくれないんだもの。いくらぼくの席が窓際最後尾だからって。ぼくを眠りから覚ましてくれたのは、大音量で響いた昼休み終わりのチャイムだったよ。』「ふむ.......それは薄情なクラスメイト達だな...........でも、大丈夫だ.....!俺は忙しい時以外、放課後は毎日ここで午後のスイーツ作りに励んでいる。またお腹と背中がくっつきそうになったらここへ来るといいぞ、俺はいつでも甘くて美味しいスイーツとベルと一緒に、ここで待っている。忙しい時は予めスイーツを作って冷蔵庫に入れておこう。なに、心配することはない。君が食べなかったら次の日にクラスの皆のオヤツだ。」(彼は貴方の座っていた椅子の前の机にそっとミルクプリンを置いた。)『確かに、料理が出来るのは凄いことだね。ぼくはその才能は皆無だったから。』「料理は才能ではない。努力の塊なんだぞ。最初っから料理ができる才能なんてこの世には無いんだ。なんだってそうだ、勉強も、人付き合いも。たしかにスタート地点が違うことはあるかもしれん。たが、努力のスピードは皆一緒だ。頑張って、頑張って、そうして努力し続けた者にしか辿り着けない場所が、そこにはあるんだ。それは他人を元気づけることができる料理かもしれん、それは誰かをいざという時に救うことのできる知識かもしれん、或いはいざ死んだ時に。」(少しだけ、間が開いた。)(ほんの、一拍程度。)(その刹那の沈黙が、無限に沈む前に。)「─────────誰かに心からその死を惜しまれる、そんな人間性かもしれない。」(彼は、言葉を溢した。)「誰だって、何時でも何者にでもなり得るのだから。」(彼はぼそっと、そう呟いてから。彼が喋っている間にテーブルをよじよじと登ってきたティンカーベルが、ぴょん、ぴょん!とプリンの横で飛び跳ね始めた。早く、早く!って急かしてるみたい。)「さて、楽しい楽しいおやつの時間にこんな小言は邪魔だな。魔法使い、もといシキガミ、サクラダキョウの渾身の一品。『濃厚とろけるミルクプリン』、召し上がれ。」(小さな魔法使いが、その場でくるりと回って服のさきっぽを持ち上げた。) (5/14 17:56:40)
和枕 音子>
( ふふふんと、自信げ自慢げに鼻を鳴らした青年の顔。ちょっとだけ幼げに見えるそれ。机の上へ視点を戻してベルを補足。もう一回彼を見上げて、ふむと頷いた。よく似ている顔付きだ。小さな生き物も、大きな生き物も、どちらも『 可愛い存在 』であるらしかった。)「 歩くレシピブック、1人夕方料理番組…………あぁ、ぼくが語彙力に欠けていることを今理解した! とてもとても、とっっってもすごいとおもう。」「 あんな、だって、あんな、まじかるなことを本当にできるひとがいるなんて思わなかった! 」( 今日一、どころか今月一の大興奮。ぺちぺちしていた手を、次はぎゅうっと握りしめて、僅かながらに頬を染めて。ふたりを見開いた琥珀色でじっっと見つめる。ぱらぱら初心者オススメ!とか謳い文句の付いたレシピ本を捲ってみては、こんな良い感じにできるわけもないと溜息を吐く毎日だったのだ。らしくもなく、純な子供のような声を挙げてしまうのも仕方のないことだろう。)『 俺はいつでも甘くて美味しいスイーツとベルと一緒に、ここで待っている。』『 忙しい時は予めスイーツを作って冷蔵庫に入れておこう。』 ( わなわなわな。握りしめた両手は、予想外の優しさに震えすら浮かべている。なぜ彼はこんなに優しくしてくれるのか? お得意の疑心が鎌首をもたげるけれど、) ( 目の前に置かれる、天界のリンゴみたいな輝きを放つミルクプリン。) ( 可愛い妖精がぴょんぴょこ飛び跳ねて『 食べて食べて! 』と猛アピール。) ( そんな甘美なものたちに、勿論抗えるわけもなく。) 「 ______い、ただきますぅ……! 」 ( ぼくは、その魅惑の甘味を、口に含んだ。) ( しあわせのあじは、きっとこんな風だったろう。 ) ( まずスプーンを差し込んだ瞬間にわかる柔らかさは、口に放り投げた途端に甘さを残して消えてしまう儚さに変わった。ぷるるんと身体を震わせるくせに、いざ食んでみれば美味しさに震わされるのはぼくの方。 ) ( 『 濃厚とろけるミルクプリン 』の名は伊達じゃあなかった。完敗である。)
「 ………………で、えぇっと。」「 『 誰だって、何時でも何者にでもなり得る 』のなら、さ。………………ぼくも、何にでもなれるってことなのかな。」( 先程の言葉を反芻して、ぼくは呟く。口の中に広がる甘さとは裏腹に、告げた言葉はきぃんと冷めていた。)「 誰かの代わりを望まれ続ける人間にも、ただひとつの〝 何者 〟が、あるのかなぁって。」( 心からその死を喜ばれ、祝福されるのが、和枕音子という人間だ。) ( ぼくの死は、ぼくの死だけは、誰かのためになってしまうから。) 「 ほら、例えばさ。ぼくが頑張って頑張って頑張れば、料理が出来るようになったりすると思う? 」( プリンはお皿と胃袋で半分こ。ふとスプーンの動きを止めて、青年を、『 シキガミのサクラダくん 』を見上げてみる。本心ではないけれど、出来ればいいなって思ったりはするから。) 「 なまくらねいこは、きみみたいになれるかなぁ。」 (5/14 18:39:38)
サクラダ キョウ>
『______い、ただきますぅ……! 』(貴方が本当に嬉しそうに褒め称えてくれるので、彼もちょっぴり上機嫌。ふふん、ふんふん、なんて鼻歌を歌い出しそうなくらいのテンションで、貴方がミルクプリンの一口目を食べる様子を観察する。そう、料理において最も重要なのは最初の一口目だ。その一口目が不味ければ、人は二口目を食べる気が大幅に失せてしまうものだ。肝心なのは、一口目。)(そうっと、ゆうっくり、貴方の口に入って...........)(ふるふるっ!と体を震わせて、口にはしないものの、この様子なら満足いただけたようだ。彼はほっとしたように少し深く息を吐きながら、ふんわりと微笑んだ。少しでも、貴方を救うことは出来ただろうか。貴方を元気づけることは、貴方の活力のほんの一部にはなれたろうか。それから、貴方が溢した、小さな星屑のような言葉の種たち。)『ぼくも』『なんにでも』『誰かの代わりを望まれる』『そんなぼくの、"何者か"』『なまくらねいこは』──────────────────『きみみたいになれるかなぁ。』(彼は、貴方が種を吐き終わるのを見届けていた。種は、水をやれば芽になり、茎になり、根を張り、そして。)「誰が君に何を望もうと。」「君が何者になるかを、結局最後に選べるのは君自身だけだ。君が求められる物と君が求める物は、必ずしも一致するわけではない。」「君はまだ、無限の可能性を秘めているんだ。君が望むのなら、肩書なぞ捨てて逃げ出してしまえばいい。それが自分の信じた正義なら、それを信じて突き進め。」(彼は、その昔種だった枯れ木達を目の前にただ呟く。)「俺は。ヒーローになりたかったんだ。」「みんなを救えるヒーローが、かっこよくて、理想で、俺の人生の目標だった。」「だが、今じゃ道を誤ってカミサマだ。」「俺は、もう皆を救えない。その力がない。悪を倒す戦闘能力も、瓦礫の下から子供を救い出す探索能力も、それどころか。」「守りたい人に触れることすら、できやしない。」(彼はカタン、と立ち上がれば扉に向かって歩いていった。そして振り返り、貴方を見つめた。)「俺みたいに、なるんじゃない。」(それは、本当に哀しい瞳をしていた。)「お題はもう受け取った。」「....................................魔法使いだなんて。素敵な言葉を、ありがとう。」 (5/14 19:13:41)
和枕 音子>
( 甘さは、平和の象徴である。) ( ぬるま湯と、甘いミルク。ほろほろ解ける角砂糖。暖かいお布団。) ( そういう全ては、平和の中でこそ輝くものだ。戦争の真っ只中でも、確かにそれらはきらきらしているかもしれないけど、悲しいかな。銃弾とカミサマが飛び交う中で容易に手に入るものではないのだった。)( 何が言いたいかって? つまりは、今この瞬間の平和万歳。)「 甘いもの、好きなんだよねぇ。」「 空いた心の隙間を埋めてくれるから。」( きみがこちらをにこにこ眺めているから、ぼくはぽつりぽつりと言の葉を落とす。一言落ちるごとに、しあわせの証は胃袋の中へとさようならしていって。残り四分の一。 ) 『 君はまだ、無限の可能性を秘めているんだ。』( ぴたり、とスプーンはぷるぷるを運ぶ行為を止めてしまった。) 「 自分の信じた、正義……? 」( 薄い呟きは、きみの追憶に紛れて消える。)『 俺は。ヒーローになりたかったんだ。』『 だが、今じゃ道を誤ってカミサマだ。』( ぽちゃん、ぽちゃん。静かな水面に、小石を投げれば波紋が広がる。ぼくの放った小石はきみに、きみの身の内に秘めた海に、いったいどんな揺らぎを与えたのだろうか。『 守りたい人に触れることすら 』と綴るきみには、触れたい人が、守りたい人がいたのだろうか。自らをシキガミだと、カミサマだと言うきみは。) ( カタン。) ( 大きな背中は、とても守る力に欠けているようには見えなかった。) 『 俺みたいに、なるんじゃない。』( 今にも雨を降らせてしまいそうな声の響きは、こちらを透かして遠くを見るような眼差しは、ぼくのせいか。 ) ( きみはそのまま扉を抜けて、立ち去ってしまうだろう。部屋に残されるのはぼくと寝入ってしまったころころ子牛だけで、そこに甘さなんて残っちゃいないんだ。からから扉が開いて、かろかろ扉が閉まるその寸前を見計らって。)
「 ____________『 努力 』は、悪だよ、きみ。」
「 頑張ったから、やさしいきみはカミサマになってしまった。」「 頑張ったから、ぼくは望みを持てなくなってしまった。」( 冷たい冷たい視線を、決してきみには向けたくなかったから。扉から無理くり遠ざけて、もう真っ暗になってしまった窓外に貼り付ける。) 「 努力をすれば報われることなんてこの世に何一つない。」「 あるのは、〝 努力をする才能 〟だけだ。」 ( ぼくはそれを持ち合わせてはいなかっただけだ。 ) 「 ________さて、ごちそうさま、でした。」( ぱちり。) ( 季節外れにも凍った空気を掻き消すみたいに両手を合わせて、礼儀正しく挨拶をひとつ。大変美味でした、と伝えるべき相手はもういないのだけれど、一応。) 「 サクラダくんのことは、嫌いじゃない…………みんとも、きっとそうだよね。」( だから、また来よう。また、会いに来よう。) ( 一息を吐いたぼくの前に残るのは、何の変哲もない学校の匂いと、空になった皿一枚だけである。) 〆 (5/14 19:49:18)
雪原 傘音>
(喉が渇いたなぁ、と休日の昼下がり。学校も無いので街中を散策していた。特に何かアテがある訳でもなく、特に何かすることもない。こういう日があってもいいんじゃないかな。人間誰しも余裕を持って生活すべきだよ。毎日毎日切羽詰まりながら生きてるよりも、こうしてのんびり、まったりして心に余裕を持たせて生きていったほうが楽しいだろう。思わず鼻歌も歌いたいところだけど、鼻歌を歌うとヴォユメンのチャージが出来なくなってしまうので控える。歌うのは夜にでも。そんな感じで歩いていると、自動販売機を見かける。それなりに人通りもあり、普通に置いてある、一般的な自動販売機。ラインナップを見るとぶどうジュースやオレンジジュース、コーヒーなんかも並んでいた。折角だし、1本買おうかな、と思ってお金をちゃりん。で、オレンジジュースをポチッと押すとガランと出てきた缶は)「?」(軽い。あ、これ聞いたことある。コレアレだ。多分カミサマの奴だ。ブンブンと縦に降ってもちゃぷんとも音が出ない。完全にあかないアキカンである。さてどうしようこれ、と顎に指を当ててその場で考えこんだ) (5/17 20:44:45)
和枕 音子>
( ______喉が乾いた。) ( その事実に、ふらふらと昼寝後のお散歩中だったぼくが気付いた時、どうして近くの喫茶店ではなく公園を横切った先の自動販売機へと足を向けたのか。喫茶店に人がいっぱいだったとか、珈琲を飲む気分じゃなかったとか、そもそも金が心もとなかったとか…………色々と理由は考えられるけれど。まぁ。神様の思し召しとでもしていた方が、何かと便利なものである。) ( 遊具が三つ四つくらい、後はベンチがあるだけの小さな公園の入口から、真っ直ぐ出口まで最短距離を突っ切って。その更に先に何の変哲もない自動販売機があることをぼくは知っていた。今はちょうどオレンジジュースの気分だ。すたすたと__他人から見れば、非常にのんびりだったが__歩きつつ、パーカーのポケットをがさごそと漁って小銭を探す。)「 ………………あの、自販機……使いたいんだけど、きみ、大丈夫……? 」( 自販機の前でうんうん考え込んでいる人に声をかけたのは、彼女がいくら待ってもその場から動きそうになかったからであり。その肩を叩くか叩くまいか数分逡巡した結果、同じくらいの背丈である少女の顔の辺りに行き場のない手をふらつかせるという、何とも中途半端な姿があなたの目に映ったであろう。 ) (5/17 21:07:27)
雪原 傘音>
(うんうんと頭を悩ませていると声を掛けられる。あ、そうだった自販機の前に居たんだった。いけないいけないと思って声をかけられた方に振り向く。あ、この人学校で見た事ある。となると、この缶の話をしても大丈夫…かな?私はスケッチブックを取り出しカキカキ)『ごめんね!でもこの缶がカミサマっぽくて。ほらあかないアキカンってやつ…かな?多分。中身全く入ってる音がしないの、ほら見て!』(そう伝えてアキカンを振ってみせる。ぶんぶんと缶を振る腕が風を切る。しかし中に入っているはずの液体の音はせず、ただ風の音がする)『この缶まったく開かないし…!中に何入ってんだろね。あ、私は雪原 傘音!17歳!あなたもコード専門学校の人だよね?私学校で見た事あるからもしかしてって思ったんだけど違ったかな?』(初対面だけどこの話は通じるだろうなぁと思いながら話を続けてみる。結構グイグイ行ったし、嫌がられるかな?嫌がられたら話しかけるのやめとこ) (5/17 21:18:52)
和枕 音子>
( 少女はこちらを視認した後、徐にスケッチブックを取り出した。傍らには缶が一個。何故スケッチブック__と、僅かに眉を顰めたことは、あなたに伝わってしまっただろうか。白いページに向かって数秒、それはぼくに向けられる。浮かぶのは____文字である。) 「 ……缶がカミサマ? 『 あかないアキカン 』……は聞いたことがある、けど。」( 『 ほら見て! 』の文字列を視線が追ったすぐ後、彼女は片手に持った缶を勢いよく振る。中身が炭酸飲料であったなら、開けた瞬間大惨事になる行為だ。350mlサイズの、見た目はただのオレンジジュース。しかし、けれど。) 「 ________確かに、音がまったくしない、ね。」( ちゃぷちゃぷ、とか。中身入りのアルミ缶を揺らせばそんな音がするはずだった。だが、彼女の揺らしたそれからは、一切何の音も聞こえないのだ。眉に刻んだしわがより一層深くなる。) ( 一頻り振って満足したのか、再び少女の目は真白いページへと吸い寄せられた。さらさら。 ) 「 ……………………和枕音子。きみと同じコード高等専門学校二年生だ。」「 それ、確か学校で回収していたはずだから。なるべく早く__出来れば今から、学校へ向かった方がいいと思う。」「 ただの空き缶とは言え、イーコール反応のある『 カミサマ 』だ。何が起きるか分からない。」( 名前はどこまでもぶっきらぼうに告げる。文字だけでも、少女が自分とは正反対に積極的な人種であることは、分かりすぎるほど分かった。つい、と彼女が怪訝そうに持ったままの缶を指さして、自分の目線は斜めへ逸らす。 ) (5/17 21:51:57)
雪原 傘音>
『ふむふむ、確かに。これは後で渡しに行こうかな』(一応ポッケにしまおう。そして私が筆談してることを怪訝に思ったのかちょっと表情が曇ってた。あわあわ、初対面でグイグイ行き過ぎたかな?あんまり怖く思われたくないな。書き書きとスケッチブックに書く)『ごめんね!私のディスコード、喋っちゃうと力のチャージっていうか、効果が薄くなっちゃうんだ。だから極力喋らないようにしてるから筆談にしてるんだ。読みにくかったらごめんね』(読みやすく、伝わりやすいようにスケッチブックに書く文字は結構練習したのだが、画数の多い漢字や文字なんかはペンで潰れて見えなくなってしまうこともある。そういうのにも気をつけなきゃ。彼女はネコって言うらしい)『ネコちゃん!可愛い!』
(ネコちゃんって名前も可愛いし見た目も可愛い!ゆったりとした服装、長いツインテールがとってもキュートに見える。なでなでしたい!…こほん)『ネコちゃん、でも渡しに行く前にちょっと実験してみない?もしかしたらふとした拍子に開くかもしれないし、中身が何入ってる気になる!』(スケッチブックを見せながらアキカンを開けようと試行錯誤してみる。缶の下を見てみたり、コンコンと側面を叩いてみたり、プルタブを動かそうとしてみたり。ビクともしないけど。試してみて損はない!) (5/17 22:07:34)
和枕 音子>
「 ふぅん。きみのそれ、ディスコードのためなんだ。大変だね。…………読みにくいことは、ないと思うけれど。」( 一瞥。次の書き方は先程までと違って、どこか慌てたようなペンの走りだった。恐らくはぼくの視線や表情に籠った疑心に勘づいたのだろうけど、明るげな少女が顔を曇らせる様は何とも心を突っつくものである。)「 ネコ………………ネコ? ネコって言うか、ぼくの名前はねいこなんだけど…………まぁ、いいか。」( 一瞬曇った表情はすぐにきらきらとした好奇心に輝き始めた。感情の起伏が良方向に激しい女の子。服装や結った髪に、ちらちらと視線がいくのをオールスルーしては、きみのスケッチブックのみに視点を固定。そこに文字が現れるのなら、きみの顔や絹糸のような銀髪やくるくるした瞳なんかを見る必要はないはずだろう? )「 実験? 」( 素っ頓狂な声が喉から溢れ、見る必要がないはず、なんて言ったきみの顔をまじまじと見てしまった。)「 いや、開いて何が起こるか分からないし……何が起こっても、ぼくら、責任なんか取れやしないじゃないか。」( 口から続いて落ちるのは小言ばかり。仕方ないだろう、せっかくの休日なんだ。カミサマだとかイーコールだとか言う厄介事に巻き込まれたくはない。しかもその厄介事はたまたま遭遇したものじゃあなく、自分たちで首を突っ込もうと言うのだから! )( __________が。)「 ………………………………………ここじゃあ、人通りがありすぎる。たぶん何もない、と思うけど、念には念をおした方がいい。」「 あっち。」「 あっちの方、公園の奥。ベンチがあるから、何がするならそこで。」( 缶を指さしていた手を反対側、自分が今さっき通ってきた公園の奥に向けて。木々に隠れるようにベンチが一脚あることを告げれば、きみの返答を待つことなく背中を向ける。) (5/17 22:33:36)
雪原 傘音>
『はーい』(ねいこちゃん。…うーん、ネコちゃんって呼んだ方が可愛いからネコちゃんって呼ぼう。ねいこちゃんもいい名前だけども。いいって言ってくれたしいいよね?ネコちゃんに進められるままに公園の方に行く。そしてアキカンを公園の方で開けられるか頑張ってみる)「…っ!…っ!〜!!!!!」(開かない。開かない。全然開かない。全くビクともしない。こんなに力を入れてもヒビすら入らない。これ私がやろうとしてるからダメなのかな?という所で丁度一緒にいるネコちゃんに差し出しながらさささっとスケッチブックに文字を書く)『ネコちゃん開けれる?私だとビクともしなくて!他の人も開けられてないって話だけど単純に私だからダメなのかなって。ネコちゃんだったらもしかしたらするかもしれない!』(根拠はない!理由もない!!!直感的にやってみよう!ってだけ。情報を見た感じこんだけやっても特に何も起こらなかったらしいし、もっと派手な事をやっても何か起こることは無いだろうな〜って憶測がある)『どうしたら開くかな。くすぐるとか?』(案外変化球でプシュっと開くかもしれない) (5/17 22:45:47)
和枕 音子>
( ちらりと視線を送ってみた『 はーい 』の返事。それ、絶対分かってないでしょ。思うけど、言わない。余計なことだし、だいたい名前なんてただの記号だ。〝 和枕音子 〟も、それこそ________〝 No.15 〟でも。ただ、一個人を判別するためのドッグタグ、認識票でしか無いのだから。)「 初めに言っておくけどね、雪原ちゃん。」( きみが差し出してくるアキカンを受け取りながら一言。)「 ぼくのディスコードは非戦闘用だ。ぼく自身も戦闘向きじゃあない。ただ『 勘がいい 』だけ。つまり、何かが起こっても、ぼくには逃げる以外の一手がないってこと。もちろん、きみを守ってやることもできない。」「 ぼくは __________〝 ヒーロー 〟なんかじゃ、ないんだから。」( 片手に乗った飲料缶は非常に軽い。中身なんか入っていないと言わんばかり、缶としての重さも感じられないほどだ。)( …………散々小言を掛けておいて、だが。ぼくはこの空き缶が開くとも、何かしらの異常事態が起こるとも思っていなかった。だって前々から報告され収集し、色んなひとが手を尽くして開けようとしたのに、これは〝 あかないアキカン 〟なのだ。ぼくら一般生徒が何を干渉したって、突然どうにかなるなんてことは、ないだろう。)( それでも難しい顔をしたのは、一重に『 面倒くさいから 』以外の何ものでもないのだった。)「 くすぐるって…………笑い出すみたいに開くかもって? 嫌だけどな、そんなアラジンの魔法のランプみたいなカミサマは……。」( きらきらしたきみの瞳に抗えるわけもなく。ぼくは『 空き缶をこしょこしょまさぐる 』なんていう、馬鹿げた行為に指を動かした。________もちろん、缶は笑いもくしゃみもしない。ほらね? 少女に肩を竦めてみせた。) (5/17 23:10:28)
雪原 傘音>
(んーなんか拗らせてるなぁと言う感想。こちょがしてくれたのはノリがいいかなって思う。でも思うことはあるから書き書きと、私と思いを書いてみる)『ヒーローってなんだろうね。ネコちゃん』(私は)『私は思うんだけど、みんながみんなヒーローって訳じゃないと思うんだ〜。私だってヒーローじゃないし。ヒーローはそうだなぁ』(あかないアキカンを持って表面を撫でてみる)
「たった1人でもありがとうって誰かに言ってもらったら、その人にとってのヒーローじゃないかな」
(日中に声を出したのは久しぶり。でもこういう事はきちんと声に出して伝えた方がいいかなって思った。今日は夜歌うの無しかな〜)『なんてね!私の一意見!全然気にしないでね!んーやっぱり開かないか〜ゴシゴシ擦ってみようかな』(表面を手でゴシゴシ擦ってみる。全く反応がない。うーんそもそもあかないのか、開く条件が違うのかな。どうしたら開くのかな。そもそもプルタブ側から開くってこと自体が違うのかもしれない。もしかしたら側面がパカーっ!てなるかもしれない。うむむむ、わからない。こめかみに指を当ててうーんっと頭を捻る) (5/17 23:26:26)
和枕 音子>
『ヒーローってなんだろうね。ネコちゃん』( その文字列を視界に入れて、次は隠そうともせずに顔を歪める。なんだろうね____なんて、考えること自体が憂鬱だ。だってぼくは、ぼくはヒーローなんかには。綴られる黒いインクの先は、歪んだ瞳には映らない。)『 たった1人でもありがとうって誰かに言ってもらったら、その人にとってのヒーローじゃないかな。』( 『 ありがとう 』 )( それは、単なるお礼を告げる一単語。 )( それ以上でも、それ以下でもないはずで。だと言うのに。)
「 __________ぼくに、 ありがとうと言った男がいたんだ。」
「 彼はぼくの何気ない発言に対して、礼を述べた。素敵な言葉だと言って、笑ったんだ。」
「 やさしい男だ。やさしすぎる、男だったのかもしれない。」
( ただ、それだけだ。)
( アスファルトに落ちる雨音のように、ぽつりぽつりと呟く。空は快晴だ。憎らしい程の晴れ模様。パーカーから覗く膝頭をじとりと見つめ、開いた口から空気を漏らす。きみはまたスケッチブックにご執心になってしまったみたいだから、いつまでも小さな膝と芝生ばかりを見ていられない。)( 視線を向けたページには、すっかりアキカンに意識が戻った様子のインクたちが、お気楽な言葉を形成している。次は擦ってみようなんて、もっと魔法のランプみたいな話になってきたじゃあないか。うんうん考え込み始めた彼女は、きっと何かぽややんとした発想を沢山脳裏に浮かべているのだろう。その中身を知りたいような、知りたくないような____どちらにせよ、ぼくのやれることは後一つだけだ。)「 ……………………『 ミントヴァーベナ 』。」( 辺りにはぼくら以外誰の姿も無かった。だからぼくは、きみの名前を呼ぼう。)( ポケットに忍ばせた時計がカチリと音をたてる。足元の芝生が僅か、ちかちかと点滅したような気がした。瞬きの後、子牛はそこに現れる。)「 みんと、これ、何かわかる? 」( 少女がもつ空き缶を横から突っついて、足元に現れた眠たげなディスコードに問う。結果は、分かりきっているけれど。 ) (5/18 00:10:12)
雪原 傘音>
『うん、きっとその人にとってネコちゃんはヒーローなんだよ』(優しい人だったらしい。でもどんな人でも、助けてくれたと思ったなら、ありがとうとそう言ってくれたなら。私はヒーロー足り得ると、そう思う。さて、色々試して見たけどやっぱりどうにもならなさそう)『んーやっぱりわかんないか』(残念。どうやらダメらしい。まあ仕方ない。分からないものは分からないものだ。今は、今は分からないだけ。いつかきっとわかるはずだ、諦めなければ)『仕方ない、学校に持っていこう!ネコちゃんも一緒に行こ!』(片手でスケッチブックを差し出しながら、もう片方の手を伸ばす。手を取ってくれたなら嬉しいな。私は貴女と、友達になりたいから)(5/18 00:19:00)
和枕 音子>
( ぼくの可愛いみんとは、相変わらずの何考えてるかさっぱり分からない顔で、鼻をひくひく動かした。まぁ、分かるはずもないか。ぼくのこの子は、ただの可愛いペットでしかないんだから。よしよし。数度撫でてやって「 ごめんね、ありがとう。」と、子牛を時計に戻してやった。) ( 『 ネコちゃんはヒーローなんだよ 』。迷いのない言葉だ。ヒーローになんてなりたくはないけれど、もしかしたら、みんなそうなのかもしれない。)( なりたくてなるんじゃあなくって、気付いたらなっているのかもしれない。)「 ……当たり前の結果というか。努力は必ず報われるわけじゃあない。所詮は運次第ってところ。」( 残念そうなきみには、夢のない発言だろう。けれど、ぼくには見えていた。【 疑心 】深くきみを見ているぼくだから、きみが未だに諦めちゃいないことがよぅく分かってしまうのだ。)『 仕方ない、学校に持っていこう!』( 手を差し伸べてくる行為にも、決して悪意や害意は見えやしなくて。雪原傘音って女の子が底抜けに明るく、前向きで、『 少年少女が憧れるヒーロー像じみた 』女の子であることを痛いほどぼくに知らしめた。)( まったくもって。せっかくの休日に、ぽかぽか天気の昼下がりに、こんな面倒事に巻き込まれるだなんて。 )( ___________まぁ、でも。 )「 …………仕方ないな。きみひとりだと、その缶で缶蹴りでも始めそうだ。」( たまには、こんな日があってもいいだろう。)( 『 せっかくの休日 』なのだから。 )( ぼくは、呆れと面倒臭さを前面に押し出す溜息を混じえつつ、_________きみの手を握った。友達なんか、いらないはずなんだけど。) 〆 (5/18 00:44:15)
和枕 音子>
「 もーぅ。あんなに大きいのに、どうして探そうとすると見つからないんだぁ……?」( ぎぃぃ、ばたん。) ( 重石がついてるのかってくらい鈍る足を動かして、侵入不可とばかりに重たい扉を、身体全体使ってどうにか開ける。軋む音は金属音と、あとは黒板を引っ掻く音によく似ていた。不快である。) 「 今日は風、強くないから…………ここにいるかとも思ったんだ、けど。」( 独り言は伝えるべき相手を見つけられず、虚しく空を漂った。昼休みも半分を過ぎた頃、屋上にはひとっこひとり見当たらない。校庭にも人は疎らで、白く引かれたトラックの1本1本すらよぅく見える。ぼくは落とした肩の先、手に余る大きなそれをぎゅうと握った。) ( 〝 The man 〟と言う青年くんから借りたゴーグルを返し忘れたと気付いたのは、一人で暮らすアパートに辿り着いてシャワーなんか浴びちゃって、コーヒー牛乳片手に喉を潤し終わったあとだった。つまりは後生大事に自宅まで持って帰ってきてしまったのだ。)( あぁ、これはまずい。らしくもなく、ちょっとだけ慌てた。慌てたから、彼を探そうと思い至って____本名も、学年も知らないことに顔を蒼くした。自らの同学年すら把握出来ていないのに、広大な校舎の中から一人を探し出すなんて無理難題だ。それでも、と休み時間のたびに地下一階から三階までを練り歩いてみたりしたのだけれど、当たり前のように成果はなく。諦め半分の気持ちを抱えながら、一縷の望みを欠けて屋上から探してみようと思ったのだった。) ( ぐしぐし。ゴーグルを握る手と反対の指先で、微睡む瞼を擦った。眠気は、『 もう諦めなよ 』と、ぼくを揺さぶる。努力なんて、らしくないどころの話じゃあないだろう? ) ( ______とりあえず。きみを探すことは継続しようと、周りを囲むフェンスに近付いては、網越しに下を覗き込む。) (5/19 17:37:54)
シュガー>
「俺に。俺に借りたゴーグルを返したい。」声が聞こえた。あのいつでもその語尾からは嘲りの笑いが聞こえてきそうなほど嫌味ったらしく、それでいて歯切れのいい声が。その声は君の後方からだった。君が体全体でこじ開けたその扉。それを最も簡単そうに開け、入ってくる。君が今日一日の休み時間をかけても見つけられなかった。あの男が。「...散々と歩き回って、結局俺が見つからず途方に暮れていた。そんな所かな。」彼は見透かしたようなことを言う。君へとそのコンパスの長い足で全くの危なげも躊躇もなく進む。彼の口からは「そうして、ついに最後の最後。ここでも見つからなかった...もうやめてしまおうか、だろ?」だなんて最後の最後まで見透かしたような言葉が流れた。 「お前のその足と体力で探して回ったことは褒めてやるさ。...最も、俺を探すお前を見つけたのは、俺だ。お前じゃない。」彼はいつだってそんな風に君も、君以外も見下す。相手が傷つくだとか、相手への失礼だとかそんなものに微塵の興味もない彼なのだから。彼はその大きすぎる体をずかずかと動かしては、君の隣のフェンスにもたれかかった。「案外覚えているんだな。俺はてっきりもう忘れてると思っていたのにな。だが、まぁいい。犬は三日の恩を三年覚えているだなんて言うだろう。猫だって三日は三年の恩を覚える。...人間は、恩を覚えるし、恨む生き物だ。忘れることはない。」彼は無表情に言った。わかりにくく、遠回りに。恩を忘れた君のことは犬や猫なんかと一緒であり、恨まれていたら昨日の発言のいくつかが間違っていることになるからそうでなくては良かった。そんな傲慢で嫌味な意味だった。 (5/19 18:12:10)
和枕 音子>
『 俺に。俺に借りたゴーグルを返したい。』( ______声は、眠気を吹き飛ばすように、ぼくの頭蓋に響く。たった一言。一言でも、その声音に混じる不遜さや重圧には聞き覚えがあったから、ひとつの瞬きを挟んだ後に『 きみ 』を振り返ろう。)「 …………きみは、相変わらず、この世すべてを分かっているとでも言いたげだね。それとも、ぼくごときの思考や発想なんかは、全部お見通しってこと? 」( 見透かすような、見下すような言葉を並べ立てながら、彼は大股に歩を進める。がしゃり。精悍な肉体を受け止めたフェンスは、少したわんで鳴き声をあげた。)「 それでも。」「 きみから見つけてくれて助かった。盗人にはなりたくないから、最悪の場合は校内放送でお呼び立てしなきゃかと思っていたんだ。」( 「 木の上から蟻を探すようなものだろうに、よく見つけられたものだね、きみ。」と綴って、隣に並び立った青年の、光を透かした葉一枚に似た色を眺めるのだ。あの時はまったくさっぱり気付かなかったけれど、彼の気難しげな瞳は自分のものと同じ色合いをしている。とろりと甘い蜂蜜なんかじゃなく、どちらかと言えば、煌々と熱を放つ太陽みたいだけれど。)( まだ見慣れぬ仏頂面からは、オブラートに包みきれない苦味がつらつらと溢れる。先の『 ペット 』発言しかり、今の犬猫の例えしかり。きみはもしかすると、ぼくを本当に小動物だとでも思っているんじゃあないだろうか? しかもそれは、庇護欲なんかじゃなくって。お前のことなんかいつでもぷちっと潰せてしまうんだぞ、と言うような______。) 「 哀しいかな。ぼくの記憶力は非常に優秀なんだ。覚えることだけなら、ちゃんとできる。」「 ねこはねこでも猫じゃない。______ぼくは恩も恨みも、死ぬまで忘れない。」( 大事に大事に握っていたゴーグルをきみに差し出して。 ありがとうの代わりに「 にゃあ。」なんて鳴いてみせる。猫じゃないと言った矢先ではあるが、些細な発言に意味を求める方が間違っているのだと言いたいね。野良猫は、向かうべき場所など考えない。傲慢で嫌味なきみの言葉も、何のことなしに右から左と聞き流すのである。) (5/19 18:48:38)
シュガー>
「さぁな。俺はただのお遊びだ。お前の思想やら行動は面白いとは思ってるさ。...ファニーという意味でな。」彼はそのどこか受け流すように、揶揄うようにしてのらりくらりとやり過ごす君の言葉を同じように適当に躱しておいた。「『木の上から蟻を探すようなものだろうに、よく見つけられたものだね、きみ。』だなんて言われれば、「シュガー(砂糖)が居れば、蟻も近寄ってくるだろう?俺はただ居ればいいんだ。そっちから寄って来るまでな。」だなんて冗談混じりに、しかしいかんせんのヒューモラスも感じられぬ顔つきで言って見せた。彼はフェンスに背中を預けたままに、そっと目尻の方で下の人間を見ていた。やや特殊な環境といえどここにいるのは大概が世に言う高校生。昼休みに外で活発に動き回る姿は少なくなかった。時折に聞こえる声はどこか将来を感じさせるようななんとも言えない自信と高揚感と、土臭い声だ。ただ、それを笑いもせず、また何か攻撃的な言葉を述べることもなく。静かに見下していた。君が猫だとか恨みだとか恩だとかそんな話をしてゴーグルを差し出してくればこれまたなんの感慨も無く受け取った。そしてそれの紐指の先の引っ掛けてはくるりくるりと弄ぶようにして回した。彼の君に対する小動物を見るような視線を君が気にしていたとしても彼は一切の特別な感情も何もない。どうせそれは口に出すか出さないか。それくらいの違いしかないのだから。 (5/19 19:30:41)
和枕 音子>
( 適当だ。彼の受け答えはどこまでも適当であった。適当で、適切。真面目に〝 ヒーローとは何たら 〟だとか〝 世界とは何たら 〟などといった言葉を口にしないところは、下手な一般生徒より口を利きやすいものだった。『 おあそび 』くらいが、人との距離感としては相応しいのだから。笑音もなく、口の端を微かに上げた。 )「 生物なんて、他種族から見たら皆々奇妙で愉快でエキセントリックだよ。」( 人間なんてその中身が同じなだけで、それ以外は何もかも違う________言ってしまえば、種族違いみたいなものだ。相手の思考は読めず、かと思えば突拍子のない行動をする。習性なんてアテにはならない。青年が『 Funnyだ 』と感じたのも、自分とは違う存在に対する当然の反応でしかないだろう。)「 …………きみのつまらなそうな日々における、僅かな娯楽になれたのなら、まぁ、悪くはない。」( それが瞬きの風圧で塵となって消えるような愉快さであったとしても。)『 シュガーが居れば、蟻も近寄ってくるだろう? 』「 そりゃあ、こんなに大きなお砂糖くんが鎮座していらっしゃったらね。 」「 今日誘われたありんこは、どうやらぼくだけらしいけれど。」 ( きみ、冗談なんて言うんだ。) ( 返答には少しの間を取った。鉄仮面の男は、少なくともユーモアに長けているようには思えなかったから、すぅっと琥珀色の目を丸々くしてしまったことも仕方のない行動で。真下に広がる有象無象を、きみがどんな想いで意識に留めているのか。そんなことはこの短い付き合いで察せるはずも無い。ぼくは先程のきみと同じように、その背に金属の感触を確かめては、ずるりずるりとコンクリートの地面へと座り込んだ。)「 ______で、『 お砂糖くん 』。」「 ぼく、まだきみの名前を聞いていないんだ。ヒーロー名だけしかしらない。きみがヒーロー名で呼ばれたいって言うなら話は別だけれど____、 」( 名前、聞いてもいいかい。この問いに、深い意味などはない。) ( きみが答えようと答えまいと、どちらだって、和枕音子は変わらず『 お砂糖くん 』と呼び続けるだろうから。) (5/19 20:07:37)
シュガー>
「愉快なもんか。どいつもこいつも反吐が出る連中だ。」彼は吐き捨てるようにして言った。彼は誰も好かないし、誰にも媚びない。こういう時もまた。彼女と意見が違ってもそれを飲み込むなんてことはしなかった。「...娯楽、な。」彼は意味深長げに繰り返しては、そっと口を瞑った。冗談に関してもこれ以上無駄に口を開けるつもりもなかった。二人の間には、友情も思い入れも存在していない。お互いにフェアでフラット。故に、あの空に浮かんだ雲のようにありふれていて取り留めのない言葉を溢すだけで深く追求することは無かった。ガシャリっ...キィ...なんて控えめな金属音。君がその小柄な体格をフェンスに預けて、そのままに座り込んだ音だった。本当に、意味もなく彼はそちらを向いた。顔では無く眼球だけをそちらに動かした。「______で、『 お砂糖くん 』。』「なんだ。『野良猫』。」『ぼく、まだきみの名前を聞いていないんだ。ヒーロー名だけしかしらない。きみがヒーロー名で呼ばれたいって言うなら話は別だけれど____』(名前を聞いてもいいかい。)彼は、息を静かに噴き出しながら一言、「嫌だね。」と。「俺はわざわざ、俺じゃ無くても答えられるようなことを俺の口から言うのが大嫌いなんだ。...それとも。一日かけて俺を探し出せないようなお前が...。俺に名前を〝話させる〟だけの何かを持っているのか?」彼は揶揄うようにしていった。それから君と同じように地面に座った。彼は目の前の君を警戒してはいない。する必要もない。だが、同時に信用してもいないのだ。おいそれと名前を言うことがどんな結果を招くのか。どんな厄介事を持ってくるのか。貧しく治安の悪い幼少期を過ごした彼にはよく分かっていた。 (5/19 20:36:48)
和枕 音子>
( おしりの下に敷かれた地面は、のんびりとした太陽に照らされて生暖かい体温をしていた。清掃されているとは言っても屋外だ、白いパーカーの裾が汚れてしまうんじゃあないか____そんなこと、考えもしない。服は、服だ。汚れなんて洗えば落ちるし、着続ければいつかは擦り切れてごみ箱の中。布の一枚や二枚がどうなろうと、知ったことではないのだった。彼が吐き捨てた音が降ってきても、ゆるゆると首を傾けるだけで。) 「 そう? まぁ、ひとそれぞれ、だ。ぼくは愉快だとおもうよ。」「 それは稀に、嘲笑をも含むけれどね。」( 言葉に、返答など求めてはいなかった。娯楽という一単語に、きみが何を見出したのか。疑り深いぼくと不遜なきみの間に溜まる意味深げな沈黙はまっさらで、そこに何かしらの真意があるだなんて思えないほど。沈黙なんていう在り来りの反応に深い深い何某かを込めるなんて真似を、きみがしそうになかったからでもある。) ( 視線の矢が、こちらに向けられた。)『 嫌だね。』『 俺はわざわざ、俺じゃ無くても答えられるようなことを俺の口から言うのが大嫌いなんだ。』「 __________だろうね、きみはそう言うだろうよ。」( ころ。) ( 鈴を転がした音は、不格好な笑い声。) ( からからと喉を鳴らす。砂糖菓子にしては毒々しいきみが座って、腰を落ち着けるのを待って、)「 名前というのは、一種の〝 記号 〟でしかないとおもうんだ、ぼくは。」「 書類の上で見た記号は、単なる文字でしかない。無機質な文字ときみ自身を結びつけたくはないっていう、矮小な女の我儘。」( サンダルをかかとに引っ掛けるようにして、傍目も気にせず両膝を抱えた。黒いニーハイソックスの布地を、その奥の小さな膝頭の感触を頬に当てて、ぼくは口を開く。視界の端では、灰桃色の毛先が地面にぺしゃりと丸まっていた。)「 きみがいま、ぼくに名前を言いたくないのなら。ぼくは勝手に『 お砂糖くん 』と呼ぶことにするね。」 (5/19 21:21:38)
シュガー>
「『お砂糖くん』...?......。まぁ...いい。」妙に生返事だった。彼にしては珍しく歯切れが悪い。いや、もっと言えば。何か言いたげではあったが、それを飲み込んだ、という感じだろうか。『お砂糖』くん。それは確かに可愛らしくて、あだ名としては良いのかもしれない。彼らはまだ高校生。ちょっと特殊なあだ名なんてついていてもそれもまた青春というものだろう。...だが、彼は違った。彼は、青春などとは程遠い。もっと泥臭くて、血の滲むようで、過酷な人生の中で生きてきた人間だ。他人を嫌い、自己を嫌い、一心の念だけでまともな教育もなしに今ここに立てている。そんな人間だ。そのような彼に君が提示した、『お砂糖くん』だなんて甘すぎる名前は...あまりにも異物だった。彼のその高いプライドはそれをはっきりということなんてことはさせなかったが、彼も少々狼狽してしまう。彼はその動揺を。顔にすら現れていないような微かな動揺を隠したいが故に、ふいと目を逸らしてしまった。座り込んで膝を抱える君には見えているかどうかも怪しいだろうか。思えば。このような態度をとっても、ある種温厚な人間というのは彼の経験には少なかった。大概が、幼き日々に関わってきた暴力的な連中か彼のその高慢っぷりに嫌気が差して早々に撤退するような人間ばかりだった。コード高等専門学校。そこに集まるのは、色物ばかり。だが、この色物の手綱を握らなければいけない、ここを乗りこなければいけないのだと。彼は再びそっと心を引き締めた。 (5/19 22:03:00)
和枕 音子>
( ぼんやりとした返事であったのを気にするべきか、つんつこ突っついて草薮から蛇か熊かが出てくるのを待つべきだろうか。数秒思考と思案を重ね。結局、膝に当てた頬を反対にして、きみの方を向くだけに留めるのだった。) ( 触らぬ神に祟りなし。) ( その表面を撫でるだけで充分面白い反応がかえってくるのだから、それで満足なのだ。)「 お砂糖くん______は、何年生? それとも、学年も内緒のままがいいのかな……。」( 昼休みは、きっともうそろそろ終わるだろうから。ぷかぷか浮かぶ白雲みたいな会話を、最後まで続けようとする。高層ビルより高いプライドを持つきみとは、実りのない雑談を交わすことすらどこか難しい。回り道に遠回り。目の前に広がる地雷原に、常人であれば尻込みをして回れ右をしたのかもしれない。)「 別に年齢がどうって言う気はないから、ね。名前が記号なら、生まれてから何年かなんて……ただの消費期限を推測する道具でしかないんだし。」( ただ、和枕音子は我ながら笑ってしまうほどに『 常人 』ではなかった。) ( 自分が尻に敷いた校舎の中にいる人間は、皆きっと常人ではない。ぽつりぽつりと何の変哲もない、世界のことなんか何にも知らない少女のような口振りで、きみに話を投げかける。ぼくは〝 努力 〟が大嫌いだったけれど、がんばることも嫌いだったけれど、自分を押し付けて来ることのないひとは、比較的気に入っていた。)「 ぼくの名前も、きみは興味がないだろうし………………ほら、せっかくだし、ぼくにも一個くらい何かをプレゼントしてくれてもいいんじゃあないかなぁ。」「 ペットは、餌がないと死んじゃうんだ、し。 」( 目を逸らしてしまったきみ。何を思ってそうしたのかは分からない。それでもきみが、この残り少ない昼休みの間にこちらを向いてはくれないかという、ちょっとした試み。きみの横顔に、眼鏡の縁に、じぃっと視線を送るのだ。 ) (5/19 22:31:32)
シュガー>
「...1年だ。」彼はまたもやどこかで納得がいかない。そんな風な感じでぶっきらぼうに告げた。そして付け足すようにして「お前をペットだとかそんな風には微塵も思っちゃいないが。断じていないが。...今日はお前のその労力に報いてやる。今日だけだ。」と。なんとも言えない心境だった。別に、隣にいる彼女のことを好きだとか、恋してしまっただとか。そんなウブで、甘酸っぱい感情を抱いた訳ではない。彼は相変わらず嫌いだ。大嫌いだ。ヒーローも人間もカミサマも。...ただ、憎むことも出来なかった。それは理由がないから、というよりも。まだ彼が、それこそ〝砂糖〟のように。甘さが微かに残っているからだった。憎しみも悲しみも怒りも喜びも。生きていれば必ず劣化していく。劣化して、綻ぶ。その綻びを縫い合わせないと、そこから大きく崩れてしまう。彼はまさにその手前に位置していた。今まではその環境の過酷さに、歯を食いしばり、奥歯をギリギリと鳴らしながら恨み憎みながら生きてきた。しかし、今はその環境も変わってしまった。それを誰よりも自覚しているのは彼だ。しかし、誰よりも見て見ぬふりしているのも。きっと彼だろう。「......お前は。お前は。どうなんだ。」彼はようやくこちらを向いた。その目はいかにも不服そうに歪んでいた。よく見れば、前髪の下なんかは傷だらけでそれを隠すためにセットしていることがわかるだろうか。目だって、君のように綺麗じゃない。汚れてしまっている。それはきっと色や形の問題ではなく。もっと内面的な意味で。 (5/19 23:28:19)
和枕 音子>
( 苦々しさの出汁が滲み出た声音を片耳に挟んで、波打つ髪の一本一本を指折り数えるみたいに視界に収める。____あぁ、不器用な子なんだなぁ。不器用、もしくは青々しい。ただ、そんな情を垣間見せたら最後、きみはいきり立って帰って行ってしまうかもしれなかった。だから、ゆったりとした瞬きの裏側にそうっとしまい込む。) (『 一年生 』で、ヒーロー名が『 The man 』。背が高く、日々の訓練を欠かさないことで得られるであろうしっかりとした身体付きを持つ男の子。その情報だけで、きみの名前なんかは簡単に知ることができる。だけど、たぶん________ぼくは、知ろうとしないのだ。きみから与えられた事柄だけを握って、抱えて、それで満足するのだ。調べあげて喜ぶようなゴシップ精神は、生憎ぼくには無かったから。)「 ぼくも、きみのペットになったつもりはないよ。どこまでいっても、飼い猫にはなれないって分かっているもの。……………………でもね、教えてくれてありがとう。お砂糖くん。」( お礼は、小さく小さく囁くものだ。むっつりとした声をしながらも応えてくれたことに。ぼくを置いていかないでくれたことに。わざわざ、ちいさなありんこがお砂糖に寄っていくまで待っていてくれたことに。) ( 疑い深いとは、また、観察眼にも長けているということに他ならない。きみが、日の目から隠すように潜めた傷跡たちも。世界の裏側を覗いてしまったみたいにくすませてしまった蜂蜜色も。こちらを向いてくれたから、それらはぼくの拙い目にも留まった。)『 .....お前は。お前は。どうなんだ。』( 不服極まりないと歪む目を、まっすぐに捉えて。)「 ぼくは二年生。17歳。__________たよりないけど、せんぱい、だ。」( きみが背負ってきたすべてを、視界内に収めて。収めるだけ収めて、ぼくはとろんとわらう。)( ぼくは、〝 努力 〟を呪っている。)( けれどそれは、他人の培ってきた傷や成果までをも呪い嫌うものではない。 ) (5/19 23:58:52)
シュガー>
「そうか...。」全くもって調子が出ない。話が続かない。いつもいつも怒って恨んでばかりだったものだから。競争しかしてこなかったから。興味が無い。さっさとどこかに行ってしまおう。普段の彼ならばそう思うだろうが今日に限ってそれではなんだか負けた気がするのだ。勝負でも無いのに。目の前の君は戦う気すらないというのに。それが悔しくて悔しくて。何よりも不可解だった。不器用という優しい言葉では、片付けられないほどに歪んでしまった彼の内面は君の笑った顔すらも、良い印象を持つことができない。苛立ちだけが込み上げてきて自身の持つ破壊衝動にも似た何かが彼を中から崩そうともしていた。「...さて。それじゃあ俺は帰るかな。娯楽というのは多忙の中の一瞬だから娯楽なんだからな。」彼はそう言って無理矢理に話を切って立ち上がった。足の汚れを軽く払っては眩しそうに頂点から緩慢に落下する太陽を手で遮る。去る時に何か余韻を残すようなことができれば良かったのかもしれない。君が笑ってくれたあの時に。いくつかの冗談を言ってくれたあの瞬間に。何かすればこんな気味の悪い感情にはならなかったのだろうか。そんな思考ばかりが頭を駆け巡っていた。だが、彼は傲慢で意地っ張りで、負けず嫌い。自身から縋るようにして話を続けるなんてまっぴらごめんだ。相手が話したいくらいに切ってやるのが、丁度いい。それこそが〝遊んでやるということだ〟。そう自分に言い聞かせて屋上を去った。___クソッ...!なんでだッ...!?ようやく...ッ!ようやくここまでッ...来たんじゃないか...。俺はッ...。俺は...他人も、自分も...『支配』するしかない...ッ!」そんな独り言を、言いながら彼は階段を降りた。だが、どれほどの強い言葉でも、確固たる覚悟でも。...彼の気持ちを晴らすことはなかった。そういえば。あのゴーグル。座った時に、君の近くに置いて。...確か...。それから...? (5/20 00:40:31)
和枕 音子>
( それは、静かに静かにそこにいた。すぅ、すぅ、と言う寝息すら、ゆるく上下する背中すら、数センチの距離まで近付かなければ分からないほどに。人の姿、それこそ常駐すべき司書の姿も見当たらない図書室。廊下から一番離れた窓際の、背の高い本棚の隙間に置かれた長机に突っ伏して、少女が寝ている。窓の外からは威勢の良いホイッスルの音や、教科書を読み上げる若い声が、あとは頂点から落ちるだけとなった目映い陽射しと共に、室内へ飛び込んでくるだろう。窓が開いているから、生暖かい風なんかもたまにカーテンを揺らす。コード専門高等学校は、たった今五限目の授業中であった。)「 _______ん、 」( 吐息。身動ぎは、僅かにテーブルを軋ませて。)( _______少女は徐に顔を上げる。) ( 笛の音か、この場にいた誰かが立てたかもしれない物音か。少女を現実に引き戻した犯人は分かりようがないけれど、酷く緩慢な動作で瞬きを数度繰り返し。白いロングパーカーの袖で眠気の滲む瞼を擦って。そうして『 ぼく 』はようやく『 きみ 』を視認する。)「 ………………おは、よう? 」( こてり。ちょっとだけ小首を傾けては、そんなぼやけた言葉をきみに掛けた。) (5/24 21:35:05)
レフバ>
____________漸く、五分の一くらいだろうか。 何が半分かって?『この図書室にある本の数』がだ。 入学してからもうそろそろ一ヶ月半が経ちそうな頃合いだが、『図書室の本を全て読む』という試みは、自分でも想像していた以上に順調だった。最も、授業に参加していないからだが。日中、放課後、全て読書に充てる生活を送っていたが、継続していれば案外ここまでいけるものなのだと実感する。一年間この生活を続けていたら、恐らく全ての本を読破出来るだろう。その時が来れば、もうこの図書室を利用することはほとんど無くなるに違いない。そう思うと、この空間に賞味期限という概念を持ち出したくなってしまったのだった。今日もレフバは授業を放り出して図書室にいた。外は心地よい天気、爽やかな風にあふれ、時たまに授業の音が聞こえてくる。それを蔑ろにして勤しむ読書は、口にするものではないが、彼としては気分が良くなるものなのであった。さて、読み終えた本を元の位置に戻そうと、窓際の本棚にまで向かった時____________そこにいた彼女を起こしてしまったようだ。「.....................................................」「................................おはよう?」今思えば、この図書室登校を続けてからずっと、彼女はこの部屋に居たような。そして本を読むというよりかは、ここを睡眠の場として利用していた。別に、何故ここで寝ているかの事情も、彼女が何者なのかも、彼としてはさほど気になることではない。気持ちよさそうに寝ている人を興味本位で起こそうと思うほど、彼が思慮に欠けた人間なわけではないからだ。なので存在自体は知っていたが...........................実際に話しをするのは、これが初めてだ。「朝はとっくに過ぎたぜ」彼は初対面の相手に冗談を言える質でもないために、真面目にそんなことを口にした。 (5/24 22:06:04)
和枕 音子>
( どうして彼に声をかけたのか、理由を答えよと言われたのなら〝 目が合ったから 〟と告げるしかない。たまたまきみがそこにいて、たまたまきみの青灰色とぼくの琥珀色がかち合った。寝起きで思考力が間延びしている中、一番最初にまろびでたのが『 おはよう 』なんて言うお花畑のような台詞だったっていうだけのお話。きみが誰なのか、今は授業中のはずなのにどうしてこんな場所にいるのか。そんな疑問、寝惚けた頭では浮かばないし、浮かんだってすぐに忘れる。) 『 朝はとっくに過ぎたぜ 』( きみ______比較的小柄で線も細めな男子生徒は、至極真剣な顔で真面目な突っ込みを宣った。)「 ……………………知ってる、よ。だってぼくが図書室に来たの、今日は四時限目からだし…………。朝は保健室に直行してすやすや安眠だった。」( くあ、と欠伸を噛み殺しながらぼくは言う。)「 眠りから覚めたあとは必ず『 おはよう 』と言うって決めて………………………は、いないけど。なんか、それが当たり前みたいな…………感じ、しない? 」( 抗いがたい眠気はすっかりなりを潜めていた。立ち尽くしたようなきみの姿を観察するに、その手に持った本を返すなり取るなりしようとしたに違いない。まぁ、ぼくの睡眠欲がそんなことで霧散するわけはないから、ぼくが起きたのは単純に満足したからなのだろう。…………自身の身体のことであるのに、分からぬことばかりであった。)( __________さて。)( ぱちり。再度瞬きを挟み、今度はきみにしっかりピントを合わせることにしよう。前述した通り華奢な生徒だ。名前も学年も知らない彼のことを、しかし、ぼくはかすかに見知っていた。)「 きみ、よく図書室にいる子だよ、ね。図書室に住んでいるんじゃないかって、話にもなってる。」( なっていない、たぶん。あくまで自分がそう思っていただけである。)「 ………………で、いつもいるってことは。きみは本が好きなの? 」( 他にも色々言うべきことはあったのかもしれないけれど。眠りから覚めたばかりで火照る頬を机の木面に押し当てながら、きみに問うのはそんなしょうもない質問だった。 ) (5/24 22:43:09)
レフバ>
「うーーーーん?」 眠りから覚めたあとは必ず『 おはよう 』と言う、のは____「____しないな。」彼にとってはない感覚だった。何しろ、彼は不健康そうな肌の色をしているが、こう見えて朝以外に寝るなんて時は滅多にない健康優良児であるし、__________________________目が覚めた時に誰かが傍にいるという経験は、もうしたくないから。「はぁ〜?誰だよそんなこと言ったやつ」別にそう思われても構わないが、自分は授業に出ても無駄だから本を読んでいるのであって、不登校扱いされるのは気に食わない。第一、一日一回は教室に顔を出してはいるのだ、放課後にアイスを食べに行く相手を探しに。「きちんと教室には行ってるっつーの」始業前にはな、と付け足した。「毎日ここに通って本読んでる人間が本を好きじゃないってことあると思うか」そもそも読書をして後悔を覚える者は中々いないと思うが、よっぽど害のある内容でもなければ。「そーいうお前は本好きなわけ?ここに来てもずっと寝てるところしか見てねーけど」 (5/24 23:07:11)
和枕 音子>
『 ____しないな。』「 しないか。」( まぁ、挨拶なんて人それぞれだ。夜に『 こんばんは 』、朝に『 おはよう 』、昼に『 こんにちは 』。目を覚ました時も『 おはよう 』で、寝る時は『 おやすみ 』。いったいどこの誰が考えたものか、残念ながらぼくには知識が無かったけど…………それって夜に起きる人間は、目を覚ましたその時に何て言えばいいのか、さっぱり分からないじゃないか。くるっとまとめて全時間帯、どんな時にも共通の挨拶があればいいのに______。 )『 はぁ〜?誰だよそんなこと言ったやつ 』( _____何の話、だったっけ。) ( あぁ、そう。図書室に住んでいるみたいな話。)( ふっ、と。考え込んで話を聞き流してしまう癖があるのは良くない。治そうとは思っていないが、余計な誤解による厄介事を解決する労力が勿体ないから。一息。きみの言葉に差し入れるように、雑念混じりの空気を吐き出す。)「 ちゃんと出席自体は取れているなら、問題はない……か。あんまりぼくもひとのことは言えない。…………この話、やめよう。」( 話を始めたのは自分の方であると言うことも忘れ、一方的に会話を打ち切った。)『 そーいうお前は本好きなわけ?ここに来てもずっと寝てるところしか見てねーけど 』「 好きだよ。」( 応えは素早い。一も二もなく、それ以外の答えなどは有り得ないと。丸まった猫背をぐぐぐ、と、それこそ猫のストレッチみたいに伸ばしながら、)「 本を読むという行為に、個人の実力差とか、努力差とかは存在しないから、ね。」「 ただ、わざわざ図書室でページを捲らずともいいかなって……言うのと。諸事情あって、あまり起きていられないんだ、きみがそう疑問に思うのも仕方ない。」( この学校に入学する前は、気が狂いそうなほどの時間があった。本を読むという趣味に走るのも、当然の帰結であったと言えよう。自らの〝 諸事情 〟とやらを、あっけらかんとした調子で口にしては、きみに視線を送る。)「 きみ__________、」「 きみきみ言い続けるのも、何だかあれ……だね。 名前とか、教えてくれたりする? 」( 「 嫌だったらいいけど。」名前を自分の口から言いたくないってひとも、この世にはいるくらいだし。) (5/24 23:39:52)
レフバ>
「ふーん。そうかもな」読書に実力や努力はいらない、か。「向き合っているのは本だからな」_____読書は、本と自分との会話のような一面があって、そこには個人的な世界が広がっているだけで、感想の共有や議論という行為などが無ければ多方面からの介入などないわけで。もっと言えば、文章を読んで何かの感情を抱いた自分を見つめていることでもあるのだ。人は、何かしら時間も食事も睡眠も忘れるほど続けられる行為があったら、それは自分と向き合っている時間だという場合が多いらしい。最も、食事も睡眠もそれに当てはまる行為だが______「そーなの?大変そうだな。」どうやら相手は常に眠い身体だということらしい。それは少々不便そうだ。自分だったら、人前で寝るという行為はとても出来たものじゃないだろう...............たまには本も読まずに過ごす時間も良いのは認めるが、今のところ読書以外の用途でここを利用したことはない。「それってちゃんと眠気の知らせが来るのか?それともいきなりぶっ倒れるのか? 本読んでる最中に寝て紙面に涎垂らすとかないだろうな」恐らく前者の可能性の方が高いが、後者であった時はかなりイヤなものなわけで。本を汚されるということは、読書行為を蔑ろにされる気がしてあまり好きではないのだ。「________オレに名前を聞く前に、自分から誰だか言ったらどうだ」口調は強いが警戒している、というほどでもない。むしろ彼の受け答えや態度はラフだが、まだ特に信用していないということだろう、相手の内面を、どの位置でコミュニケーションを取るかを探るように、会話しているような雰囲気だ。 (5/25 00:39:42)
和枕 音子>
「 ………………平和だ。」( かららん。湯呑の中を漂流していた氷塊が、軽い音を立ててまわった。 季節は夏____と、いうわけでもなく。春の後、梅雨の前にある何とも言えない晴天時間。桜が散って、葉っぱが緑色に染まる今の時期を何と形容するべきなのか、ぼくにはさっぱり分かりかねるのであった。 )「 ……………………………………………平和、だ。 」( 二度目の呟き。) ( 昼休み開始のチャイムが鳴って10分くらい。3階B棟、地図上でいう左から2番目、右から3番目。放課後には茶道部だとか華道部だとか、そんな人間がわいわい使っている和室。い草の香ばしげな匂いを鼻腔に感じながら、和枕音子はひとりでこっそり昼ごはんを楽しもうとしていた。) ( 膨らんだトートバッグを漁れば、コンビニで慣れ親しまれたのり弁当が顔を出す。蓋を開け、割り箸をぱちんと割って、今まさに箸先をご飯に突き立てようと______ ) (5/25 21:15:11)
芦宮 心良>
「はぁっ、はぁっ・・・あっ、ここなら!!(君の耳に、誰かが掛けてくるような足音が1人分聞こえてくるだろう。タッタッタと言う音は和室の前で止まり、彼は扉をそっと開けて、中へするりと入って来た。ずいぶん息を切らしていた彼は、そのまま閉めた扉に背中を預けてへたり込む)___はぁ、はぁ・・・クソ、どこでバレた。頼むから来ないでくれよ・・・(切羽詰まった様子の男子生徒は、それどころではないと言った風で、君に気付いていない。息を整えながら、すがるような独り言を呟いていて。)」> (5/25 21:28:09)
和枕 音子>
( あぁ。儚い平和よ、さようなら。) ( ノック__和室にノックは似合わないことはさておいて、だ__も無く、一人の男子生徒が部屋に駆け込んできた。キュッキュッという小気味いい駆け足の音は聞こえてはいたが、まさか自分がそれに巻き込まれるだなんて思ってもみなかったのだ。) 「 ……………。」( 無言。何故か相手はこちらに気付いていない。そこそこの広さを有した和室の、隅の方にお弁当を広げているからだろうか。 )『 ___はぁ、はぁ…クソ、どこでバレた。頼むから来ないでくれよ… 』( しかも彼、なにか厄介事を抱えているらしい。しばしの逡巡。一方的な見つめあいが数分続き。) 「 ______とりあえず、あの、きみ。こっちに来てお茶でも飲んだらどう、かな…………。」( 彼の脇を何食わぬ顔で通り過ぎて、新たな食事の場所を探すのはきっと簡単だったろう。それをしなかったのは、単純に『 動きたくなかった 』だけなのだけれど。小さく、囁くようにきみに声をかける。未だ口をつけていなかった湯呑を自分の前方に置いて、ちょいちょいと指をさす様子は、お腹のすいた肉食獣に肉を差し出す姿にも似ていて。ちなみに湯呑の中身は冷たい緑茶である。 ) (5/25 21:46:16)
和枕 音子>
( _________昨日は、大変だったらしい。) ( 3時の睡眠欲に抗いきれず、ぼくがぱったり意識を手放していた頃のこと。学校に届いた何やら奇っ怪な通報に、各ヒーローたちは東奔西走、方方を走り回ったりして事態の解決に勤しんだらしい。巷に出回る決していかがわしくない動画サイトには、これまた奇々怪々な『 妙なダンスを踊るアナウサギ 』やら、『 「「「きゅあぷあだぁー!!!! 」」」と大喜びの少年少女 』やら、『 動く木々に〝 レイナ・デ・サファイア 〟なる必殺技を決めている女子生徒 』やら………………正直、こんなものが流出してヒーローとしては大丈夫なのかと言わざるを得ない映像が散見された。見ないふりをした。)「 …………だぁからと言ってさぁ、後始末に駆り出さなくったっていいじゃんか……。」( ぶつくさと苦々しさを吐き出して。昨日参加していなかったからと言う理由によって、現場となった公園に異常がないかの確認に、半カミサマが徘徊した商店街のパトロールに、と扱き使われた休日である。折しも、現在時刻は例の事件が起きた15時。ようやく解放されたのだ、せっかくだからどこかに寄って帰ろうか。)「 あ、そういえば、最近あそこ行ってない、な。」( ふらつかせた視線の先には、よく足を運ぶ小さな喫茶店があった。こじんまりとした、レンガ造りの外壁に蔦なんか這わせちゃってる感じの。行くか____なんて爪先を向けたところで、そこがなかなかに混みあっていることに気付いたけれど、今更矛先の向いてしまった気分を変えることなど出来ないのだ。繊細な装飾に彩られたドアノブを引く。) ( カランカランコロン。) 『 いらっしゃいませ。ただいま大変混みあっておりまして…………。』「 あぁ、えっと。……相席を頼むので、大丈夫です。」( 眉を下げた店員にすぐさま断ったのは、店の奥、窓際に一方的だけど見知った顔が座っていたからだ。 迷いのない足取りでそちらへ向かい、ぼうっと窓外を眺めていたホワイトブロンドのきみへ言葉を掛けよう。)「 ______失礼、きみ。向かいに座ってもいい、かな。空いている席がないみたい、だから。」( きみは驚いた顔をするだろうか。彼の向かい、空いた椅子の背もたれに手を置きながら、ゆるりと首を傾けた。 ) (5/27 20:51:30)
キース・ハリソン>
(僕は、プリンアラモードがだいすきなんです。スプーンで掬うとくにゅう、なんて滑らかに亀裂が入るところとか、残されたほうが反動でぷるんと揺れるのとか。目に生えるサクランボの紅一点も、ふんだんに惜しみなく絞り出された生クリームも、添えられた季節にあったフルーツも。つやつやピカピカに透き通った、ドレスみたいな可愛い器も。それからなにより、このプリンの鮮やかな黄色が、ぼくはなにより大好きなんです。特にこのお店はおすすめです。カラメルの苦さとプリンの甘さが丁度良いし、固さと濃厚さ、若干残るプリンの舌触りが完璧なんです。レンガに蔦の茂ったみたいなモダンな外装はおしゃれで、それでいてどこかひっそりとしていて。お店に来るお客さんの顔ぶれもなんとなく決まっていて、騒ぐ人なんて滅多に来なくて、ゆっくりとした時間が流れるんです。だから僕は、学校からの大きな課題を頑張ったあとは、決まってこのお店に来て、奥から2番目の窓際の二人席に1人で座って、プリンアラモードを頼むんです。……ただ。) 「わぁ…………」(いつものお店のお姉さんにいつもの席について、プリンアラモードを注文して待っていると、いつもは多くはならない入り口のベルが、ひっきりなしに鳴りました。どうやらSNSで大きく拡散されてしまったみたいで、若い女性のお客さんがきゃいきゃいとはしゃいで、お店の中はあっという間に埋め尽くされてしまいました。自分の好きなお店が有名になるのは、嬉しい反面、困りもします。本当はゆっくり食べて、終わったらミルクを頼んで本を読みながらゆっくりするんですけど……今日は、辞めた方が良いのかも知れません。そんなことを、考えていたら。) 『 ______失礼、きみ。向かいに座ってもいい、かな。空いている席がないみたい、だから。』(隣の席……よりも随分と近い位置から、女の人の声がしました。驚いて顔を上げると、そこにいたのは僕も何度か視たことのある人です。学校でもこのお店でも、他のお気に入りのお店でも何度か見たことのある穏やかな人です。)「……っ、あ、どどうぞ、僕のでよければ……っ」(本当は、前から話してみたいと思っていたんです。ただ、この通り僕は話すのが上手じゃなくて、緊張してどもってしまうんです。) (ああもう、ぼくのばか。そんなふうに心の中で自分自身を叱りつけながら、出来るだけ変人だと思われないように、にへ、と笑いかけてみます。緊張のせいか表情筋が固まっているようにも思いますが、きっと満点スマイルが出来ている、筈です(きっと、たぶん。そうだといいな)。)「えへ、あの……急にお客さん、ふえたみたいで。お店の人も大変……」(うつむき、気まぐれに視線を店内に投げてみても、どうしても貴方のことが気になってしいまうので、こっそりちらちらと観察してみることにしました。細い体は心配になりますし、二つ結びの髪は女の子らしくて可愛くて素敵です。黒いリボンは大事なものなのかも知れません、古そうですけど、とてもにあっています。)「あ、」ぱちり。(どどどどうしましょう、目が合ってしまいました!!)「ああの、えっと……注文、どうしましょう。あの、店員さん、ああ忙しそうで……」(慣れない人と話すのは、何時だって苦手です。ああ、なんて溢れそうになる溜息を飲み込みながらなんとか言葉を探します。……思い当たる共通の話題は、たったひとつ。)「あ、の、えっと……あまいもの、好きなんです、か?」 (5/27 21:22:07)
和枕 音子>
( きみは線の細いかんばせをこちらに向ける。儚げな瞳は見る見るうちにくるくる丸まって、そばかすが特徴的な肌にふわぁっと赤みが差すのが見えた。頷きと同時に口角がきゅっと上がって、形作られるのは可愛らしい笑みである。【 疑心 】____その表情がどこかぎこちないとか、無理してそうとか、そういうことを察したけれど、どうやら作り笑顔と言うわけではないみたいだった。「 ありがとう。」ときみにだけ聞こえるくらいの囁きを。年季の入ったアンティーク調の椅子を静かに引き、革張りの座面に腰を下ろす。僅かな軋みは周囲のざわめきに掻き消された。) ( 誰とも目が合わないよう、まわりを観察する。急に客が増えた…………ときみが言うとおり、本来この店には順番待ちなんか発生するはずもなかったのに。では何故、なんて問うまでもなく、店内できゃっきゃとはしゃいでいるのは年若い女性ばかりだ。) 「 どうせネットで話題になったとか、そういうことだろう、ね。写真撮ってる子も多いみたいだし____、」( ______ぱっちり。) ( 近くのカウンター席に向かわせていた視線を正面に戻したとき、丸々とした両目とかち合ってしまう。一瞬の間をあけて、あわあわと少年は言葉を探し出した。 ) 『 ああの、えっと……注文、どうしましょう。あの、店員さん、ああ忙しそうで…… 』『 あ、の、えっと……あまいもの、好きなんです、か? 』「 甘いものに限らず、食べることは好きだよ。この間は、あっちの……商店街の外れにある中華屋さんで激辛麻婆豆腐を食べたりした、し。」( 甘いものは好きだ。辛いものも好きだ。色々な喫茶店やファミレスを巡っては、美味しいものを探すことが大好きだ。この店だってそうやって見つけた場所であり、目の前の彼は至るところで姿を見るから、きっと同じなのだ。)「 で、注文、注文かぁ。いつもはミルクレープとかアップルパイとか食べてるん、だけど。」「 …………プリンアラモード、かぁ。食べたことないなぁ、美味しいのかな……。」( だいたい中身を覚えてしまったメニュー表を、形ばかりにぱらぱら捲って、ふと目についた名前を口にする。最近はもっぱらプリンにご執心のぼくだ。夕方の家庭科室で頬を落としたあの日以来、〝 プリン 〟という文字列を見ると心がときめいてしまうようになってしまった。) 「 ……んん、どうしよう。きみは何を頼んだの? 」( ぱたぱたと歩き回る店員を横目で流しつつ、今度はこちらから問いかけを。) (5/27 22:01:16)
キース・ハリソン>
(貴方が優しい人で良かった、なんて心の底から安心して、思わず溜息を吐いてしまいました。だって、僕がどもるのを見ると、たいていの人は笑うか、怪訝な顔をするかのどちらかなんです。悪く言えば無関心なのかもしれませんが……、それでも、僕はなんとなく嬉しくて、無意識に詰まっていた喉が幾分か楽になるのを感じました。)『 甘いものに限らず、食べることは好きだよ。』(喧噪に包まれた店内では、ほんのちょっぴり貴方の声が聞きづらくて残念です。かといって大きな声を出されても目立ってしまうし、それならば、と僕は上半身をそろりと前に倒し、貴方の声に体ごと耳を傾けました。ふわりと香る、これはシャンプーでしょうか……素敵な匂いにちょっぴり胸が高鳴って、悪いことをしてしまった気がして恥ずかしくなりました。)『この間は、あっちの……商店街の外れにある中華屋さんで激辛麻婆豆腐を食べたりした、し。』「か、からいの……大人、ですね……?」(問いかけに答えが返ってくると、“普通の会話”を出来るようになった気がします。肩に入っていた力を貴方に気付かれないようにそろりそろりと抜きながら、最初に貰った氷水をひとくち含みました。)(僕は辛いものは苦手です。でも、なんだか貴方を否定してしまう気がして言うのを辞めました。本当は、大人、なんて表現してしまうのも良くないのかも知れませんが、一度口から溢れてしまった音はどうしようもありません。どうか貴方が無為に傷つきませんように、と願いながら、口に含んだ水を飲み下します。胸を通る冷たい温度が心地好くて、ぼくは気付かぬうちに柔く溜息を零してしまいました。) (メニューに目を通している貴方の顔を眺めながら、そっと腰を座席に落ち着けました。メニューに落とされる琥珀色は本物の宝石のようで、窓から差し込む陽光がちらちらと貴方の細い指を照らしています。…………ほんのすこしだけ、羨ましいと、思います。可愛らしい髪やお洋服は女の子らしさを煮詰めたみたいです。繕うことの難しいその指先にさえ女の子がぎゅっと詰まっていて、僕はそっと自分の指を隠しました。いいなあ、なんて、思っちゃいけないことなのですが、一度考えたら思考は濁流のように流れ出して止まりません。ああ、どうかどうか、何か別のこと。ぐるぐるとそんな思考を回していてもどつぼにはまっていくばっかりで__)「 …………プリンアラモード、かぁ。」「っ、ぷり、」(そんなときに貴方の口から溢れた言葉は、僕の思考を全部かっさらって行きました。)「あの、あのあのあの、……っ、だい、すきです!!」(僕は思わず大きな声を出しながら、身を乗り出してしまいました。幼馴染みの二人とはなかなかスイーツの話が出来ないですし、ほかにお友達もいないのです。一瞬静まった店内から向けられるざわざわした視線に気付いてしまえば前進が燃えるみたいに熱くなって、しまった、と思いました。)「ああのごめんなさい、あの、つい…………🍮アラモード、このお店のがぼくは一番大好きで、あの……」(ぐわぐわと出来事を反芻してしまう脳みそをくりぬいてしまいたいくらいです。それでもそんなこと貴方には関係無いでしょうから、取り敢えずの言葉を繋げ、氷水を飲み干しました。)___(丁度のタイミングで、店員さんが貴方のお水を持ってきてくれたようです。僕はお水のおかわりをお願いして……貴方はどうするのでしょう、とちらちらと視線を送ってみます。) (5/27 22:40:29)
和枕 音子>
( 綴られた文字列を指先でなぞる。ミルクレープ、ミルフィーユ、ショートケーキにフルーツタルト。ちゃんとした洋菓子店もかくやというラインナップ。こじんまりとした喫茶店のくせに、ケーキもドリンクも、なんなら軽食だって種類は過多だ。それゆえにいつも迷ってしまって、結局いつも食べるものになってしまうのだから困りどころ。今日は違うものを頼もう。紅茶じゃなくて…………やっぱり紅茶で、茶葉を変えればきっと気分も変わるだろう。) ( きし。) ( ほんのりと、スイーツみたいな香りが近付いた。『 大人ですね 』と、グラスを傾けて返すきみ。声色からはほんの僅かに緊張が抜けている気がして、それならば良かったとおもうのだ。一声かけただけで人見知りをするようだと分かったから〝 あぁ。相席を頼むなんて、随分酷なことをしたのかもしれない。〟と、ちょっとばかし後悔していた。せっかくのティータイム、ゆっくりと気の置ける状況で嗜みたいのは、きっとみんな同じ気持ちだろうから。) 「 おとな……なんだろうか。ぼくが好き嫌いを持たないのは、食べ物に頓着しないだけだと思っていた。」「 素敵な感性だ、ね。きみ。」( 細い喉を小さく動かして身体を潤す様子を、手元から顔を上げて視界に入れ。ぼくはほんのりと頬を緩めた。一瞬のことで、きみの柔らかそうな目に映ったかどうかは定かではない。すぐに視線は元通り、文字を追いかけ始める。さて、問題は注文だ。さっきからぼくの気を引いてやまないプリンアラモードか、ちょっと贅沢にフルーツタルトか______。)『 あの、あのあのあの、……っ、だい、すきです!! 』「 っ、え。」( がたん! ) ( 先程とは違って、そこそこの音を立てながら、少年は声を上げた。下げた顎はまた再び上向かれる。) 『 ああのごめんなさい、あの、つい…………プリンアラモード、このお店のがぼくは一番大好きで、あの…… 』( 一拍置いて。かあぁぁぁっと、まるで燃えて無くなってしまうんじゃないかってくらい、きみのお顔は真っ赤に染まった。勢い良く水が飲み干されるまで、目を見張っていたのだけど。) 「 ________そっか。きみが好きなら、たぶん美味しいんだろう、ね。」( その小動物に似た一連の流れに、思わずわらってしまいそうなのを抑えて。あぁ、なんてぴったりな場面で店員がやってきた。何だか、タイミングを見計らっていたようじゃないか? 自分の目の前に置かれるグラスに礼を述べては、) 「 えっと。アッサムのミルクティー……アイスで。」「 ……あと、プリンアラモードをひとつ。」( 笑顔の可愛い店員は注文を書き込んで踵をかえした。ぼくが会話をしている間中、いじらしげな目を向けていたきみへ、今度は故意に瞳を合わせる。そうして、ちゃんと、しっかり笑いかけてみるのだった。) 「 おすすめ、ありがとう……ね。」( 続けて名前を呼ぼうとして、未だ名前を聞いていないことに気付いては口を噤む。いきなり問うのは、人見知りくん的にはどうなんだろう。) (5/27 23:29:04)
キース・ハリソン>
「ふーー…………」(店員さんに注文している貴方を眺めながら、早く熱がひきますように、なんて手の平でパタパタ顔を仰いでみます。効果があるのかは分からないけど、ほっぺに触れる空気はいくらか冷たいから、きっときっと意味があるはず。そのはずです。 貴方の口からプリンアラモードが出て、僕はちょっぴり嬉しく思います。でも、ほんのちょっぴり申し訳なくも思いました。つい単語が聞こえて反応してしまったけれど、一人で選びたい人かもしれなかったし、あんな勢いで迫っちゃったら、いくら優しい人でも、いや、優しい人だからこそ、自由に選ぶ気を削いでしまったかもしれません。……普段会話ができないぶん、相手との関係を保つ為に先回りして考え過ぎてしまうのは、きっと僕の悪い癖なのです。それでもそれでも、無神経に誰かを傷つけてしまうのはいけないことだから、それだったら我慢した方が良いのです。ああでも、過ぎたことを考えてしまっても仕方がないのも分かっています、これは夜寝るときにする反省会の項目に加えておくことにします。今は取り敢えず出来るだけ、別のことを考えましょう。) (例えばほら、話題の定番で言うなら空模様?それともやっぱりプリンのこと、無難にごはん、それとも学校の、ええと、ええと。無理して話す必要もないのでしょうけれど、無言をやり過ごすのは僕にとってはそれなりに難しいことなのです。考えたくないいろんな失敗が押し寄せて、漸く冷えてきたほっぺがまた熱くなってしまいそうで厭なのです。) ぱちり。(話題をなんとか探そうとまた、目が合いました。)『おすすめ、ありがとう……ね。』(眠たげな瞼の下から覗く琥珀色は、正面から見ればさっきより深いきらめきがあったように思います。長めの髪は動く度にゆらゆらと揺らめいて、無意識に目で追ってしまいます。ああ____)「……ぁ、あ、いやいえあの、えっとその、こちらこそ……?」(これはいわゆる、みとれてしまった、ということなのでしょうか……?目の前の景色が一時だけスローモーションになったみたいで、窓から差し込む日差しがスポットライトのように思えました。ほんの一瞬返事が遅れてしまって、慌てて言葉を探します。それでも、うまく言葉が滑りません。耳がじんじん熱いのは、きっと陽光に熱されているからです。)(……結局、なにがこちらこそなのかも分からないような曖昧な返事を返してしまいました。やっぱりダメだなあ、なんて思いながら、そっと馴染みの店員さんに目配せをします。僕の方が先に頼んでしまったから、きっとこのままでは届くタイミングがずれてしまいます。おすすめして、同じものを頼んだのに、自分だけ先に目の前で食べるのは気が引けるのです。)「えっと…………じつは、その、気持ち悪かったらごめんなさい、」「じつは、まえから貴方のこと、知ってたんです。……とはいってもその、たまーにチラチラ見る程度で、あ、でもその追っかけててとかじゃなくって、えっと……」(やっぱり言わなければ良かったかな、なんて思いながら、それでも、まえからちょっぴり、貴方とお話してみたかったのです。)「えっと…………ぼく、あの。お花屋さんの正面にあるお団子屋さんとか、マリーンっていう喫茶店とか、好きでよく行ってて、その。……時折あの、貴方みたいな人を見かけた気がしててそれで、あまいのすきなのかなって……」 (5/28 00:10:56)
和枕 音子>
『 ……ぁ、あ、いやいえあの、えっとその、こちらこそ……? 』( きみの台詞は、こんなに歯切れが悪い言葉も無いだろうってくらいで。パーカーの薄い布地を通して、体重を預けた背もたれの硬さを感じる。多少行儀が悪くとも気にせず、恐らく椅子とセットなのだろうダークブラウンのテーブルに、肘をついては頬杖のポーズ。手を扇子や団扇みたいにして風を当てようと四苦八苦しているきみ。何やらうんうん考え込み始めたきみ。次にはぽや、とこちらを見ては固まってしまうきみ。それらをぼんやりと眺めては、そのちょこちょこした動きにこっそり目尻を下げるのだ。せっかく冷まそうとしていたのに、残念ながらあんまり効果はないみたいだった。耳がぽふぽふ赤くなっている。くす。) 『 えっと…………じつは、その、気持ち悪かったらごめんなさい、』( 『 じつは、まえから貴方のこと、知ってたんです。』…………と、きみは変わらず、切りにくいマジックカットみたいな口調で語るのだ。お花屋さんの正面にあるお団子屋さん。マリーンと言う名前の喫茶店。彼があげたおみせの名前は、ぼくがよく足を運ぶ店のひとつ、ふたつ。ぽつぽつ話を進めるたびに、だんだん声音に後悔が混じっていくような気がして、雨降り前の雲間に似た瞳を注意深く見遣る。緊張しいのきみのことだから、たぶん〝 やっぱり気持ち悪がられている? 〟とか考えてしまっているんじゃないか。短いおしゃべりの中で、それくらいは分かってしまうのだ。消えていく語尾を、そっと掬いとった。)「 …………うん、知っている。」「 知ってると言うか、ぼくもきみを見たことがあったから、今声をかけたんだし。」( きみがあげたお店以外にも、学校近くのケーキ屋さんとか、菓子パンがメインのパン屋さんとかでたびたび。) 「 学校も、一緒だもん、ね。学年とか名前なんかは知らないけど。」「 だから、まぁ。」「 ここが混んでいたのも、ちょうどいいきっかけだったのかもしれないなって、思ったり。」( きみに差し出す言の葉を探し探し、決して気持ち悪いなんて思っていないんだと伝わるように、喉をふるわせる。なんだからしくない発言までしちゃったところで、次に出すカードがなくなった。) ( 無言の間は、たった数瞬。) 『 ________お待たせ致しました。』( プリンが来た。) ( ふるふる震える金色の個体が運ばれてきた。) ( お互いの前に置かれるプリンたち。ティーポットとカップはいつも通りに見知った姿。正直助かったと思った。ぼくも話題を探すのは得意ではない。さぁ、食べようか____と言いかけて。 ) 「 ……あ。名前。」「 和枕音子です。」( よろしくお願いします。ひょこんと軽く頭を下げる。リボンの端がちらちら揺れた。) (5/28 00:58:05)
キース・ハリソン>
『 …………うん、知っている。』「……っえ、」『 知ってると言うか、ぼくもきみを見たことがあったから、今声をかけたんだし。』「そ……、っか。」(一世一代、……とまでは行かずとも、それなりに勇気を振り絞ったそんな告白は、どうやら告白になんてすらならなかったみたいです。安心と、それからほんの少しの落胆のような感覚で僕はそうっと息を吐きました。)「えへ…………じゃあ、その。おたがい、へへ。」(あぁでも、チラチラ気にしてしまっていたのも、なんとなく目で追ってしまったのも。なぁんとなく、きっかけを探していたのも、僕ばっかりじゃあないのなら、ちょっぴり嬉しく思います。何だか胸の内に凝り固まっていた緊張すらも全て溶けてしまったみたいで、無意識に丸まっていた背をくっとのばし、僕は恥ずかしいのを誤魔化すみたいに、小さく笑いました。) 『 ________お待たせ致しました。』「あ、っ…………ふ、へへえ……」(丁度のたいみんぐで、それは僕らの間に置かれました。届く時間を揃えて貰った二つ分は、それぞれのお皿の上でゆらゆらと蠱惑的に揺れ、また真っ白なクリームと色鮮やかなフルーツは各々の存在を確かに主張しながら、それでいて主役であるプリンの存在を決して疎かにはしないのです。)「へへ、えへ……じゃあ、あの、」『……あ。名前。』「あ。」(ああまた失敗です、これのことになるといつもそうなのです。)「な、まく……ねこ、さん。へへ、可愛い、名前ですね」「僕はキース、キース・ハリソンって言います。友達はみんなきぃ、って読んでくれるので……その、できたら、そう読んでくれると、うれしい、です」(あらためてたたずまいを直したのなら、僕もおんなじように軽くお辞儀を返します。……これは、実は僕にとってはちょっとした冒険、に近いのです。僕は友達が好きですが、あんまり多くはありません。だからこそ好き……なのかも知れないのですが、とりあえず。) 「その……ぼく、あの。お願いが、あって。」(スプーンで一口掬い、甘くとろけたクリームとカラメル、プリンの黄色を丁度良く口に運びます。何度味わってもほっぺが落ちそうなくらいに幸せなその味に包まれながら、僕は小さなお願いを切り出しました。だって……、ちょっぴり難しいお願いも、幸せな時ならなんだって受け入れられそうな、そんな気がするんです。)「ぼく、その……女性限定のお店、とか……その。女の人ばっかりのお店が、“苦手”、で。だから、その……」(ちょっぴり俯いてしまいそうなそんなないようだって、🍮があるから大丈夫なのです。🍮、すごいんですから。)「その……今回だけ、じゃなくて……たまぁに、でいいので、その。」「一緒にまた、その。おいしいの、食べれない、かなぁって……」 (6/28 21:53:44)
和枕 音子>
( 『 へへ 』、『 えへへ 』と、よく笑うひとだと。それは何かがおもしろいからなのか、それとも照れ隠しか誤魔化しか。はっきりとはしないけれど、決して愛想笑いとか悪感情によって表されたものではないことだけは、ぼんやりとしたぼくにだって分かるのだ。『 あんまり表情が変わらないね 』。なんて、よく言われるくらいには仕事をしないサボリ魔の表情筋も、きみを見てると働き出すんだからまったく不思議なもの。〝 ____こんな子もヒーロー志望だって言うんだから、世も末と言うか……。〟いや、もしかしたらぼくみたいに科学者志望だったのかもしれないし、そういうのを問うのはタブーだろう。にこにこ不器用に微笑むきみを目の前にして緩んだ口元も、思考に負けて少しだけ口を噤んでしまったことも、丁度よく運ばれてきた黄金色によるものだって、きみは勘違いをしてくれるだろうか。)『僕はキース、キース・ハリソンって言います。』「 きーす、はりそんくん。」『友達はみんなきぃ、って読んでくれるので……その、できたら、そう読んでくれると、うれしい、です 』「 ん、わかった。……きぃくん。きぃくん、ね。」( 口の中で幾度か繰り返し呟いた単語は、ふんわり甘くて、けれどそれだけじゃなくって、ほんのりほろ苦いような______まさに、今スプーンで突っついているプリンみたいな味。名前なんてものはただの記号でしかない、とばかり思っていたから、こんな響きで舌根を震わせるのは初めてのことだ。口腔に放り込んだカラメルとホイップクリームのせいなのか、はたまた。)( 喉を通っていった甘味は、甘さと苦さ、調和の取れた良い風味だった。美味しいものは美味しい、不味いものは不味い。そういう風にしか出来ていない味覚と語彙力が、ちょっと残念になるくらいには。おすすめだと言うきみは、やっぱり間違っていなかったみたい。舌鼓を打つ、と言わんばかりにゆっくりとスプーンを運んでいると、きみは『 お願いが、あって。』と言葉を発した。) 『ぼく、その……女性限定のお店、とか……その。女の人ばっかりのお店が、“苦手”、で。だから、その……』( 言い淀む。先を予測することは出来るだろう。けれど先に言ってしまったら、きみは慌てたり肩を落としたりしてしまうんじゃないかって思ったから、ぱちりぱちりと瞬いて、遮らぬよう続きを待った。) 『一緒にまた、その。おいしいの、食べれない、かなぁって……』( 何度も何度も躓いて、ようやくきみの『 お願い 』は一区切り。) ( まぁ、そうだろうなぁ。女の子溢れる空間に、1人だけ突っ込んでいくのは男の子として些か躊躇うこともあるだろう。…………でも、きみをその理由に当てはめるには、何だかちょっと違う気がして。男の子とか女の子とか、きみの言う『 苦手 』はそう言う問題に基づいたものじゃあない気がしたんだ。) ( 真っ赤に染まったイチゴを頬張りながら、更に瞬き3回分だけ答えを考える。)「 女の子だらけの場所に、1人で入っていくの。ぼくもちょっとだけ苦手だ。」( ほら、最近の女の子ってすぐに言うじゃない。『 ぼっち、かわいそう 』って。) 「 だから、一緒に来てくれるのなら都合が良い。きみのセンスはとてもぼくの舌にあうみたいだし、」「 だから、まぁ。」「 こちらからもお願い。定期的…………とは言わないまでも、良いとこが見つかったら、とかでもいいから、さ。」 (6/28 22:55:47)
キース・ハリソン>
『ん、わかった。……きぃくん。きぃくん、ね。』(なんでもないようなそんな呼称は、きっと君にとっては何の変哲もない、あたりまえのものなのでしょう。女の子にはちゃんをつけて、男の子にはくんをつけて。そんなのは世の中に蔓延っている一般的なもので、だから、だから誰が悪いという話ではないんです。強いて言うのなら……いいえ、それはきっと、だれかのせいにするのであれば、普通に生まれられなかった、僕自身のせいなのです。)「えへ……ねこちゃん、ねこ、ちゃん。えへぇ」(君の名を噛み砕くみたいになんども呼び、その感触を確かめては呑み込んで、曖昧に笑ってみせて。あぁ、プリンが甘くて、パインが甘酸っぱくて良かった、なんて僕は思うんです。) (ぱち、ぱちり、)(咀嚼のせいか、それともそれとも、ほんとうは望ましいものではなかったからでしょうか。)「…………ぇ、と……」(ほんのちょっとの静寂は、勇気を出して投げてみた提案をいたずらにつついてしまうものですから、浮遊したそれはぐらぐらと揺れてしまいそうになるのです。そろり、そろりと声を零して取り繕ってしまおうとして、)(ぱちり。)『女の子だらけの場所に、1人でいくの。ぼくもちょっとだけ苦手だ。』「……!」(あぁ、なんて息が漏れてしまいそうな僕を、どうかどうか、許してください。誰かの苦手を安堵するなんて、間違っている事は分かっています。分かっているのですけれど、どうしても、どうしても。)『だから、まぁ。』『こちらからもお願い。』「……!うん!えへ、うん、ありがとう、……へへ、よろしく、ね。」(笑みがこぼれてしまうのは、なんだって仕方のない事なんです。だってだって、友情だって言葉だって、恋慕だってなんだって、一方通行なことほど、悲しい事ってありませんから。溢れてしまう笑い声はきっと聞き心地の良い物ではないでしょうから、唇をきゅっと互いに押し当てて隠しながら、お冷やを一口、くちに含みました。) (_______店内は最初の喧噪をなんとかいなしたようで、段々と、いつもの静けさと、それを邪魔しない程度のささやかな賑わいを取り戻し始めます。窓の外の鳥の声に耳を傾ける余裕も段々と生まれてきて、僕はそうっと、いつもの癖でつい、目をそろ、と半分閉じながらうっとりと耳を澄ませてしまうんです。口の中に広がるいろんなフルーツの甘みや酸味、それらを全て柔らかく受け止めつつ、それらを引き立たせる脇役になんてならない確かな主役たるプリン。……身をつつむいろんな感覚ひとつひとつをなぞっていれば、ぼくはつい、話すことを忘れてしまうんです。……きっとこういう所も、ぼくに友達の出来にくい所以なんだと思います。)「…………っは、ごめんなさい、あの、夢中でたべちゃって……あの、こういうのって楽しくお話とかした方がいい……んですかね……ぼくあの、その。お話……得意じゃなくて……」(忍びなくて俯いた視線の先にある僕の器に残っているのは、サクランボのヘタと種。あんまり綺麗じゃあありませんし、空っぽなのが恥ずかしくて、カラン、とスプーンをかぶせたのなら、僕は心地好い胃の満足感と落ち着く喧騒に、つい眠くなってしまいそうになりました。いけない、とおもいつつ重くなった瞼はとろんと垂れて、快活に開こうとするのは難しくなってしまいます。)「あの……ふぁ、へへ…………おいしい、でしょう。ここのプリンアラモード、いっちばん……えへ、おすすめ、なんです。」 (6/28 23:38:25)
和枕 音子>
『えへ……ねこちゃん、ねこ、ちゃん。えへぇ』( 曖昧な笑みとは裏腹に重ねられる名前は、とても自分のものとは思えないほどにやさしく柔らか。自分の名前、ぼくも嫌いじゃあなかったから。だって、他のみんなとは違って自分で選んで自分で救いとった文字列、初めてぼくがぼく自身で選んだものだ。それを大切に大切に呼んでくれるきみは、きっとたぶん丁寧で良い人だ。) ( きぃくんは過去一番にはっきりした返事をして、今日一番にほやほやの笑みを浮かべて、ふくふくと肩を揺らす。お冷のつめたさは、その頬の赤らみを取り去ってしまうことはなさそうだったけれど。) ( なんとなくその様子から目を離して、視線の先を欠けて不格好になったプリンに向ける。よくよく磨かれた銀色には歪んだ灰桃色の自分が映っていて、その頬が目の前のきみみたいにゆるゆる緩んでいるのがわかった。人のことは言えない。ぼくも丸っこいティーポットから紅茶を注いで、カップを傾ける作業に邁進することにした。喉を潤す暖かなそれは、慣れないことを口にしたことで入っていた肩の力をほうっと抜いてくれて、あんまり甘くない味だからか、より一層プリンが美味しく感じるのだった。) 『…………っは、ごめんなさい、』( 『 夢中で食べちゃって、』ときみが発言するまで、ぼくも喋ることを忘れていたからおあいこだ。きぃくんのお皿は空っぽ、ぼくの皿には取り残されたさくらんぼ。それをスプーンの先っちょでつんつん突っつき転がしながら、慌てて首を左右に振る。)「 あぁいや、別に。ぼくも無言で食べちゃってた、し。」( 普通だったら、写真を撮ってSNSにあげてみたり。あれが美味しいあそこは微妙だった、なんて雑談に興じるものだろうか。)「 それに、」( …………普通、だったら。) 「 必ずしも、楽しく会話をしなければいけないってわけじゃあないと、おもう。ぼくだってお喋りはきらいじゃないけど苦手だし。」( きみとぼくの苦手なもの、これでふたつ。)「 その時思いついて、相手と共有したいって思ったら喋る、くらいが……ちょうどいいんじゃないかなぁって。喋らないからって、居心地が悪いわけじゃあないんだし。 」( 「 それともきみは、無言の時間はきらい? 」と、眠たげなきみへ首を僅かに傾げてみせて。思考に耽ってぼんやりとしてしまう癖があったから、よく黙り込んでしまうのはちょっとだけ申し訳なくて、きみが嫌だというのなら気をつけるつもりだった。) 「 おいしいよ、これ。」「 初めて食べたのが、きみのおすすめで良かった。」( そう、ぽたりと呟いて、最後に残ったさくらんぼを舌の上に乗せる。ころころ味わうみたいに転がすのは行儀が悪いと知っていたけれど、やめられない。これもまた、ぼくの癖みたいなものだった。) (6/29 00:21:09)
キース・ハリソン>
『それともきみは、無言の時間はきらい?』「ん、ううん! ぜんぜん、……へへ、その、ちょっとだけ……むずがゆい? かも、」「……でも。」(こて、なんて君が首を傾げる度に揺れるリボンやその髪は、ラズベリーかイチゴか、ルビーチョコにビターチョコを合わせたみたいだ、と僕はぼんやり思いながら、ぶんぶんと首を横に振りました。それは何だか君のまろやかにマーブルで、つるりとしながら甘く苦くて、新しいお友達になれて嬉しいのにどこかふんわり溶けて消えてしまいそうな寂しさが、そう思わせたのかも知れません。)(フルーツは心地好く胃を重くして、午後の陽光は窓から柔らかく二人をつつんで。それはなんだかきっと、プリンにのる生クリームみたいに。どこかこそばゆくて、体の芯がさわさわ撫でられるような、カラメルみたいな厭わしさを、“それはそうではなくてはならないもの”に、あっというまに変えてしまうから、不思議な物です。)「このこそばゆい、の。……ぼく、けっこう、すき、かも。」「…………へへ。」(ぽつぽつと零される呟きは、優しくて柔らかい。店内の喧騒と声量自体は同じくらいで、気を抜いてしまえば鼓膜を過ぎて溶けてしまいそうなくらいで、それでもどうしてでしょう、君の声は僕にまっすぐ届くものですから、それはなんだか半ば魔法みたいで不思議に心地好いのです。こくり、と揺れてしまいそうな顔を頬杖をついて支えながら、僕はあらためて君を見ました。琥珀色のその瞳は、きっと固まる前の液体プリンのそれに似るのでしょう。ほらだって、お日様が当たって透き通って、それは柔らかく瞳の奥の色を覗かせるんです。……こんどは自分でプリンを作ってみたいな、とか。でもきっと、ここのプリンは越せないんだろうな、とか。……長いまつげと女の子らしい細くて華奢なその首が、どうにも羨ましくて仕方ないな、とか。そんな事をぽつぽつ考えながら微睡んでいれば、そのまま寝てしまいそうになるんです。)「…………ふふ、また。なんか、ね。」「こういう日が、ね。ずっと続けばいいな、って。……思っちゃった。」(特別おおきな事件のないせいで、ヒーローの僕らは暇をして。そうして行った喫茶店で、新しいお友達が出来ちゃったりして。一番の好物をのんびり食べて、心地好い音に互いに耳を澄まして。平和のそれに微睡んで、それから、それから。)(___うっとりと目を閉じて、深くゆっくりと息を吸って、それから、吐いて。柔らかい温度は胸の中をいっぱいに埋め尽くして、だからぼくは、なんだか…………)「________っ、ぁ、……いけない、ごめんねねこちゃん……、寝ちゃいそう、だから……帰んなきゃ、だねぇ。」(…………どうやら、ほんの少し、眠ってしまったみたいで。いけないいけない、と頬を叩いて立ち上がり、僕は二人の伝票をとりました。)「へへ……今日は、ぼくがプリン食べて欲しかった、から。」「また、たべようねぇ。」(へにゃ、なんて半分閉じかけた寝ぼけ眼で君にそんなことを言いながら、僕は君とそろってお外に出ます。昼を過ぎたおやつ時、道は忙しなく歩く社会人や、休日を満喫しているらしいご婦人方など様々に。……そういう、平凡な感覚が、続けば良いと、思うんです。) (6/29 00:56:30)
和枕 音子>
『このこそばゆい、の。……ぼく、けっこう、すき、かも。』( ぶんぶんぶん。勢いよく振られる首と、合わせてふわふわ浮かんだり落ちたりする髪の毛。白金色がちらちらと日光に焼けて、透けて、まんまる月みたいだなぁって。でも月光のように無機質じゃあなくて、太陽光が混じった暖かな…………朝方の、月。あと思いつくのは昼下がりの霧雨、太陽にちょっとだけかかった薄い朧雲。〝 どっちつかず 〟はきっと、必ずしも悪いことじゃあないのだと、きみを見ていると思うのだ。優柔不断と言えば聞こえは悪いけれど、どちらにも寄り添えるって、優しさの象徴だとも言えるから。) 『 こういう日が、ね。ずっと続けばいいな、って。……思っちゃった。』( キース・ハリソンと名乗ったきみは、空に飛んだ風船に似ている。) 「 ずっと、か。」「 そうなれば、きっと。」( 「 素敵だろう。」とは、口には出さずに視線を下げた。波紋のない紅色に映るぼくは、ちいさくて。何年か前からずっとずっと、このままで。でも、2年生になってから、抱えきれないほど色んなことがあったんだ。 ) ( 家庭科室で妖精とやさしいカミサマと会った。時間外れの食堂でサンドイッチ好きのひとと会った。お休みの日にスケッチブックで喋る女の子と会った。アキカンを力いっぱい振ってみたりも。図書館にある『 ヒーローについて 』という本は、まだ貸出中。学校用のトートバックには、未だに返せてないゴーグルがある。) ( ………………あとは、まだ。ヒーローとして、上手く動けない自分がぽつんといて。 ) ( 今日がずっと続いたなら、進み続けるみんなに置いていかれているなんて思わずに、悩まずに、いられるだろうに。)『________っ、ぁ、』「 、っと、」( カップの中は、空になっていた。) 「 あ、あぁ…………ごめん。ぼくもなんだか、ぼうっとしていた、みたい。」( きみの立ち上がるのに合わせて、ぼくも腰を上げて。軽い音を立ててドアベルが鳴るのを背中に聴きながら、きみをちらりと見上げる。) 『 また、たべようねぇ。』「 …………うん、また。」 「 ____________またね、きぃくん。」( きみは、変わるんだろうか。) ( ぼくは、変われるんだろうか。) ( それでも、このお店のプリンはきっと変わらないから。不安になったならまた、きみと。) ____〆 (6/29 01:50:55)
和枕 音子>
( ____________夕暮れ。) ( 最終下校時刻を告げる鐘もそろそろなり始めるであろう、そんな放課後。橙色と群青がせめぎ合うときに、ぼくはきみの背中を見つけたのだった。) 「 お砂糖くんだ。」( 呟きはきみに聞こえたか否か。もし聞こえていなかったとしても、決して足は止めないようなひとだから。今まさに昇降口から外へ出ようとしている彼を追いかけるべく、ちょっと小走りで駆け寄っては並び立つ。) 「 お砂糖くん、こんばんは。いま帰り? 」( そもそもの背丈、歩幅が違うわけだから、普通に歩くきみに並ぶには常にこちらが早歩きにならなければいけなかった。きみの返事の有る無し、快不快の感情に関わらず、せかせかと足を動かしながら、) 「 ぼく6時限目終わりから保健室で寝ていてさ、気付いたらこの時間だったんだけど、ね。だぁれも起こしてくれないなんてまったく、かなしい話だとは思わない? 」( もともと昼休みから抗えぬ眠気を感じてはいた。あぁ、これはどうやっても寝るなって思ったから、授業をふらりと抜けて保健室のベッドに引きこもったわけだけれど。)( 更に言えば恐らくきっと、保健医は起こそうと試みたに違いない。ぼくが一切気付かなかったという話だ。) ( とたとた、ぱたぱた。) ( お砂糖くんがどれだけ嫌な顔をしようとも、せめて校門まではいっしょに行こうと笑いかけることだろう。そうして聞かれてもいない経緯をぽつぽつ語っては視線を隣から前向けて、ようやっとぼくは気付くのだ。) 「 _____________どうして、」「 どうして〝 公衆電話 〟が、校門に置いてある、のかな……。」 (5/29 15:42:57)
シュガー>
_彼女は何故そこまでして自分に話しかけてくるのか、だなんて自意識過剰な疑問は一先ず置こう。彼女のなんの当たり障りのない、もっと言えば毒にも薬にもならないような一日の報告も今じゃなくてもいい。今は彼女が見つけた。『公衆電話』にこそ焦点を当てるべきなのだから。先ほどまでの、なんとも言えない眉を顰めた表情も思わずに早くなっていた脚も今ではすっかり消えていた。そこにあるはずのない。あったわけがない公衆電話。そのどことなくに醸し出される異端な雰囲気は彼を警戒させるに十分であった。心のどこか端っこの方で、あれはカミサマなんじゃないのかだなんて疑念が言葉にはならないが、確かな感情として芽生えていた。「さて。...あれ。どう見ても普通じゃないよなぁ。悪戯か?それとも...〝本物〟か?...この際の本物は、公衆電話なんかじゃないけれどな。」おかしな話だ。今時に公衆電話?それもこんな校門の前に?このご時世、テレビでさえも既に廃れ行く文化となりつつあると言うのに。そんなものを設置したって元を取れるはずもないだろう。不自然なのだ。それがなんらかしらのバイアスに基づく、肯定的な思考回路であったとしてもどうも合点がいかない。考えれば考えるほどに、あれが通常の公衆電話であるとは思えなくなってくる奇妙な感覚。いいや、疑心。彼が本物という言葉を使って明言してカミサマという語を使わなかったのも、そう言う思考を、可能性を排除したくなかったからである。だが、やはりと言うべきかなんと言うべきか。あれが正当なものであるという根拠を彼は見つける事ができそうになかった。 (5/29 16:05:37)
和枕 音子>
( 公衆電話とは、不特定多数が利用できる公共の電話機である。公衆電話専用として設計された電話機が用いられ、単に近距離通話のみができる電話専用タイプが主流であるが、国際電話も可能であるもの、インターネット接続が可能であるものなど様々である______Wikipediaより、一部引用。) ( それが、校門にあった。朝は無かったはずの電話ボックスがあった。もしかしたら新しく設置したのかも、なんてこともあるだろう……が。) 『 ...あれ。どう見ても普通じゃないよなぁ。悪戯か?それとも...〝本物〟か? 』「 悪戯で置いておくには、ちょっと可愛げのないものだ。わざわざどこかから盗んできた………………なんて、そんな都合の良いことあるはずがない……よ、ねぇ。」( 足取りを緩めたきみに合わせるよう、ざり、と砂を鳴らして立ち止まる。スマートフォンを持ち歩く時代だ。もし携帯が無い子がいたとしても、職員室の教師に言えば端末を貸してもらえるだろう。まったくもって、〝 校門前の公衆電話 〟は、必要性に欠けるのだった。)( 本来であれば、どちらか一人がくるりと踵を返して職員を呼んでくるっていうのが正しい行動であったろう。何せ背後にあるのは学校、カミサマ的怪奇現象はまずプロに頼むのが一番なのだから。) ( ________ただ。)「 さて、進むか、戻るか。」「 十中八九、きみの言うところの『 本物 』だろう、ね。自律行動しないタイプであることを祈って、そっと後ずさって校舎に戻る、のが最適解じゃないかなぁと思うん、だけど…………。」「 でも、せんせいたちは〝 小難しい会議の真っ最中 〟らしいよ、お砂糖くん。」( 保健室から出る時にあった保健医が言っていた。『 これから、緊急で会議だから早く帰宅して。』『 ちょっと問題があってね…………会議もいつ終わることやら。』つまり、非常に忙しいってことだ。ぼくはぴりりと警戒するきみ、鎮座している得体の知れない公衆電話のどちらもを視界に入れて、結論が分かりきった質問を口にする。)「 ぼくはきみに合わせるけれど、どうしようか。職員室、行く? …………それとも。」( あの受話器を、取ってみる? ) (5/29 16:41:20)
シュガー>
「...わかりきっている。それにこれはラッキーでもあるんだからな。」彼は彼女の質問に明白に答えることはしない。だが、自分に言い聞かせるように、彼女に知らしめるようにして口を回すのだ。「そう。ラッキーなんだ。...ここで何かの功績を残すことができればあのヒーロー共への一手へとなるからな。超えてやるんだ。超えなきゃいけないんだ。......こういう言い回しは俺の好みじゃないんだが。」彼は相変わらず彼女の方を見たりなんかはしない。ずっと背中を見せている。警戒も、好奇もない。それほどまでに見下しているから。だが、次に出た「そろそろ、お前も俺のことをほんのちょっぴりは理解出来ているんだろう?」なんて言葉は信頼というべきなのだろうか。それともこういう異端な二度目の怪奇に襲われたことによる倒錯か。どちらにせよ、彼女がきっとついてくるだろう。ついてこない訳がない。そう言う思考が彼の中には既にあったようで、彼女が何か言う前に、彼女が何か行うそれよりも先に彼はあの公衆電話へと向かっていった。 (5/29 22:52:11)
和枕 音子>
『 そう。ラッキーなんだ。...ここで何かの功績を残すことができればあのヒーロー共への一手へとなるからな。』「 カミサマ____らしきものに遭遇して、自分は幸福だと言うようなひと。きっときみぐらいだろうねぇ。」( 返答は返答ではなく。続いた『 超えなきゃいけないんだ。』なんて台詞は、自らの内と言葉を交わしているように聞こえた。高い身長と筋肉から成る広い背中は、こちらに注意を払うことは決してない。隣に並んだって、横に流した視線には興味も警戒も好意も悪意も感じられない。 ぼくときみの間には大きな山があって。それ故に、実力主義極まる少年は当然のようにこちらを視界にはいれない。収める時は、見下ろすしかなかった。たった数度の交流だけれど、いつだって彼はそうだ。そんな分かりやすい価値観のきみに、悪感情を抱けるわけもないのだ。 )( ……あぁ、でも、今日はちょっとだけ違うみたい。) 『 お前も俺のことをほんのちょっぴりは理解出来ているんだろう? 』( すぅっと目を瞬かせて、有無を言わせぬ足取りで前に出たきみをぱちぱち注視する。) 「 …………たった、『 ほんのちょっぴり 』だけれど、ね。」( 何でもない風に呟いた口元が緩んでいること、振り向かないきみには絶対に分からないから。大股数歩で開いてしまった距離を縮めるよう、再びせっせこと足を動かすのだ。)( __________一歩、二歩。ぱたんぱたん。)( 電話機とぼくらの距離、残り10メートル。) (5/29 23:20:49)
シュガー>
さて。もう一度。_最初から。話を始めから。そう、あのいくらでもあるような陳腐で、チープで、ありきたりな夏の一日から。___遠くで遠くで蝉が鳴いていた。ギリギリとけたたましい、夏の讃美歌。だが、目を覚ました時に映るのは、土色の青春のグラウンドなんかでも、青空満点の朱夏の絶景なんかでもない。ましてや、涼しい暑さが立ち込めるような庭先なんかでもなかった。あるのはシンプルな作りの白い椅子とテーブル。壁も床も防音加工があるだけで飾りっ気もない白。そこに大量な本棚と、背表紙のみが色とりどりな本たち。どうやら図書館、そう呼ばれる施設らしかった。蝉の声の手前で、低く唸るようなクーラーの音が鳴っている。不健康な冷風は夢と現実の境界さえも曖昧になっていた彼の思考を急速に冷静なものへと書き換えた。「......っ...。」声は出せなかった。それがあまりにも突拍子もなかったものだから。彼の頭は、突如の変化にすぐに対応できる訳でない。景色に対する言及よりも先に始めたのは過去回想であった。___たしか。たしかだ。俺はあの公衆電話に。そうだ、あの公衆電話に近づいた。近づいて、あれが一体どんなものなのかを調べてやろうとした。頭の中でぐるぐると映画のフィルムを一枚一枚確かめるようにコマ送りしていく。彼があの公衆電話を見つけた時の記憶、それからのちょっとした会話。そして近づいて行った時の記憶。最初の方は簡単に思い出せた。あの寝ぼけた、そのくせにどこか何かを見透かしたような彼女との会話なんていうのは短かったから。だが、あの公衆電話に近づいた時の記憶。これがどうもはっきりとはしない。途切れたと言うよりかはめちゃくちゃな記憶だった。一歩一歩近づいたような記憶はあるが、どうも景色の前後が食い違って感ぜられる。たどり着いたような記憶が歩き出した直後にあったり、途中の記憶が入れ替わっていたり。それがあのカミサマの異常性か単なる記憶を勝手に捏造しただけのものなのかは依然として分かりっこはないようだが。「......おい。女っ...?どこかにいるのか?」ふと、なんとなくに名前を知らない彼女のことを呼んでみた。だが、その返事を待たずに彼は驚かされることになった。「...なんだ...?この〝声〟は...?」自分の声がやけに高かった。いや、若かったのだ。声変わりの時は、気にもしなかったしいつのまにか低くなっていたのだから特段に幼い頃の声帯になどは興味がなかった。それが普通というものだろう。だが、その逆というのはなんとも気持ち悪いものだ。あの低くて、威圧的な声がこうも高くなってしまってはなんとなく拍子抜けだ。だが、それを思う暇さえもきっと与えられない。一度その異変に気付けば、そこから芋づる式に気づいてしまうのだ。自身の容姿が幼き頃に戻ってしまっているということに。小さくて、少し焦げた手は隠すこともしない傷だらけ。腕も足も同じ。デコは包帯でぐるぐる巻きで、髪の毛も自身で切ったのか乱雑だ。顔つきこそは幼いが、目つきは現在の彼と同じように鋭くて愛想というものを感じさせない。身長だって縮んでしまって今は150cm程度だ。「...な、な..。」彼は震えた。あまりにも唐突な変化に。そして怒った。あまりにも自身の神経を逆撫でするようなその変化に「な ん な ン ゛ だ ァ ゛ ァ ゛ ァ ゛ッ ッ ゛ ッ ゛ ! ? ! ?」思わず叫んでしまった。図書館だというのに。そして、いつもの癖で机をドンッと、叩いて勢いよく立ちあがろうとする。...したのだが。...それがまた良くなかった。彼はあまりの怒りで周りが見えてなかった。叩いたのが、まさか、自身が使っていたであろう机に平積みされた本の、角の部分だなんて。当然、本は素直に。愚直に。幼い彼の全力を受け止めて。それに答える。本は、彼の胸元へと落ちていく。上から。それはいきなりに立ち上がった、『変わってしまった身長に慣れない彼』をそのままに押し倒すには十分の重量だった。彼は、自分の怒りを自分で清算するように。落ちてきた本たちに飲み込まれる形で、そのまま床に押し倒されるのだった。 (5/30 00:07:21)
和枕音子>
( _________夏という季節は、ただ、暑いだけのものであった。)( 和枕音子にとって、四季なんてものはそもそも実感がなくって。高校に入るまでろくに外出すら許されぬ身だったのだ、当然ながら夏の風物詩なんてものは一度だって味わったことはない。蝉が煩く鳴いて、日差しがじりじりと焼き付けるから寝苦しくて。たったそれだけ。好きも嫌いもそこにはなく、ニュースや同級生が楽しげに語る夏ってやつを、彼女はどこか夢物語のように聞いていたのである。)( 初めに聞こえたのは蝉の声。騒がしい目覚ましみたいに、遠くのほうで鳴いていた。次に感じたのはひやりと首元を撫でる風。ぶるりと肩を震わせて、ここで身体の感覚がかえってくる。____『 エアコンが強いな。』と、麻痺した思考が言った。そうして最後に、視界が色を取り戻す。モノクロからセピア、セピアからカラーに。数度の瞬きを無意識に行って、そのたびに一色ずつ。 けれど、モノクロだってカラーだって変わりはしなかっただろう。視細胞、視神経、視覚野を通って伝わる目の前の景色は、暮れ始めたオレンジ色でも、ふわりと香る深緑色でもなく、〝 真 っ 白 な 壁 〟であったのだから。)「 っあ、」( 咄嗟に身体を強ばらせたが、周囲に素早く視線をやっては恐る恐る力を抜く。大丈夫。大丈夫。見覚えのある場所じゃあない。だから〝 天井から見張る監視カメラ 〟も、〝 バインダー片手にスイッチを入れる大人 〟も、きっといやしないんだ。薄く薄く、堰き止めていた呼吸を意識的に繰り返す。吸って、吐いて、吸って。大きく肺を膨らませ、そっと吐き出して。高まった鼓動も、ちいさくなる。)( まずは自らの無事を確認。外傷、身体の痛みなどは無し。五感は安定しており、服装や持ち物も変わらずそのまま。椅子にだらりと腰掛けて、目の前には本が開かれたまま置いてあるだけ。至って平穏無事である。第一プロセス完了。)( 次に状況の確認。白い壁、白い天井。高く連なる本棚。白い長机に行儀よく並んで本を捲るひとびと。聞こえるのは蝉の声とエアコンの稼働音、ページに指を這わす音。首をほんの僅かに後ろへまわせば、カウンターに座る職員らしき人間が見えた。 …………総合的に考えて、どうやらここは図書館に近似した施設らしい。第二プロセス完了。)( 次________と、決められたチェックシートを順繰りに埋めて、しかしそこで、大事なことに気が付いてしまう。)「 お砂糖くん、どこ…………………? 」( 直前まで一緒にいたはずの彼が、その目立つ長身が、どこにも見当たらないのだ。平常に落ち着いた動悸が再びペースを上げ始める。どうしてこんな場所にいるのか。記憶の混濁。それに勝る不安と恐怖に、たまらず椅子を蹴飛ばし立ち上がった。)( 同じテーブルには………………………いない。隣にもいない。視界に入る中に、きみを確認することはできない。「 こんなことなら、携帯の番号聞いておくんだった……ッ! 」と声をあげてみたけど、たぶんきみは教えてはくれなかっただろう。逸る鼓動は、冷えきった肌に冷や汗すら浮かばせて________、 )『 な ん な ン ゛ だ ァ ゛ ァ ゛ ァ ゛ッ ッ ゛ ッ ゛ ! ? ! ? 』「 _________________!!!! 」( 聞こえた声、行動は早かった。きゅっとサンダルの音を置き去りにして、怒鳴り声の方向へ走る。) ( 本棚の角を曲がって、そして。) 「 お 砂 糖 く ん ッ ッ !!!!! 」( 書物に潰されるようにして倒れる『 きみ 』を見つけた。きみにとって、荒らげたぼくの声なんて初耳だったろう。タッタッタッと駆け寄って、滑り込むみたいにきみの隣へ膝を付く。重なる本を除けて、退けて、良かったって口にしながら、その〝 異常性 〟に眉を寄せる。)「 …………ちっちゃいね。」「 これも、カミサマの仕業…………かな。」( 周りの視線が背中に突き刺さるも、そんなことを気にしていられる余裕なんてなかった。疑問も次から次へと鎌首を擡げるけれど、それも全部右に寄せた。今は、きみの無事を確認するために、その幼くなってしまった顔を覗き込んで。) (5/30 01:09:55)
シュガー>
「......お前は...そのままか。...それともそれが小さいのか...?」小さくなっても中身は同じなのだろう。自身が本に潰されていても、相手と自分の身長が同じくらいになっていても。その何も隠さない物言いは健在のようだ。「全く...。俺を逆上させたいのか...?それとも単にリプレイなのか...?どちらにせよ忌々しいがなッ...!」彼は奥歯を深く噛み締めた。ギリッっと音を鳴らしてしまうほどに。今まで余裕であったが故に見えなかった。彼の真なる負けず嫌いの一面という訳だろう。彼にとってはこの状況が。もっと言えば、この空間そのものが〝嫌悪の対象である〟らしい。彼はその心境を全て発散するかのように本を必死にかき分けて立ちあがろうとした。あれだけ筋肉質だった体も今では、その質量を大きく減らしている。それ故に本から脱出するだけでも一苦労だった。「こんな地を舐めるような真似をッ...するなんてなッ...!」そんな風に喚きながら、這い上がる少年。服装は無地の黒い半袖と同じように黒い半ズボン。それも目立った汚れがあるわけではないが、そこまで新しくもなさそうでくたびれが目立っていた。それに彼が本にぶつかったことでどこかの傷口が開いたのだろう。頭の真っ白な包帯は、少しだけ赤を滲ませていた。小さい体に似合わない傷と幼き顔に影を刺すどこか見窄らしい格好。彼の背格好は子供だ。だが、その眉間に浮かんだ皺や噛み締めるような奥歯はもはや少年のあどけなさなんてどこにもない彼そのものである。彼は焦って駆けつけたであろう彼女に一言だけ、「どこか変わったことはないか。」とだけ聞いた。だが、その声音に心配なんて要素はなかった。ただこの珍妙かつ腹立たしいカミサマに対する対抗の一手を打つため。その復讐のための情報を集める。そう言うための問いである。 (5/30 01:35:12)
和枕 音子>
( 少年は歯を食いしばりながら、こちらに反応を寄越す。物言いはまったく元のまんま、尊大で気の強い荒々しい口調。彼が立ち上がろうとするのをさりげなく、そして勝手に助けつつ、彼自身に気付かれぬよう細部に視線をやった。背丈はぼくよりほんのちょっと小さい。体格は年頃の男の子らしいもの。服はどこか薄汚れていて、ちらちら覗く包帯の白を目立たせていた。紛うことなき、子供の姿である。変わらぬのは口調と、幼い表情を歪める内面くらいだろうか。ディスコード能力は戻っているのか否か____と。) 『 どこか変わったことはないか。 』「 …………あ、ぼく? 」( 腰をあげるきみを追随するよう、床についていた膝を浮かす。聞き返してから自分以外に人間はいないと思い直し、間抜けな問いを撤回するべくゆるりと首を振った。) 「 えっと、特には。」「 負傷もないし、記憶の混濁も軽度。ディスコードもたぶん、だいじょうぶ。身体だったら…… 」( 「 17歳でも、10歳でもどうせ変わ_____。」 ) ( 一瞬だけ、口を噤んで。 )「 _____うん。」「 ぼくは、17歳のままみたい、だ。」 ( 背筋を伸ばして向き合えば、きみとぼくとの視線はかち合うはずだ。きみの顔がこんなに近くにあるのも、随分と新鮮じゃないか? 思わずまじまじと見てしまいそうになる欲求をどうにか抑える。きみは既にこの〝 カミサマ 〟に対処しようと、思考を切りかえているのだから。) ( あぁ、でも。) 「 …………血。」「 痛くは、ない? 」( つい、と。額に巻かれた包帯に指を伸ばす。滲む赤は、恐らく傷の開いた証であろう。触るなと拒絶されることを、何となく想定して、それでもぼくはきみの傷を気にかけた。 ) (5/30 02:06:09)
シュガー>
『 …………血。』「...ん?」『 痛くは、ない? 』「あぁ。これか。」気づかなかった。本当に。今まで彼は傷なんて気にして生きてこなかったのだ。いや、手当てやら治療やらは受けるが。それがあまり重大なものにはなり得なかった人生だった。今回の場合もそうである。傷が開いても、血で視界が悪くなるようなこともないし、広げっぱなしの本がダメになったりもしない。なんの迷惑も影響もない。彼の中ではそれは極小の、問題にすらなり得ないものだった。今回もそのようでただ一言に「別に死ぬわけじゃない。」とだけ言っては考え事を続けてしまうのだった。相変わらず彼女とは目を合わせようとはしない。一定の野生動物は他の動物と目を合わせないようにする。それは敵との交戦の合図にならぬよう。威嚇や接戦と捉えられぬようにするためである。彼もまたそのようなものだ。決して彼女に対して臆病になっている訳ではない。ただ、少しでも気を抜けば何かと文句をつけられて、今彼の頭にあるような傷を負うハメになるような長年の過去が彼の目線をそのように仕立て上げてしまったのだ。「...まぁ。ここにいてもどうにもならないかもな。」彼はまだテーブルに残っていた本の表紙を横目で眺めながら指の腹でそっとなぞった。本の内容は、簡単な小学生向けの数学書だった。本当に簡単で、表紙にあるのも数式や文字式ではなく単調な図形やら数字だけのイラストだった。だが、それは今の彼の容姿と比べてあまりにも簡単すぎるくらいだ。彼の見た目は、どう見積もっても中学生手前か小学生後半くらい。明らかに算数の初歩をするには遅すぎる見た目だ。他の本を見ても同じように、国語やら英語やら。挙句の果てには絵本なんかも。なんだかあまりにも年齢層の低そうな本ばかりが彼の周りに散乱していることが分かるだろうか。そして、それを眺める彼の表情が決して心地いいなんてものではないこともまた、分かるだろうか。 (5/30 02:34:15)
和枕 音子>
( そっ……と。触れるか触れないか、きみの身体を纏い覆う空気の膜をちいさなゆびさきでなぞった。 想像とは正反対に、きみはそれを拒否したりはしなかった。それでも絶対に目は合わなくって、身長が近かろうと変わらないのだなと、何となくほぅと息をついて。『 別に死ぬわけじゃない。』という言葉は疑り深いぼくにも嘘は見えなかったから、それならいいんだと身体を離した。ただし、少年の巻いた包帯に血が滲んでいるとなると周りの目を引くだろう。適当な場所で新しい包帯なんかがあればいいのだけれど。) 『 ...まぁ。ここにいてもどうにもならないかもな。』「 そう、だろうね。何の変哲もない図書館みたいだし、…………それに、随分注目を浴びてしまっている、から。」( 先程から、背中と言わず全身に突き刺さる視線によって針のむしろであったのだ。そろそろ職員も来てしまうんじゃなかろうか。まだここがどういう場であるのかがはっきりしていない以上、下手に他人と関わるのはやめたほうが懸命だろう。) ( とりあえず外に出ようか____。言いかけて、ふと、細くやや荒れた指先が。そのさきが、目に留まった。)「 …………外、出よう。」( 声音は、驚くくらいに無機質な響きだ。感情の伴わない、抑揚に欠けた。 ) ( ここにはいたくないと、おもった。散らばる小児向けの学習書。算数国語英語。中身はきっと、ひらがなだらけで構成された簡単な文章。りんごがいくつだとか、少女がサラダをつくるお話だとか、アルファベットの書き方だとか。イラストの多い教科書とドリル。教えてくれるひとはいないから、何度も何度も読み漁って、何度も何度も赤丸をつけて、でも、結局最後には_____________ ) 「 行こう、お砂糖くん。」( ばちばち光るフラッシュバック。振り切るように、ぼくはきみの腕を引いて。抵抗が無いなら、そのまま図書館の外に足を踏み出すだろう。 ) (5/30 03:06:48)
シュガー>
図書館の外は夏だった。日光が皮膚を焦がすように降り注いでいる。そしてどこかにあるのは雨の匂いだった。きっとついさっきまで降っていたのだろう。刺すような熱に当てられて急速に乾いていく小さな小さな水溜まりだけが今は跡形もない雨の存在を訴えていた。「...お、おいっ!?随分人のことを子供みたいに扱ってくれるじゃないか。」彼は普段見ないような君のどこ知れぬ、無機質な横顔に少しだけ眼を揺らしていた。君が彼の手を引いた時も外に出てしばらくした後も、何も言わなかったのは、お互いに意見が一致したのもあったがこういう理由があったからである。彼は図書館の病的に冷たかった空気が体隅々から消え失せる頃には君の横顔に向かって、まだ笑顔の似合いそうな顔を歪ませて睨んでいた。だが、すぐさまに彼の瞳や歪んだ目元は今度は緩められ、今度はどこか歯の奥で何かをそっとそっと噛み締めるような不服とした、いつもの表情へと切り替わるのだ。「あまり変に勘繰るんじゃないぞ。俺もお前も人間だ。趣味の悪いカミサマはそう言ったところにつけ込むんだからな。」彼はそれだけ言ってはそれ以上は不問とした。これは別に吊橋効果だとかそんなんなので、変に君に感情を傾けたからではなかった。あくまでもこのカミサマの術中で生存率を上げるため、生き残るための戦略。それでしかない。現に彼は、今の現状を作り出したカミサマのことを〝趣味の悪い〟と形容しておきながら、特段に大きな苛立ちだとか悲観だとかを感じさせることはなかった。もちろん彼の心内ではそうじゃないのかも知れないが、今のところ。彼からはそういう気を感じることは難しい。 (6/17 18:49:10)
和枕 音子>
( 『 茫然自失 』というのが、今の状態を言い表すに一番近しい言葉だったのではないだろうか。呆気に取られたわけでも、ぼんやりとしていたわけでもないけれど。それでも、我を忘れていたことは事実だった。)『 ...お、おいっ!? 』「 __________、」( だから、きみのその声でようやく、ぼくは図書館から出て門を抜けて、大通りを前にしていることに気付いたのだ。片手に触れる体温は、ぼくのじゃあなくて。)「 ………………、」「 今のきみは、見た目だけなら子供だけれどね。」( 小さな歩幅は本来なら、彼の1歩で追い越されてしまうはずのもの。普段に比べて大きく、速くなっていた歩調を落としてはそんな軽口を叩く。『 あまり変に勘繰るんじゃないぞ。』という台詞に混ざった真意に曖昧な笑みを返して、きみの喉元やら額やらに視線を彷徨わせるだろう。首が痛くなるくらい見上げなきゃ視界にすら入らない顔が、目の前にあるというのは随分落ち着かない事象だった。 )( …………だいじょうぶ。ここは〝 あそこ 〟じゃない。胸中で囁いた言葉の意味を、深くは考えないように。 )「 さ、て。何が起きることもなく外に出られちゃったけど、閉じ込められていると言うわけじゃなさそう……だ、ね。たぶん町の外に出ようとしたら、どこまでも行けちゃうんじゃないかなって、おもう。何となく、だけど。 」( 緩めた足取り。振り払われない手は握ったまま、空いた片手指を歩道に立った看板に向けて。)「 ぼくはこの町の名前にも覚えがない。…………きみは、知っている? 」( 『 ■■町立図書館 』とは、さっきぼくらが出てきた施設の名前のはずだ。 文字列をなぞるよう指先を動かして、きみに問う。その答えは想像がついた。きみだけが小さくなっている理由を考えれば、おのずと分かることだろうから。) (6/17 19:20:37)
シュガー>
『今のきみは、見た目だけなら子供だけれどね。』「見た目だけはな。」彼はこの頃に及んでもどこか認めないというか。妙に意地を張ったような発言に感じられるのは彼の見た目が今は子供だからだろうか。だが、きっと彼は他のことに対しても不服そうにするのは何よりも明らかなことであろう。『......たぶん町の外に出ようとしたら、どこまでも行けちゃうんじゃないかなって、おもう。何となく、だけど。 』「だろうな。」手を離すことは頭に無かった。強いて言えば、何が起こるかわからないような現状ではこうしている方が安全、そういう理由だ。君の指が視界の端で色白く光ったのが見えてその指の峰とそこから跳ねるような指の色をなぞっては、その先に目を向けた。その先にあったのは____『ぼくはこの町の名前にも覚えがない。…………きみは、知っている? 』「あぁ知ってるさ。忘れるわけがない。...全く〝素晴らしい〟趣味してるな。」____自身の生まれた町の名前が入った看板だった。君と繋いだ彼のその幼い体には似合わない少々に強い手が、ほんの少しだけ強めに握られた。彼の顔は未だに不機嫌そうだった。それはいつも通りで、彼をそこそこに知っている人ならば見逃してしまうほど平常な顔。だが、その今と見比べればだいぶんに可愛らしく、まだあどけない顔が今の擦れた彼と同じように険しく見えてしまうというのは少なからず彼にとっては苦い思い出があるからだろう。「どうするか。カミサマらしいものもまだ見てはいない。...直感的だがきっとこれは限りなく現実に近い夢なんだろうな。それも、俺の。」彼は言葉を噛み締めながら言った。そしてどこかその噛んだ言葉をどうにかこうにか飲み込むように言葉数ばかりを増やしていく。「とりあえず涼しいところに行くか。...この暑さの中では考えもなかなかにまとまらない。さっきの図書館は...。あんな風に出てきたんだから行けやしないか。お前には何か変なところはないのか?」彼にしては珍しく質問がはっきりしなかった。いや、出来なかった。彼の額の包帯は、徐々に徐々に薄ら赤いシミを広げた。きっと彼が汗をかき始めたからなのだろう。それが暑さだけではなく、動揺という面があるのは君と繋いだ手からも感じれてしまうかもしれないが。 (6/17 19:52:27)
和枕 音子>
『 あぁ知ってるさ。忘れるわけがない。...全く〝素晴らしい〟趣味してるな。』( 想定していた通りの返答に、薄く息を吐く。) ( 彼の言うように、ここは文字通りの〝 過去 〟であるのだろう。あんなに大きかったきみがここでは10歳やそこらになってしまっている理由も、過去だからで都合がつく。まぼろしだ。恐らくはまぼろしを見せる力なのだ。ぼくたちの肉体は今でもきっと、校門前にあるのだろう。ただの蜃気楼、幻覚にしてはリアリティがありすぎるけれど、タイムリープやタイムトラベルを可能とするカミサマなんて聞いたこともないのだから。)( ここが何であるのか仮説が立ったところで、次に問題となってくるのは帰還方法だ。夢ならば、目覚めれば。幻ならば、醒めれば。それだけでいいはずなのに、それだけが難しい。) ( だって、ぼくたちの意識ははっきりしている。明晰夢と同じように念じれば起きるなんて、そんなこともないだろう? )『 お前には何か変なところはないのか? 』「 ______ぅえっ、 」( 素っ頓狂な声だった。) ( 思索に耽ると周りが見えなくなるのは余り良くない癖であった。彼の言葉は何となく耳に入れてはいたけれど、まさか自分に矛先が向くなんて思っていなかったのだ。ぱちんと思考を止めて、きみを見遣って。)「 変なところ、は、とくに……、」( 言いかけて、少年の肌に、繋いだ手に汗が滲んでいることに気付く。当たり前だ。こんなに暑いの中外でぼんやりしていたら、帰る前に熱中症で死ぬ。さっき指さした看板に再び目を留め、ご都合主義よろしく貼り付けられたマップを確認する。) 「 涼しいところに行きたいよ、ね。……ここらへんなら、そうだな、喫茶店とかショッピングモール…………んん、あんまり人目につきたくない、な。この公園なら、広いから日陰とか、屋根のある場所とかあるだろうけど。」(「 ねぇ、何か良さげなとこ、ある? 」聞いて、けれど緩く首を振る。) 「 どこに行くにせよ、まずはあそこの薬局か、な。」「 血が滲んでちゃ、注目浴びちゃうかもしれないし。」( 包帯に浮かんだ赤色。お金あったかな、なんて呟いて、ぽんぽん自分の身体を探る。財布はあった。パーカーのポケットに入れていなければ無かっただろう、幸いだった。) ( 更に幸いなことに、目に入る位置に薬局はある。きみが異論を唱えないのであれば____唱えたとしても、包帯は買いに走るだろうけれど____無事に買い物を済ませて、公園なり、きみに場所の良い案があればそちらなりに向かうだろう。 ) (6/17 20:32:24)
シュガー>
『変なところ、は、とくに……、』「...?そうか。」特に探りを入れる気にも、わざわざ君のその曖昧な返事の隙間を問う気にもならなかった。だが、君の表情や視線の全てから何か妙な、変な動揺というか。普段の何とも言い難いような飄々とした雰囲気が感じられない。緊急である。それだけでも理由としては十分ではあったが、彼のように人を疑いそして見透かそうとする人間にとっては、歯がゆい思いであった。今がこういう状況でなければきっと彼はこうも譲歩して、言及せずにいることはなかったのだろう。彼は茹だるようなこの暑さの中、少しだけ錆のような匂いを感じる汗を額の方から垂れ流しながらそっと「...あんまりこういうことは言いたくないんだが、俺の故郷は他人に優しくない。...喫茶だとかショッピングモールだとか。そういう場所は、富裕層どもとそれに半端に楯突く奴らで溢れててきっとこの場所よりも、別の意味で〝お熱い〟ことだろうよ。くだらないがな。」彼は喉奥を、震わせて言った。恨みだろうか、それとも迷いだろうか。とにかく彼もまた、普段ではあり得ない動揺を持っているようだった。彼は、燦々と降りしきる日光にその両目をひどく歪ませながら、「薬局には賛成しよう。そしてその次はひとまず俺の家の方が安全だろう。」と提案したのだった。彼は今だけは君を一人にするつもりも、前みたいに放っておく気もないらしく、きっと君と合わせるように歩くだろうか。それも、彼が今は小さいから歩幅が一緒なのか、意図してなのかすらも怪しいわけだが。少なくとも今こうして君と手を繋いだままに離さないことにはなんらかの意味がある、のかも知れなかった。 (6/25 18:51:51)
※5ロル目 1d100を振り80以上でリトル・グリーン・バックの能力によりカミサマが引き寄せられる
シュガー> 1d100 → (88) = 88 (6/25 19:03:25)
和枕 音子> 1d100 → (30) = 30 (6/25 19:03:49)
和枕 音子>
『 俺の故郷は他人に優しくない。...喫茶だとかショッピングモールだとか。そういう場所は、富裕層どもとそれに半端に楯突く奴らで溢れててきっとこの場所よりも、別の意味で〝お熱い〟ことだろうよ。』「 …………そっ、か。そういうもの、か。」( 今さっき後にした図書館を見る限りはそんな気配を感じはしなかったけれど、それはいわゆる『 富裕層 』御用達の場所だからなのだろうか? あそこからは〝 余所者 〟を嫌うような、嫌に排他的な空気ばかりが漂っていて、どうにも居心地が悪かった。彼の言葉端から溢れる感情は、どう解釈しても良いものではなくて。繋がれたままの手と言い、何故かぼくの頭をざわつかせる。) ( ぼう、とするのは夏の暑さのせいか。それとも。)(『 薬局には賛成しよう。』ときみは言った。拒否されなかったことに少しだけほっとして、しかし、続いた台詞に思わず瞠目した。)「 きみの家。」( お砂糖くんの、) 「 いや、それはそう、か。だってここはきみの故郷なんだもの、ね。」「…………でも大丈夫なのかな。幻だろうって思ってはいるけれど、タイムパラドックスとか……ほら、何だっけ、過去の自分自身に会うと良くないとか。」( それは半分くらい苦し紛れ。)( 例えこの空間が本当に過去のものだったとしても、当のお砂糖くんは時間軸に応じて縮んでしまっているのだ。その場合〝 未来の彼 〟と〝 過去の彼 〟が同時間軸にいると言うより、成り代わっているとか、そっちの方が辻褄が合うだろう。) ( 「 まぁ、あるわけない、か。」なんてゆるゆる首を振って、ぼくはきみと間近の薬局に足を伸ばす。普段だったらやや小走りになるはずのそれが、今は変わらぬ歩幅であることに違和感をおぼえたりしながら、買い物は無事に終わるはずだ。お砂糖くんの家に行くにしたって、その道中にじろじろ見られることは避けたい。だから先に手当をしよう、とぼくはきみの手を引く。)「 治安が良くないとこって、路地裏とかに不良が溜まっているイメージがあるの、わかるかな……。実際に見たことはない、んだけどね。」( 無言の間を作るのが、何だか気持ち悪くって。ぼくはいつもより饒舌に、薬局脇の細い通りへきみを引いていく。)( ______ところで。今日は珍しくも、ちょっとだけ洒落ていた。変哲のないサンダル履きが、この日に限っては細リボンのついた可愛らしいものだったのだ。意味も嗜好もそこには存在しなかったけれど、少しばかりの気まぐれで。)「 ……っ、と。」( くん、と、足を引っ張られる感覚。足元を見れば、右側のリボンが解けていて。ぼくはきみに繋がれたままの手をするりと離し、その場でしゃがむ。リボンは案外長かったから、踏んだら危ないだろうなんて思った。) ( 靴紐はひとりでにほどけていた。)( 離された手に、しゃがんだ連れに、きみがどう反応したのか少女には見えなかった。目線の先にあるのは指先と地面で、きみの表情や、) ( ましてや頭上から、ミシミシギシリと音がして。)( ____________薬局の分厚い看板が、落 下 し て こ よ う と し て い る、だなんて。) https://eliade20.1web.jp/45954/47641.html#contents (6/25 20:07:43)
シュガー>
『…………でも大丈夫なのかな。幻だろうって思ってはいるけれど、タイムパラドックスとか……ほら、何だっけ、過去の自分自身に会うと良くないとか。』「そんなこと気にしていて死んだらどうにもならんだろう。現にそこまでの力があるなら...ヒーロー共にも誰にも止めれないだろうしな。」彼はあっさりとしていた。彼の中には、自分が負けるか勝つか、カミサマを殺せるか、否か。それくらいしか判断基準がないようだった。別にその疑問が変だとかおかしいだとかは言わずに、ただ特になんの意味もなく答えて置いたばかりだ。『治安が良くないとこって、路地裏とかに不良が溜まっているイメージがあるの、わかるかな……。実際に見たことはない、んだけどね。』「治安が良くない...ってのとは違うな。住んでる連中の精神は最低だが、権力だの地位だの金だのが余ってるような奴らが無理矢理に形を整えてるんだ。不良が暴力沙汰なんて起こしたら警察だって動くだろう。汚職にまみれた警察の一番の敵はそういう権力から逸脱しようとするような非行連中なんだろうよ。ここら辺の不良って呼ばれるやつは大方がクーラーの効いたモールや喫茶で鼠講やらなんやら...そういう悪どいことやってる奴らだよ。」彼はそう苦々しく言葉を放っては、鼻で笑うようにして最後に「俺の親には金もなかったがな。」なんて言った始末だった。だがその声や瞳は笑っていなかった。天井にいる蝿を見つめるような、何もなく何もかんじられないものだった。普段より饒舌な君と普段よりも自虐気味な彼。不思議なことに、こういう時でもなんだか少しだけバランスが取れてるようにも思えてきた。薬局の細い通り道も、古い落書きやらゴミはあったが新しそうなものは何一つとしてない。それは清潔さや治安の良さというよりかは、老いた町のような静かさであるようだ。そう。その道はひどく静かだった。_ズリッ...と君の靴が止まる音が聞こえた。思わず隣を見た。その頃には君の手が、自分の手から離れていくのが感じられた。妙に、その行動に惹きつけられた。いや、もっと言えば、その場の空気に奇妙さを感じた。靴紐が解けることなんて、別に大したことではないが。どこかが。何かが。...変だった。「なぁ...」ギリギリッ...ガタンッ...!言葉を遮ったのは金属音だった。大きな大きな金属の板が、自身につけられた固定よりも自重が大きくなって、抜け出そうとする。そんな音だった。「...ッ!?!?」彼は、飛んだ。その両手は彼女の首根っこを。いつか掴んだその場所を今回もまた掴んでいた。彼はその場所から逃げるために飛んだのだ。上は見てなかった。ただ、音から〝何かが降ってくる〟と。判断して。だが。今の彼の体は、あくまでも幼い彼の姿だ。彼がいくら一般的な子供よりも筋肉質であったと言えども、彼女を持ち上げることなんて。到底できるはずがなかった。それに、気づいたのが遅かった。いくら本能的な感覚に秀でた彼でも、落下寸前のものが落ち切る前にできることはせいぜいに限られていた。結果。結果として。彼はまず君を飛んだ勢いのまま低く低く、横に倒すようにして伏せさせ、その金属板を受け止める選択を取ったのだ。金属板、それはどう見積もっても、彼ら二人の体重よりもはるかに重く、さらに落下すればその脅威は下敷きになった子供くらいなら、殺せてしまう。ならば、彼は、そのまま下敷きになって死んでしまうのだろうか。「...イヴレスッッッッ...!!!!」否である。彼も彼女も一般人ではない。一般人には持ち得ない。ディスコードと呼ばれる、特殊な力を有した。カミサマに対する、対抗策なのだから。彼のディスコード、イヴレスは全長は一メートルしかない。普段の彼と比べればその差はあまりにも大きく盾にすらならないようにも思える。だが、現在の小さくなった彼に取っては、体半分を超える大きな岩であった。彼は自身の上ではなく、隣にレイヴスを出現させた。一人では持つことできない金属板を受け止めてもらうために。そして、さらにイヴレスの能力によってその金属板自体をイヴレスに取り込むために。きっとイヴレスによって支えられ、そして即座に吸収される金属板は彼らになんの影響ももたらさないだろう。君を庇うようにして飛んだ彼も、金属板に背中を打ちつけられることもなくただ、飛んだ勢いで地面に少々体をぶつけて先ほどの怪我からツーーっと赤い液体を一筋だけ垂らしている。そして君の隣で横たわる。それだけで済むはずだ。https://eliade20.1web.jp/blog/46838.html#contents (6/25 21:03:00)
和枕 音子>
『 ...イヴレスッッッッ...!!!!』( その声に、少女は何もできずにいた。) ( 小さな背丈のきみが、あの日のようにぼくの首根をぐいと引き。きみにとっては〝 意外な程に軽い身体 〟は、力のままに地面を滑る。そこでようやく、ぼくは自身の頭上に迫った金属板を目にしたのだ。) ( 不思議なほどに緩慢な速度で、それが降る。なにもできず、なにも思えず。迫る死から目を逸らすこともなく、ぼくは落ちる影を見つめて________ )「 、ぁ。」( ________1秒後も、ぼくは息をしていた。) ( あと数十センチの距離に迫っていたはずの看板は姿を消し、その代わりにまるで無骨な機械のような、大きな身体が目の前に仁王立っていたのだ。何が起きたのか、たった数秒のことで上手く理解は出来なかったけれど、危機が去ったのは確か。そっと身体を起こして、隣に倒れたきみを見遣る。)「 ……………………………………………………ごめん。油断、してた。」( ただの幻だと高を括っていた。今のがただの偶然による事故であるはずがない。少なからず、カミサマの影響は受けているのだろう。 きみを見つめる瞳は、不気味なほどに硬く、凍っていただろう。謝罪の声は、抑揚に欠けた無機質な声音だったろう。ぼくは怖くなったのだ。) ( 油断していたことに後悔して? ______ちがう。) ( 死にたくないと恐怖したから? ______ちがう。 ) 「 ごめん。」( きみが死ぬんじゃないかって、おもって。) 「 でも、」( 〝 ぼくなんか 〟を庇って、きみが傷つくんじゃないかって。) 「 ……………………ぼくを、庇う必要なんてないんだよ、お砂糖くん。」( 土埃に汚れた服をそのままに、横たわったきみを上から覗き込んで、血が滲む額に指先を添える。額から瞼。瞼から頬。流れた血の筋をなぞって、余韻をのこして。頬に付いた砂をそうっと払って、ぼくは言う。)「 きみと違って、ぼくは、いつか死ぬことが決まった人間なんだから。」「 誰にもその生を望まれちゃいないんだから。 」「 きみが、その身体を、いのちを損なう必要なんか、ないんだ。」( 日差しが差し込まない路地裏は、外界から切り離された ように暗く、静かだった。言葉は一語一句漏らさずに、きみに伝わった。けれどその引きつって凍った表情は、奥に潜んだ恐怖と言う感情は。)「 ごめん、ね。怪我させちゃって。 」 ( きみに、伝わっていなければいいなんて思った。) (6/25 22:02:08)
シュガー>
彼の顔を覗き込んで話す君の顔は、人形のようだった。無機質で、不透明で。なんとなく、不安定な声だった。彼は君がしたように、またたっぷりと余韻を残したままに言葉を。普段とは違って、ゆっくりと言葉を吐いた。「俺の命の使い方は、俺が決めるんだ。...お前には、決められるもんじゃじゃない。」そして、君よりかは重くて、でも軽い体をのっそりとのっそりと起き上がらせる。まだ完全に血が止まってないのか、姿勢を変えたらまた血が垂れた。それでも構わなかった。今の彼は、なによりも冷静で静かで。「大体なぁ...!」怒りに燃えていたのだから。「俺はお前と一緒に死ぬ気も、お前を庇う気も。そんな小さな小さな偽善なんか...持ち合わせてはない...ッ!」彼は思わず、君の肩を握った。小さくなった体はすぐに悲鳴をあげる。肩を握ればそこからまた、体の力が抜けそうになるが。それでも、なお立って君を見つめ、言葉を吐いた。「...お前のような人間、俺に取っては死のうが生きようがどうだって良いことだが、俺はお前に生きさせてもらわなくたって生きる。お前を庇って死んだりなんてしない。」彼はそう言ってグッと、指に力を入れた。また一つ足から力が抜ける。「〝怪我をさせた〟ってのはそうだな。認めてやろう。ただな。そんなことは、俺が勝手にやったことだ。」彼はふいと、苦しそうな時も笑いながらにして言うのだ。余裕そうに、傲慢に。「嫌なら、俺に勝ってから言うんだ。我儘ってのはそう言うものだ。」と。 (6/25 22:43:49)
和枕 音子>
( らしくないことを言ったと思った。口にしてから、その危うさと意味に気がついた。けれど、どうしてそんなことを言ったのかは、よく分からなかった。) ( ゆっくりと身を起こした彼は、その手でぼくの肩を握る。) 「 っ、」( 小さな手とは言え、力の男女差は出るものだ。皮と、肉付きの薄い身体とでは吸収し切れなかった力が、肩甲骨を、肩関節を、僅かに軋ませる。髪の合間から覗いたきみの目は、ちらちらと揺れる怒りの色を宿して。) 『 俺はお前と一緒に死ぬ気も、お前を庇う気も。そんな小さな小さな偽善なんか...持ち合わせてはない...ッ! 』 ( 押し殺した怒鳴り声は、声の大きさに反して鼓膜と脳を揺さぶった。) 『 お前を庇って死んだりなんてしない。』『 嫌なら、俺に勝ってから言うんだ。我儘ってのはそう言うものだ。』( 激情の色は変わらずそこにいるのに、それでもきみは口角を上げて、そんな風に嘯く。血は絶えず、腕は無理に力を込めているのか震えてすらいるのに。それでも。) 「 …………………………………………………………。」「 これ、は。」「 ぼくが今言ったことって、その、きみにとっては『 我儘 』になる、の……? 」 ( 他人のために、誰かのためにと刷り込まれた思考は、当たり前にあの言葉を口にしたわけで。我儘だなんて、ちっとも思ってやしなかったのだ。小さな肩をさらに縮こませて、きみの頬から転がり落ちて行き場を無くした手を胸の前できゅうと握って、)「 死のうが生きようがどうだっていいなら、きみはなんで、ぼくをたすけたの。」「 助けなくていいのに、も。お砂糖くんにとって、わがままになる、の。」( 「 そうだね。」「 ごめんね。」その二言で話は終わりだって言うのに。そんなこと聞かなくったっていいのに。 ) ( まろびでた疑問をしまっておけない愚かなぼくは、不安げにきみを見つめて、小さく問うのだ。) (6/25 23:24:04)
シュガー>
『 ぼくが今言ったことって、その、きみにとっては『 我儘 』になる、の……? 』『死のうが生きようがどうだっていいなら、きみはなんで、ぼくをたすけたの。』『助けなくていいのに、も。お砂糖くんにとって、わがままになる、の。』彼は少しも表情を変えなかった。ただ真っ直ぐに君を見据えていた。どれだけ質問しても狼狽えもしない。血は以前出ている。本当ならこの手から力を抜いて寄り掛かりたい。でも。彼は「...お前が死んで俺だけ生き残ったら。俺だけ死んでお前が生き残ったら。それじゃああの最低なヒーロー共と一緒じゃないか...ッ!」プライドだけで膝をつくことすらできない、我儘な男である。「『我儘か?』だって?そうだ。わがままだ。俺はお前は死のうが生きようがどうでもいい。だがな、俺と一緒にいて、俺のために死にましたなんて事されるわけにはいかないんだ...っ。」彼だってまだ若い。自身の中で、揺らぐものがないかと言われればそう言うわけじゃない。だが、それでも「お前が、俺のために。俺のミスや失敗なんかを庇うために死にたいなんて言うなら。そんな我儘を言うなら。俺は絶対に、そうはさせない。」なぜならこれは「それこそが俺の、お前には越えられない「我儘」だからな。俺は俺の儘、お前に従ってもらうさ。」彼はそう言っては、ただ返事を待つその合間にも頭を少しだけ下げて限界の片鱗を見せていたのだった。 (6/26 00:13:36)
和枕 音子>
( 和枕音子は、誰かの代わりに死ぬことを求められて生まれてきた。) ( その生は誰かの死を見て見ぬふりして得た結果。その死によって誰か見知らぬ者が救われて、抜け殻になったぼくを讃えるだろう。外見も中身も誰かのために作られた、代用品。自分の意思なんて求められず。) ( ……………………そんなの、ごめんだった。) 『 お前が、俺のために。俺のミスや失敗なんかを庇うために死にたいなんて言うなら。そんな我儘を言うなら。俺は絶対に、そうはさせない。』( どうして? ) 『 それこそが俺の、お前には越えられない「我儘」だからな。』「 我儘…………。」( 反芻して、噛み砕いて、)「 お砂糖くん。」( ぐい。) ( 掴まれた肩を振りほどくように、きみの細い腕を引いた。本来ならそんな行為は無駄で、体格と力の差によって、子供のじゃれつきにしかならなかったはず。でも今は。体格は同じ。力だって言うほど変わらない。それに、きみの腕の、手の、膝の力が抜けようとしているの、気付かないほど視野は狭くなかった。だからきっと、引かれた腕に対する抵抗くらい。受け止められるかは怪しいけれど、きみの体勢を崩すくらいは出来るだろうか。) 「 ……お砂糖くん。」( 名前を、きみだけの名を、もう一度小さく口にして。) 「 ぼくが〝 生きたい 〟って願うのも、」( 死なせないとするきみに、死にたくないと頷くのも。) 「 わがままになる、のかな。」「 誰かの代わりに死ぬことを義務付けられたぼくが、生きようとするのは。」( 和枕音子は、死ぬために生まれてきた。) ( ________それでも、生きたいと願っていたのだ。) (6/26 00:50:02)
シュガー>
腕を引かれる。それだけで彼の体は最も簡単に君の方へと傾けられた。だが、まだ完全には倒れない。意地とプライド。本当に嫌になるくらいに頑固。それが彼なのだから。この状況でもまだ、彼女に体重を預けることがある種の負けであると思っているのだ。だが、幼い体ではどうしても限界があるようできっと何もしなくてももうちょっとすれば寄りかかってしまうことは君にも彼にも分かっている。『……お砂糖くん。』『ぼくが〝 生きたい 〟って願うのも、』『わがままになる、のかな。』その問いに彼はただ「我儘じゃなければ、死んでるのと変わりない。俺も、お前もな。」とだけ言うのだった。彼の我儘と君の言うわがまま。そこには少しだけの意味の違いがあるのかもしれないし、無いのかもしれない。だが、生きたいと願うのも、全てを見返したいと企むのも。どっちもわがままなことには違いないだろう。そしてそこに彼が君のわがままを否定する理由もないのもまた間違いようのないことだった。「...あ、あぁ...。なんだったか。薬局か。薬局、早く...行くぞ。」それよりも。彼はこの後に及んでもまだ。君の支えを必要とする気はないらしくその体を無理矢理にでも、力の入らない腕で君から離そうとしているのではないか。人に散々わがままと言ったこの男のわがまま以上に、わがままなものも他にはあるまい。 (6/26 01:18:48)
和枕 音子>
( こちらに寄りかかる寸前、彼は耐えた。弱った身体で耐える必要なんかなかったのに、プライドと気の強さだけで。ふらついた身体を無理に立て直したって、より辛くなるだけだって言うのに。ほんの少しの時間すら、人に頼ることを良しとしない。酷く頑なで、高すぎる自意識を持っていて、世界には自分一人しかいないみたいな口振りで。) ( うわ言のように『 薬局 』と呟いて、きみは一人で立とうとするから。) 「 ____きみって、ちょっとばかだよ、ねぇ。」 ( つい、その力無い肩に。) ( ______自らの額を、寄せてしまった。) 「 きみのわがままを大人しくきくから、さ。」「 ひとつだけ、ぼくのわがままもきいてよ。」 ( きみが離そうとした距離を無理やりに詰めて、額だけをきみと触れ合わせて。ばかだと言ったのを怒ってきみが突き返そうとするなら、何の抵抗もなく、近付いた身体は二、三歩下がるだろうけど。そしたらきっと、ちょっとだけ、悲しい顔を見せるだろうけど。) ( ぼくの小さな声は、静かな路地裏に響く。) 「 頼って、なんて無理なことは言わないけど、ね。お砂糖くん。」「 自分が怪我をしている時くらい、ぼくを顎で使ってくれると…………ぼくはうれしい、な。」( それはただ、疲労の溜まった身体で動こうとするきみを、押し留めたいがための。) ( 生きたいと願うことはわがままで、でも、きみは『 わがままじゃなければ死んでいるのと変わりない 』と言ったから。) ( これはぼくなりの、最初の一歩。 小さな小さな、産声のように。ぼくはきみに、そう、わがままを言うのだ。) (6/26 01:57:05)
ダーマル/シュガー>
「俺はカミってやつほどたちの悪いものはないと思っていたが…。」彼は相変わらず眉を顰めていた。子供になろうが、弱っていようが。不機嫌そうに。緩慢と動く口から発せられるのは、「お前のそういう我儘は、それよりも厄介かもしれんな。」なんて言葉。あくまでも上から目線で、言葉を選ばない。誰も寄せ付けないために、誰とも相容れぬために固めてきた冷たい言葉。 だけれども、この時には、この時ばかりは。この灼熱とも言えずとも、茹だるほどに暑く寂しい街中でたった一人、君にだけにしかわからぬように発した素直ではない言葉だった。 「いいか。言っておくが俺はお前に媚びるわけではないからな。お前の我儘が俺の利になる。そう思っただけだ。妙な期待はするんじゃないぞ。」それだけ言って彼は、自分の腕に額を当てる君の肩にそっと腕を回した。君が嫌がらなければ、彼の腕は君の方へとその疲弊した体と共に寄りかかるだろうか。最初は真綿よりも軽く、よそよそしく。それかちょっとだけ時間を空けてから徐々に重く。君の体にかけれるであろう体重を探るように、じっくりと。それはなんだか、ある種の配慮だとか、彼のこういった経験のなさの現れにも思えるほどに丁寧に丁寧に。きっとそれらを指摘してもなんだかんだと言い訳をして認めることがないのが彼の常ではあるのだが。彼は、君のことをガラスでできた杖にも思っているかのように少しずつ、君にその体重を預けた。そうして、数秒だか数分の時間をかけて君と彼の疲弊を分けあった頃に彼は「礼は言わないぞ。さっきの恩を返してらうんだからな。」なんてありふれるほどのごまかしを一つしておくのだった。 (9/3 15:42:15)
和枕 音子>
( 彼は素直じゃないひとだ。初対面のあの住宅街から、屋上で並び座った昼下がり、そうして日暮の鳴き始めたこの時まで、彼の言葉はひねくれたまんま。それにすっかり慣れてしまった今となっては、むしろ親しみすら感じてしまうのだ。) ( そんなぼくから言わせてもらえば、『 お前のそういう我儘は、それよりも厄介かもしれんな。』と言うきみの台詞は、悪態が一周回っていっそ分かりやすいくらいで。日が落ちると共に下がりつつある気温と、この街特有の白けた空気とのおかげで誰にも聞かれなかったことを、思わず感謝してしまったほど。) 「 妙な期待って…………なぁに、ぼくにきみが恋をしたとか、そういうもの? 」( くす、と笑みは溢れたけれど、自分の声が何だか少しばかり白々しい響きを保っていたものだから目を瞬いてしまった。肩にきみの体温を感じれば、ほんの僅かに肩を竦ませる。突然のことだったからか、はたまた突き放されるだろうかと思ったからか。) ( 額を少年らしい細い肩口へ控えめに触れさせたぼくは、正直なところ、少し怖かったのだろう。きみへ触れること。〝 自分 〟を晒すこと。誰しも初めての一歩は怖いものだ、ぼくだって例外じゃあない。拒絶されたら、なんて思考は諦観が満ち満ちた胸中にもじわりと広がっていた。覚悟をするように、く、と瞼を閉じて、) 「 ………………? 」( ──────あぁ、しかし。想定していた喪失は訪れない。代わりに与えられたのは変わらぬ体温と、徐々に重くなるきみの体重。最初は触れるか触れないかの程度、だんだん込められる力は、まるで此方を探るような。子供らしい肉体で、不器用な気遣いを彼はしていた。『 怪我をしている時くらい、ぼくを顎で使ってくれるとうれしい。』とは、自らが口にした初めてのわがままであり、きみへの甘えであったのだと、この時になってようやくぼくは理解した。) 『 礼は言わないぞ。さっきの恩を返してもらうんだからな。』「 分かっている、よ。ぼく、きみには、借りがいっぱいだもの。」( 傍から見れば抱き合ってるようにすら見えるその時間は不思議なことに、たった数秒が数分に感じられていた。行き場のなくなった手を、片方だけきみの服の裾に伸ばして、ぼくは至って何でもない風に口にするのだ。) ( ………………ただ。きみの杖になっている時間中、ぼくの歪な心臓はいつもより早いリズムを刻んでいた。理由はよく分からない。でも、きみにバレなければいいなぁと。暑さにやられたのかふわふわ揺らぐ頭で、そっと呼吸を薄くしてみたりしていた。 ) (9/3 16:33:49)
ダーマル/シュガー>
彼女は不思議な人間だ。『妙な期待って…………なぁに、ぼくにきみが恋をしたとか、そういうもの? 』だなんてことを言う。彼はこのシンプルな言葉を返すのに少しだけ迷いというものを生じすにはいられなかった。「くだらない。」それだけを不自然ではない程度の間の後に返すのが精々であった。淡い恋心だとか、そういうものにではない。ただ日暮の声の間に小さな笑いを含ませた今は同じ背丈の彼女を、その短い一言で返すにはあまりにも情が湧いてしまったように思われた。体重をかけるまでのその不安げな顔と閉じられた瞼。頼れなんて言ったがそれにしたってはか細い体。何を怖がっているかは理解できなかったが、何かに怖がっていることは理解できるその様子は、彼に先ほどの冗談めいた口調が彼女自身に対する紛らわしであることを悟らせた。覚悟もガタイも人一倍とは言い切れぬそんな彼女の姿はなによりもいじらしい。彼は自身の体重が彼女へと移りゆくその最中に、先ほどの彼女というのは〝カミよりも厄介である〟といった言葉を反芻していた。そうこうして、気づけば図書館にいた頃よりも長いかもしれなほどの時間が路地で経過した。厄介なほどに頑固な性格では、人の肩を借りるだけで時間をかけてしまうのだから。彼は君の肩を借りた後に「とりあえず、薬局に行くぞ。包帯もそうだが、これ以上ここでいたら干からびてしまう。」と言っては君の肩を借りているというのに威勢は変わらず、歩くことを試みるのだった。 (9/3 17:07:59)
和枕 音子>
( とくんとくんと胸の奥で鳴る音が、やや落ち着いた頃。ようやっと、彼の身体が離れた。それに得体の知れない名残惜しさを覚えたことを、意図的に認識しないように、滲ませないように、姿勢を変えながら『 薬局に行くぞ。』と言うきみを横目で見る。薬局くらい、一人で行けるのに。動くことが辛いなら、待っていればいいのに。誰かに頼ったり指示したりをせず、何でも自分でやってしまう様は、普段の傲慢さとはほど遠いものであるように思えて仕方がないのだった。) ( 〝 ──────そう、例えば、『 頼り方を知らない 』みたいな…………。〟 )( そんなことを言ったら、きみは貸した肩を振り払ってしまうだろうから黙ったままで。せっかく、ちょっとだけでもきみの役に立てているのに、それをつつくのは不粋ってものだ。) 「 今ばかりは、きみの背丈がぼくと同じくらいになっていて、良かったと思うよ。いつもの身長だったら、べしゃりと潰されて終わりだもの、ね。」( まぁ、そもそも子供になんてならなかったら、落ちてくる看板からぼくを守って怪我なんかしなかったのだろうけど。)
( 慣れない重さに四苦八苦しつつ、ぼくはきみを引いて──正しくは、先に進もうとするきみに引かれてだが──隣の薬局へ向かった。相当大きな音を立てて看板が落ちたはずなのに、通りでは一切の騒ぎは起こっておらず。どうにも不気味であるのだった。) ( 自動ドアは静かに開き、顔面に吹き付けたのはクーラーによる冷気。店内を覗いても人の気配は無かったことを幸いと、棚の間をよたよた練り歩いては包帯とガーゼ、消毒液などを手に取った。包帯だけでいいときみが異論を唱えたとしても、ぼくは相槌を残して知らん振りしたことだろう。 レジに立っていたのはいかにもやる気無さげな男性。地面を滑ったことで若干薄汚れた子供二人を怪訝そうに見やったのも一瞬で、関わり合いになりたくないのか、すぐに仕事へ戻っていく。問題なく買い物を終えれば、片側にレジ袋、片側にきみを連れたって再び地獄のような暑さに身を曝すのだ。) 「 …………手当したいけど、してるうちに次は熱中症になりそうだ、ね。これ。」( 店内で見た時計はぴったり18時を指していた。暮れ始めた太陽はやがて地平線の向こうへ姿を消すだろうが、その前に地面に伏すのはぼくらだろう。もっと言うとお砂糖くんだろう。190センチの身体と、150センチの身体では暑さの感じ方はまるきり違っている。何せ熱を放つコンクリートがすぐ近くにあるのだから。) ( ぐぐ、と眉を寄せながら、ぼくは当の本人へ「 どうする、きみのおうちってここから近い? 」と問いを投げた。 ) (9/3 17:57:31)
ダーマル/シュガー>
そこからは早かった。停滞していたからだろうか薬局でものを買って出てくる。そのなんでもないような行為もいつもよりも忙しなく感じていた。それはただの気のせいというよりか、彼が小さくなったことで物事のスケールというもの自体が大きくなってしまったから、と理由づける方が早い。店内で「包帯だけで良い。」と断ったはずなのに消毒液を知らない間に買っていた時はいつもよりも眉を歪めずにはいられなかったが、妙に小競り合いになって店員に目をつけられるのも無駄な時間を過ごすのも彼としては受け入れ難く黙認することとなっていた。君という人間はやはり不思議である。あんなにも怖がっている素振りを見せていたというのにも関わらず、今度は彼の意見を何食わぬ顔で押し切ったのだ。その二面性に彼はどうも弱いというか、対応できないようで割れ物の如く扱うべきか肝が据わっている人間だとしてもっとぶっきらに扱って良いものか時折にして悩むのであった。彼の、本来ならば流されず、我の儘を押し通す彼の心が、である。さて、そんな和気藹々とは程遠い、されど気の緩むような時の先に待っていたのはやはり衰えぬ炎天であった。 「 …………手当したいけど、してるうちに次は熱中症になりそうだ、ね。これ。」と君は言った。そこに続くようにして彼が「あぁ。」とだけ短く返した。その上の空の返事は疲労によるものか、それともさらにここからどうするかを考え込んでいるからなのか。ただ、彼からなんらかの発言がもたらされることはなかった。ただ目を動かしては回り切らない頭で考えているようであった。 「どうする、きみのおうちってここから近い? 」しかし、その沈黙は彼からではなく君からの質問によって砕かれる。彼はその質問を聞いては何度か目玉を回して考えた後に、「近くにある。ここから15はかからないだろう。」と言った。そして、続け様に「とりあえずそっちを目指すか。どうせ、俺以外に人がいるわけでもない。」と独り言のように言った。どうやら君が尋ねたその時点で彼は自身の家へと向かうことに決めてしまったようだった。彼はほんの少し、また間を開ける。しかし、今度は考えているというよりも、歯をほんの強く噛み締めて迷っているようだった。沈黙というには短く、会話の間よりは長い間、彼は悩んだ。そしてついには君がその不自然に黙りこくった彼に何かを言おうとする前に「お前は、歩けるか?ここでお前に欠けられたら都合が悪い。」と、彼なりに心配、というものを一つしてみるのであった。 (9/3 19:00:51)
和枕 音子>
( ところで今は、8月だろうか、7月だろうか。そんな他愛のない疑問が頭をよぎる。7月であれば完全に日が落ちるのは19時前後、8月になれば18時前に落ちることもあるだろう。ぼくらを茹であげんとする日差しがあとどれくらいでなりを潜めるのか、月日から読み取ろうとでも思ったのだが、生憎周りに電光掲示板やカレンダーの姿は無いのである。ここから15分も掛からない場所にきみの自宅があるのならば、恐らくぼくたちが目的地へ到達する方が速いはずだった。) ( どこか上の空めいた口振りで相槌をうった彼は、そのままの調子で言葉を綴る。『 俺以外に人がいるわけでもない。』と言うのは、一人暮らしということだろうか。12、3歳の子が? 疑問とは、一度浮かび上がると次から次へと主張を始めるものと相場が決まっている。図書館で彼の前に広がっていたドリルや教科書たち、くたびれの見える服に、決して真新しくはない包帯。彼の教えてくれたこの街の在り方と、人の視線に込められた疎外の滲む敵意。) ( ずっと、不思議に思っていたこと。) ( ──────────『 ヒーローが憎い 』と言うのなら、どうしてきみはヒーローになろうとしているの? ) ( 喉元までせり上げたそれは、きっと、ただきみのことが知りたいというだけの。) 『 お前は、』( ごくり。間一髪のところで、ぼくは余計な疑問の欠片たちを飲み込んだ。) 『 歩けるか?ここでお前に欠けられたら都合が悪い。』( ぼくが好奇心と知識欲の中で揺蕩っている間、きみは不可解そうに黙りこくっていて、そうして落とされたのがそんな言葉であった。めずらしい、と。ゆるり、ぼくは小首を傾ける。結った灰桃色がきみの手に、ぼくの肩に掛かっては音もなく落ちていく。) 「 ぼ、くは、」( 少しだけ声が上擦って、咳払いをひとつかふたつ。)「 ぼくは、別に。だいじょうぶだよ。」「 一応これでも、ちゃんとみんなと同じカリキュラムをこなしているから、ね? …………眠気さえなければ、特に問題はないんだ、よ。 」( その眠気も、薬を飲んだのは2時間ほど前にも関わらず綺麗さっぱりである。つまりは元気はつらつ。暑さによって多少コンディションが落ち込んではいるけれど。呟くように答え、こちらもまた沈黙を少々。ちょっとだけ悩んで、ちらり、少年に視線を投げる。)「 ………………、……ありがとう、ね。お砂糖くん。」( 蜂蜜色に揺らぐ瞳の奥。きみの言葉は意外なほど分かりやすいのに、きみの表情は随分と内心を隠すのに長けているらしかった。今の疑問符が心配であることは分かったのに、どうして心配したかは1ミリだって分かりやしないんだもの。) (9/3 19:47:36)
ダーマル/シュガー>
『ぼくは、別に。だいじょうぶだよ。』『 一応これでも、ちゃんとみんなと同じカリキュラムをこなしているから、ね? …………眠気さえなければ、特に問題はないんだ、よ。 』「そうか。なら歩けるな。」気まずかった。慣れないことをするものではないのだと心から痛み入る。君の沈黙もまた同じ。妙に心配してしまっていることになんとも言えない違和感を感じているのかそれとも単に話題に困っているのか。どちらかどうかは彼からで走るよしがないのがまた、苦しかった。彼女の桃色の髪の毛や自分と似た色の、それでも自分のものよりも輝いて見える琥珀色の瞳は目に余るほどにわかるが、彼女の気心が知れないのがなんとも居心地の悪い。そんなことを気にしている己のこともなんだか似合わないと思えてきてまた、妙な気持ちであった。「 ………………、……ありがとう、ね。お砂糖くん。」そんな言葉にも彼は「礼を言われる筋合いはない。無理に移動して怪我でもされたらそれこそ致命的だ。」なんて誤魔化しと合理で埋め尽くした言葉を返してしまうのであった。彼はそれ以上この二人の間に確かに存在した、歯切れの悪い空気感を断ち切るように「よし。」と低く唸るように言ってから「じゃあ、歩くぞ。事は早いに限る。」と言い出しては彼の家への道を歩もうとするのであった。幸いして、彼の家までは特段の坂道だとか舗装されてない道だとかはなかった。むしろ、寒々しいほどまでに静かな路地と、確かに小綺麗な道だのに道ゆく人間からは余裕だとか、温かみだとかを感じない。そんな街並みが二人の周りに広がっているのみである。薄暗い路地と人の少ない大きな道。そこに歩くのはあまりにも頼りない少しだけ汚れた服を着る二人の小さい人間だけだろうか。日暮だけが街に声を落とし、賑わいを持たせているがその実この町というのは小綺麗な廃墟とあまりに違いがなかった。 (9/3 20:38:34)
和枕 音子>
( 『 礼を言われる筋合いはない。』と、きみは相も変わらずぶっきらぼうだ。普段通りに冷たいとすら言える態度にも、ほうっと、安堵らしい何かを覚えてしまうのだから我ながら困ったものである。低く、地を這うような唸りを発したきみには仏頂面とか傲慢に胸を張った姿とか、そういうのがやっぱり似合っているから、ぼくはきみに心配をかけないようにしたいと。背中を預けられような、なんておこがましく無作法なことは望まないから、もし、きみがよろけてしまった時、それに誰も気が付かなかった時、大きな背中を押さえてあげられればと。彼の示す方へ足を進めながら、ふと思うのであった。) ( ……………………この感情は果たして、何と名付けるべきなのか。それだけは、いつまで経ったって不透明なままだけれど。 )「 …………ひと、すくない、ねぇ。」( 呟きの通り、ぼくの声を耳にする者は隣のお砂糖くんと、1人2人すれ違った街の人間とだけ。数少ない住人に至っては、死んだような顔で斜め下を見つめながら歩いていくから、きっとぼくらの小さな姿形なんか目にも留まっていないのだろう。道端に雑草の少しすら生えておらず、野良猫は薄暗い路地裏から出てこようとしない。2人を挟む住宅たちは白白しい明かりが漏れてはいたが、そこに生活感や団欒の気配なんかは存在しないみたいで。) ( それは、異様な空気であったろう。まるで、この世界に生きている者はぼくらだけだと言わんばかりじゃあないか。 ) ( ──────────── 一瞬。研究所の真っ白けな廊下と、こちらを見下ろす鉱石に似た無数の目がフラッシュバックして、微妙に空いたきみとぼくとの距離をさりげなく詰めた。肩が、服の裾が僅かに触れる。)( お砂糖くんの家まで行く道のりは平坦で、音がなくて。もう数分歩めば到着するであろう旅路が永遠に続く気さえして、それ故にこの沈黙に耐えられなかった。「 き、みは、さ。」掠れた喉を聞かないふりして、きみの顔を見ないふりして、張り詰めそうになる吐息を隠しながら口を開く。 ) 「 …………どうして、ヒーローになろうと思った、の。」( 選ばれた問いは、さっき一度捨てられたそれ。出来うる限り雑談に聞こえるように、好奇心からの問いかけであると思われるように、表情とは裏腹に声だけは明るさを保って。 ) (9/3 21:24:42)
ダーマル/シュガー>
「 …………ひと、すくない、ねぇ。」「まぁな。」彼は短くしか答えなかった。そこに何かの感情を感じられないほどに冷静であった。意図しての冷静さか、それともそこには本当に語るにも値しないのか。やはり彼は、表情やら感情を隠すということを意図せずにもできてしまうらしかった。彼の時折吐く深い息と、足音。それと彼女の体温。五月蝿いはずの日暮の声は頭が遠く遠くに追いやって気にはならなかった。二人が進む、小綺麗で、何もない道。知りきってる、見飽きた、されどどこか違和感を感じてしまう道。そんな道では恐怖こそ感じないが不安ではあった。心なしか君と彼。その肩と肩が触れる程度に近づけられたのは偶然であろうか。「 …………どうして、ヒーローになろうと思った、の。」いきなりであった。本当にいきなり、そのようなことを尋ねられた。その声は高くて、楽しげで。されど、彼の耳には一際、はちきれんばかりの何かがあるように感ぜられた。彼が普段から他者を疑っているがために身についてしまった観察であった。だから、彼もこの質問を、普段ならば教えるはずもなく一蹴するところであったが今ここでそれをできるほど彼も無粋な人間でもなかった。いいや、実のところはそんな事はどうでもいいのかも知れない。粋だとか損なのではなくて彼女だからどこか話してもいいように思われたのかも知れなかった。「俺は…そうだな。」おもおもしく口を開く、されど決して止まることもしない。彼は続ける。「俺は別にヒーローになりたいわけじゃない。あの屑どもと一緒にいるのも御免だ。正義だとかにも興味がない。」「…ただ。あの屑どもがいなくれば……本当に認めたくもないが……カミサマはどうしようもなくなる。」「ならばだ。まずはヒーローどもの仕事を終わらせるしかない。あいつらを必ず〝支配〟すると決めた以上。俺はあいつらに頼るわけにもいかないからな。」と。今の彼は比較的冷静な語り口調であった。激昂もしないし、変にネガティヴなわけでもない。ただただ冷静に、自身がヒーローにはなりたくてなっているんじゃないこと。その上で、ヒーローを越え、支配するためにはヒーローの仕事をヒーローに頼らないでできなければ敵わない。彼はそう考えているようであった。 (9/3 23:24:05)
和枕 音子>
( 短い返答に異を唱えたり、不満の眼差しを向けることはなかった。何故ならば、無意識で彼との距離を近付けていたことに、肩がとんと当たってようやく気付いたからだった。沈黙に耐えかねた故に口にした感想であったし、元から深い応答を望んでいたわけではなかったからだった。) ( 『 そうだな。』と、思案を覗かせたきみを見上げることは、真意に気付かれてしまいそうで控えてしまう。前を見るでもなく、さりとて俯くでもなく、右斜めの道脇を囲う塀の穴なんかをぼうっと見て、ぼくはきみの言葉を待った。) 『 俺は別にヒーローになりたいわけじゃない。』( しばし後。重さの増えた声で、しかしつっかえることもない滑らかな響きで、彼は語り出した。) 『 あの屑どもがいなくればカミサマはどうしようもなくなる。』 『 あいつらを必ず〝支配〟すると決めた以上。俺はあいつらに頼るわけにもいかないからな。』 ( 訥々と口を開くきみを右肩に感じながら、ぼくは邪魔をしないようゆっっくりと息を吐いていた。) ( …………正直なところ、意外だったのだ。『 お前は俺に名前を〝話させる〟だけの何かを持っているのか? 』──────と、お砂糖くんは以前、そう言ってぼくを拒んだ。ぼくが彼を愛称で呼ぶのは愛情や友情の現れなんかではなく、ただ、〝 名前を知らない 〟からである。もちろん、ぼくにはきみに何かをさせるための手札も与えられる報酬も、持っていないと分かっていて。だからこそ、今、きみが不快を顔に出さず、ぼくの疑問に答えてくれていることが驚きであり、むしろ違和感ですらあったのだ。)「 …………意外だ、なぁ。答えてくれるなんて、思っていなかった、から。」( それは、意図せず言葉となって口から漏れる。) 「 でも、そうか。普段のきみは、何でも出来て当然、当たり前、努力などしていません……って顔をしているけど、」「 ──────────やっぱり、随分と努力家なんだ、ねぇ。」( 〝 努力 〟と言う単語に篭る感情は決して良いものとは言えなかったけれど、それでも全体を見れば、穏やかで、とろりと蕩ける蜂蜜のような声音であったろう。) ( 努力家、もしくは負けず嫌い。ひねくれた反骨精神の塊。そういうもの全てを〝 自分のため 〟と言うだろうきみが、きみのことが。) 「 すごいね、お砂糖くんは。…………ぼくとは、大違い。」( 尊敬と一方的な信頼と、よく分からないあたたかさとで胸中が掻き乱され、ぎゅうと心臓が締め付けられるから。)( ──────────────いっそのこと、憎らしく思えたなら良かったのに、なんておもうのだった。) (9/4 00:13:42)
ダーマル/シュガー>
「 …………意外だ、なぁ。答えてくれるなんて、思っていなかった、から。」「気が乗っただけだ。」彼は特に理由を述べることはしなかった。というよりかはなんと言っていいかわからなかった、という方が正しいのだろうけど。「 でも、そうか。普段のきみは、何でも出来て当然、当たり前、努力などしていません……って顔をしているけど、」「 ──────────やっぱり、随分と努力家なんだ、ねぇ。」君は呑気に、されど滲むような淡い淡い感情をその背後に忍ばせていうのだ。だが、その言葉を彼は「興味もないがな。俺にできることだけだ。」容易に切り捨ててしまうのだった。彼は決して君の気持ちを知っていても、知らなくても。それがどんなに弛まぬ努力だろうと、それも全て『自分の能力』という一言に収める以上にしようとはしなかった。彼のような人間が、君のような人間にとってどれほど痛ましくあるのか、どれほど悩ましくあるのか。そんなことを考えれるには彼はまだまだ若すぎるのだ。君のその切ない思いを汲み取れたなら、そのような力が彼にあったら。彼は今のような反骨精神と疑心で武装した人間になんてならなかったのかも知れない。「 すごいね、お砂糖くんは。…………ぼくとは、大違い。」「だろうな。俺とお前は別人だ。比べたって、どうにもならない。」彼の口から出るのはそんな冷酷な事実である。恨んでしまうことも、嫌うこともできない卑怯な事実。彼はそんなことしか言えなかった。そして、今まさに感傷しているだろうという君にかける言葉もまた彼にはいまだになかった。君の切ない思いも、行動も。まだ彼に咀嚼するには早すぎるものななおかも知れない。彼に家まではもうそこまではない。短くて静かなこの何もない道と別れるのももう少しであった。 (9/4 00:54:08)
和枕 音子>
( 授業もとっくに終了し、人気の少なくなった三階A棟の廊下。開け放たれた窓からは校庭を駆け回る楽しそうな声、たまに素っ頓狂な音を鳴らす管楽器の響きなんかが飛び込んできて、至って平和一色な夕暮れ。オレンジ色に染まった、そのど真ん中を突っ切るように__________〝 本の塔 〟が、歩いていた。 ) 「 と、…………とっと、と……。 」 ( 本の塔。正しくは大小様々な書籍の山。積み重なったそれらが、右にふらふら左にふらふら、大変危なっかしい様子である。日本語、た行の最後尾に位置する一単語を鳴き声としながら、山は前進を続けるだろう。) ( きゅっきゅっきゅ。よたよたよた。) ( 音だけは軽快に、歩みは遅く。牛歩よりも更に小さな足取りはやがて廊下の先、階段を降りるべく左に方向転換し、)「 _____________ぅ、わぁッ!! 」( 衝撃。大きな音をたてて辺り一帯に散らばる冊子たち。ぼくは勢いよく尻もちをつく。階段を登ってきただれかにぶつかったようだ。名も知らぬきみからしたら、目の前にいきなり山が現れて。それが崩れた次の場面では、ちんまりとした女が床に転がっているように思えたかもしれない。平均よりも小さな身体がぶつかった振動なんて、きみには微々たるものだろうから。 痛む臀部に意識の半分くらいを吸われながら、慌てて ( 傍目から見れば、実におっとりとした動作であった ) 立ちはだかった何某かを見上げる。) 「 ごめん、えっと、前が見えてなくって…………。 」 (6/6 22:22:59)
ネヴェルヴァ・S・イグリア>
(__放課後。夕方とだけあって教室の中は涼しく、しん、としている。そんな教室の中に一人…彩度、声共に騒がしい少年が一人。)「〜〜〜〜〜〜ッ、ハァ〜ァ、友達もセンパイも帰っちまったし、どーーーするかなぁ…(まだ帰りたくねぇ、なんて皆にも聞こえるくらいの声で呟きながら、動きも大きく。)(_____と、束の間。)(グシャ、ドタン!!なんて大きな音が立つ。何事か__)「…おい!あぶねぇじゃない、か……?」(前を見ると小さな少女、周りに散らばるは本の群れ。)「…ぁ…ごめんッッッ!!!!!ま、前を向いて歩いてなかった、ッというかその本の量、一人じゃ流石に無理があるんじゃねぇか……?おっオレが手伝ってやるから!」(咄嗟にそこに散らばる本から数冊、彼女のほうが自分より体力が持たない事を見越して半分より多めに拾い上げる。)「…本って事は目的地は図書室か?オレ、あんまし行ったことねぇんだよな…それとも…?」(ここで一つ、少年は重大な勘違いをしている。)(彼女は後輩でも、ましてや同級生でもない。___『センパイ』だ。) (6/6 23:05:49)
和枕 音子>
『 …ぁ…ごめんッッッ!!!!!ま、前を向いて歩いてなかった、ッというかその本の量、一人じゃ流石に無理があるんじゃねぇか……?おっオレが手伝ってやるから!』「 ぅ、えっと、いや、えぇ…………。」( 騒がしい、男の子だった。夕焼けよりも赤赤とした髪、熱意と情熱に溢れた眼差し。声だけじゃなく、その容姿すら熱く、人目を引くような子。ぼくがぽけ……と口を開けて眺めている隙に、彼は散らばった本を拾い集める。動きも素早く、口を挟む暇すらなかった。)『…本って事は目的地は図書室か?オレ、あんまし行ったことねぇんだよな…それとも…?』( 疑問符を浮かべる少年は、既に目的地の設定を済ませようとしていて。こちらの意見なんか良い意味で聞く気がないみたいだった。) 「 んんっ。」( 慣れない咳払いは、ただ『 ん 』の音を連続で発しただけに留まる。) 「 ……その、実際重たいし前は見えないしで大変だったから、手伝ってくれるのはたすかる、よ。」「 行先はきみの言うとおり図書室。授業で本を借りたんだけど、その最中に寝ていたからって返却を一人でやれって。」( ひどい話だよねぇ、なんて淡々と語りながら、初めより少なくなった本を抱きかかえる。きみは律儀にも、半分よりちょっと偏った数を拾い上げたらしい。よろけながらも立ち上がり、再びきみの顔を見上げる。) ( 図書室は一階だ。階段を降りるように顎をくい、と動かして。) 「 ごめんね。たすけてくれる? 」 (6/6 23:33:17)
ネヴェルヴァ・S・イグリア>
「大丈夫!!!なんたってオレは〜〜〜〜ッ、ヒーローになる男ッ!!!困ってる人は見過ごしておけねーぜ!」(ニカ、と君に全力の笑顔を見せた後、お〜っし、と一声、本を抱えて立ち上がる。)「っとと、結構重いな…?こんなのを一人で運ばせるなんてたまったモンじゃないぜ…?まったくひでーなぁ…(大変だったな、そう言うように相槌を打ち。)…それにしてもコレを全部借りて読もうとするお前もすげーなぁ、全く尊敬するぜ、オレだったらきっと一冊で済ませちまうな。いつもはマンガしか読まねーんだ…あ!そーいや名前、聞いてなかったな!オレはシュート、『ネヴェルヴァ・シュート・イグリア』!名前が無駄に長っげーから皆からはシュートって呼ばれてるんだ、よろしくな!」(…と、ひたすら君に喋りかけた後。)「…っやっべ!オレばっかし喋ってるじゃん!!すまねぇえ…(二度目の謝罪、いつもはなんにも気にしてないような彼だが人と話すときだけ現れる、他人に向けてのみ発動する心配性。)(そんな事を喋っているうちにきっと図書室に着くだろう。…その膨大な数な本に圧倒され。)「ひぇえ…こんなにいっぱいある中からこれだけ選んでるのか!?どこにあるかなんて覚えれそうにもないぜ…なぁお前は覚えてるのか?」(そう、おそるおそる君に問いかける。) (6/6 23:55:56)
和枕 音子>
( よく、 ) ( 本当によく喋るなと、思った。元気で賑やかで、人への優しさを忘れない、想像上創作上の〝 ヒーロー 〟みたいな。この学校に生徒多かれど、根っから英雄染みた人間もなかなかいないだろうに。マシンガントークにも似た君の話にうんうん頷いているうちに、話題はころころくるくる変わっていってしまって。せっかくしてくれた、きみの自己紹介にこちらが返す暇すらない。元から話すのは苦手だったから、会話に上手いこと口を挟むコツとか、主導権をさりげなく取る方法とか、ぼくはよく知らないのだ。ちょっとだけ困った顔をする。)『 …っやっべ!オレばっかし喋ってるじゃん!!すまねぇえ… 』「 ぅ、えっ。」( だから、きみが突然しょんもりとしたのに驚いて、少なくなった本を取り落とし掛けたりする。目の前には早くも図書室が見えているというのに、未だに実のある話ひとつ出来てやしない。開け放たれた扉から一歩足を踏み入れるなり、隣の少年は、 ) 『 ひぇえ…こんなにいっぱいある中からこれだけ選んでるのか!?』( なんて、素っ頓狂な声をあげるのだから、思わず貸出カウンターをチラ見した。教員も図書委員もいない。咎める者はいなさそうだ。少しだけほっとして、目当ての本棚へ少年____シュートくんを誘いつつ、返事をする。)「 まぁ、だいたいは……。どこの棚に、どんなジャンルの本があるかってことを覚えると、たぶん簡単……だとおもう。うん。」( 着いた本棚に元通りになるよう背表紙を並べ、ふと先程の話を思い返した。) 「 和枕音子、2年。」「 あの、名前…………。言えてなかった、から。」( 唐突な切り出しだったけれど、それくらいじゃないといつまでも言えなそうだったから。ぼくは告げるだけ告げて、きみの抱えた本の中から一冊抜き取っては、元あった場所に返していくのだ。) (6/11 14:41:16)
ネヴェルヴァ・S・イグリア>
「へぇえーッ、なぁるほどな…?じゃんる…ってこの『生物』だとか『世界史』だとかそんな所…か…っうへぇえ…頭痛くなってきそうだぜ…なんかこう__ヒーローの歴史?みてーなのがあったらオレでもきっと読めるはずなんだけどなー?」(と、体育、家庭科などの実技以外を少々__いや、かなり苦手とする彼は言う。)「なまくらねいこ…ちゃ、いや!えっッッッッッセンパイ!!?!?!?!??!っいッ、(ここで今更ながらに図書室は大声禁止という張り紙を見つけ、)な、ナンデモナイデス…スミマセン…」(なんて咄嗟に声のボリュームを落とす。)(…ここからはこそこそ、とした声で。)「…は、気づかずこっちからべらべら喋っちまって…すんません、えっと…和倉センパイ。」(といっても一歳差ではあるが。)「…つ、次のこの本はどこ、っすかね、(と、さっきの動揺をなんとか収めるように話す。)(元の場所がわからないからせめて、彼女の隣を歩き言われたままに本を差し出していく。)…あの、(本を手渡しながらふいに、素朴な質問を投げかけるのだ。)…和倉センパイはヒーローって、好きですか。っいや、無理やりに好きです!って言わせようとしてるんじゃなくって、嫌いなら嫌いでいいんだけど、っですが。(好きなものの話につい熱が入りそうになり喋り方を直す。)…オレ、誰かを助けるヒーローになりたいんです。ヒーローになるために此処に来たんです。人のために戦う、ってカッコいいなぁって!でも、こうやって早とちりばっかりしちゃって…」(今は確かに『ヒーロー』だ。…でも、それは突然与えられた物であり、この状況だってあの日みたいにいつ終わってしまうかわからない。) (6/11 15:24:25)
和枕 音子>
『 なまくらねいこ…ちゃ、いや!えっッッッッッセンパイ!!?!?!?!??! 』( 『 ちゃん 』と呼びかけて、ようやくこちらが学年的に一個上であることに気付いたようだった。驚きはしない。ぼくはこのちいさな身なりだ、勘違いするのも致し方ないだろう。 ) 『 すんません、えっと…和枕センパイ。』「 いいよ別に。ぼく堅苦しいの嫌いだし…………。そうやって、苦手な敬語とか使って窮屈になってるの、やりにくそうで、見たくもない……し。」「 だから、好きにしゃべりなよ。居眠りの邪魔とかしなければ、ぼくはなんにも気にしない。」( 言うだけ言って、けれど強制する気は毛頭なかった。ぼくの言葉はあくまで『 自分の意見 』であって、きみのしたいこと、しようと思ったことをわざわざ変えるものではないのだから。)( 本棚の隙間を縫うように歩く。きみから本を受け取っては、ぽっかり空いた本と本の間に差し込んで。その繰り返しの最中、きみは『 …あの、 』とちいさな声を挙げた。 ) 『 …和枕センパイはヒーローって、好きですか。』「 ……ヒーロー? 」『 …オレ、誰かを助けるヒーローになりたいんです。』『 でも、こうやって早とちりばっかりしちゃって…。』( そこまで言って、彼は口を噤んだ。____どうしたものかなぁ。) 「 早とちり、ときみは言うけれどね。それは、ひとに感情移入ができたり、言葉を真っ直ぐ捉えることができるとか……そういう、利点であると思うんだ。」「 悪いことばっかりじゃない。いいじゃないか。〝 正義の味方 〟らしくって。」( なんて詭弁、なんて上っ面。それでも、掛けた言葉は嘘じゃない。 )「 ぼくはヒーローがきらいだよ。」( みんながみんな。努力すれば何でもできる、みたいな顔をして。世界には幸せが溢れているみたいな顔をして。生きることが最前で、死ぬことは悪だなんて言って。どんな環境でも生きていれば__なんて、くだらない綺麗事だ。) 「 最近、廃病棟で失踪騒ぎがあったんだって、ね。知ってる?知らないかな。」「 それ、ちょっとだけ小耳に挟んだんだけど、『 死にたい人を止めるなんて、馬鹿なことをするんだなぁ 』って思ったんだ。」( パタン。) ( ゆったりと進めていた歩みを止めて。きみの抱えた最後の一冊______『 ヒーローについて 』を、本棚に返す。きみが本の題名に気付いてちょっと視線を上向けたなら、気付くだろう。そこは、歴代ヒーローやその歴史を綴った本が置かれた場所だと言うことに。) 「 ……馬鹿だけど、偽善だなって思うけど、なりたいなんて思ってもないけれど。 」「 何を考えているのか、すこしくらい、理解しようとしてみてもいいかなって。」( 「 そう思うようになった。」と締め括って、こちらも言葉を閉じる。語りすぎた。ヒーローを好きだって胸を張って言えないことを、自分の好きなものを嫌いと言われたことを、きみがどう思うか。それだけ少しばかり、気になってしまったりしているのだ。) (6/11 16:21:43)
ネヴェルヴァ・S・イグリア>
「やッ、和倉__さん、(力を抜いて喋ろうとするもやはり敬語は取れないようだ。)(真っ直ぐ捉える事。この真っ直ぐさはヒーロー『だった』父の意志。…正義の味方、らしい。…それで本当に良いのだろうか。まだオレにはその『らしい』が本当に正しいのかわかっていない。)『 ぼくはヒーローがきらいだよ。』(…そんな彼女の答えに。)「…ですか、(反対されても良いようにある程度覚悟はしたもののやっぱりちょっと寂しい。)いや、でもオレは否定しません、だって、だって、…バカなオレにはわかんないんですけど、……世界には心から本当に死にたい、死んで楽になりたい、って思ってる人も何人か居て。それこそ__和倉さんが言う廃病院のそれみたいに。…オレは人の気持ちなんてこれっぽっちも読めない。けど。(少年は、グッと拳を握りしめながら言うのだ。)……そんな気持ちを少しでも変えれたらいいな、って思うんです。それこそ綺麗事って言われちゃいそうだけど。」(今までだって、先生だったり、友達だったり、周囲から反対されたことだってあった。…でも。)(この受け継いだ志を捨てるわけにはいかない。)「…ぉあ、いろいろ喋っちゃったな、(…此処は先程から言うように図書室だ。だんだんと声のトーンも大きくなってしまっていて。もし、この会話を先生が聞いてでもしたら後できっちり叱られてしまうだろう。)(窓の外の景色も暮れ、そろそろ学校も閉まる頃。)…きょ、今日はありがとうございます、勝手にいろいろ話しちゃって…(先程の真剣な顔から一変、表情をへらり、としたものに戻し。頭をポリポリと掻きながら、こう続ける。)あっあと!この本__『ヒーローについて』。オレも借りて良いっすか、ね…読みきれるかはわかんないけど、ちょっと気になって。(読書家への第一歩。…いや、きっと彼なら三日坊主になってしまうのだがオチなのだが。)…もうちょっと、考えてみます。和倉センパイ!(そう言って笑顔で返すだろう。)(本当の英雄とは。ヒーローとは。彼は、彼女は、まだ始まったばかりなのである。)(ちっぽけな英雄は考える。__誰も居なくならない、誰も悲しまない、喜劇的な『ハッピーエンド』を迎えるために。) (6/11 17:14:55)
和枕 音子>
『 いや、でもオレは否定しません。』( ぼくの言葉を受けてやや寂しそうな顔色を見せたきみは、しかし、手をぐっと握りしめて口を開く。きっとあんまり、むずかしいことを喋るのは得意でないのだ。必死に頭をまわして、面倒くさいぼくの、面倒くさい台詞に返答しようと考えてくれているのだと、分かって。) 『 …そんな気持ちを少しでも変えれたらいいな、って思うんです。それこそ綺麗事って言われちゃいそうだけど。』「 綺麗事だねぇ。でも、綺麗事だからって全てが悪いことな訳ではないから。」( いいよって言ったのに、それでもちゃんと敬語を使おうとする真面目なきみは、これからもいっぱい苦労をしていくはずだ。不真面目なぼくには想像し得ない出来事にだって、今日のように真っ直ぐ突き進もうとするんだろう。 )「 変えたいのなら、いっぱいいっぱい考えること、だ。前に前にって走っている時も考えることは出来る。…………ぼくは努力がきらいだけれど、たぶんきみには努力が似合う。」「 ちゃんと努力して、ちゃんとがんばれる子だ、シュートくんは。」( 窓の外はすっかり群青で、時間の感覚があまり無かったけれど、随分と長い間一緒にいたみたいだ。きみが指した本を見て、明るい笑顔を見て、) 「 ……うん、貸出処理はぼくがしておく、よ。 」「 そして、もし。もし良かったら。」「 ___________感想、聞かせてくれると嬉しい、な。」( 初めて、ぼくは薄らと笑みを浮かべた。今日のお礼と、きみの旅路を見送るためと、色んな意味が込められた笑みは、きみにどう映ったろうか。 ) 「 シュートくん。見つかるといいね。〝 き み の ヒ ー ロ ー 〟が。」 (6/11 17:49:40)
和枕 音子>
「 あー……………散々だ、もう。」( 呟き。あの後すぐに駆けつけたジファニー先生は酷く微妙な顔をして『 解散だ解散! 』なんて言った。遊園地に着いた時、彼女が一も二もなく真っ先に駆けて行ったことを考えると、たぶん、遊びの邪魔をされたのが一番腹立たしかったのではないか。それでも言う通りにその場を離れ、さぁこの後はどうする____と、背後をちらり、振り返った。) 「 きみ、えっと、さっき立ち塞がってくれた子……だよ、ね。」 ( ぼくの背後を歩いていたのなら、きっときみも帰ろうとしているんじゃないか。だってこの先には出入口のゲートしかないんだから。) 「 たすかった。ぼくは戦闘……お世辞にもできるとは言い難い、から。」( 後ろ向きに歩きながら、きみへ礼の言葉を。探索途中に、彼女からグループラインへ連絡が来ていたことを知っている。きっと今日も遊びもせずにパトロールに励んでいたのだろう。) ( ふと、ほんのちょっとだけ、ある意味意地の悪い考えが鎌首をもたげた。) 「 きみさ、もしかして、遊園地とか慣れてない? 駆けつけてくれたときもひとりだったみたいだし…………何すればいいか、わからなくてパトロールをしていた、とか。」> エレナさん (6/11 01:02:05)
エレナ・ドラグノフ>
遊園地で何をしたらいいか分からない。痛いところを突いてくるなと心から思う。はい、悔しいけどその通りドンピシャで正解。クイズ番組なら多分盛り上がるところ_____『ああ、まあ確かにな。学生として遊べなんて言われても、別に普段から楽しくない訳でもないし……。息抜きをしろって言われても、正直何か無理をしているつもりなんてないからな。』無理をしなければ休む必要もない。だって別に、自分が出来ないことをしてなんていないのだから。だから、先生からたまには遊ぶようになんて言われても、ただひたすら遊具に乗るだとかそんなのはともかく。本旨通りに気を抜いて遊ぶとか、気分転換をするなんて方向では、何をしたらいいかなんて浮かばない。繰り返すが、別にそんなものは必要ないんだし。『……と、忘れてた。別に戦うのだって、そんなに嫌なことでも大変なことなんかでもないぞ。やらなきゃいけないし、それが誰かのためになるなら、それでいい。だから、そんなふうに申し訳ない言い方なんて、しなくたっていい。』 (6/11 01:10:57)
和枕 音子>
『 息抜きをしろって言われても、正直何か無理をしているつもりなんてないからな。』「 無理の値はひとそれぞれ…………か。」( 彼女はそれを、至極当然とばかりに言う。彼女にとってはそれは当たり前、自分に出来ることをしているだけで、普通のことなのだろうけれど。〝 ヒーロー 〟としては最良。ただ。) ( 単なる〝 女子高生 〟 としては________。) 『 そんなふうに申し訳ない言い方なんて、しなくたっていい。』「 そう?まぁ、一応の礼儀だよ。受け取って。」「 あと、ねぇ、きみ。」( 出口は背後に迫っていて、このまま帰るなんて簡単だ。でも、先程浮かんだ思考はそれを良しとはしない。だからぼくは、足を止める。) 「 この後何にも用事がないんだったら、さ。________ちょっとくらい『 遊園地 』ってやつを見ていかない? 」「 ぼくたちは確かに、ヒーローになるための学生をしているんだけど。それでも〝 普通の女子高生 〟らしいことを勉強するのだって、悪いことじゃあないはずだ。 」 ( 珍しく饒舌になってしまうのは、それら全てが自分にブーメランとなって返ってくると分かっているため。女の子がするようなことは何にも分からないし、雑木林の一件がなかったら終わりまでベンチで座っていたはずだし。でも、せっかくだったら。同じように何をしたらいいか分からず、馬鹿正直にパトロールなんかしちゃう彼女と共に歩いてみるのも、悪くはないかなんて思ったのだった。 ) >エレナさん (6/11 01:29:49)
エレナ・ドラグノフ>
ある中国の詩人が言ったとさ。左遷されて寂しい暮らしだし仕事は大変だが、酒と酒を飲む友達さえいれば極楽じゃないかと。正直そんな気持ちは、よくわからなかった。酒を飲んだことがあるか否かではなく、楽しいことだとかを楽しめない訳でも、誰かを誘って出かけたりしないでもないが。自分に課せられた何かを大変だなんて一回も思ったことはなかったし、自分が楽しめるとか嬉しいとかは、誰かの楽しみや嬉しさのあくまで後に受け取れたらいいはずだからだ。『別にいいが、私はどこに行ったり遊んだりしたらいいのかなんて全く分からないぞ。貴様が案内(エスコート)してくれるなら別だが、正直何をどうしたらいいかなんて分からない。』____それを間違っているとは思わない。だが、エレナを誰が救うの?と声をかけてくれた誰かがいた。なら、その人が心配しなくていいように、少なくとも分からないことは分からないから任せるとそう言おう。『から、連れて行ってくれ。その……普通の女子校生がどうとかは分からないが、やるだけやってみてもいいような気がする。』 (6/11 01:46:07)
和枕 音子>
「 生憎と、ぼくもよくわかってない。だってこんなとこ来たの、生まれて初めてだ。」( 遊園地だけじゃない。動物園も、水族館も、海水浴場も花火大会もプラネタリウムも映画館だって、『 普通の子 』が当たり前に足を運んでいる場所は何ひとつ行ったことがない身だ。よく知るのは研究所に実験室に病院にと、辛気臭い場所ばっかり。) 「 正直、それが悪いとも可哀想だとも思っていなかったけれど、何だか最近は、 勿体無いなって思うようになったんだ。」( ぽつぽつ語り、『 連れて行ってくれ。』と言ったきみの隣に歩を進めては、くい、とその袖を引こう。随分と背の高いきみと、ちんまりしたぼくが並べんだ様はまるで親子だ。) 「 安心するといい。よくわかってないとは言ったけれど、園内の構造は頭に入っているから……案内は、できる。」( 人は疎らだけれど、ぼくたちみたいなテーマパーク初心者にはちょうどいいはず。男性の応急処置のためにリボンを使ってしまったまま、解けていた長い髪がふわりと舞った。 ) 「 とりあえず、あっち……人が比較的多いほうに。」 (6/11 02:03:42)
エレナ・ドラグノフ>
『で、ここって……』人が沢山いる場所、それはイコールでお客さんから人気の場所に当たる。意外なほど観覧車ってものは終盤まで乗らなかったりして、今の中途半端な時間帯というならやはり、ダレた雰囲気を爽快にぶっ壊す絶叫系。お化け屋敷とジェットコースターが連結したようなそれは、快晴の日や行楽日和には負けるとしても、程よい程度には行列を作っていた。さて、私がバツの悪い顔をした理由は、遊具自体ではなく客層にあたる。この異常気象では子連れ家族連れは少なく、老人はそもそもこんな場所に中々来ない。では果たしてどんな客層かと言ったら______はい、見渡す限りのカップルだらけ。『手繋ぐと、次に来る時の割引券と、ポップコーンがプレゼントだってさ。皆やってるし……どうする?』なら、それを前提にしてイベントやらが組まれていくはずだ。手を繋いだら割引券だのプレゼントだのとなり、付き合いたてなのだろう若いカップル達はきゃいきゃいわいわいと甘酸っぱいやり取りをしながら手を繋いで係員さんの前を過ぎていく。あー、うん、やる……奴なのだろうか。手を差し出しながら、回りの空気に恥ずかしくなりつつやるかい?と声をかけて。 (6/11 18:30:24)
和枕 音子>
( さてはて、見渡す限りは恋人同士の群れ。それもそのはず、そういうイベント中なのだ。カップルにはドリンクプレゼント。抱き合ったら割引券。キスをしたなら遊具の無料券…………なんて、種類は様々だけれど。そしてぼくらの眼前で行われているのは、) 『 手繋ぐと、次に来る時の割引券と、ポップコーンがプレゼントだってさ。』( と、いうわけである。列に並ぶ者はみな手を握りあっており、男女、男男に女女。いや待て、二人組であれば誰でもカップル扱いか?恋人だと証明する手段など無いのだから仕方がないと言えばそうなのだが、納得のいかないものだ。『 どうする? 』と問うきみは、何とも言えない表情で。こういうことに慣れていないのかなぁ。意外だ、美人だから引く手数多かと思っていたのに。) 「 まぁ、もらえるものはもらっておいて、損はない……でしょ。ぼくときみが、恋人に見えるかどうかはさておいて、ね。」( 何でもない風に口にして、エスコートみたいに差し出されたきみの手を取る。大きく、ほんのちょっとだけ硬い手だ。この手のひらで色んな人を守ってきたのだろう、努力の結晶。ぼくが触れるにはあまりにも綺麗すぎるものを、そっと緩い力で握っては、前に進んだ。) ( 結局、呆気なくぼくらは栄えあるカップル扱いを受け、割引券と小さなカップのポップコーンを手にしたのだった。愉快。) 「 …………で、これ。何となく流れで並んではみたけど、一応絶叫系っていうやつ? なんだよ、ね。」「 野暮かもしれないけど、きみ、だいじょうぶそう? 」( 遊園地、よくわからない同士が初めて乗るには、これは余りにも上級者向けではなかろうか____。言っているうちに、ぼくたちの番が近付いてくる。目の前に迫るのは2人がけのイス……車?のようなもの。レールが引かれているから、乗っているだけでいいのだろう。 ) (6/11 18:58:00)
エレナ・ドラグノフ>
『いや、出し抜いたみたいで嫌なんだが……こういうの、乗ったことない訳じゃないんだ。小さい頃に一回来たか来てないかくらいだけど、いわゆるこう、怖いオブジェとか音楽と一緒に進んでいくジェットコースターみたいなもの、だった気がする。』う。それを言ってしまうのか、みたいな視線が痛い。大丈夫なの?みたいに言われたりしたらそう答えるしかないじゃないか。ぶう、という重低音が鳴って発進の準備が完了する。それから、おどろおどろしいBGMが鳴り響いてきた。ごうごうと骸骨のオブジェや、ライトで投射された亡霊、その他妖怪やらゾンビやら宇宙人やら無節操な諸々______『そうそう、こんな感じのやつだ。私の母がヒーローのくせに建築家なんて兼業してた変なやつだったからさ、だいたいどういう場所にあるのかとかも分かっ_____』ああ、懐かしいななんて周りを見ながら、きゃあきゃあと悲鳴をあげる少年少女の真ん中で『きゃあああああああああ_______ッ!!』誰よりもおおきな声で、悲鳴をあげた。いや、不覚だ。油断したところに、思いっきり真っ逆さま。隣にいる彼女の手にしがみつくように握りしめながら、肩を縮こまらせて______ (6/11 19:13:31)
和枕 音子>
「 えぇ、じゃあきみの方が遊園地レベル高いじゃんか……。今からでも案内する側にまわってほしいくらい、なんだけど…………。」 ( じっとりと視線を向けているうちに、発進を告げるブザーが鳴って。同時に『 ひゅーどろどろ 』なんて言葉がぴったりな音楽がフェードイン。前や後ろに座る子たちの中には既に怖がる子もいるくらいで。でも隣に座る彼女は一度乗ったことがあるって言うし、それならきっと大丈夫なのだろう。ガタンと振動が響いて車体が動き出した時、ぼくはそう思っていたのだ。)『きゃあああああああああ_______ッ!!』( 鼓膜がきぃぃんと鳴った。) ( 超絶至近距離で絶叫が響いてぼくは、こういうSEの付いたアトラクションなのかな______なんて、現実逃避を行う。) ( 上下に登っては真っ逆さま。浮遊感を味わったかと思えば、落ちた先に血的な液体を滴らせたゾンビたち。その間を抜けて、また上がる。上からガタン!なんて音を立てては死体を模したマネキンが降ってきたり、息付く間もない演出構成。その間も方々からきゃあきゃあ歓声嬌声悲鳴エトセトラが聞こえてはいたけれど、目新しい世界に視界が忙しいぼくの邪魔をすることは無かった。長いようで短い時間。コースターが減速したことに「 あ、もう終わりなんだ。」と思ったほどで。) ( ………………さて、問題はこっちか。) 「 _______あの、終わったみたいだけど、」「 『 だいじょうぶ? 』 」( 折しもそれは、アトラクションに乗り込む前に聞いた台詞と全く同じものであった。隣で手を固く固く握りしめて小さく丸まる彼女に、そっと声を掛けて。) (6/11 19:38:47)
エレナ・ドラグノフ>
『……大丈夫、じゃない。小さい頃に見たきりだったから、体感的に全然違うというか、全然怖い感じだと思わなかった。うん、となると私の予備知識とかも全部パーだし、案内も多分出来そうにない。』『なんだって、作る時はあんなに気楽そうだったのに乗ると怖いんだ_____?』よって、案内役になるのも不能(ギブアップ)。何がなんだか分からないまま、ぐったりとした状態でジェットコースターを下りる。多分今は、小動物をしわくちやにしたような表情になっているだろうことが自分でもわかる。『なあ。あの、さ。腰が抜けたというか、力が入らないから、このままで居て欲しい。のと___次は、次は怖くないやつにしよ……?』なんだか力を入れすぎて固まってしまったからか、大丈夫?と声をかける彼女にしがみついた腕を離せないままに、次は怖くないやつ、平和なヤツがいいと、しょぼしょぼと涙で霞んでいく瞳で頼りなく見つめながらどうしよう?と尋ねて。 (6/11 19:49:18)
白鐘玄冬>
(昼下がり。保健室。惰眠を貪る女生徒。その三拍子が揃った場所に来ては行けない人間が現れた。白鐘玄冬。自他ともに認める快楽主義の女好き。性格破綻者。見た目だけはまともにシャツとスラックスを身にまといボタンを全て留めている彼は少女の顔を覗き込むと何度か頷く。そして、躊躇いもなく緩やかに布団を捲りあげた。)ほう………………(思わず漏れ出た感嘆。ロングパーカーから伸びる細い足。太ももまで覆うニーソックス。黒と白の間に存在する絶対的領域。よくよく見ればガーター。美しいと思えた。その領域に魅力を覚えた。下に履いてるか否か、それだけで想像は留まる所を知らない。ある種完成された状態。)………………(だが、白鐘玄冬はそれを良しとしない。分からぬなら暴く。興味は追求する。夢想などは届かぬ者への慰めに過ぎない。刹那的な欲求は過去未来全てを秤にかけても微塵も動かない。白鐘玄冬は少女の大腿部へと指を触れさせ、這うようにパーカーの中へと侵入すればいとも容易く捲りあげた。中身がどうであってほしいなんてものは抱かなかった。なに、美しい少女の事だ履いていようといまいと愛らしい事に変わりはないだろう。整った女はこれだから便利で良い。玄冬は歪に笑うと逸らすことなくそれを見つめた。)ふぅん…………良い趣味だ。 (6/18 04:21:20)
和枕 音子>
( 和枕音子が保健室に並ぶ数少ない寝台を占領して寝始めたのは、おおよそ2時間前のことであった。もちろんのこと、誰かに起こされることもない。わざわざ様子を見に来るほど仲の良いクラスメイトはいないし、単位も成績も問題無い。保健医は理由を知っていて『 会議があるから。』と書置きを残して5時限目が始まった辺りで姿を消していた。 主のいない保健室に訪問者が来るはずも無く、惰眠を邪魔するものはいないかに思えた、が____。) 「 ん、……、」( 身動ぎ。急に身体を包む温度が冷えた気がして、暖かさを逃がすまいと身体を丸める。) ( 意識はなくとも彼女の【 危機察知 】は正常に働いていた。背筋を震わせるようなくすぐったさを覚えた瞬間。)「 _____________ッ、」( ぱしり。) ( 少女の細腕が素早く動き、何かを掴んだ。ぐ、と無意識に力を入れたところで小さな女の子の小さな手だ、〝 掴んだ何か 〟の行動を止める効果は無かっただろうが…………幾度か、手の中のものを確かめるように力を込めて、) 「 ……………………んん、」( 睫毛がふるりと揺れて、隙間から琥珀色が覗く。虚ろな調子で彷徨ったそれは、自らの腕、手、それが掴んだものを順繰りになぞっていき、ぱちんと、きみの黒黒とした瞳孔と出会うだろう。瞬きを数回。自分のおかれた状況を理解できないようだった。けれどどう見たって、口角を上げたこの男は、少女の____『 ぼく 』の、服を。) 「 ………………………………………………。」「 ……………………あの。」「 なに、してるの………………………? 」 ( 怖々と、恐る恐ると、ぼくは見知らぬきみに問いを投げる。) (6/18 04:43:42)
白鐘玄冬>
(納得。感嘆。快楽。思考。目の前に広がる楽園。見るタイプの薬物。後世に語り継ぎ流布でもしてやろうか。そんな遊びに興じたくなる景色だった。なんだか途中で邪魔が入ったようだが、大した脅威でもなかったので無視をした。それがいけなかったのだろう。求めた景色を網膜に焼き付ければ、ようやく玄冬はそれ以外へと意識を向けた。自らの手を握る誰かの手。それを辿ればなんということか先程から素晴らしき景色を見せてくれている少女の困惑と驚きに満ちた瞳と目が合うでは無いか。)あぁ………………(その声は落胆の色を見せる。起きてしまった相手に?これから先の行為が出来ないことに?今から弁明しなければならないことに?否。否。否。)悪ぃな。起こすつもりは無かったんだ。安眠を邪魔した事は謝罪する。(横柄とも取られかねない口調で紡がれたのは謝罪。相手を自分の意思にそぐわぬ形で起こしてしまったことの落胆を見せつつ、彼は謝罪した。ここだけ切り取れば実に誠意ある謝罪に見えなくもない。が、彼女の臀部に這う指は、手は、謝罪の間も柔らかさを楽しむように肌を撫で、質感を確かめるように布地の上から指を沈ませる。その手つきは乱雑でもなければ丁寧でもない。ただただ艶めかしくこなれていて____端的に言えば、いやらしかった。)何を、って……見りゃあ分かんだろ?(ただでさえ横柄だった口調が崩れきる。指はあろう事か布と皮膚の隙間に入り込まんと蠢く。)眠りに来たら、先に寝てる牝がいたから同衾でもして快適な眠りに浸ろうと思ったら、唆る身体してたから味見してるとこだ。あぁ、気にしなくていい。二度寝でも三度寝でもしてくれ。こっちも好きにやらせてもらう。 (6/18 04:56:51)
和枕 音子>
( 寝惚けた頭が覚醒するのに、そう時間はかからなかった。そもそも寝起き、しかも寝足りない状態で起こされたのだ。機嫌は最悪に決まっている。そんな時に目にしたのが得体の知れない行為を働く、得体の知れない男だというのだから、余計に。ばっちり目が合って、何を言うのかと思えば消沈した声を洩らす始末である。困惑に眉を寄せた。) 『 眠りに来たら、先に寝てる牝がいたから。同衾でもして快適な眠りに浸ろうと思ったら、唆る身体してたから味見してるとこだ。』「 …………ベッドは、他にも空いているとおもうんだけど。 」( 彼の言葉を咀嚼して言ったのはそれだけ。普通の女の子だったら、絶叫から通報の流れを取られるであろう行為を働いたとは、到底思えぬほど横柄な態度。謝罪には聞こえない形ばかりのそれらと、一方的な状況説明には特に気分を害すことはなく。謝りながらも止めようとしない指先の感触に、ほんの少しだけ男の手首を握る力を強めて、たったそれだけを言った。) 「 ぼくはねむいんだ。きみが欲求不満で、発散の代わりを探しているって言うなら……後で代わりになってあげるから。いまはあんまり、邪魔をしないでほしいんだけど……。」( ぼくにとっての問題は、見知らぬきみに触れられ、今まさに襲われそうになっていることではなく。眠りを妨げられたことだけであったから。だから、そうやってどこかズレた発言を口にしたのである。) ( 言うだけ言って再び視線を外したぼくには、きみがどんな顔をしているかなど分からない。) (6/18 05:27:22)
白鐘玄冬>
(不快げな顔。怪訝そうな瞳。玄冬にとっては見慣れたものばかりだ。そんな見飽きた上に愉快でもない表情よりも今は指先の感覚の方が彼にとっては大事である。柔肌と布に挟まれる感覚。相手の反応が芳しくないのが悲しき事だが、まぁさしたる問題でもあるまい。さて、そろそろパーカーも脱がしてしまおうか。いやいや服越しの胸も確かめねば。そんな悩みに向き合おうとした直前。間抜けな言い分が鼓膜を揺らした。)は………………?(素っ頓狂な声。玄冬がこんな声を上げたのは人生で2度3度程度ではなかろうか。口を開け目を開き少女を見つめる。)おいおい。まだ寝惚けてんのか?教科書に載せたいほどの愚問だ。ただのベッドと柔らかで暖かな抱き枕のあるベッド。選ぶまでもねぇだろ。(そして、呆れた様子で笑いながらそんな事を言ったあと、ふと気づく。もしやジョークだったのでは?目の前の牝が冗談のひとつも知らなさそうな顔をしてたせいで無意識に除外していたが、今のは単なる振り。実は熱烈で苛烈な肉体言語を誘発させる為の言葉だったのでは?)あー、わ(自らの浅はかさを恥じ言葉を吐き出そうとした。したのだ。そして吐き出さなくてよかったと安堵する。遮るように少女が向けてきた言葉は無知なんてものを理由にしても法廷で勝ち星をあげられるほどの侮辱だった。少なくとも玄冬はそう受取った。)テメェが眠ぃのは分かった。あぁ、起こした事は謝ろう。安眠を妨げたことは謝ろう。だが、なんつった?誰が何の代わりだって?(空気が張りつめる。いつの間にやら下着の中の手も抜かれ、代わりに少女の腕を握っていた。)テメェが俺の何を勘違いしようと構わねぇ。テメェがテメェの何を無自覚だって構いやしねぇ。だがこれだけは間違えるなよ。(玄冬の瞳は鋭く少女の瞳を見据える。低く苛立ちに満ちた声は聞き逃すのを許さない。)俺は、テメェを求めてんだ。なんの代わりでもねぇテメェを。(言いたいことを言いたいように相手に聞かせた玄冬は深々とため息をつくと少女の腕を離した。彼の激情は残念ながら長く続かない。特に怒りだと1分も持てば褒めてやって欲しい程だ。つまるところ、好き勝手言った挙句1人スッキリした彼は満足気にベッドに腰かけた。) (6/18 05:48:07)
和枕 音子>
『 ただのベッドと柔らかで暖かな抱き枕のあるベッド。選ぶまでもねぇだろ。』「 ぼくはきみの抱き枕じゃない。」( 間髪入れずに切り返す。真面目な顔で何かしらを考えているみたいだったけれど、それがろくな思考じゃないのは言葉端からよく分かった。逸らした視線をそっと戻して、眠気を湛えた目がきみと真っ白なシーツの間をふらりふらりと行ったり来たり。…………ねむい。このままお喋りを続けるようなら、きみが何をしてようと関係なしに眠気に負けていただろう。) ( けれど。) 『 誰が何の代わりだって? 』( 温度差のある空気が一転。一瞬で沸騰寸前まで高まった。いつのまにか掴まれていた腕がぎしりと軋みをあげて、顔をしかめる。びりびりと肌が粟立つような、鋭く棘のある言葉がこちらに向けられて。) 『 俺は、テメェを求めてんだ。なんの代わりでもねぇテメェを。』( 青年は、低く低く囁いた。) ( ため息が空気に解けるのと、彼の指がぼくの手首から離れるのと、すべて同時だっただろうか。張り詰めた糸がふわりと弛む。ぎしりと音を立ててベッドに腰を下ろしたきみの横顔からは、直前の激高も情念も、その一切が霧散していた。)( 意識の外で止めていた息を、静かに吐き出す。) 「 …………。」( 身を起こす動作に混ぜて、少しだけ彼から距離を取った。背中に当たるヘッドボードの冷たさ。握りつぶさんとばかりに掴まれていた手首の熱さ。既に赤く痕のついたそこを庇うように胸の前に回収して、そっとさすった。) 「 …………きみが突然、何に怒りを抱いたのか。ぼくにはよくわからない、から、謝ってあげることはできない。」( 思考回路を支配していた眠気はなりを潜め、疑問符ばかりが頭上を踊った。青年はどこかへ行く様子も無く、きっと、ぼくが眠るのを待っているのだと直感した。 ) 「 ……名前もしらないきみは、いったい何に苛立ったの。」( 馬鹿だな。問いなんてせずに、自分がどこかへ行けば良かったのに。疑問を音にした後に気付いて、ぼくはぼく自身の言動に首を傾げたくなった。 ) (6/18 06:31:03)
白鐘玄冬>
(さて言いたいことを言った玄冬はどうするかと思考していた。眠いという女を無理やり起こす道理もなく、必要も無い。ならば寝かせてやるのはどうだろうか。自分も寝るために来たわけだし、同衾は快楽への準備として特有の雰囲気というものが生まれる。たまには時間をかけるのも良いかもなぁ…………。結論が出た辺りでちらりと少女に視線を向ける。)………………?(はて、寝かせてやろうと思ったのに起き上がって座ってる。思いもよらぬ行動に小首を傾げていると、少女が口を開いた。なにやらご丁寧に謝れない理由を語ってくれた。手首をさすりながら。それを見た玄冬は自らの掌に視線を落とす。強く握り過ぎたらしい、と。)「苛立った理由か。ふむ、いや、待て。激情の言語化は難しいな。」(今まで理解してもらおうとも思わなかった感情に理由を問われた玄冬は難しい顔を見せる。本来であれば、分からないなら分からないまま飲み込め、くらいは言ってやるが…………白い肌を赤く染めた分程度は労力をさいてやるべきだろう。)「そうだな。お前という個人を見てる俺に対し、自分は何かの代替品である、というように振る舞われたことへの苛立ち、辺りが妥当か。」(先程まで激情を迷いなく露にした人間とは思えない程、玄冬は落ち着いていた。正しく、賢者モードと言うやつだ。)「あぁ、理解する必要は無い。どうやらお前は量産ラブドール以下の、人類進化の歴史が咽び泣くほどの哀れな自意識しか持ち合わせていないようだしな。」(仕方ない仕方ないと、覚えの悪い子供をあやす様に罵詈雑言を囁いた玄冬は小さく笑いかけた。)「それより寝ないのか?それとも俺と遊びたくなったのか?」(直後浮かべられた笑みは少女の身体を貪りたいと願う狼のそれだった。) (6/18 06:51:27)
和枕 音子>
( 青年はゆるりと首を揺らす。『 激情の言語化は難しいな。』なんて言っては眉を寄せている様を見るに、先程の感情に意味なんてなかったのかもしれない。ぼくはたった数秒で、問うたことを後悔した。) 『 お前という個人を見てる俺に対し、自分は何かの代替品である、というように振る舞われたことへの苛立ち、辺りが妥当か。』( それは、自らという存在すら客観的に分析し、判断を降しているような、つまりはすこし歪な物言いだった。)『 理解する必要は無い。どうやらお前は量産ラブドール以下の、人類進化の歴史が咽び泣くほどの哀れな自意識しか持ち合わせていないようだしな。』「 量産ラブドール。」( あんまりな口振りに、思わずそっくりそのまま繰り返した。ラブドール。性行為を擬似的におこなうための、女体の代わり。今の時代では性技を専門とするアンドロイドもいるらしく、それらすべてを総称した名。ゆっくり噛み砕いて、意味を解いて、ようやくそれが〝 品のない暴言 〟のたぐいであることを理解した。)( 理解した、だけだったけれど。)「 …………きみは、わざわざ量産型の人形と寝る趣味があるのかな。」( くだらない口説き文句はさらりと流して、無かったことにする。 ) 「 『 お前という個人を見ている 』と言ったけれど、きみ。」「 どうして? 」「 どうしてきみは、ぼく個人を見ているの。素性も知らない人間の個人性なんか、分かりっこないじゃないか。」( 容姿が好みだったから? 声が気に入ったから? それは、個人を見ているうちに入るのだろうか。きみの頭に残った〝 好みの女 〟という像を、ぼくに重ね合わせて具現化しようとしているだけじゃあないのか。)「 きみは、ぼくになにを求めてみているの。」「 なにを__________________ど う し て ? 」( 疑問ばかりを繰り返す様は、言い得て確かに『 哀れな自意識しか持ち合わせていない 』ようだったろう。身体はきみから距離を取ろうとしているのに、その喉から溢れるものはどこまでも距離を詰めようとして。余りにもミスマッチ。アンバランスな有り様。今にも牙を向こうとする狼の顔をじぃっと見つめて、熱に浮かされたみたいに、ぼくは質問を並べ立てた。) ( お前個人をとは、きみの言葉だ。) ( 答えられないなんて、言わないだろう。) (6/18 07:26:27)
白鐘玄冬>
(玄冬は悟る。最初の会話から、目の前の女は好きも嫌いもなく迎合を良しとし、無関心を愛し、労力を嫌う人間なのだろうと思っていた。それが誤りだったと悟る。人の質問など無視をして、自分の内に湧く疑問をぶつけてくる様はなかなかに自己中心的な人間の姿だ。彼女の疑問を遮るでも答えるでもなく受け止めた玄冬は先程よりも……今まで見せたものの中で最も愉快げに楽しげに獰猛に凶暴に笑って見せた。)「なんでなんでうるせぇよ。俺はテメェのパパでも教師でもねぇんだ。」(言葉の割に笑顔は変わらない。今の少女にどんな喜びを見いだしたのか、玄冬は真っ直ぐ見つめ笑う。)「そうだな__________」「一晩だ。牝。」(そして、玄冬は距離を置こうとする少女を半ば無理やりに引き寄せる。片手は臀部を掴み、もう片手はパーカーの中へ這いずり背中を抱く。)「テメェを一晩俺に寄越せ。そうすりゃ、テメェのちっちぇ脳髄と身体が理解するまで教えてやる。」(少女の耳元で囁く声は底冷えするほど低く、それでいてあらゆるを溶かすほど熱を帯びていた。これが魅惑とでも言うのだろうか。玄冬は少女に魅惑を見出していた。自らに乞う姿に、問う姿に、剥がれた無関心に、アンバランスな在り方に。好い、良い、善い。愛すべき魅惑だ。玄冬は今、たしかに得がたい快楽をそこに確信した。) (6/18 07:56:50)
和枕 音子>
( 空気が凪いだ。) ( それはただの息継ぎの間であったのか、きみが酷く愉快そうに笑ったからなのか、それともきみが『 うるせぇよ 』と言ったからなのか。ぼくにすら理由は定かではなく、結果として、ただの静寂が室内を覆った。) ( 静けさは二秒と持たず、きみは口を開くだろう。言いながら男の腕は腰を抱き、強い力で自分の元へとぼくの身体を引いて。何食わぬ顔で服の中、隠した素肌をなぞるのだ。________ぞくり、と。あらゆる要因が重なって、思わず背筋を震わせたこと。きっときみには伝わったはずだった。 ) 『 テメェを一晩俺に寄越せ。そうすりゃ、テメェのちっちぇ脳髄と身体が理解するまで教えてやる。 』( 息遣いどころか身の内の鼓動、僅かな身じろぎすら手に取るように分かる距離。鼓膜を震わし耳朶にかかる吐息は熱く。その一息で、相手の身体に熱を持たせ火照らせることができるのだろうと、特に抵抗せず一連の動作を受け止めては確信した。) 「 きみに 、」( 正反対にこちらの音は非常に小さく、今の距離でなければ恐らく聴き逃してしまうくらい。 )「 きみに、ぼくを預けて。それでいったいなにを教えてくれるの。」( 至近距離にあるきみの表情からは、溢れてしまうほどの愉悦を感じる。) 「 しらないことだ、きみの言うことはすべて。」「 だから気になる。気になる、けれど。」( 吐息。寝乱れたツインテイルを揺らして、首を振った。きみの思いがけず分厚い胸板を押し返すよう手を置いて、熱情を浮かす眼差しから逃げたいと、視線を自身の膝に向かわせるだろう。 ) ( 知らないことを知るのは、怖いことだ。 ) (6/18 08:42:26)